捻くれた先輩   作:超素人

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遅くなり、申し訳ありません。

今回はえらい長いですし、かなり賛否両論あると思います。
特に雪乃さんの気持ちなどは、完全に僕の思ったことなので、異論などあれば我慢せずにどうぞ。
参考にはさせていただきますが、一度投稿した話の内容を変えることはありませんので御了承ください。

そういった今回の話ですが、それでもいいという方は読んでいただけるとありがたいです。



14. 決意する後輩。

 

 

家に帰り着くまでの間も、帰り着いてからも、私はずっと生徒会選挙のことについて考えていた。

お風呂に入ってる間も、ご飯を食べている間も、自室に戻ってもその事が頭から離れない。

 

あそこまで話してくれためぐり先輩、私と一緒にがんばりたいと言ってくれて、自分も立候補しようとしてくれている藤沢さん。

 

嫌がらせも何もない状態で、2人から話を聞いていたとしたらどうだろうか。

うーん、それでも生徒会長っていうのは私には荷が重いし、学校をこういうふうにしたいとかっていう思いもない。

それに生徒会に入るなんて考え自体なかったからなぁ。

 

私が今まで学校行事に関わったといえば、それこそ体育祭運営委員だけだ。

確かにあの時は、本番で自分が製作に携わった物が実際に使われているのを見て、嬉しくなったし満足感もあった。

でも、委員に先輩が関わっていなければ、私はあそこまでマジメに仕事してないと思う。

 

はるさん先輩が言ってたけど、生徒会長は地味で面倒らしい。

そう考えると、大きな行事以外にも地味な仕事だったり、面倒な仕事がそれなりにあるはずだ。

先輩の事も関係ない地味で面倒な仕事を、私がマジメにやるとは思えないんだけどなぁ…。

 

私が生徒会長になることで何かメリットがあるのかな…。

メリットがあるとするなら、めぐり先輩みたいに指定校推薦がもらえたり、もしかしたら就職のときなんかも有利になるかもしれない。

今年から生徒会長をして、もし来年もそのまま生徒会長に就けば、おそらく内申はかなりよくなると思うし、2期連続で生徒会長なんて総武高校史上初めてだろう。

 

逆に学校的には、やる気のない生徒会長なんてデメリットしかないと思うし、他の生徒会のメンバーにとっても、そんな生徒会長なんて邪魔なだけだろう。

私だってもしかしたらサッカー部のマネージャーはやめないといけないし、忙しい時は昼休みも仕事しないといけないかもしれない。

そうなると、先輩との時間まで奪われる。

 

うん。こう考えると絶対にやりたくないなぁ…。

でも、今の状況は私がやりたくないと言っても、信任投票でそのまま生徒会長になっちゃうんだよねー。

 

「はぁ。他に候補が見つからなかったらどうしよう…。」

 

でもなぁ、先輩も言ってたけど、本当に生徒会長をやりたいなら今頃になって立候補してないなんておかしいし、雪ノ下先輩達がもし見つけてくれても、私に絶対に勝てる人じゃないと結局同じ。

自分でなんとかしようにも、今できることなんてこうやって考えることくらいだし。

 

「めぐり先輩も急がなくていいって言ってたし、ゆっくり考えよう。」

 

少しだけ生徒会選挙の事は忘れて、先輩のことでも考えながら幸せな気分で寝よう。

そう思って、今日の先輩との良かったことだけを思い出していたら、心も少し軽くなっていつの間にか寝てしまった。

 

 

あー携帯のアラームがうるさいし、お母さんが私を呼ぶ声も聞こえるし、せっかくいい夢見てたような気がするんだけどなぁ…。

携帯に手を伸ばしてアラームを止めると、ラインの通知が来ていることに気付く。

もぉー誰ぇ?朝からめんどくさいなぁ…。

 

『おはよーさん。小町と話せたわ』

 

せーんぱーい!

さっきまでめんどくさいとか思ってた自分なんて一瞬で忘れて、目もばっちり覚めた。

 

それにしてもよかったなぁ。

先輩から話しかけても無視されるかもなんて言ってたし、先輩は小町ちゃんのことホントに好きだから、無事話せたみたいで私も嬉しい。

 

『おはよーごさいまーす!よかったですねせんぱい♪』

 

私も先輩にラインを返して、さっきから呼んでるお母さんに返事をして部屋を出る。

このまま学校でもいいことが続けばいいですね?先輩。

 

 

 

学校に向かっている間に結衣先輩から、今日も部室に来てっていう連絡があった事をのぞけば、いつも通りの通学だった。

でも教室に近付くにつれ、昨日と同じ不快な視線を送ってくる連中がいる。

平塚先生、指導するなら超本気で指導してくださいよ?

 

まぁ、そんな視線1つ1つに反応してたって意味なんてないし、奴らの計画は狙い通りに進んでいる状況で、私が何かをしてもそれすら面白がるだけだろう。

教室について、ケバ子達からのムカつく視線も全て無視して、そのまま席についた。

そんな私を見て、ケバ子達がひそひそとムカつく顔で何かを言ってるけど、これも無視。

ムカつくけど、すっごいムカつくけど、今すぐ怒鳴ってやりたいけど、とりあえず無視。

 

 

ケバ子達の視線と態度によるストレスで、昼休みを迎えたころにはかなり疲れていた。

早く先輩のとこに行って少しでも癒されよ…。

そう思って教室から出た私を止めたのは、意外な人だった。

その人は、何も言わず私に近づいてきてそのまま教室の中まで戻されてしまった。

 

「いろは。あんた生徒会長になるってどーいう事だし。あーしあんたから何も聞いてないんだけど?」

 

そう、優美子先輩である。

確かに昨日、なんかあったらすぐあーしのところに来いって言ってくれたけど、何で知ってるんでしょうか。

もしかして結衣先輩が相談でもしたんだろうか。

 

「あー、えーとなんといいますか…。わたしも昨日優美子先輩と別れてから初めて知ったわけでして…。」

 

ケバ子達がなんで?みたいな顔してるけど、私も同じ気持ちなんだけど。

 

「はぁ?てことはなに?あんたになめたことしたバカがいるってわけ?どいつだし。あーしがしばくわ。」

 

ちょ、ちょっと優美子先輩、しばくって…。

優美子先輩まで学校から処分されちゃいますよ。

あんな奴らのために優美子先輩に迷惑かけるわけにもいかないし、ここはとりあえず穏便に。

 

「まぁまぁ。ほっとけばいーですよ。優美子先輩が怒ってくれるだけで充分ですし。もう行きましょう?」

 

優美子先輩の体を押しながら、とりあえず教室をでようとしたけど、また教室の入り口で止まってしまう。

 

「あんたも甘いし。あんさぁ、こいつになんかするならあーしを敵に回すつもりでしな。」

 

優美子先輩は全員に聞こえるようにそう言うと、ようやく教室から一緒にでてくれた。

ケバ子達も怖かったんだろうけど、私も結構怖かったです。

先輩が優美子先輩の事を獄炎の女王とか言ってる意味がよく分かった気がします。

私がお礼を言うと、優美子先輩がなぜここに来たのか教えてくれた。

 

「ヒキオから聞いたし。朝あいつんとこ行ったら、いろはがこれ以上余計なことされないようにって頼まれたんよ。」

 

だから、お礼なら先輩に言え。そう言って優美子先輩は歩いていってしまった。

でも途中で止まって、次はちゃんと相談しろって言ってくれた。

なんなんですかねー、私の先輩達はみんなズルい…。

先輩はもちろん、優美子先輩なんて昨日までの印象最悪だったはずなのに。

なんでそんな後輩のためにここまでしてくれるんですか。

しかも、私も授業終わってすぐ教室でようとしたのに、それより早く1年の教室に来るって、私のためにどれだけ急いでくれたんですか。

 

遠くなる優美子先輩の背中にもう一度頭を下げて、私は先輩のところに急ぐ。

先輩にも、ちゃんとお礼を言わなきゃ。

 

「せんぱい!」

 

いつも通りベストプレイスに座る先輩を見つけた瞬間、我慢できなくて叫んでしまった。

先輩が少しびっくりして周囲を見渡してるけど、もうそんな事も気にならなかった。

 

「せんぱい。優美子先輩から聞きました。正直びっくりしたけど、ありがとうございました!」

 

先輩は、「なんでバラしてんだよ」とか言ってるけど、誰かが話さなきゃ優美子先輩がこんなに早く知るわけないでしょ!

そうなると結衣先輩か先輩しかいないんだから、結局すぐばれますって。

 

「とりあえず釘を刺した程度だ。短期間でまた何かされてもムカつくし。三浦もそれ聞いてかなり怒ってくれてたからな。」

 

そのあと先輩は、勝手に話したことを謝ってくれて、俺自身はなにもしてないって言ってたけど、私のためにしてくれたことが本当に嬉しかった。

先輩はお願いしたというより、変な事されてなければいいけどって言っただけらしい。

それを聞いた優美子先輩が、あーしが行くわって言ってくれたみたい。

先輩もこんな早く動くとおもってなかったみたい。

 

その後、昨日考え込んでいた理由を先輩が話してくれた。

雪ノ下先輩が、同じやり方をとる必要はないって言ったらしく、部活も自由参加になったって。

しかも、先輩が部室をでるときに、馴れ合いなんてみたいな事も言われたと。

1つ目は確実に修学旅行のことが尾を引いてると思うんだけど。

うーん、結衣先輩のことがあるのは分かるけど、なんで先輩は修学旅行のことを話さないんだろ…。

先輩が話さなくても、優美子先輩はグループで話すって言ってたんだから、結衣先輩が知るのも時間の問題なのに。

 

「せんぱい。それって確実に修学旅行の件が尾を引いてますよね?どうして話さないんですか?私にも話してくれたのに。」

 

「今さら話したってただの言い訳だろ。それに理由があったにせよ、俺がやったことは変わらないし、なくなるわけじゃない。あいつらだってそうだろ。」

 

確かに結衣先輩達が嫌だと思ったその時の気持ちが変わるわけじゃないし、なくなるわけじゃない。

でも、知らなければずっとそのままだと思う。

私だって、先輩が海老名先輩に告白をしたって聞いた時の気持ちがなくなったわけじゃない。

今は事実を知ったからこそ、本当じゃなくて良かったって思えるだけで。

私だって先輩が話してくれなければ、ずっと海老名先輩のことを好きだって勘違いしてたし、邪魔になると思って先輩から距離を置いたかもしれない。

先輩が話さなきゃ、結衣先輩達もずっと先輩の気持ち分かんないままじゃん。

 

「せんぱい。確かになくならないかもしれないけど、知らないままはもっと辛いと思うんです。わたしだってせんぱいが話してくれなかったら今ここにいなかったかもしれません。」

 

私がそう言うと、先輩は黙ってしまった。

私が口を出していい問題じゃないのかもしれないし、先輩が伝えても2人は怒ったままかもしれない。

なんで言ってくれなかったんだ、なんで1人でしたんだって言われるかもしれない。

それでも……。

 

「あっ!」

 

そこまで考えて、私の中で1つの仮説が生まれた。

今回、雪ノ下先輩が別々の方法でやるって言ったのには、そういう意味も含まれてるのかもしれない。

全てを分かっているわけじゃないけど、何かしら理由があって先輩があんなことをしたのをちゃんと分かってる。

分かっているからこそ、先輩がなにも相談してくれずに1人でやってしまうなら、馴れ合わずに別々でやればいいと。

そんなやり方には協力しないし、自分達も勝手にやるからって感じなのかな。

雪ノ下先輩が、嘘告白のあと先輩に言った「やり方が嫌い」という言葉には、先輩のやり方だけじゃなくて、なんでも1人でやってしまう事も含まれてるんじゃないかな。

 

もしこの仮説が合ってるなら、やっぱり先輩はちゃんと話すべきだと思う。

特に結衣先輩は、見たくないものを目の前で見せられたわけだし、その理由を知るべきだと思う。

私も昨日は、これ以上結衣先輩に傷付いて欲しくなくて、嘘を言って遠ざけたけどそれは間違いだったのかも。

結衣先輩が傷付いたとしても、悲しんだとしても、ちゃんと知らせるべきだったのかもしれない。

「せんぱい。放課後、遅れて部室にきてくれませんか。勝手に話したりはしないので。それは約束します。少し確かめたいことがあるんです。」

 

私が聞いたって、雪ノ下先輩が正直に話してくれるとは限らないし、なんでお前が知ってるんだって言われるかもしれない。

結衣先輩だって、関係ない私には言いたくないかもしれない。

お前には関係ないから首突っ込んでくるなって思われるかもしれない。

でも、このまま3人別々でやってたら奉仕部が崩れてしまう気がする。

それに、少ししか知らないけど、私が見た奉仕部は馴れ合いなんかじゃなかったと思う。

だから、雪ノ下先輩と結衣先輩のホントの気持ちが知りたい。

ホントにずっと別々でやっていって、先輩がいなくなっても2人は平気なのか。

まあ、いなくなるなんて先輩は一言も言ってないけど。

 

「ホントだな?あいつらに話したらさすがに俺も怒るぞ。」

 

大丈夫です。それは絶対に約束しますから。

それに、どんな理由があったのかは、ちゃんと先輩の口から伝えてほしいし。

 

「はい。20分くらいでいいので。お願いします!」

 

先輩は、渋々了承してくれた。

何度も、約束だからな、マジで頼むぞ、って言ってたけど。

よし!そうと決まれば、私自身、心の準備をしっかりしておかなきゃ。

その後はご飯を食べて、少しだけ話したら昼休みは終わった。

 

教室に戻った私に、朝みたいに不快な視線はなくて、先輩と優美子先輩に心から感謝した。

あいつらにとっては、先生なんかより優美子先輩のほうがよっぽど怖いのかもしれない。

クラスの男子達が、俺らも相談のるからとか言ってきたけど、あんたらこの前は何も言わなかったじゃん。

だから、「大丈夫。少し考えたいことがあるから」と適当に流した。

 

今はあんた達に構ってる余裕なんて一切ないから。

放課後までに色々と覚悟も決めないといけないし、どつ話すかとか考えたい。

最近、授業マジメに受けてないなぁ。

 

相手は、あの氷の女王・雪ノ下先輩と恋のライバル・結衣先輩。

こんな事するのが正しいかは分からないし、私の依頼のために動いてくれている2人には、ホントに失礼かもしれない。

もしかしたら、このせいで私の依頼なんて放棄されることになるかもしれない。

その時は、自業自得だと諦めて生徒会長になろう。

 

そうなってでも私は2人の本音を知りたいし、今までの奉仕部に戻ってほしいと思う。

 

 

先輩は2人を信頼しているようにも見えたし、2人も先輩を信頼していたと思う。

だからこそ文化祭のときも、相模先輩を探しに行くのを先輩に任せたんだと思う。

運営委員のときも、3人ともすごく真剣で一生懸命だった。

だからこそ、私なんかいなくてもって思ったし、羨ましいとも思った。

 

授業も終わり、私は奉仕部へ向かって歩く。

私の理想は、雪ノ下先輩の本心を聞いて、結衣先輩の気持ちを確かめて、その上でしっかり先輩と向き合ってもらって、私が見た元の奉仕部に戻ってもらうこと。

 

奉仕部のドアの前で1度大きく息を吐く。

怒られる覚悟も、ウザがられる覚悟も、最悪2人に嫌われる覚悟もできた。

そのせいで、生徒会長をやることになっても後悔しない。

 

ドアをノックして、雪ノ下先輩の声が聞こえて、ゆっくりと室内に入る。

おそらく私のために用意された椅子に腰掛けて、しっかりと2人を見据えた。

 

「昨日の依頼の話の前に、もう1つ依頼があります。少しだけ私と話す時間をください。生徒会のことは関係ありません。先輩と修学旅行についてです。受けていただけますか?」

 

2人は驚いた顔で私を見ていて、受けてもらえるかどうかは正直わからない。

あなたたちは、私のために色々考えてくれているのに、本当にごめんなさい。

 

「なぜあなたがその話をしたいのか、私には分からないし、それを私たちが話すことに意味があるとは思えないのだけれど。」

 

「逃げるんですか?そうやって子供みたいに拗ねたままでずっといるつもりですか?」

 

雪ノ下先輩、本当にごめんなさい。

でも、あなたにはしっかりと向き合ってほしいんです。

私のワガママで、私の身勝手で、全て私の事情だとしても、先輩と向き合ってほしいんです。

 

「っ…。あなたに何が分かるの?その場で直接見たわけでもないのに、あなたに私達の気持ちなんて分からないわ。」

 

本当にその通りだと思う。

昨日も思ったけど、私がその場にいたらきっと泣き喚いただろうし、どれだけ傷付いたかも想像するのも嫌だ。

でも…、

 

「この際なのではっきり言っておきますね。特に結衣先輩はちゃんと聞いてほしいです。私は、比企谷八幡先輩のことが好きです。異性として。誰よりも好きです。」

 

ごめんなさい、結衣先輩。

本当に優しいあなたにそんな顔をさせて、本当にごめんなさい。

 

「目の前で見せられたお二人の気持ちを分かるなんて言いません。でも、お二人がこのまま先輩に何も伝えず、そうやって怒っているだけなら、先輩は私がもらいます。ここには先輩をいさせません。生徒会長になって、生徒会に先輩を引き抜かせてもらいます。」

 

きっと、というか絶対そんなことにはならないけど、先輩がここを捨ててしまうことなんて絶対にないけど、お二人にしっかりと話してもらうためにも、この嘘は有効だと思う。

 

「あたしは…、あたしはヤダ!このままヒッキーとお別れなんて絶対ヤダ!いくらいろはちゃんでもそんな事させない!」

 

私だってそんなつもりないので、そんなに心配しなくて大丈夫ですよ、結衣先輩。

結衣先輩の気持ちは聞けたし、あとは雪ノ下先輩。

 

「雪ノ下先輩はきっと分かってますよね?先輩があんな事したのにはわけがあるって。ちゃんと言わない先輩が1番悪いです。でも、どうして聞いてあげないんですか?」

 

先輩が自分から伝えることはありえない。

伝えるつもりもないって先輩は言ってたし。

もしかしたら、伝えてそれでも否定されたらって、怖い気持ちもあるのかもしれない。

雪ノ下先輩達が、気づかなかった自分達を責めてしまうかもっていう気持ちもあるのかもしれない。

 

「それは…。」

 

もう一押しだと思う。

もう何度思ったか分からないけど、雪ノ下先輩達には本当に悪い事をしてる。

 

「嫌でしたか?相談してほしかったですか?そんな事を思う自分が許せないから馴れ合いだって切り捨てるんですか?それは結局また先輩に同じ事をさせるだけなんじゃないですか?」

 

私は、奉仕部の関係を馴れ合いだなんて思わないし、そんな風に思ってほしくない。

あなた達がこれまでを否定したら、羨ましいとか思った私はどうなるんですか?

運営委員で、先輩がすごく信頼してる感じで雪ノ下先輩を見たとき、私なんていらないって思った私がバカみたいじゃないですか。

 

「……。一色さん、あなたの言う通りかもしれない。彼が理由もなくそんな事しないのは分かっていた。でも…」

 

それから、雪ノ下先輩はゆっくりだけど、全て話してくれた。

 

彼の告白を見たとき、なぜか胸が痛くて、苦しくて、どうしても受け入れられなかった。

理由があったのなら、どうして話してくれなかったのか、どうして相談してくれなかったのか、どうして頼ってくれなかったのか。

彼と私のなかで、唯一同じだと思っていたものも、否定されたような気がした。

彼を信じて任せたくせに、そんな事を思っている自分が嫌で、そんな自分も、そんな事をした比企谷君も認めたくなくて、だったらもう一緒にやる必要はないと思った。

馴れ合いだったと思ってしまえば、比企谷君に対して勝手な期待を押し付けたりしなくてすむと思った。

それなのに、未だに彼から歩み寄ってくれるんじゃないかって期待してしまう私がいる。

私と由比ヶ浜さんの気持ちを汲んで、歩み寄って欲しいと思ってしまう私がいる。

こんなに勝手で、弱くなった自分が嫌で仕方ない。

 

最後まで雪ノ下先輩はしっかりと話してくれた。

正直な気持ちを、素直に打ち明けてくれた。

きっとそれは、雪ノ下先輩にとってすごく辛いことで、嫌なことだったと思う。

 

「ありがとうございます、雪ノ下先輩。結衣先輩はどうですか?やっぱり先輩のこと許せませんか?」

 

答えはわかってるんだけど、どうしてももう一度言ってもらわなきゃいけない。

 

「あたしも自分勝手だったの。自分の気持ちも伝えないくせにヒッキーには、人の気持ち考えろなんて言っちゃった。だからね、あたしはヒッキーに謝りたい。」

 

結衣先輩が先輩に対して、そう思うことも言ってしまうことも私は何1つ間違ってないと思います。

結衣先輩、素直に気持ちを教えてくれてありがとうございます。

 

「雪ノ下先輩、結衣先輩。失礼なことばっかり言って本当にごめんなさい。…先輩!あとはあなた次第です。お二人にここまで言わせてそのままなんてことはないですよね?」

 

途中から扉の前で動けずにいる先輩がいることに私は気付いていた。

私は入り口に近づき、扉を開けて先輩を室内に引きずりこんだ。

ちゃんと向き合って、ちゃんと話してください。

2人ともすごくびっくりした顔で先輩を見てる。

 

「あとは3人でどうぞ。わたしの依頼はどうにでもなりますから。早く私の見てきた奉仕部に戻ってくださいね!」

 

これでいい。3人がちゃんと向き合うためには私は邪魔になるだろうし。

私の気持ちもしっかり2人に伝えたし、失礼な態度で生意気なことばっかり言った私は、もうここに居るべきじゃない。

 

先輩を離して、優しく先輩の背中を押して、そのまま出口に向かう。

これで先輩の居場所は壊れないと思うし、もう先輩も逃がしてもらえないだろう。

 

それなのに、私の理想通りのはずなのに、なんでこんなに苦しいのかなぁ…。

ここは私の居場所でもないのに、どうしてこんなに疎外感を感じるんだろう。

ホント、ワガママで自分勝手で…

 

「待ちなさい!私達のためにここまでしておいて、今度はあなたが逃げるつもり?比企谷君みたいな事言ってないで座りなさい。」

 

「そうだよ!ヒッキーみたいだよ?いろはちゃん!ほらあたしいろはちゃんにもお礼言いたいから早く!」

 

やめてよ…。私はここにはいれない、いたらいけないんです。

どうしてあんな失礼な態度しかとらなかった私を引きとめようとするんですか。

どうしてこんな私にお礼を言いたいなんて言えるんですか。

 

「そうだな。後は俺に押し付けて逃げようなんて許さん。あと、お前ら俺みたいとか言うな。俺はもっとうまく逃げる。」

 

そのまま、先輩に手を掴まれて座らされてしまった。

手を掴む時に先輩が小さな声で、「ぷっちゃけ怖いからいてくれ」とか言うから、少し笑ってしまった。

ふふっ。しょうがない先輩ですねー、ホントに。

確かに全部聞いたあとの雪ノ下先輩とか、想像しただけで震えるくらいには怖い。

 

「先に言っとくぞ。まぁ、その、俺のやったことでお前らに嫌な思いさせて悪かった。ただ、由比ヶ浜にとっては嫌な話になるかもしれない。それでも本当に知りたいか?」

 

結衣先輩は、先輩があんな事した理由が自分のいるグループを壊さないためで、それは依頼のようなものだったって知る事になる…。

先輩はあの人達のためじゃないって言っても、そうとしか思えないだろうし。

 

「うん。ちゃんと知りたい。ヒッキーがなんであんな事したのか。どんな事を思ってたのか。あたしにも教えてほしい。」

 

本当に結衣先輩は真っ直ぐで素敵な人だと思う。

それに私が全部知ってる事も分かっていて、その事で先輩のことも、私のことも責めたりしない。

そういう事言われるのも覚悟してきたのに、この人達はそんな事全然言わなかった。

 

「1つ約束してほしい。俺の話を聞いても、誰かを責めたりしないでほしい。大丈夫だと思うが、どっかのバカが前科持ちでな。」

 

うぐ…。それを今ここで言いますか?先輩。

先輩に謝らせたことと、優美子先輩に言われた事はちゃんと反省してますー。

それ以外は私は悪くないと思うし、優美子先輩だって分かってくれましたしー。

 

「だったらそんな前置きは不要よ。誰かさんがしっかり怒ってくれたのでしょう?」

 

そう言って、雪ノ下先輩が優しい顔で私を見てくるので、慌てて顔を伏せる。

私じゃないかもしれないじゃないですか!そんな決め付けはいけないと思います!

結衣先輩までこっちを見なくていいですから、先輩をしっかり見つめててください。

 

「お前が1番怖いんだけどな…。」

 

そうですよー!むしろ葉山先輩達は、私だったことに感謝したほうがいいと思います。

雪ノ下先輩が最初に知ってたら、再起不能になるくらい言われてたと思います。

まぁ、先輩のことをちゃんと理解してる雪ノ下先輩だからこそ、私と違ってそんなことはしないのかもしれませんけど。

 

「はぁ。マジで頼むぞ。お前らが知らないとこだけ話すから、聞きたいことは後から聞いてくれ。」

 

先輩は、私にしてくれた話から戸部先輩のとことか、奉仕部のとことか抜いて、本当に簡単に説明してる。

ちょっと、先輩、雪ノ下先輩の纏う空気がヤバいです!

それに結衣先輩の顔がどんどん悲しそうな表情になっていく。

先輩が話し終わる頃には、結衣先輩はもう泣きそうになっていたし、雪ノ下先輩の表情は、どんな事を思っているのか分からない。

 

「1ついいかしら?どうしてあなたがそんな上辺だけのものを守るようなことをしたの?私にとっても、あなたにとっても、そんなものに意味なんてないと思っていたはずでしょう?」

 

「確かにそうだ。あいつらの関係もそれで壊れるならその程度だろうと思った。お前達とのことも、これで壊れるならしょうがないと思っていたし、いつか壊れるものが早くなっただけだと思ってた。」

 

そんな…。本当にそんなこと思ってるんですか?

本当にこれで壊れても、先輩は後悔なんてしないんですか?

 

「だったら…。そう思っていたならなぜ?」

 

「それでも、あいつの、あいつらの気持ちを、失ったものは元には戻らないっていう思いを、失いたくないっていう思いを、俺は否定できなかった。」

 

先輩も失いたくないって思えるものがあるってことですよね。

それはこの奉仕部のことじゃないんですか?

私はこの前先輩が話してくれたときから、勝手にそうだと思ってたけど、違うんですか?

先輩にとって、ここは大事な場所じゃないの?

 

「だから、葉山とは違って何も持ってない俺にしかできないことだと思った。俺には大事なものなんてないと思ってたから。何でも大事にして動けないあいつとは違うと思ってた。」

 

雪ノ下先輩も結衣先輩も口をはさまずに先輩の言う事をちゃんと聞いてる。

ねぇ、先輩。これだけ先輩の言う事を聞いて、理解しようと思ってくれている人達がいるんですよ?

本当に何も持ってないって、大事なものなんてないって思ってるなら、さすがに許せませんよ。

 

「でも、違ったんだ。盗み聞きになっちまったけど、お前らの気持ちを聞いて嬉しかったんだ。その、大事にしたいって思った。」

 

それだけ言って、先輩は俯いて黙ってしまったけど、充分伝わったと思いますよ。

言葉たらずなところが先輩らしくて、途中で終わっちゃうところが先輩らしくて、だからこそきっと2人にも届いたと思います。

 

それから、結衣先輩が先輩に正直にその時思った事を伝えて、謝った。

雪ノ下先輩はずっと黙っていて、結衣先輩と先輩のやり取りをじっと見ていた。

やっぱり、私は余計な事をしたんだろうか。

 

「一色さん。あなたは何がしたかったの?」

 

「雪ノ下先輩がどういう気持ちだったのか知りたかったんです。そして、先輩と向き合ってほしかったんです。余計なお世話かもしれませんけど、このまま奉仕部が壊れるのはイヤでした。」

 

これだけは、正直に答えないといけないと思った。

確かにさっきはあんな風に言ってくれたけど、雪ノ下先輩からすれば挑発みたいな感じで気持ちを探られて、それを先輩に聞かれて、いい気分なわけがない。

 

「そう。本当に余計なお世話ね。」

 

っ……。

本当にごめんなさい。

こういう風に思われるのを覚悟してきたんだから、私がショックを受ける資格なんてないのに、想像以上にキツイ。

 

「それでもっと壊れたらどうするつもりだったのかしら。」

 

確かにそうかもしれない。そうなる可能性だって充分あったと思う。

だから先輩も結衣先輩も、雪ノ下先輩を止めようとしないでください。

これは私が、しっかりとそこまで考えなかった私が、ちゃんと受け止めないといけないことだ。

 

「だから、次は最初から理由をちゃんと言いなさい。今回は私も意地を張ってしまったけれど。」

 

「え?」

 

「そんな風に思ってくれるあなたに、あんな事何度も言いたくないもの。」

 

雪ノ下先輩が何を言ったのか、何度も何度も頭の中で繰り返してようやく理解した。

 

「ご、こめんなざーい。」

 

ちゃんと覚悟してたのに、結局私は泣いてしまって、雪ノ下先輩がそれにビックリして焦り出して。

先輩と結衣先輩が泣かしたーと言って雪ノ下先輩で遊び始めた。

 

「ひ、比企谷君。あなたの後輩でしょう。慰めなさい。」

 

その雪ノ下先輩の言葉で、先輩が隣に来て頭を撫でてくれて、それを見た結衣先輩がズルいと叫んで。

そんな先輩達の雰囲気が、私の知ってる奉仕部に戻ったみたいで、それが嬉しくてもっと泣いてしまった。

 

「比企谷君。そういう理由があったにせよ、私はやっぱりあなたのやり方を認めたくない。この前の件も、今回のあなたの案も結局あなただけが泥を被るようなやり方は、私は認めない。」

 

やっぱり雪ノ下先輩も先輩には傷付いてほしくないのかな。

 

「そうか…。」

 

「文化祭のときに何も言わなかったくせに、今更だと思われるかもしれないけれど、奉仕部は3人で奉仕部でしょう?あなただけが泥を被る必要なんてないじゃない。」

 

雪ノ下先輩…。

私は先輩のやり方を否定したくないけど、確かに奉仕部として受けた依頼で先輩だけが傷付いたりする方法は、他の2人からしたら嫌で当然かもしれない。

 

「昨日は馴れ合いだなんて言ってしまったけれど、私はあなた達とちゃんと話して、回避や解消ではなく解決に向かって行動したい。」

 

回避や解消、今回は、戸部先輩が告白することでグループが壊れるのを先輩のやり方で回避したって事かな。

そう考えると、私の依頼は回避も解消もできない気がするし、本当にめんどくさい依頼だよね…。

 

「…昨日の案はやらねぇよ。一色の件は、生徒会選挙だけじゃなくて、その後の事も考えて動きたいんだ。結局こいつがまた嫌がらせされるなんて状況にはしたくない。」

 

先輩はその後の事まで考えてくれてるんだ…。

今までの私の自業自得だから、先輩がそんなことまで頭を悩ませなくてもいいのに。

 

「そうなると、一色さん自身がうかつに手を出せないような存在になるしかないんじゃないかしら。」

 

いやいや、急に雪ノ下先輩や優美子先輩、葉山先輩みたいになれってことですよね?

私にはそんなことできないし、なりたくてもなれないですよ!

 

「だよな。あとは一色の努力次第にもなるが…。一色。本気で生徒会長がんばってみないか?」

 

そういう事ですか…。

生徒会長になれば、ケバ子達も簡単に手出しできなくなるのかな?

でも誰からも認められなければ、結局バカにされて、笑い者になっちゃうんじゃないかな…。

 

「正直わたしにできるとは思えないです。昨日も考えてみましたけど、やっぱり荷が重いというか…。ちゃんとできる自信がないです。」

 

「まぁそうだろうな。もしお前が生徒会長になるなら、俺も生徒会に入って全力でサポートしてやる。それでも自信ないか?」

 

先輩が生徒会に入ってサポート…?

はぁ⁉︎聞き間違いですよね?何わけわかんない事言い出すんですか、この先輩は…。

 

「待ってよヒッキー!さっき大事にしたいって言ってくれたじゃん!奉仕部はどうでもいいの?」

 

そうですよ!ここは先輩にとって大事にしたい場所なんですよね?

先輩が私のために言ってくれてるのだとしても、それだけは認められません。

雪ノ下先輩も何か言ってやってくださいよー!なんでそんな冷静に黙ってるんですか!

 

「あー、違うんだ。奉仕部はやめない。むしろ、これも奉仕部としての行動と言ってもいい。あれだよ、魚の取り方を近くで教えるんだよ。」

 

雪ノ下先輩はなるほどとか言ってるけど、それで本当にいいんですか?

それに元々私だけの問題なのに、先輩にそこまでしてもらうのはホントに心苦しい。

 

「じゃあヒッキーは、奉仕部と生徒会を両方ともやるってこと?いろはちゃんに奉仕部の部員として色々と教えてあげるってこと?」

 

「まぁ俺が教えてやれることなんてそんなにないけどな。雪ノ下は部長だし、由比ヶ浜はアホだし、俺が一番適任じゃないか?」

 

結衣先輩は、アホってなんだし!って言ってるけど、先輩から色々と話を聞いてる私も否定できません。

でも、ホントにここまでしてもらっていいのかな?

 

「私が生徒会長になれば全て解決するのではなくて?」

 

えぇー⁉︎それもそれでものすごく申し訳ないんですけど…!

確かに雪ノ下先輩ならすごい生徒会長になるだろうけど、先輩の言うとおり雪ノ下先輩は部長だし…。

 

「悪いがそれは魚の取り方じゃないだろ。それにお前が生徒会長になれば、奉仕部はどうなる?アホヶ浜と俺だぞ?どうにかなると思うか?」

 

なんでそんなにどうにかならない方向に自信満々なんですか!

もう少し、かっこいい方向に自信もちましょうよ…。先輩らしいけど…。

とりあえずこの、誰が生徒会にみたいな状況は止めないと。

 

「あ、あの!私なんかのために奉仕部の誰かが、わざわざ生徒会に入る必要なんてないですよ!そこまで迷惑かけられません!」

 

「まず私なんかって考えを捨てろ。迷惑っていう考えもだ。奉仕部の理念に沿ってるだけだ。だから気にすんな。」

 

気にすんなって、気にするに決まってるでしょうが!

 

「正直に言えば、せんぱいが一緒にいてくれるならがんばれると思います。でも…。」

 

先輩はそんな考え捨てろって言うけど、やっぱり私なんかのために先輩に迷惑かけたくない。

生徒会の仕事が忙しければ、奉仕部に顔を出す回数も減っちゃうし、それでまた3人の間に何かあれば…。

 

「一色さん。あなたが納得できないのであれば、こちらから条件をつけるわ。比企谷君をサポートにつけるかわりに、自分の意思で、誰からも認められる生徒会長になりなさい。」

 

ちゃんと私の意思で生徒会長になって、みんなから認められるような生徒会長になる…。

本当にできるかな。本当に認めてもらえるかな。

 

「あなたが自ら変わって、生徒会長として、人間として成長する。そしてそれを比企谷君がサポートする。もしそうなれば、奉仕部にとっても理想通りの結果になるわ。」

 

私だけじゃなく、先輩達にとってもそれが良いことになる。

でも、それで先輩との時間が減っちゃうんですよ?お二人は本当にいいんですか?

 

「あなたはきっとまた奉仕部の事を考えてくれているのでしょう?そんなに心配だったらあなたも奉仕部に入ればいいじゃない。」

 

はい?雪ノ下先輩、私はサッカー部のマネージャーだし、さすがに生徒会長、マネージャー、奉仕部は無理ですよ。

 

「もちろんあなたがマネージャーをやっているのは体育祭のときから知っているわ。でもあの男に直接怒ったのでしょう?それがサッカー部にもし広まれば、あなたは相当いずらくなると思うわ。」

 

確かに相手はキャプテンだし、もしその事が広まれば、次はサッカー部の他のマネージャーから嫌がらせされるかもしれない。

他の部員達も態度が変わっちゃうかもしれないし。

それは分かるし、正直私なんかを雪ノ下先輩が奉仕部に誘ってくれるのは嬉しいけど…。

 

「そんな状況になってもあの男はおそらく何もできない。そんな所にあなたをおいておきたくない。あんな男には任せられないというのが本音よ。」

 

雪ノ下先輩は私の事を心配してくれてるだけじゃなくて、後輩としても大事に思ってくれてるのかな?

かなり個人的な好き嫌いも含まれてる気もするけど、ここまで言ってもらえるのは、正直嬉しい。

それに生徒会で先輩と一緒、生徒会がない時は奉仕部でこの3人と一緒ってなにそれ素敵。

んーでも…、

 

「すごく魅力的だしありがたいんですけど、他の先輩方にもお世話になったし、その事については少し考えさせて下さい。せんぱい、生徒会の件、ホントによろしいんですか?」

 

本当の本当に迷惑じゃないんですか?本当に無理してませんか?

 

「おう。雪ノ下と由比ヶ浜が賛成してくれるならだけどな。」

 

雪ノ下先輩は納得してる感じだけど、結衣先輩は嫌だと思う。

それだけ私といる時間が増えて、先輩と結衣先輩が一緒にいる時間は減っちゃうんだから。

 

「むぅ。ゆきのんが賛成しちゃったら、あたし何も言えないし。ヒッキーはホントに奉仕部やめないよね?ヒマな時は来てくれるんだよね?」

 

「ああ。それに俺自身、生徒会で少しやりたい事もある。」

 

先輩が生徒会でやりたい事ってなんだろう。

はっ、まさか全ての自販機にマッ缶を入れるとか、昼休みのあとにお昼寝の時間を作るとかじゃないですよね?

そんな下らないこと、私が生徒会長として絶対にさせませんから。

 

「お前らがどう思ってるか知らんが、今回の件は悪質すぎるだろ。イジメに近い行動。選挙の私物化。そんな奴らに指導だけって甘すぎると思わないか?」

 

雪ノ下先輩も結衣先輩もこの意見には同意らしく、2人とも確かにと言って頷いた。

まぁ、イジメかどうかはともかく、生徒会選挙を嫌がらせに使うっていう意味では確かに甘いのかな。

 

「今後こんな事は絶対にさせない。今年こういう事があった事が知れれば、来年も起きるかもしれない。来年は小町もいるんだ。だから今のうちに変えられるものは変える。」

 

小町に限ってこんな事にはならないけど、って言葉で締めくくるのはいいですが、こんな事になってる後輩が隣にいるんですが…。

でも確かに今のままの選挙規約なら、こういう事が今後も起こってもされた人は泣き寝入りするしかない。

それは今回された私も許せない。

 

「せんぱい!わたしもそれがんばります。今まで生徒会長になってもやりたい事ないって思ってたけど、こんな事2度とないようにしたいです。文化祭後のせんぱいみたいな状況も許せないです。」

 

生徒会長になってやりたい事が見つかったし、変えたい事も見つかった。

めぐり先輩にも、選挙規約を変えることが可能なのかとか色々相談してみよう。

 

「一色さん。そういう事なら私もいつでも協力するわ。私だって過去に何もなかったわけではないもの。」

 

「あたしも手伝う!あたしもちょっと前までのヒッキーの状況は嫌だった。何もできなかったけど…。だから今度は私もがんばる!」

 

雪ノ下先輩は綺麗だし、頭もすごくいいらしいからやっかみとか酷かったんだろうな。

やっぱり結衣先輩もそうですよね、先輩の状況こそイジメに近かったはずなのに、学校は何もしなかったし、知ってすらいないのかもしれない。

 

「奉仕部の皆さん、さっきまでの依頼は取り消して、新たに依頼させて下さい。私は自分の意思で生徒会長になります。先輩はこんな私が一人前になれるように助けて下さい。雪ノ下先輩と結衣先輩もどうしようもない時は助けて下さい。お願いします!」

 

私は立ち上がって、3人に頭を下げて返事を待つ。

こんな依頼していいのか分からないけど、甘えてるのかもしれないけど、ちゃんと口に出してお願いしたかった。

 

「2人とも聞くまでもないわね。一色さん。奉仕部としても、先輩としてもあなたを精一杯サポートするわ。無理せず、遠慮せずに頼ること。いいわね?」

 

「はいっ!ありがとうございます!よろしくお願いします!」

 

私はもう一度しっかりと3人に頭を下げた。

自分の意思で生徒会長になって、この人達が私に生徒会長を薦めたことを誇れるような人間になろう。

3人が卒業するときに、生徒会長が私でよかったって言ってもらえるようにがんばろう。

 

「まずは推薦人集めだな。嫌がらせの推薦人名簿なんざ捨てて、ちゃんとお前を推薦してくれる人を集めようぜ。」

 

確かに、ちゃんと私の意思で生徒会長になるんだから、あんな推薦人名簿はイヤだ。

私が生徒会長をやることに、ホントに賛成してくれる人から名前を書いてもらいたい。

集め直すことに意味はないかもしれないけど、これが私の生徒会長への第一歩だ。

 

「はい!もう意味ないかもしれないけど、わたしもそうしたいです。ちゃんと自分で集めたいです。あの、最初に3人に書いてほしいんですけど、いいですか?」

 

3人とも快く了承してくれたし、あとは優美子先輩とめぐり先輩にも絶対に書いてほしい。

藤沢さんは立候補するとして、書いてもらっていいんだろうか。

立候補する人は書いちゃいけないとかじゃなければ、藤沢さんにも絶対に書いてもらおう。

これから、演説の内容とか色々しなきゃいけないけど、目標のためにもがんばろう。

 

 

とらあえず、偉大な人の言葉を借りて、しっかりと自分の中でも決意表明しとこう。

 

 

生徒会長に…、私はなる!!!

 

 

 

 

 

 





まず、読んでいただきありがとうございました。
言いたいことは色々あると思いますが、僕のメンタルが壊れないていどにお願いします。

ご報告なのですが、これからも少し投稿する間隔が空くと思います。
年休消化しろって言うから休んでたら、いつまで休んでんだとか言ってくる上司が悪いんです。
2週間休むつもりで、その間にいけるとこまでいこうと思ってたのですが、阻止されてしまいました。

続きを読みたいと言って下さる方々には申し訳ありません。
時間がかかっても、少しずつでも投稿していこうと思ってますので、更新されてるときは、読んでいただけると嬉しいです。


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