捻くれた先輩   作:超素人

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今回、八幡はあまり出番がありません。
そのうえ、いつもよりだいぶ短いです。

体育祭で八幡が取った「相互確証破壊」。
これが、僕は1番好きだったりします。
言葉の響きもやり方も。
八幡も周りも誰も傷付かない。

だから、体育祭はどうしてもやりたい。
という事で今回のお話になります。

よろしくお願いします。



5.過ぎゆく日常。

先輩と出会ってから2週間ほど。

あれから、雨の日以外はほぼ毎日ベストプレイスへ。

先輩の噂は、1年生の間では少し落ち着いてきた。

私も、きっと藤沢さんもちょっと安心。

藤沢さんとは、会えば会話するようになった。

藤沢さんも交えて、昼ご飯を食べたりもした。

 

先輩は相変わらず。

私が行くと嫌な顔をするし、すぐあざといって言う。

たまに先輩があざとくて、私がお断りして。

でも、先輩の隣はすごく居心地がいい。

お互いに言いたい事を言って。

猫被ってる私も、素の私も同じように接してくれる。

いつもの場所は、私にとってもベストプレイスになりつつある。

 

この2週間の間にわかった先輩のこと。

マッ缶が好き。

シスコン。

実は働きたくない。

将来の夢は専業主夫。

国語は学年3位。国語はね。

黒歴史がいっぱい。

自虐ネタが多い。

たまにすごいキモい。

下の名前は、はちまん。

そして、なんと、なんと実は友達がいた。

 

色々わかったけどダメ人間にしか見えない。

でも、変にかっこつけようとしない先輩。

やっぱり他の男子とは色々と違う。

 

私と話す男子は、自分の良い所しか言わない。

私の事も、良い部分しかみようとしない。

それに慣れている私だから、先輩の隣が居心地良いんだと思う。

 

先輩に友達がいたことはすごく驚いた。

自分でいっつもボッチって言ってたし。

しかもその相手が、あの総武のプリンスこと戸塚先輩。

 

葉山先輩が王様、戸塚先輩が王子様。

タイプは違うけど、2人とも無駄にキラキラしてる。

特に戸塚先輩は、女子より女子っぽい。

先輩のテンションもヤバかったし。

先輩曰く、「戸塚の性別は戸塚」らしい。

意味わかんない。やっぱり実はホモ?

 

戸塚先輩も先輩と同じクラスらしい。

こう考えると、先輩のクラスってヤバくない?

王様に王子に女王(獄炎)。

女王(腐)にアホの子にヘタレ委員長。

そして、校内一の嫌われ者である先輩。

すごい。濃すぎ。ヤバい。

 

でも、そんな中で戸塚先輩だけは、周りの目も気にせず、先輩に話しかけてくれる唯一の存在らしい。

先輩の癒しでマイエンジェルらしい。

気持ち悪い。

ちなみに「わたしは?」って聞いたら鼻で笑われた。

許さない。絶対に。

 

 

こうやって色々な事を知れた2週間。

学校の雰囲気は、次は体育祭へ。

この前、文化祭が終わったのにー。

行事を詰め込みすぎだと思う。

私にとって初めての体育祭。

あんまり興味ないけど。

 

今日もお昼は先輩と食べ、今は放課後。

絶賛、部活中である。

部員達がボールを追いかけてる間に、私達マネージャーはドリンクを用意したり、時間があればビブスを洗ったり。

 

今は、DFを付けて攻撃陣の戦術の確認。

守備陣の実戦練習も兼ねている。

MFの葉山先輩、FWの戸部先輩とかは、攻撃側。

 

葉山先輩はとにかく爽やかでキラキラ。

戸部先輩はとりあえずうるさいし、ウザい。

ゴールを決めるたびにはしゃぐ。

 

それよりウザいのは、葉山先輩のファン。

わざわざ放課後に、見学とかヒマなの?

DFが少しでも強く当たると、非難の声が飛ぶ。

DF側の先輩達もそれを気にして、あまり練習にならない。

練習の邪魔になるくらいなら来ないで欲しい。

 

「よし、いい時間だしここまでにしよう。」

 

葉山先輩の一言で全員戻ってくる。

ドリンクとタオルを準備。

 

「葉山先輩、お疲れさまでーす。」

 

「ちょっ、いろはすー俺のは?マジないわー。」

 

1番に葉山先輩にそれらを渡し、戸部先輩は無視。

それくらい自分で取って下さい。

マネージャーもヒマじゃないんですよ。

 

葉山先輩はやっぱりかっこいい。

色々な仕草にドキっとするし、近付きたいという気持ちもまだ当然あるし、アピールも継続中。

でも、最近どうしても拭えない感情がある。

 

『どうして先輩の噂をそのままにしているのか』

『文実の状況を知っていたなら、葉山先輩なら先輩が動く前にどうにかできたんじゃないか』

『文実の状況も知っていて、屋上での先輩の狙いにも気付いていたなら、先輩を擁護する事はできたんじゃないか』

 

こういった不信感?みたいなものがどうしても湧いてくる。

これが葉山先輩でなければ、そんな事もきっと思わない。

でも、誰にでも平等で優しい葉山先輩だからこそ、私はどうしてもそう考えてしまう。

葉山先輩の影響力ならって、思ってしまう。

 

私だって、先輩のために何かをしたわけじゃないから、偉そうなことは言えないけど…。

はぁ〜。

今まで葉山先輩の事を、悪く思うことなんてなかったのに。

どんどん自分の気持ちがわからなくなる。

 

「………す〜?」

 

別に先輩に恋をしてるとかじゃない。

先輩に気持ちが移ったとかでもない。

知りたいと思うし、理解したいと思う。

先輩の味方でいたいとも思う。

先輩といると楽だし、居心地もいい。

先輩はタイプじゃないけど、嫌いじゃない。

たまにドキっとさせられるけど。

 

「……はすー?」

 

だから、わからない。

正反対の2人にドキっとしてしまう自分。

正反対の2人に少なからず惹かれる自分。

 

「おーい。いろはすー!」

 

「もう!戸部先輩うるさい!なんですか!?」

 

「っべーわ。いろはすひどいわー。さっきから呼んでたっしょー。隼人君が集合だってよー。」

 

さっきから呼ばれてたらしい。

っべー。いろはす全然気付かなかったわー。

マジ、ごめんっしょ。

うん。戸部先輩の真似はやめよう。

バカになりそう。

少し離れたところに全員集まってる。

なんだろう。ミーティングかな?

 

「よし、全員集まったね。もうすぐ体育祭があるのは全員わかってるよな?1年は知らないと思うけど、毎年、各運動部から運営委員として

人員を貸し出してるんだ。」

 

へー。そんな事やってるんですね。

でも、めんどくさそう。

 

「申し訳ないけど、冬の大会に向けて、必然的にレギュラー以外の部員に行ってもらうことになる。重ねて申し訳ないんだが、3年が抜けて余裕がある訳じゃないから、マネージャーにも交代で参加してほしいんだ。都合が悪い日は、言ってくれてかまわない。」

 

あーまぁしょうがないかな。

マネージャーは私含めて4人いるし。

でも、私以外のマネージャーは、葉山先輩にキャーキャー言ってるだけであんまり仕事しない。

ふざけてんの?

 

「あの、葉山先輩。参加する面子は固定じゃなくて大丈夫なんですか?」

 

「確かに今までは固定だったんだけど、サッカー部内で去年それで少し揉めてね…。一応、各自でしっかり引継ぎをすれば大丈夫だと思うんだ。俺も毎日確認するつもりだしね。」

 

確かに、部活に熱意を注ぐ人からすれば、いい迷惑かも。

運営委員って大変なんだろうか。

正直やりたくない。

 

でもこれは、葉山先輩に恩を売るチャンス?

他のマネージャーに仕事をさせる機会にもなる。

それに、毎日葉山先輩と話す口実にもなる。

よし。

 

「葉山先輩。私でよければ、固定でも構いませんよ?まだ1年ですし、あまり詳しい事はわかりませんけど。」

 

この提案に葉山先輩は驚いていた。

確かに自分からこんな事を言うようなキャラじゃない。

戸部先輩や他の部員は口々に褒めてくれてる。

他のマネージャーも私みたいな邪魔者がいなくなるからか、すごく喜んでいる。

あんた達はこれを機に少しくらい仕事しろ。

 

「いろは、本当にいいのか?部的にはもちろん助かるし、引継ぎの必要もなくなるからいいが、割り振られる係によっては、結構大変かもしれないよ?」

 

「構いませんよー。そこら辺はうまくやりますので。お任せください♪」

 

「なら悪いけどよろしく頼む。何かあればすぐ言ってくれ。協力できることは協力する。みんなも助けられるときは助けてやってくれ。ありがとう、いろは。」

 

「まーじ、いろはす、っべーわ。さっすがだわー。」

 

計算通り☆

うまくやるの部分で苦笑してたけど。

私以外は交代制になるみたい。

サッカー部の男子は、私が葉山先輩狙いなのも知ってるから、一緒にいても無駄にアピールとかしてこないし。

あとは楽な仕事に就けば、かんぺき♪

何かあれば先輩にも相談しよう。

元文実の先輩なら色々頼りになりそうだし。

めんどくさいけど、少し楽しみ。

 

 

なーんて、考えてる私は本当にバカだった。

それを、後から知る事になる。

 

何故か、また委員長の相模先輩。

そして、首脳部にいる先輩。

首脳部と委員の対立。

荒れに荒れて進まない会議や準備。

 

 

そんな面倒な未来が待ってるなんて。

この時の私は知る由もなかった…。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございます。

多くの方が触れない体育祭。
でもやりたい。
なら、いろはすは運営委員に参加してもらおう。
動機も葉山ありきなら作りやすい。

ということでこんな風になりました。
次も読んで頂けるとありがたいです。

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