捻くれた先輩   作:超素人

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葉山と海老名さんに対する、アンチ(多分)が含まれます。

ただ、タイトル詐欺です。
暴走と言っても、この辺が限界かなと思います。

あと、いろはの思う戸部・奉仕部に関しては、僕の個人的な意見がほとんどですので、ご了承ください。

甘いと思われるかもしれませんが、よろしくお願いします。





10. 勝手な後輩。 暴走編

 

 

目を開けたら、少し薄暗かった。

あーなんだ、夢だったのか。

目をこすると、涙が手についた。

現実でも泣いてんじゃん。ダサっ。

 

スマホを探して、時間を確認する。

夕方の5時すぎ。

おそるおそる履歴を確認する。

はは、夢じゃなかったかー。

そっか…。

泣き疲れて寝ちゃっただけだったんだ。

 

結局、自分勝手な私も現実で。

先輩が、海老名先輩に告白したのも現実で。

修学旅行前から全部夢だったらよかったのに。

先輩、本当にごめんなさい。

 

でも、キツイなぁ。

こんなので実感させられるんだ。

これは、恋だったんだ…。

ちゃんと、先輩のこと好きだったんだ…。

でも、もう叶わないんだ…。

もう、また涙でてきた。

 

できれば、ちゃんと告白して終わりたい。

好きな人がいるのに迷惑だよね。

でも、戸部先輩の告白を邪魔して告白するなんて、先輩も熱いとこあるんですね。

せめて、別々に告って戸部先輩にもチャンスをあげて下さいよ。

ちょっとだけ、戸部先輩が可哀想。

 

自分勝手なのは分かってるんだけど。

なんで、教えてくれなかったんですか?

好きな人がいるってだけでも、言ってくれればよかったのに。

こんな事なら、ちゃんと聞いとけばよかった。

先輩は好きな人いるんですか?って。

奉仕部のどちらかだと思ってた。

 

なんで、海老名先輩なんだろう。

確かに綺麗な人だと思う。

でも、先輩とそんなに接点あったのかな?

先輩の電話帳にもいなかった。

一目惚れとかだったりするのかな。

 

私は出会うのが遅かったのかな。

でも、先輩は私みたいなの苦手って言ってたし。

早く出会ってても、結果は変わらないのかも。

体育祭のときも、絶対有り得ないって言われたし。

あれは、本音だったんだ。

脈アリとか言っちゃって、ホント恥ずかしい。

 

海老名先輩が羨ましい。

勘違いしないって言ってた先輩が好きになるってことは、本気で好きなんだろう。

修学旅行では、先輩はフラれたみたいだけど、これで海老名先輩も意識したりするのかな。

もし、付き合ったら昼休みも会えないや。

そうやって先輩との時間がなくなっていくんだろうか。

 

ダメだ。先輩の事ばっかり。

同じような事が、頭を周って。

先輩に話を聞きたい。

どんなとこを好きになったとか。

いつから好きだったとか。

でも、きっと耐えられない。

聞いてるうちに泣いちゃうんだろうな。

 

ラインで聞けば、泣いてもバレないかな。

でも、先輩もフラれたばっかでしんどいよね。

しんどい時、頼って欲しいんだけどな。

でも、これはまた私の勝手な感情だ。

私が友達って思っても、先輩はきっとそうじゃないし。

 

はぁー。なんなんだろ。

さっきから、自分で考えて、自分で否定して。

部屋に閉じこもってるからかな。

少し、散歩でもしよう。

 

家をでて、少し遠くの自販機を目指す。

もう、辺りは暗くなってて。

少しだけ、星がでてる。

 

先輩としたいことがいっぱいあった。

デートにも行きたかった。

学校から一緒に帰りたかった。

できないわけじゃない。

でも、好きな人がいるなら、邪魔したくない。

 

自販機に辿りついて、お金を入れる。

目についたのは、マッ缶。

たまには、いいかな。

先輩のを奪って1度だけ飲んだ事がある。

その時は、飲めないって思った。

 

マッ缶を持って、近くの公園まで歩く。

ベンチに座って口をつける。

 

「甘いなあ…。」

 

結局外に出ても、先輩のことばっかり。

飲み物も、先輩の好きなもの。

初恋の味はマッ缶。なんて。

自覚した瞬間、失恋したけど。

失恋って、辛いんだ。

 

『人生は苦いから、コーヒーくらい甘くていい…』

 

迷言だと思ってたのに。

こんな時は同意しちゃう。

今は、この甘さが心地いい。

 

そろそろ帰ろう。

少し、気分転換になったし。

 

明日のお昼、どうしようかな。

先輩がフラれて本気で凹んでたら。

話くらい聞いてあげたい。

少しでも、慰めてあげたい。

私自身、先輩に会いたい。

電話して直接聞いてみようかな。

先輩はでてくれるんだろうか。

 

帰ってきた私は、ベッドの上でスマホを睨む。

あとは、発信を押すだけ。

がんばれ、私。あ、押しちゃった。

 

「あ、あの、せんぱいこんばんは。今大丈夫ですか?」

 

やばい。なんか緊張する。

気持ちを自覚すると、こんなに違うんだ。

 

『ああ。どうした?』

 

「せんぱい。わたしでよければいつでも話聞きますから。ちゃんとした恋愛経験ないんでアドバイスとか下手かもしれませんけど、がんばりますから、辛いときは話してください。」

 

ああー、私急に何言ってんの。

ちょっと、落ち着いて、ホントに。

 

『お、おう。別に恋愛相談とか求めてないんだが。』

 

「なんでですか!一回の告白で諦めるんですか?あれだけ黒歴史とか言ってたせんぱいが告白したってことは、本気で好きなんですよね?諦めていいんですか?」

 

『あーお前からしたらそうなるんだな。まぁ、そうだよな。戸部から聞いたのか?』

 

ん?お前からしたらってどういうこと?

 

「はい。勝手なことしてごめんなさい。正直、せんぱいに好きな人がいたのはショックでした。せめて、それだけでも教えてほしかったです。」

 

『やっぱりお前にはちゃんと話すべきなんだろうな。なぁ一色。話の続きは明日でもいいか?俺も少し時間がほしい。』

 

ちゃんと話すってどういうこと?

海老名先輩の話かな。

 

「わたしはいいですけど。あのせんぱい?無理して明日じゃなくてもいいんですよ?わたしなんて後回しでいいですから、自分の心配をしてください。」

 

『あー、そうじゃないんだ。こんなに早くお前が知るとは思ってなかったんだ。なんてゆーか、心の準備みたいもんだ。』

 

先輩が心の準備するの?

私のほうが心折れそうだけど。

 

「少しよく分かりませんけど、明日話してくれるんですよね?わたしも準備しときます。じゃぁ、せんぱい。おやすみなさい。」

 

『おう。またな。』

 

ふぅー。何か緊張で疲れたよー。

明日、何を聞かされるんだろう。

もしかして、思い切り突き放される?

明日そんなことされたら、私死ぬかも。

先輩、ホントに手加減してくださいね?

 

 

 

 

 

翌日

 

 

あー、ヤバイ。

この授業終わったら、もう昼休みだよ。

先輩に会えるー。でも怖い。

もう嬉しさと怖さで既に死にそう。

心臓の音がぱねえです。

 

あー終わっちゃった。

と、とりあえず飲み物を買いに行きましょう。

先輩はパンだから、ちょうどいいはず。

 

今日もマッ缶にしましょう。

甘すぎてご飯には合わないけど。

どんな話なのかなー。不安だ。

 

あーヤバイ。着いちゃう。

あ、先輩だー!

 

「せんぱーい!お久しぶりです。」

 

そのまま抱きついてしまおうかと思った。

でも、先輩の顔を見たら、できなかった。

なんていうんだろう。

生気がないっていうか、いつも以上にやる気なさそうっていうか。

こんな先輩初めて見た。

噂が酷かった時期でも、ここまでじゃなかった。

やっぱり、相当辛いんだよね。

告白してない私が辛いんだもん。

 

「おう。久しぶり。これ、おみやげな。とりあえず飯食ってから話そうぜ。」

 

先輩が買ってきてくれたのは、ある有名キャラのご当地ストラップだった。

お礼を言って受け取る。

嬉しい。ありがとうございます、先輩。

先輩がパンを食べ始めたので、私もお弁当を食べる。

ヤバイ。隣に先輩がいる。

ちょっと、それだけでドキドキする。

 

色んな意味で緊張しながらのご飯。

先輩は先に食べ終わって待ってくれてる。

その間もずっと元気がない。

私も食べ終わって、話が始まる。

あー、怖いよ。

 

「一色、途中で言いたい事があっても、とりあえず最後まで聞いてほしい。全部話し終わって、お前が2度と話したくないと思ったらそのまま戻ってもらってかまわない。何か言わないと気がすまないときは、罵倒でもなんでもしてくれ。」

 

なんですか、それ。

本当に怖いよ。今から何言われるの?

 

「わかりました。とりあえず最後まで聞きます。」

 

「お前も知ってると思うが、戸部の依頼は『告白のサポート』だった。まぁ、その依頼を受けたわけだが、海老名さんは脈がありそうには見えない。フラれた後は、自分達でなんとかするって言ってたし、サポートだけならそんな難しい依頼じゃない。フラれても何の責任もないしな。」

 

一旦切って、先輩は飲み物に口をつける。

ここまでは、私も知ってる話だ。

 

「修学旅行の前日、今度は海老名さんが部室にきた。まぁ、いつも通り腐ってて、その時は何が言いたいか分からなかった。だから、俺らもあんまり気にしてなかったんだ。そこからは、戸部の依頼のために由比ヶ浜があれやこれや考えて、雪ノ下も色々場所を調べたりしてた。」

 

ここまでは、何もおかしいところはない。

むしろ、そんな依頼でもしっかりやるんだって思った。

 

「そんな中で、少しおかしい動きをする奴がいたり、三浦に怒られたり。で、3日目、多分お前にライン送る前か後に海老名さんが接触してきた。この時に海老名さんの言いたい事が、やっと分かった。まぁ簡単にいえば、告白の未然防止。戸部の雰囲気やらで気付いてたんだろーな。葉山にも相談してたみたいだったし。」

 

ここまで聞いて、ようやく分かった。

なんで先輩が海老名先輩に告白したのか。

 

「一応、告白の場所も決まって、あとは移動していざ告白だったんだが、さっきのおかしい動きの奴と、話す事になってな。そいつも何も変えたくないと。戸部が告白してフラれれば、下手をすればグループ自体なくなる。きっと、そいつも海老名さんもそれをわかってた。」

 

だからなに?

先輩にそんなグループ関係ないじゃん。

 

「もう、お前も分かってると思う。戸部がフラれず、あのグループを変えない。それができるのは、あいつらのその願いを知っていたのは俺だけだった。だから、俺が海老名さんにフラれることで、その答えを戸部に聞かせて告白をやめさせた。もう少し、聞いてくれ。」

 

握りしめてる手が痛い。

先輩早くして下さい。

 

「俺は、理解できたんだ。あいつらの変えたくないっていう思いも。失いたくないっていう思いも。全員が真剣に悩んでた。だから、やった。やり方は最低だと思う。でも、それが1番効率がよかった。お前にも嫌な思いをさせたと思う。だから、本当にすまん。これで終わりだ。」

 

少しだけ聞きたいことがある。

まだ抑えて。落ち着いて。

 

「質問があります。奉仕部の2人はそれを見てたんですか?見てたなら2人の反応は?」

 

「確かに見てたが、あいつらは戸部の依頼しか知らない。雪ノ下は、俺のやり方が嫌い。由比ヶ浜は、もっと人の気持ちを考えて、だ。」

 

そりゃ、目の前で見せられたら2人ともそうなる。

私もいて何も知らなければ、泣き喚いたかも。

 

「次です。私に話したのは何故ですか?」

 

「……方法を決めたとき、お前が伝えてくれた事を踏みにじる事になると思った。だから、一色がこの事を知ったらいずれ話そうと思ってた。」

 

それは、分かってくれるんですね。

だったら、結衣先輩達の気持ちも分かってあげて下さい。

 

「最後です。本当に、先輩は海老名先輩の事を好きでもなんでもないんですね?」

 

「……ああ。」

 

「せんぱい。こっち向いて下さい。」

 

私は先輩の頬を叩いた。

 

「先輩言ってましたよね?ドッキリやら嘘告白やらこれまでされてきたって。確かにそれしか方法がなかったかもしれない。でも、それはやっちゃいけないと思います。されてきた先輩だからこそ、やってほしくなかったです。」

 

先輩は、自分だけ嫌われて終わるならいいと思ってる。

わざと名前を言わなかった人もいる。

多分、私がサッカー部のマネージャーだから。

私があの時憧れはあるとか言ったからかな。

 

「比企谷先輩。サイッテーです。さようなら。」

 

痛い。先輩を叩いた手も心も。

ごめんなさい。先輩。

嫌いになってくれて構いません。

だから、今はそこを動かないで下さい。

 

時間はあと15分。

きっと先輩はこんな事望んでない。

ううん。誰も望んでないかもしれない。

あの人達に、そんなつもりないかもしれない。

 

それでも、今回は私は許せない。

 

 

足早に廊下を歩く。

先輩。叩いてごめんなさい。

ひどい事言ってごめんなさい。

傷付けてごめんなさい。

また、余計で勝手な事します。ごめんなさい。

 

見えた。

 

 

私は、2ーFのドアを思い切り開けた。

 

「失礼しまーす。」

 

急に凄い勢いで開けられたドアを見て、皆固まってる。

何度か見にきたことあるけど、いつも通り教室の後方で固まってるグループ。

 

「あ、結衣先輩もいたんですね。ちょうどよかったです。平塚先生が呼んでましたよ。なんか話があるって。」

 

「でも、いろはちゃん「お願いします。結衣先輩。私が平塚先生に怒られちゃうんで、早めにお願いします。」

 

「う、うん。分かった。行ってくる。」

 

結衣先輩ごめんなさい。

戻るまでに終わらせますから。

 

「三浦先輩と戸部先輩は絶対に口を出さないで下さい。悪いですけど2人に用はありまけん。文句なら後から聞きますのでお願いします。」

 

戸部先輩は、ある意味1番の被害者だろう。

そして、三浦先輩はどうなんだろう。

 

「とりあえず、2人に聞きますね?自分達のグループの事を先輩に押し付けたのはなんでですか?なんで先輩を利用したんですか?」

 

「い、いろは、何を…。」

 

「わかりますよね。修学旅行の話です。あと、いろはって呼ばないでください。気持ちわるいです。」

 

「…すまない。一色の言う先輩っていうのは?」

 

「わかってますよね?名前はここでは出しません。ここは、あの人の敵ばっかりでしょ?葉山先輩達が押し付けた相手なんて1人しかいないでしょ?」

 

「待ってくれ!俺は、俺達はあいつに押し付けたわけじゃないんだ!」

 

そーですね。きっと先輩もそう言ってくれますよ。

でも、これは私から見てどう思うかなんですよ。

 

「葉山先輩。黙ってましたけど、文化祭2日目の屋上、私はあの場にいました。先輩に『どうしてそんなやり方しか』みたいなこと言ってましたよね?わかってたんですよね?あの人が土壇場でどういうやり方をするか。」

 

「それはっ…。」

 

「はい。分かってたんですね。海老名先輩、あの人だけに頼んだのはなんでですか?結衣先輩でもいーでしょ?相手に伝えてもらえばよかったじゃないですか。貴女も、分かってたんですよね?先輩ならきっと何とかしてくれるって。」

 

「彼なら分かってくれると思ったから…。」

 

「葉山先輩のグループは先輩をなんだと思ってるんですか?名前もまともに呼ばないくせに。何かあっても先輩を助けようともしないくせに。そのくせ自分達のグループのことはあの人にやらせて。」

 

「本当に押し付けるつもりはなかったんだ。確かにあいつのやり方は知ってた。でも、あのやり方は間違ってる。」

 

「じゃぁ、葉山先輩ならどーしたんですか?戸部先輩からも海老名先輩からも頼まれて、何もできずに無様に先輩に丸投げした葉山先輩のやり方はどんなやり方ですか?」

 

「っ……それは。」

 

「あんさーあんたさっきから、何様のつもりだし。」

 

「三浦先輩。もし、葉山先輩が他のグループを守るために利用されたらどうしますか?怒りませんか?」

 

「怒るに決まってんじゃん!それがなんだし。」

 

「私が今ここにいるのは、それと一緒です。大好きな人が利用されたようにしか思えないんです!怒ったらわるいですか?」

 

「あー、わかったし。あーしは何も言わない。その代わり後から話聞かせな。」

 

三浦先輩は、物分かりいいですね。

聞きたくない事かもしれませんよ。

 

「葉山先輩、海老名先輩。きっと先輩だって、貴方たちに利用されたとか、押し付けられたとか思ってません!でも、全く関係ない私が話を聞いたら、そうとしか見えないんです。先輩だって傷付くんですよ。平気そうな顔して、何でもない風に装ってても、傷だらけなんです。先輩を巻き込まないで下さいよ。どうして、どうして先輩ばっかり…。」

 

泣いちゃダメだ。

まだ、泣くな。

 

「…先輩は優しいから、これで何かあっても、自分の責任だって言います。あなたたちを恨むこともないです。でも、もしこれで先輩の大切な居場所が壊れたら、私は貴方達を絶対に許しませんから。あと、変えたくないとか言ってたみたいですけど、貴方達が勝手に先輩を頼ったことで、結衣先輩は確実に傷付いてますから。」

 

「一色!?お前なんで…。」

 

早いですよ。先輩。

なんで来ちゃうんですか?

 

「あー、完全に予想外だったわ。一色とりあえずこい。」

 

ちょっと待って下さい。

まだ、言ってないことがあるんですよ。

 

「待って下さい。まだ…「いいから!悪かったよ。お前の事なめてたわ。」

 

「葉山も、お前らも迷惑かけたな。俺のせいだ。こいつは悪くねぇんだ。だからすまん。」

 

先輩が私の手を引っ張って教室をでる。

迷惑かけてごめんなさい。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

教室(三浦優美子)

 

 

 

「なにあれー」「またあいつー?」

「てかあの1年何様ー?」

 

ちっ。なんなんこいつら。いる時に言えし。

 

「うっさいし!あんたらの中にあいつみたいに隼人に面と向かって文句言える奴がいんの?いなくなってからしか言えないんだったら黙ってろ!あいつらになんかしたらあーし許さないから!」

 

これで黙るんなら最初から言うなっつうの。

にしても、一色の奴いつからヒキオ狙いになったん?

あ、結衣帰って来たし。

 

「ねぇヒッキーちゃんときてくれた?」

 

「一色連れてどっか行ったし。つーか結衣ー、あーしもいくとこあるから、先生に言っといてー。あ、ついでにヒキオも。」

 

「ちょっ、優美子?」

 

「あ、結衣ー、ヒキオに屋上にしろって言っといて。」

 

だって、まだあいつらの話聞いてないし。

ヒキオ達が海老名にちょっかいかけてたのは知ってっけど、その後どうなったのか、あーし知らないし。

 

あーし、戸部がフラれたと思ってたんだけど…。

どーゆー事だし。

 

 

とりあえず屋上にいけばいーっしょ。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

先輩と、ベストプレイスに向かってた。

手は引っ張られたまんま。

あの、先輩、そろそろ恥ずかしいです。

言わないんですけどね。

 

「お前、三浦になんか言った?」

 

「三浦先輩?なんでですか?」

 

なんか、結衣先輩からメールがきたらしい。

三浦先輩が屋上にしろって言ってるらしい。

ちょっと、あれマジだったんですか?

困りますー。

 

結局、屋上に向かう事に。

 

「で?叩かれて凹んでた俺は、由比ヶ浜に教室に行けって言われたんだけど、お前なにしたの?」

 

「迷惑かけてごめんなさい。ぐすっ勝手なことして、ひぐ、ごめんな、さい。」

 

あー、我慢してたのに。

泣いちゃった。

 

「お、おい。怒ってないから。マジで泣くな。」

 

「だって、だっでぇー」

 

先輩はこないつもりだったのに。

私が言わないと気がすまなかっただけなのに。

結局先輩に謝らせてしまった。

結局先輩も注目を浴びてしまった。

 

屋上到着。

 

結局、手は掴まれたままだった。

三浦先輩がいたからすぐ離したけど。

 

「あんたらなんであーしより遅いし。先に行ったじゃん。」

 

三浦先輩早いですね。

 

「で?隼人と海老名はヒキオになにさせたん?」

 

「一色が何を言ったか知らんが、あいつらに何かさせられたわけじゃない。俺が勝手にやっただけだ。」

 

そうかもしれない。

先輩は本気でそう思ってるのかもしれない。

 

「じゃぁ、なんで関係もないせんぱいなんですか?せんぱい達が受けた依頼は戸部先輩のだけじゃないですか!自分達で依頼しにきといてせんぱいに何とかしろなんて、わけわからないじゃないですか!」

 

全部、あの人達の勝手じゃん。

奉仕部に依頼に行ったくせに、あとから変えたくないとか私には意味がわからない。

 

「それに、戸部先輩の思いはどうなるんですか?これはせんぱいもですよ?人に頼るのはどうかと思います。それでも、戸部先輩は本気だったんですよ!それをグループのために潰されて、それを頼んだ人達は平気な顔で戸部先輩と喋って。せんぱいはまた戸部先輩から悪く思われるんですよ!」

 

今回、1番蔑ろにされたのは戸部先輩だと思う。

伝えることすら許されなかった戸部先輩。

その戸部先輩から恨まれるかもしれない先輩。

それ以外の人達は傷もつかない。

 

「一色ちょっと落ち着けし。多分、あーしも悪いし。ヒキオにあーしも言ったんだ。今が楽しいからって。今が変わるのはイヤだって。」

 

「三浦は関係ない。お前は海老名さんが呼び出されたことも知ってたんだろ?それでも、止めなかった。お前だけは戸部の告白を認めてたんじゃないのか?」

 

「別に認めてたわけじゃねーし。でも、誰かを好きになる気持ちにフタなんてできないっしょ?あーしはちゃんと告白してフラれろって思ってただけ。」

 

それが正しいことだと思う。

私だって先輩が好きだ。

まだ、面と向かって伝えられないけど、フラれてもいいから告白する時はちゃんと伝えたい。

 

「結局、隼人と海老名はヒキオになにを頼んだん?で、ヒキオはなにしたん?全部話してほしいし。あーしのグループでもあるんだから無関係じゃないっしょ?」

 

「せんぱいが話さないならわたしが話しますから。」

 

先輩は大きく溜め息を吐いて、話し始めた。

私に話してくれたことと、同じ内容だった。

 

「そっか…。一色が怒る気持ちもわかったし。でも、あんたはもうちょっと考えな。ヒキオのためだとしても、隼人相手に教室であんな事してどーなるか分かんないわけじゃないっしょ?」

 

「でも…。」

 

「分かるよ。大好きな先輩が傷付いて許せなかったんしょ?でもあんたがそれでイジメにでもあってみ?そうなったらヒキオはまた傷付くんじゃないの?」

 

その言葉に私は何も言えなくなる。

確かにそうだ。

そうなったら、きっと先輩は自分を責める。

 

「ごめんなさい…。」

 

「でもあーしあんたの事見直したし。ぶっちゃけ隼人の事もステータスだけで近付いてる薄っぺらい女だと思ってたし。今のあんたのほうが全然かわいーし、かっこいいよ。」

 

なに?この人までずるい。

なんなんですか。もう。

あんまり泣きたくないんですけど。

 

「ヒキオ…。あーしが代表して謝るし。ホントゴメン。」

 

そう言って三浦先輩は深々と頭を下げた。

三浦先輩が謝ってる姿を初めて見た。

でも、先輩は受け取らないんだろうな。

 

「俺が勝手にしたことだ。お前らのためにやったわけじゃない。謝られる理由もな痛い!痛いから!2人して蹴るなよ…。」

 

ほらね。ホントにこの人は…。

 

「あんさぁ、ヒキオ。あーしらのグループがあんたに迷惑かけたのは事実っしょ?だから素直に聞けし。」

 

そうですよ。蹴られて当然です。

むしろ、三浦先輩じゃなくてあの2人が土下座すべきです。

 

「はぁ。分かった…。ただ、一色も三浦もこの件はこれで終わりにしてほしい。」

 

「なんで?あーしはちゃんとあいつらと話すし。これをそんままにしちゃダメっしょ。とりあえず一色はもうなんもすんなし。」

 

あーもう。わかりましたー。

でも、三浦先輩ていい人だったんですね。

威張ってばっかの人だと思ってました。

 

「待て三浦。葉山と海老名さんの気持ちはどうなる。あいつらだってお前らの事が大事だから悩んでたんだろ。」

 

「じゃあ、それを言っても貰えなかったあーしは、あーしと戸部はなんなん?それに全部ヒキオに背負わせるのはあーしも許せないし。だからヒキオは気にしなくていーし。あーしが勝手にやる事だから口出しすんなし。」

 

あーこれ先輩の負けですね。

いつも先輩が人に言う事ですもんね。

 

「三浦先輩ありがとうございます。」

 

私の気持ちをわかってくれて。

先輩のことをわかってくれて。

貴女に話して本当によかったです。

 

「別にいーし。あんたももし何かあったらすぐ言うし。あと、これからあんたの事いろはって呼ぶから。いーっしょ?」

 

本当に素敵な人ですね。

葉山先輩にはもったいないんじゃないですか?

 

「はいっ!ありがとうございます!優美子せーんぱい♪」

 

「あ、あんたまで名前で呼ぶなし!あーし先に戻るから。ヒキオ、いろはともちゃんと話しなよ。」

 

ちょっと照れながら戻っていきました。

かわいーですね♪優美子先輩♪

 

「はぁ。一色、マジであんな事はやめてくれ。由比ヶ浜から連絡きたときは本気であせったわ。」

 

「それは本当にごめんなさい。あと、ほっぺ痛くないですか?ちょっと赤くなってます。叩いたのも本当にごめんなさい。」

 

私が叩いてしまった頬に触れる。

結構、力入れちゃったからなぁ。

本当にごめんなさい。

 

「本気で嫌われたと思ったし、それでも仕方ないと思ってたんだ。だから、お前が怒ってくれたことは嬉しかった。でも、三浦も言った通りそれでお前に何かあれば、俺は自分を許せなくなる。だから無茶はすんな。」

 

嫌うわけない。嫌いになれるわけない。

それに、本当は告白が本気じゃないって知って嬉しかった。

 

「ごめんなさい。でも結衣先輩が連絡するのは予想外でした。ホントは先輩にバレずに終わるつもりだったんです。わたしも嫌われるの覚悟でせんぱいにあんな事しましたから。」

 

「なんで俺が嫌いになるんだよ。お前が俺に対して怒ったことはなんも間違ってないだろ。まぁビンタはめっちゃ効いたわ。」

 

う…。ホントすいません。

でも、そう思ってくれるならよかったです。

 

「せんぱい。お願いがあります。きっとせんぱいは何かあればまた、自分が傷付くかもしれない方法をとるんだと思います。別にそれをやめてとは言いません。きっとせんぱいは他の方法がなければ、それを選びます。」

 

多分これはあってると思う。

まだ、先輩の事は少ししか知らないけど。

だから。

 

「せめて、話してください。やる前に余裕があるときは教えてください。そして辛いときは言ってください。隠さないでください。」

 

「そんなやり方認めないとは言わないんだな。」

 

それは、先輩自身の否定だと思う。

だから、認めないとは言えない。

 

「だってわたしは文化祭の時、それを見てせんぱいの事知りたいって思ったから。理解したいって思ったから。確かに噂とかはイヤでしたけど。あ、せんぱいのやり方はともかく、嘘告白だけは今後一切みとめません。殴ってでも止めます。」

 

「そうか…。なぁ、一色。ありがとう。お前に会えてよかったわ。」

 

「へ?え?な、な、なんですか?告白ですか?そういうのはもっと直接的な表現でちゃんと伝えてください。じゃないと無理です。ごめんなさい。」

 

あぁー、いきなりすぎだよ先輩。

あせりすぎて訳わかんないこと言ったじゃん。

 

「なんでフラれんだよ…。まぁ、正直な気持ちだ。たまには、口に出しとこうと思ってな。」

 

えへへ。嬉しいなぁ。

先輩。私がんばりますから。

先輩が頼れるような後輩になれるように。

先輩も好きって思ってくれるように。

だから、もう少し時間をください。

 

「せんぱい。わたしもせんぱいに会えて良かったです。こんな勝手で迷惑ばっかりかける後輩だけど、これからもよろしくお願いしますね。せーんぱい♪」

 

「…あざとい。まぁ、こっちこそな。友達なんだろ?よろしく頼む。」

 

 

 

多分、先輩が友達って言ってくれたのはこれが初めてだ。

少しだけ、ただの後輩から進歩したのかな。

これからだよね?

少しずつ、進んでいければいい。

いつか、先輩の横で恋人として笑える日がくればいーな。

 

わたしをこんな風にしたのはあなたです。

 

 

だから、いつか責任とってくださいね♪

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




思ったより、時間かかってしまいました。

ガーって進んで、消して消して。
その繰り返しでした。

読んで頂き、ありがとうございました。

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