捻くれた先輩   作:超素人

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前話でたくさんのご意見をいただき、本当にありがとうございます。
ご意見のあとに、励ましの言葉もたくさんあり、すごく嬉しかったです。

今回、めぐりとの絡みが多すぎて全く進まないというか、多分時間にして3時間くらいしか進んでません。

あまり進まない物語ではありますが、こらからもよろしくお願いします。






12. 終わらない1日。

奉仕部の部室を出て、先輩から連絡がくるまでどこで待とうか考えながら歩く。

先輩は自転車通学だから、駐輪場で待とうかとも思ったけど、絶対寒いよね…。

そんなことを考えていると、めぐり先輩が生徒会室に誘ってくれた。

 

「私も少しだけ一色さんとお話したいことがあるんだ。」

 

めぐり先輩のその言葉に頷き、先輩に生徒会室で待っていることを一応ラインで送っておいた。

話に夢中になって先輩からの連絡に気付かなかったら、先輩は先に帰っちゃいそうだし。

 

めぐり先輩と生徒会室に向かいながら、廊下の窓から外を眺め、忙しなく動くサッカー部を見つける。

目的は葉山先輩だったけど、戸部先輩をはじめ、色んな先輩達が優しくしてくれたし、可愛いがってくれた。

他のマネージャーよりはしっかり仕事してたし、そんなところを見てくれてたのかな。

 

『きっと生徒会長になってしまえば、今までのようにサッカー部に顔を出すこともなくなる。』

 

さっきまでは、いつ辞めてもいいなんて思ってたし、先輩と仲良くなってからは、いる意味あるのかなんて考えてたけど、そう考えると少し寂しかった。

自分の気持ちがコロコロ変わることが嫌で、先輩への気持ちもすぐ変わってしまうのかと不安になる。

そんな思いがそのまま顔にでていたのか、めぐり先輩がその場で俯いてしまった。

 

「一色さんごめんね。私達のせいで…。」

 

こちらこそ、勘違いさせてごめんなさい。

めぐり先輩に生徒会選挙のことじゃないと伝え、切り替えるためにこちらから話を振る。

 

「めぐり先輩は、生徒会長をやっていて良かったって思いますか?」

 

さっきまでの申し訳なさそうな顔を一変させて、とても嬉しそうな顔で頷いてくれた。

 

私はどうなんだろう…。

このまま私以外の候補者も現れず、生徒会長になったとして、めぐり先輩みたいに後悔しないような日々を送れるのかな…。

ただでさえ、私の意志とは全く関係ない立候補で、本当に私が相応しいから推薦されたわけでもない。

嫌々仕事をする私しか思い浮かばない。

 

「めぐり先輩がそう思えた理由とかって聞いてもいいですか?」

 

「私が一色さんと話したい事もそんな感じだから、生徒会室で落ち着いて話そう?もうすぐ着くし。」

 

確かに歩きながら話すことでもないよね。

さっきもお邪魔した生徒会室が見えてきて、生徒会長としてここに通う自分を想像する。

うん、似合わないなぁ…。

少し笑ってしまった私を、めぐり先輩が不思議そうな顔で見てる。

たまに先輩も1人でニヤけてるけど、少しずつ似てきてるんじゃないかと思い、少しショックだった。

だってその時の先輩の顔は正直キモいもん!

 

めぐり先輩と生徒会室に入ると、残っていた役員さんが私に頭を下げてきた。

立候補のことをとても気にしてるみたい。

確かに役員さんにも責任があるかもだけど、悪いのは私を嵌めた連中だし、あまり気にしてほしくない。

 

「ホントに気にしないで下さい。めぐり先輩も謝りすぎってくらい謝ってくれたし。多分、1番ショックを受けてたのもめぐり先輩なので…。」

 

そう言っても頭を上げてくれず私が困っていると、今度はめぐり先輩が役員さんに優しく語りかける。

 

「これは生徒会長の私の責任なんだから、そんなに落ち込まないで。いつも助けてくれてるんだから、こういう時くらい私がちゃんとするよ。一色さんも困ってるよ?ほら、今日はもういいから。」

 

ようやく役員さんは顔を上げて、今度はめぐり先輩に頭を下げ、肩を落としながら帰って行った。

ようやくめぐり先輩と2人になり、話が始まると思っていたらまた頭を下げられた。

もう、どんだけ謝るんですか。

 

「一色さん。ありがとね。一色さんは怒ってもいい立場なのに、優しい言葉かけてくれて。」

 

頭を下げてくれたのは、さっきの私の言葉に対するお礼だった。

私も慌ててめぐり先輩の責任でもない事を伝えて、本題に入る。

 

「それで、めぐり先輩のお話っていうのは…。」

 

めぐり先輩もようやく話を始める気になったらしく、椅子に座るよう促された。

 

「体育祭運営委員のとき、一色さんと初めて話した日に私が相模さんに言った事って覚えてるかな?」

 

その事は、私のなかでも凄く印象的だったからよく覚えてる。

あの話を聞いて、私のめぐり先輩の印象も少し変わったから。

私は頷いて先を促す。

 

「あの時言ったことは全部ホントの事でね。みんながいなければ私は何もできなかったの。今でも生徒会長として相応しいかって言われるとそんな事ないと思う。」

 

そんな事ない。

めぐり先輩に憧れてる後輩もいっぱいいると思うし、本当に相応しくなければ、役員さん達もあれだけめぐり先輩を慕ってないと思う。

 

「一色さんからしたら、嫌がらせを受けたせいでこんな事になってすごく嫌だと思う。やりたくないって思う気持ちも分かる。だからね、一色さん自身の気持ちで、一色さんの意思で考えてみてくれないかな。誰かに嫌がらせでやらされるんじゃなくて、最初から考えてみてほしいの。」

 

つまり、私を嵌めた子達のことなんて考えずに、私自身が生徒会長をやるか考えてほしいってことだよね…。

 

「あと、さっきの一色さんの質問の答えだけど、最初はね、私でよかったのかなぁなんて思ってたんだ。でも、行事があるたびに色んな人からお疲れ様とか、楽しかったとか言ってもらえて、すごく嬉しかったの。だから、そう言ってもらえるたびに生徒会長になってよかったって思うんだ。」

 

キツい時もあったけどね…、そう言って話し終えためぐり先輩はとても綺麗で本当に素敵だった。

 

でも、私が同じようにできる?

確かに、めぐり先輩の言ったことを信じれば、めぐり先輩は仕事はできなかったのかもしれない。

でも、めぐり先輩の魅力みたいなのは、そういうところじゃないって私でもわかる。

役員の人達に慕われて、生徒達からも認められて、私にはそんな魅力ないし、誰も認めてくれないかもしれない。

仕事も全然自信ないし。

 

「わたしは、雪ノ下先輩みたいに優秀じゃないし、めぐり先輩みたいに誰からも好かれる人間じゃないです。見た目で男子が寄ってくるだけで。慕って助けてくれる人もいないです。」

 

「雪ノ下さんくらい優秀な人なんてそんなにいないよ。それに私だって誰からも好かれるわけじゃないし。比企谷君のこともそう思う?本気で一色さんの事心配してたと思うけど。」

 

確かに先輩は心配してくれるし、私が困ってたら助けてくれると思う。

でも、私は先輩に迷惑をかけたくない。

一度甘えてしまえば、ずっと先輩に甘えそうだし。

 

「ホントはせんぱいには心配も迷惑もかけたくないんです。せんぱいは優しいから、色んな人のためにがんばるんです。本人は絶対に否定して自分のためって言いますけど。」

 

仕事だから、俺しかできないから、自分のためだから、そう言ってたくさんの人を助けてしまう先輩。

助けてるつもりなんて先輩にないのかもしれないけど、文実にしろ、相模先輩にしろ、葉山先輩のグループにしろ、私が知ってるだけでもこんなにたくさんの人が助けられてる。

 

だから、私は先輩を助けられるようになりたい。

どうしようもないときに、話を聞いて一緒に悩んで、先輩が頼ってくれるようになりたい。

私が生徒会長になって、先輩を頼るのは意味がない。

 

「一色さんは比企谷君のことちゃんとわかってるんだね。私は分かってあげられなかったから。ヒドい事も言っちゃったんだ。なんにも知らなかったくせに。」

 

そう言って少し寂しそうに笑っためぐり先輩。

文化祭のときのことだろうけど、私が知れたのは藤沢さんのおかげと、あとは偶然だ。

何も知らなかったらめぐり先輩と同じだったと思うし、噂を信じて馬鹿にしてたかもしれない。

 

「せんぱいの話はやめましょう。可愛い女の子が2人でせんぱいの話なんてしてたら、せんぱいのクシャミが止まらなくなります。」

 

先輩の話は申し訳ないけど切らせてもらおう。

めぐり先輩がもし、先輩も生徒会にとか言いだしたら、私はその想像で止まらなくなりそうだし。

それにめぐり先輩まで先輩に好意を持たれてしまったら、私じゃ太刀打ちできなくなる。

悪く思ってるわけじゃなさそうだからいいのだ。

 

めぐり先輩も笑いながら同意してくれて、生徒会長の話に戻そうとしたとき、生徒会室のドアがノックされた。

めぐり先輩が返事をして、入ってきたのは先輩だった。

 

「あ、比企谷君。一色さん借りててごめんね。一色さんも急がなくていいから少しだけ考えてみてほしいな。また今度ゆっくり話そうね。」

 

先輩も軽く返事だけして私が立ち上がるのを待っていたので、カバンを持って席を立った。

 

「はい!一度しっかり考えてみます。今日はずっと付き合ってくれてありがとうございました。」

 

めぐり先輩に頭を下げて、先輩と一緒に生徒会室をでる。

あ、先輩もちゃんとお疲れっすとか言ってました。

 

 

生徒会室をでて、先輩と2人で廊下を歩きながら、めぐり先輩と話していたことを考えようとして、頭を振った。

生徒会長の件は後から考えることにして、今は先輩と一緒に帰ることをちゃんと楽しもう。

だって私がしてみたかったことだし、今回が初めてだし、悩みながら一緒にいるなんてもったいない。

 

私はそう思っているのに、先輩は難しい顔して何かをずっと考え込んでるみたい。

むぅーーー。頬を膨らませて先輩を見つめていると、それにようやく気付いた先輩が気まずそうに目を反らす。

ちがーう!気付いたんなら何か声かけてくださいよ!なんで目を反らすんですか!

 

「せんぱい。わたしはせんぱいと一緒に帰れることがとても嬉しいのです。それなのにせんぱいはずっと難しい顔をしてやがるのです。そんな思いを込めて見てたら目を反らされたのです。せめて、なんでもいいのでお話しませんか?」

 

先輩は、あーとかすまんとか言ってますけど、いや分かってるんですよ?先輩が自分から話題を振ったりするのが苦手だって事は。

でもね、先輩。難しい顔でずっと悩んでるのであれば、私はそういう事を打ち明けてほしいんです。

そういう事を聞いて、あなたと一緒に悩みたいんです。

 

「まぁ、お前が聞きたいことは後から話すわ。そういや、城廻先輩とは何話してたんだ?」

 

えへ。先輩もちゃんと話してくれるみたいだし嬉しいな。

私が、めぐり先輩と話してたことを、先輩の話だけ抜いて話すと先輩はまた考え込んじゃった。

まぁ、しょうがないよね。多分今日待っててくれって先輩が言ったのも生徒会選挙の話だろうし。

そのことを考えてくれるのは私のためだし、私が文句言っちゃダメだよね。

だからこそ何もない状態で、純粋に一緒に帰りたかったなぁ。

 

 

靴箱まで来て、先輩と一旦別れ靴を履き替える。

先輩は自転車を取ってくるらしく、駐輪場のほうへ歩いていったので、私は校門のとこで先輩を待つことにする。

 

今日は色んな事があったなぁ。

校門に寄りかかりながら、今日あったことを思い出す。

1日にどれだけイベントを突っ込む気なのかと、さすがに文句を言いたくなるくらいには濃い1日だった。

そして、そんな1日の最後は先輩との下校って、なんか謎の力でも働いてるんじゃないの?

これで今日まだ月曜日ですからね。

明日からが怖いと思うくらいには、今日はヤバかった。

 

「寒い中待たせて悪かったな。」

 

私が明日からの日々に恐怖を抱いていると、自転車を押した先輩がやってきて、手を差しだした。

マジですか?まだ手を繋いで歩くのは早い気が…。

でもせっかく先輩から誘ってくれてるし…。

すごく勇気を出して先輩の手を掴むと、なぜか先輩が固まってしまった。

ちょっと!自分から誘ってきといてなに固まってるんですか!

 

「い、いや、あのな、荷物をな…。」

 

な、なんでそんな紛らわしい事するんですか?バカですか?そーですか!バカは私です。

もぉーーーー、恥ずかしーよーーーーー。

さっと手を離してカバンを差し出すと、先輩が受け取って自転車のカゴに入れてくれた。

い、行くか、なんて言って歩きだした先輩もすごく恥ずかしそうで、赤くなった耳を見ながら後をついていく。

きっと私の顔も赤いけど…。

 

お互いにさっきの事を気にしすぎて、会話も全くないまま少し薄暗くなった通学路を歩いていく。

 

結局会話もないなら、思い切って手を繋いだまま帰ればよかったなぁなんて思って先輩を見るけど、先輩の両手はしっかりと自転車のハンドルを掴んでいてちょっとガッカリ。

男の子と手を繋いだのは初めてじゃないのに、さっきはドキドキが凄くてちょっとビックリした。

 

先輩に並ぶと横顔が見えて、一緒に帰っている事を実感して少し嬉しくなる。

そんな嬉しさがそのまま体を上がってきて、クスッと笑ってしまう。

先輩がこっちを見るけど、何もないと首を振って少し足早に先輩の前にでる。

 

「あー、一色。今日の朝小町とケンカしてな…。正直家に居辛いんだが、どっか寄ってってもいいか?」

 

先輩が、あの先輩が、自分から寄り道をお誘いしてくるなんて…。

昼休みですら、早く帰りたいなんて言ってるあの先輩が…。

私は立ち止まって先輩の顔をマジマジと見つめる。

うん。ちょっと暗いけど本物の先輩だ。

 

「せんぱい熱あります?あの帰りたい・働きたくない・めんどくさいの先輩ですよ?いくら小町ちゃんとケンカしたからって…。」

 

何だよその三原則とか言いながら先輩が歩きだそうとしたので、先輩のブレザーを掴み、阻止。

 

「どこに行きますか?もうあれですね!これ制服デートですね!やだなーわたし照れちゃいますー♪」

 

「あざとい。本当は小町以外乗せたくないんだが、遅くなるし後ろ乗れ。千葉でいいだろ。」

 

キャー!どうしちゃったの⁉︎先輩!

もう付き合っちゃいますか?そうしましょう。

自転車で2人乗りまでしてくれるなんて、やっぱり今日はイベント盛りだくさんの日ですね!

先輩が自転車に跨ったのを見て、私も後ろに座る。

どうしよう、どこに掴まればいいの?

後ろからギューってしたら先輩事故りそうだけど、正直私はしてみたい。

むむむ、せっかくだしやっちゃえ!せーの、ギュー!

 

「お、おい!バカ!肩とかでいーだろ⁉︎」

 

その後もヤメろとか離せとか言ってるけど、ぜったいに離しませんから。

恥ずかしいしすごいドキドキするけど、幸せなんだもん。

はぁー、先輩の背中と先輩の匂いー。

めちゃくちゃ変態ぽいけど、私これ大丈夫ですかね。

 

ようやく諦めて自転車を漕ぎだした先輩は、小声でこいつは小町とか言ってますけど、聞こえてますからね?

 

「いろはですよ?せんぱい。」

 

先輩の後ろから耳元でそう囁くと、ひっと声を上げて自転車を止めてしまった。

もう、早くしないとどんどん暗くなって時間も遅くなるじゃないですかー!

先輩のお腹で組んだ手を離し、早く早くと背中を叩くとまた諦めて自転車を漕ぎだした。

 

 

さすがに小町ちゃんと2人乗りして慣れてるのか、中々に快適な道中、先輩の背中に軽く頭突きしたり、おでこでぐりぐりしてみたり。

2人乗りと先輩を堪能していると、自転車が止まる。

 

「ここからはさすがに降りたほうがいいな。」

 

先輩を堪能しすぎて全く気付かなかったけど、いつの間にか千葉についていた。

自転車を降りて、周りを見渡せば、もう完全に日が暮れて夜の街になってる。

さーて、どこに行くのかなぁーなんて考えていると、先輩が映画館とかがある方向に向かって歩き出した。

 

「話したい事もあるし、ドーナツ屋でいいか?コーヒーもお代わりできるし。」

 

 

 

やってきましたドーナツ屋さん。

店内に入り、先輩がドーナツ2つとカフェオレ、私はドーナツ1つとホットコーヒー。

2階に上がり、先輩がカウンター席に腰を下ろす。

なんで2人で来てるのに、わざわざカウンター席をチョイスするんだこの先輩は…。

そんなに私と向かい合って座るのが恥ずかしいんですか?

それとも私がいること忘れてます?

 

私が心の中で先輩にグチグチ言ってると、1人の女性と目が合い、なんでこっち見てんだろと思っていると、その女性はヘッドホンを外し、手をヒラヒラさせながら話しかけてきた。

 

「珍しい顔がいるって思ったら、比企谷君浮気はダメだぞー。」

 

えぇー!!この美女はまさかの先輩のお知り合いですか?

そう思って先輩を見ても、先輩は何故か少し嫌そうな顔で固まっていた。

ちょっと待って!あの美女さっき浮気って言った?

なんなんですか!海老名先輩の次は年上美女ですか!

 

「せーんぱい?この美女とはどういった関係ですか?しかも浮気ってなんですか?」

 

自分で想定してたよりも低い声が出て、ちょっと自分でもビックリしてしまった。

先輩はビクっとして、おそるおそる私に顔を向ける。

そーんな怯えたようなような顔しなくてもいーじゃないですかー。

 

「はぁ…。どーも。一色、この人は雪ノ下の姉の雪ノ下陽乃さん。」

 

雪ノ下先輩のお姉さん?え?えぇーー⁉︎

先輩はそれだけ言って、雪ノ下先輩のお姉さんから離れた席に座ってしまった。

 

「へぇー。先輩ってことは、比企谷君の後輩?初めましてだね。雪乃ちゃんのお姉ちゃんの雪ノ下陽乃でーす。よろしくね。」

 

少し雪ノ下先輩に似てる?のかな。

へぇーの部分で上から下まで品定めされているような目で見られたけど、先輩この人もしかして怖い人ですか?

 

「あ、1年の一色いろはです。よろしくです。」

 

それだけ言って私も逃げようとしたけど、雪ノ下さんはトレイを持って先輩の隣に座ってしまった。そこ私の席!

先輩が色々と言われてるけど、座る場所がない私はどうしようもないんだけど。

 

「はぁー。雪ノ下さん、一色が困ってるんで1つ席ずれてもらっていいですか。」

 

しょうがないなーとか言ってるけど、先輩と元々来てたのは私ですから。

なんで私が邪魔者みたいになってんの?

でも、雪ノ下先輩とは性格が大分違うというか、何ていうんだろう、髪型は違うけど、明るくなった雪ノ下先輩?

一応横にズレてくれたので、お礼を言って席に着いた。

並びは陽乃さん、先輩、私。

てゆーか結局3人で並んで座るならテーブル席に移動しません?

 

「で?比企谷君はこーんな可愛い後輩とデート?」

 

「そんなわけないでしょ。依頼のことで少し話したいことがあっただけです。雪ノ下さんこそこんなとこで何を?」

 

いや、確かにそうかもしれませんけど、そんなにはっきり否定しなくてもいーじゃないですかー!

はぁー、先輩は女心がわかってません。

 

「ふーん。依頼ねぇ。私は友達とご飯行くまでの時間つぶし。」

 

やっぱ怖い人ですよね、先輩。

探るような、全て見透かされてるような視線を向けられて、私は顔を反らした。

 

先輩が、友達くるなら別の場所で食べますのでと言っても、まだ時間あるからと離してくれない。

これ結局依頼のことも、先輩が後から話してくれるって言ったことも話せなくないですか?

そんなことを考えながら陽乃さんを盗み見ると、ちょうど先輩が耳元で何か囁かれてるとこだった。

むー、近いですよ。

 

結局私は喋ることもできず、先輩と陽乃さんが話してるのをボーっと聞いてるだけで、ここに来るまで楽しかったのになぁと少し後悔していた。

あの時、ドーナツ屋じゃなくてスタバにしましょうって先輩に提案していれば、こんな事にはならなかったのに。

 

「えーと何色ちゃんだっけ?その子の依頼の話はしなくていいの?比企谷君。」

 

わざと言ってるのがわかって少しカチンときたので、先輩が話す前に会話に割り込んだ。

 

「一色ですー。一色いろはですー。部外者には聞かせられないので雪ノ下さんがいなくなったら話しますー!妹さんはわたしの名前を覚えてくれてたみたいですけど、お姉さんは聞いても覚えられないんですねー?」

 

先輩が、なにしてんだみたいな顔でこっちを見てるけど、人の名前で遊んじゃいけないんですー!

しかも、覚えているくせにワザと間違うなんて葉山先輩と一緒じゃないですか。

 

「ふーん。一色ちゃんね。なかなか面白い子だねー。ねぇ比企谷君、この子私がもらっていい?」

 

そうやってすぐ先輩と話して、私を除け者にしようとするのは許せません。

 

「べー、わたしはせんぱいのものですー。雪ノ下さんのものにはなりませーん。」

 

先輩が俺のじゃないしとか、俺挟んでケンカしないでとか言ってるけど、気にしない。

雪ノ下さんも何が面白かったのかクスクス笑ってる。

先輩が私と陽乃さんにコーヒーのお代わりを聞いて、通りかかった店員さんにカップを渡してくれた。

あぁー普通にカップ渡したけど、先輩に店変えましょうって言えばよかった。

 

その後も雪ノ下さんが先輩に絡んで、私が横から口をはさんで、先輩が真ん中で嫌そうな顔して。

陽乃さんは私が何か言うたびにクスクス笑ってるし、絶対に私と先輩で遊んでるでしょこの人。

 

「ねぇ、比企谷君。雪乃ちゃんは元気?」

 

そこからは雪ノ下先輩の話になったから、私は口をはさめずにまたコーヒーをちびちび飲んで会話が終わるのを待つ。

もぉー、私達はホントに話したい事があるんだから、陽乃さんは速く友達のところに行ってくださいよー。

修学旅行がどうとか、お土産がどうとか、え?雪ノ下先輩お土産をわざわざ宅配便で送ったんですか?

雪ノ下先輩は実家に住んでるんじゃないんですかね?

 

「あのー雪ノ下先輩って一緒に住んでないんですか?」

 

なんと、雪ノ下先輩は高校生で既に1人暮らしらしい。

ん?て事は文実のとき、先輩は雪ノ下先輩の家というより、1人暮らしの部屋にお見舞いに行ったの?

ま、まぁ1人で行ったわけじゃないんだから、何も間違いなんて起きてないよね。

 

雪ノ下先輩の話が終わり、次はなんですかーと思ってたら生徒会選挙の話になっていて、めぐり先輩の名前もでてきた。

そーいえば、運営委員のときにめぐり先輩が上の代がすごかったみたいな話して、はるさんとか言ってたような。

 

「あのーめぐり先輩が言うはるさんって、もしかして雪ノ下さんのことですか?」

 

「へー、めぐりの事も知ってるんだ。そうだよー。一色ちゃんも名前で呼んでよー。んー、はるちゃんって呼ぶ?」

 

えー。だって先輩が雪ノ下さんって呼ぶし、はるのさんって呼ぶのは怖かったし、はるちゃんとか呼んだらどこかに埋められそうなんですけど…。

めぐり先輩がはるさん。だったら…

 

「じゃあ、はるさん先輩でいーですか?」

 

「ふふ。それでいーよ。あーあ、めぐりと一色ちゃんが同学年ならもう少し面白くなってたのになぁ。」

 

えぇー、私は絶対に嫌ですけど。だってめぐり先輩と同い年だと、先輩の後輩になれないじゃないですかー。

先輩は、天然と養殖が一緒に生徒会とか言ってるけど、最近あなたの前くらいでしか猫被ってませんから。

 

「雪ノ下さん。城廻先輩の次の生徒会長が一色って言ったらどう思いますか?」

 

「ん?いいんじゃない?面白そうだし。一色ちゃんが立候補してるの?」

 

そこから先輩は、私が立候補させられたのをはるさん先輩に話してしまった。

いや、絶対面白がっていじってきそうなんですけど、先輩が対処してくださいよ?

 

「へー。総武でもそんな頭悪い事する子達がいるんだね。で?一色ちゃんはどうしたいの?」

 

はるさん先輩の前半の声がすごく冷たくて怖かったし、絶対にいじられると思ってたから、少し驚いた。

 

「正直やりたくないんですけど、めぐり先輩からも嫌がらせとか関係なく考えてみてほしいって言われて…。わたしなんかに務まるとは思えないんですけど…。」

 

「そっか。めぐりは雪乃ちゃんに生徒会長を頼むと思ってたんだけどなー。一色ちゃん、生徒会長やってみたら?めぐりは嘘付けるような子じゃないから、本気で言ってくれてると思うよ。」

 

めぐり先輩が本気で言ってくれてるのは、私もちゃんと分かってるんだけど、正直やっていける自信がない。

私が返答に困って黙っていると、

 

「ま、わたしはやらなかったけどね。面倒なわりに地味だし。」

 

はるさん先輩…。ちょっといい人なのかと思ってた私の気持ちを返してください。

しかも面倒はまだいいけど、地味って…。

 

「じゃーなんで勧めたんですかー!はるさん先輩の一言ですごくやる気なくなったじゃないですかー。」

 

はるさん先輩はまたクスクス笑いながら、本音がでちゃったとか言ってる。

あぁ…、本音なんですね。

 

「雪乃ちゃんは生徒会長やらないんだね。…つまんないなぁ。」

 

最後の言葉がすごく冷たくて、私と、多分先輩もゾッとした。

そんな私達も見ながら、クスっと笑うはるさん先輩が怖くて、さっきの自分の態度を思い出して、もう一度ゾッとした。

私は今日家に帰れるのか不安になっていると、次は別の方向から先輩を呼ぶ声が聞こえた。

 

 

 

ほんっとに、今日なんなの?厄日?おかしくない?

神様はどうしても私と先輩に依頼の話をさせたくないらしい。

 

「………折本。」

 

 

 

あー、厄日が終わらない。

 

 

 

 

 




ということで、そこで切るの?と思われるかもしれませんが、このまま折本さんまで終わらせると、二万字超えそうな感じだったので、この辺で勘弁してください。

次話が、どこまで進んでくれるか分かりませんが、またよろしくお願いします。

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