そのうえ、いつもよりだいぶ短いです。
体育祭で八幡が取った「相互確証破壊」。
これが、僕は1番好きだったりします。
言葉の響きもやり方も。
八幡も周りも誰も傷付かない。
だから、体育祭はどうしてもやりたい。
という事で今回のお話になります。
よろしくお願いします。
先輩と出会ってから2週間ほど。
あれから、雨の日以外はほぼ毎日ベストプレイスへ。
先輩の噂は、1年生の間では少し落ち着いてきた。
私も、きっと藤沢さんもちょっと安心。
藤沢さんとは、会えば会話するようになった。
藤沢さんも交えて、昼ご飯を食べたりもした。
先輩は相変わらず。
私が行くと嫌な顔をするし、すぐあざといって言う。
たまに先輩があざとくて、私がお断りして。
でも、先輩の隣はすごく居心地がいい。
お互いに言いたい事を言って。
猫被ってる私も、素の私も同じように接してくれる。
いつもの場所は、私にとってもベストプレイスになりつつある。
この2週間の間にわかった先輩のこと。
マッ缶が好き。
シスコン。
実は働きたくない。
将来の夢は専業主夫。
国語は学年3位。国語はね。
黒歴史がいっぱい。
自虐ネタが多い。
たまにすごいキモい。
下の名前は、はちまん。
そして、なんと、なんと実は友達がいた。
色々わかったけどダメ人間にしか見えない。
でも、変にかっこつけようとしない先輩。
やっぱり他の男子とは色々と違う。
私と話す男子は、自分の良い所しか言わない。
私の事も、良い部分しかみようとしない。
それに慣れている私だから、先輩の隣が居心地良いんだと思う。
先輩に友達がいたことはすごく驚いた。
自分でいっつもボッチって言ってたし。
しかもその相手が、あの総武のプリンスこと戸塚先輩。
葉山先輩が王様、戸塚先輩が王子様。
タイプは違うけど、2人とも無駄にキラキラしてる。
特に戸塚先輩は、女子より女子っぽい。
先輩のテンションもヤバかったし。
先輩曰く、「戸塚の性別は戸塚」らしい。
意味わかんない。やっぱり実はホモ?
戸塚先輩も先輩と同じクラスらしい。
こう考えると、先輩のクラスってヤバくない?
王様に王子に女王(獄炎)。
女王(腐)にアホの子にヘタレ委員長。
そして、校内一の嫌われ者である先輩。
すごい。濃すぎ。ヤバい。
でも、そんな中で戸塚先輩だけは、周りの目も気にせず、先輩に話しかけてくれる唯一の存在らしい。
先輩の癒しでマイエンジェルらしい。
気持ち悪い。
ちなみに「わたしは?」って聞いたら鼻で笑われた。
許さない。絶対に。
こうやって色々な事を知れた2週間。
学校の雰囲気は、次は体育祭へ。
この前、文化祭が終わったのにー。
行事を詰め込みすぎだと思う。
私にとって初めての体育祭。
あんまり興味ないけど。
今日もお昼は先輩と食べ、今は放課後。
絶賛、部活中である。
部員達がボールを追いかけてる間に、私達マネージャーはドリンクを用意したり、時間があればビブスを洗ったり。
今は、DFを付けて攻撃陣の戦術の確認。
守備陣の実戦練習も兼ねている。
MFの葉山先輩、FWの戸部先輩とかは、攻撃側。
葉山先輩はとにかく爽やかでキラキラ。
戸部先輩はとりあえずうるさいし、ウザい。
ゴールを決めるたびにはしゃぐ。
それよりウザいのは、葉山先輩のファン。
わざわざ放課後に、見学とかヒマなの?
DFが少しでも強く当たると、非難の声が飛ぶ。
DF側の先輩達もそれを気にして、あまり練習にならない。
練習の邪魔になるくらいなら来ないで欲しい。
「よし、いい時間だしここまでにしよう。」
葉山先輩の一言で全員戻ってくる。
ドリンクとタオルを準備。
「葉山先輩、お疲れさまでーす。」
「ちょっ、いろはすー俺のは?マジないわー。」
1番に葉山先輩にそれらを渡し、戸部先輩は無視。
それくらい自分で取って下さい。
マネージャーもヒマじゃないんですよ。
葉山先輩はやっぱりかっこいい。
色々な仕草にドキっとするし、近付きたいという気持ちもまだ当然あるし、アピールも継続中。
でも、最近どうしても拭えない感情がある。
『どうして先輩の噂をそのままにしているのか』
『文実の状況を知っていたなら、葉山先輩なら先輩が動く前にどうにかできたんじゃないか』
『文実の状況も知っていて、屋上での先輩の狙いにも気付いていたなら、先輩を擁護する事はできたんじゃないか』
こういった不信感?みたいなものがどうしても湧いてくる。
これが葉山先輩でなければ、そんな事もきっと思わない。
でも、誰にでも平等で優しい葉山先輩だからこそ、私はどうしてもそう考えてしまう。
葉山先輩の影響力ならって、思ってしまう。
私だって、先輩のために何かをしたわけじゃないから、偉そうなことは言えないけど…。
はぁ〜。
今まで葉山先輩の事を、悪く思うことなんてなかったのに。
どんどん自分の気持ちがわからなくなる。
「………す〜?」
別に先輩に恋をしてるとかじゃない。
先輩に気持ちが移ったとかでもない。
知りたいと思うし、理解したいと思う。
先輩の味方でいたいとも思う。
先輩といると楽だし、居心地もいい。
先輩はタイプじゃないけど、嫌いじゃない。
たまにドキっとさせられるけど。
「……はすー?」
だから、わからない。
正反対の2人にドキっとしてしまう自分。
正反対の2人に少なからず惹かれる自分。
「おーい。いろはすー!」
「もう!戸部先輩うるさい!なんですか!?」
「っべーわ。いろはすひどいわー。さっきから呼んでたっしょー。隼人君が集合だってよー。」
さっきから呼ばれてたらしい。
っべー。いろはす全然気付かなかったわー。
マジ、ごめんっしょ。
うん。戸部先輩の真似はやめよう。
バカになりそう。
少し離れたところに全員集まってる。
なんだろう。ミーティングかな?
「よし、全員集まったね。もうすぐ体育祭があるのは全員わかってるよな?1年は知らないと思うけど、毎年、各運動部から運営委員として
人員を貸し出してるんだ。」
へー。そんな事やってるんですね。
でも、めんどくさそう。
「申し訳ないけど、冬の大会に向けて、必然的にレギュラー以外の部員に行ってもらうことになる。重ねて申し訳ないんだが、3年が抜けて余裕がある訳じゃないから、マネージャーにも交代で参加してほしいんだ。都合が悪い日は、言ってくれてかまわない。」
あーまぁしょうがないかな。
マネージャーは私含めて4人いるし。
でも、私以外のマネージャーは、葉山先輩にキャーキャー言ってるだけであんまり仕事しない。
ふざけてんの?
「あの、葉山先輩。参加する面子は固定じゃなくて大丈夫なんですか?」
「確かに今までは固定だったんだけど、サッカー部内で去年それで少し揉めてね…。一応、各自でしっかり引継ぎをすれば大丈夫だと思うんだ。俺も毎日確認するつもりだしね。」
確かに、部活に熱意を注ぐ人からすれば、いい迷惑かも。
運営委員って大変なんだろうか。
正直やりたくない。
でもこれは、葉山先輩に恩を売るチャンス?
他のマネージャーに仕事をさせる機会にもなる。
それに、毎日葉山先輩と話す口実にもなる。
よし。
「葉山先輩。私でよければ、固定でも構いませんよ?まだ1年ですし、あまり詳しい事はわかりませんけど。」
この提案に葉山先輩は驚いていた。
確かに自分からこんな事を言うようなキャラじゃない。
戸部先輩や他の部員は口々に褒めてくれてる。
他のマネージャーも私みたいな邪魔者がいなくなるからか、すごく喜んでいる。
あんた達はこれを機に少しくらい仕事しろ。
「いろは、本当にいいのか?部的にはもちろん助かるし、引継ぎの必要もなくなるからいいが、割り振られる係によっては、結構大変かもしれないよ?」
「構いませんよー。そこら辺はうまくやりますので。お任せください♪」
「なら悪いけどよろしく頼む。何かあればすぐ言ってくれ。協力できることは協力する。みんなも助けられるときは助けてやってくれ。ありがとう、いろは。」
「まーじ、いろはす、っべーわ。さっすがだわー。」
計算通り☆
うまくやるの部分で苦笑してたけど。
私以外は交代制になるみたい。
サッカー部の男子は、私が葉山先輩狙いなのも知ってるから、一緒にいても無駄にアピールとかしてこないし。
あとは楽な仕事に就けば、かんぺき♪
何かあれば先輩にも相談しよう。
元文実の先輩なら色々頼りになりそうだし。
めんどくさいけど、少し楽しみ。
なーんて、考えてる私は本当にバカだった。
それを、後から知る事になる。
何故か、また委員長の相模先輩。
そして、首脳部にいる先輩。
首脳部と委員の対立。
荒れに荒れて進まない会議や準備。
そんな面倒な未来が待ってるなんて。
この時の私は知る由もなかった…。
読んで頂きありがとうございます。
多くの方が触れない体育祭。
でもやりたい。
なら、いろはすは運営委員に参加してもらおう。
動機も葉山ありきなら作りやすい。
ということでこんな風になりました。
次も読んで頂けるとありがたいです。