捻くれた先輩   作:超素人

11 / 16
ようやく、修学旅行です。

今回は、修学旅行前〜八幡が海老名さんに告白したことをいろはが知るまで、になります。

めちゃくちゃ長くなりそうだったので、こうなりました。

読んで頂けると嬉しいです。




9. 勝手な後輩。

 

 

文化祭・体育祭も終わり、秋も終盤。

ブレザー着ないと、少し寒くなってきた。

もう、すぐそこまで冬が近付いてきてる。

 

冬に入れば、クリスマス・年末年始・バレンタイン。

色んな行事がどんどんやってくる。

少し先の私がどうなってるか分からないけど、少し楽しみだ。

 

 

先輩達2年生は、あと1週間で修学旅行。

3泊4日で京都へ。

しかも、そのまま土日に入るため、先輩とは1週間近く会えないことになる。

むー、私も学校休んで着いていっちゃダメかな。

だって、4日間も1人でご飯だよ?

藤沢さんにお願いしようかな。

 

 

先輩とはいつも通りです。

ベストプレイスで一緒にご飯を食べて、ちょくちょく頭を撫でてもらってます。

変わったことと言えば、先輩の態度が少しだけ軟化?した事と毎日ラインをしてるくらい。

 

とは言っても、先輩は先輩です。

ラインの返事は、基本一言というか2文字。

起きてます?って送れば、『おう』。

朝の挨拶を送っても、『おう』。

少し寒いですねって送れば、『だな』。

 

いや、嬉しいんですよ?

あれだけ返さないみたいな事言ってたのに、ほとんどちゃんと返してくれるし。

ただ、ただね、もう少しなんかないですか?

せめて、おはようくらい送ってほしいです。

って言ったら、次の日から『おはよ』になりました。

ちょっとだけ、進歩しましたね♪

 

あとは、何も言わなくてもたまに撫でてくれます。

その時の先輩の顔がすごく好きです。

好きなんですけど、なんというか私を撫でるお父さんにそっくりで、愛娘扱い?

喜ぶべきか、悲しむべきか。

まぁ、嬉しいんですけどね!

 

そんな日常を送っていた私ですが、最近許せない男がいる。

誰だかわかります?

『と』から始まり、『べ』で終わる男です。

そう、戸部です。

もうね、呼び捨てでいいんです。

 

ホント、うるさいんですよ。

部活中に『ナニタニ君、ナニタニ君』って。

誰かがファウルをすれば、

『いや〜、今のはないわ〜。それナニタニ君だよ〜』

ってね。黙れ戸部。

 

先輩に聞けば、教室でもそんな感じらしい。

先輩はちょっとお馬鹿さんなので、

『俺がクラスのブームの中心にいるんだぜ』

とか言ってた。

そうやって、気にしないようにしてるんだろうけど。

 

だから、私は戸部に怒ってます。

最近はあの人のドリンクだけ水道水です。

準備するだけでも、感謝してよ。

怒ってても準備する私、マジ天使!

 

最近、サッカー部にいることに意味があるのかなんて思ってたりもします。

葉山先輩目当てで入った部活。

マネージャーも私だけじゃない。

このままいる意味あるのかな。

まぁ、辞めたとしても、先輩も部活だから一緒にいたりすることはできないんだけどね。

だから、これは保留です。

 

 

今は放課後、部活の準備中。

珍しく、少し葉山先輩が遅れてきた。

遅れたって言っても、まだ始まってないけど。

ただ、戸部先輩が来ません。

いつも、葉山先輩にくっついてるのに。

 

練習が始まって、少し。

ようやく戸部先輩があらわれた。

べーべー言いながら、部室に駆け込む。

なにしてたのか聞くと、はぐらかす。

ほー、遅れといてそれですか。

私が怒る権利もないんですけどね。

 

「隼人君、ワリー。助かったわー。」

 

とか言いながら、練習に混ざる戸部先輩。

そのとき、知ってる名前が戸部先輩の口から聞こえた。

 

「結衣達も引き受けてくれて、マジよかったわ〜」

 

結衣達?引き受ける?あ、奉仕部…。

依頼かな?戸部先輩が?

てゆーか、戸部先輩も奉仕部知ってるんだ。

2年では、割と有名なのかな。

ふーん、戸部先輩でも悩むことあるんですね。

何か変なものでも食べたんだろうか。

 

まぁ、戸部先輩の悩みなんてどうでもいい。

それで先輩に何もなければ。

うーん。先輩に聞いても、教えてくれないよね。

 

探るべきだろうか。

時期的に考えれば、修学旅行絡み?

戸部先輩、奉仕部、修学旅行。

ここから導きだされるのは……、

うん。全然分かりません。

とりあえず様子見かな。

 

 

 

それから、数日。

気付いたことがある。

戸部先輩が先輩をネタにしなくなった。

あの遅れた日から、急に。

ちなみに次の日も、遅れてきた。

真面目にして下さいよ、もう。

そして、馬鹿みたいにテンション高い。

 

先輩は、あまり変化ない。

京都自体は、割と楽しみらしい。

お寺とか小説の舞台とか。

あと小町ちゃんの合格祈願とか。

楽しいといーですね、先輩。

ちなみに、依頼のことは聞いてません。

いつも個人情報とか言って、依頼の内容までは教えてくれないので。

 

 

今日は修学旅行2日前。

 

明日は前日ということもあり、2年生は部活休み。

戸部先輩に探りを入れるなら、今日がラストチャンス。

先輩が無理をしなければどうでもいいんだけど、依頼のためなら後先省みないのが先輩。

心配しすぎかもしれない。

知って安心したいだけ。

んーどうしよう…。

 

よし!

このまま先輩がいない間もモヤモヤするくらいなら、確かめよう。

 

「戸部せんぱーい、部室から荷物持ってくるの手伝ってもらってもいーですかー?」

 

戸部先輩は、こういう時ホント使える。

まぁ、素直にいえば、いい人である。

今も、すぐ行くわ〜とか言って、文句も言わない。

部室に入って、すぐ切り出す。

 

「戸部先輩、奉仕部にどんな依頼したんですか?あ、そこのも持っていきます。」

 

戸部先輩は、「っべー、いろはす何で知ってるん?」とか言いながら、荷物を取ってくれる。

私も、体育祭のときにちょっと関わりがあった事を簡単に伝え、誰にも言いませんからと聞き出す。

 

何度かお願いして、やっと教えてくれた。

修学旅行で告白すること。

相手は、なんと海老名先輩。

そして、そのサポートを依頼したこと。

 

珍しく、照れながら話す戸部先輩。

ちょっとキモいですよ?

ただ、1つだけ言っとこう。

 

「戸部先輩。振られたくないのは分かります。でも、絶対に成功する告白なんて多分ありませんよ?」

 

戸部先輩も分かってはいるらしい。

だから、少しでも確率を上げるために、依頼したらしい。

まぁ、これならサポートだけだし、先輩が何かしちゃう心配もないんだろうな。

厄介そうな依頼じゃなくてよかった。

 

「わかってるならいーです。戸部先輩も頑張ってくださいね。一応、応援してますから。あんまり、奉仕部に迷惑かけちゃダメですよ?」

 

「おう!まーじいろはすいい奴だわ〜。ヤル気でたわ〜。」

 

まぁ、一応お世話になってますからね。

先輩のこと、ネタにしてたのは許さないけど。

でも、奉仕部って恋愛相談みたいなのも受けるんだ。

ちょっと、意外だなぁ。

雪ノ下先輩とか、受けそうにないのに。

 

 

修学旅行前日。

 

先輩と最後のご飯。

まぁ、本当に最後ってわけじゃないんだけど。

明日から、半分は1人だもんな。

半分は、藤沢さんが一緒に食べてくれます!

藤沢さんは、毎日でもいいよって言ってくれたけど、藤沢さんにもクラスの友達がいるし。

さすがに悪いかなって。

 

あーやだなー。寂しいなー。

そんな思いをのせて、先輩を見る。

先輩もどうした?って気づいてくれた。

 

「わたしも、京都行きたいです。せんぱいと一緒に。正直、ちょっと寂しいなって。」

 

先輩は、短く息を吐いて、私の頭に手をのせた。

もう、優しいなぁ。

落ち着く。ちょっとだけ寂しい気持ちが和らいだ。

 

「まぁ連絡もするし、おみやげも買ってくるからそれで許せ。」

 

ふふっ。先輩が悪いわけじゃないのに。

でも、連絡してくれるんですね。

おみやげは、楽しみにしてますねっ!

 

「約束ですよ?おみやげは食べ物じゃなくて、形に残るものがいいです。せんぱいからの、初めての贈り物なので。」

 

そんな大層なもんじゃねーだろ。とか、俺センスないぞ?とか言ってるけど、いいんですよ。

先輩が私に選んでくれれば、それで。

多分、それだけで私は嬉しいから。

 

そこからは、夜電話してもいいかとか、写メも送ってとか色々話してたら、昼休みもあと僅か。

写メは送ってくれないって。

私たちも来年京都だったら、楽しみが減るからって。

電話は、気が向いたらだって。

まぁ、そーですよね。

修学旅行の夜とか、楽しみの1つでもありますもんね。

先輩はどうか知らないけど。

 

「でわ、八幡せんぱい。気を付けて京都を楽しんできてください。いろはは、千葉であなたを待っておりまぁす。」

 

あざとい。と言いながら、頭を撫でてくれた先輩。

どっちがですか。

でも、本当に気を付けて、行ってらっしゃい。

 

この修学旅行が、先輩の大切な思い出になることを、心から願ってます。

私がその中にいないのは、少し寂しいけど。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

今日は、先輩が修学旅行に行って3日目。

昼休みがすごく長く感じる。

特に1人でご飯食べた日。

今日も1人だけど。

いないのはわかってるのに。

先輩を探す、私がいた。

本当に寂しかった。

藤沢さんの存在は、ホントにありがたい。

 

こうやって、いない時に気付くんだな。

先輩の存在がどれだけ大きいのか。

変わらない日常が、どれだけ大切なのか。

体育祭の日に、突き放されなくてよかった。

無理矢理に近かったけど、先輩が離れていかなくて本当によかった。

先輩。無事に、帰ってきて下さいね。

 

 

先輩からは、一応毎日連絡がきてます。

 

新幹線のなかの戸塚先輩が、可愛かったとか。

人が多くて疲れたとか。

平塚先生が可哀想とか。

戸塚先輩とお風呂入れなかったとか。

マッ缶がないとか。

戸塚先輩が可愛いとか。

 

どんだけ戸塚先輩のこと、好きなんですかー!

もっとこう、寂しくないか?とか。

お前がいないとダメだ!とか。

こう、あるでしょ?

確かに先輩がそんなこと送ってきたら、別の人が送ったのかってちょっと疑うけど。

 

にしても、まぁ楽しめてるのかな。

戸塚先輩には、私も感謝ですね。

クラスでも、この修学旅行でも、先輩の近くにいてくれる戸塚先輩。

本当にありがとうございます。

 

そんな事を考えていると、スマホが震える。

 

『小町の合格祈願ナウ』

 

ふふ、先輩がナウって。

どんな顔で打ってるんだろう。

想像したら笑える。

 

『小町ちゃんが、私の後輩になるように、私の分まで祈って下さいね?』

 

多分、すぐに返信はこない。

先輩だもんね。しょうがない。

 

『まかせろ!』

 

あ、きた。

珍しく、!なんか使っちゃって。

小町ちゃんと戸塚先輩に勝てる気がしない。

好きすぎでしょ。

私のことも、そこに入れてもらえるようにがんばろう。

 

 

今日は、日曜日。

 

結局、先輩からの連絡はそれ以降なかった。

先輩が帰ってきたはずの日も、その次の日も。

一回だけラインを送ってみたけど、返ってこない。

連絡先を交換したときに言われたことが気になって、それ以上送ることができずにいた。

嫌われた?でもなんで?

最近は、少し距離も近くなったと思ってたのに。

 

もし、嫌われてないなら、先輩に何かあったのかな。

あったとすれば、3日目?

夜は、一回は連絡してくれてたし。

修学旅行先で事故とかなら、学校も大騒ぎのはず。

あー、ウザがられるの覚悟で先輩に電話してみよう。

すー、はー。よし。

でないなー。

さすがにもうお昼だし、起きてるよね?

 

『おう。どうした?』

 

あ、でてくれた。とりあえず無事でよかった。

 

「すいません。ずっと連絡なかったので、ちょっと心配で。でも、事故とかじゃなさそうなんで、よかったです。」

 

『あぁ、わるい。ちょっと疲れててな。』

 

んー。まぁしょうがないかな。

それにしても、いつも以上に声に張りがない。

 

「そうですよね。もしかして寝てましたか?その、せんぱいが喋りたくなかったら、切りますよ?」

 

先輩の負担にはなりたくないしなぁ。

一応、無事は確認できたし。

 

『起きてたぞ。なに?そんな嫌そうか?』

 

嫌ってわけじゃないのかな。

やっぱり、なんかあった?

 

「いつも以上に、声に張りがないというか、元気がないというか。嫌じゃないならいいんですけど。あの、もしかして修学旅行でなんかありました?」

 

『……なんもねぇよ。』

 

嘘ですね。

先輩は、こっちが予想外の事を言わない限り、返答は早い。

それくらい私も分かりますから。

でも、それを今の先輩に言っていいのかな。

 

「わたしには話せませんか?言いたくないですか?」

 

『だからなんも「嘘はつかないで欲しいです。話したくないなら話さなくていいです。1つだけ答えて下さい。戸部先輩の依頼が関係してますか?」

 

『っ…なんでお前が知ってる?』

 

「ちょっと用事ができたんで失礼しますね。また、明日のお昼に。」

 

勝手に探ったのは、後から怒ってください。

そして、勝手に今から調べるのも後から怒って下さい。

先輩の返事を待たずに電話を切る。

そして、そのまま別の人に電話する。

もしかしたら、本当に嫌われるかも。

でも、あんな先輩の声聞いたことない。

だから、ごめんなさい。

 

『うぇ〜い。いろはすどした〜?』

 

元気ですねー、戸部先輩。

 

「あ、戸部先輩。お疲れ様でーす。あ、告白どーでした?彼女持ちになりました?ちょっと気になってたんですよー。」

 

フラれてはなさそう。

フラれてたらウザいくらい落ち込みそうだし。

 

『あ〜それ聞いちゃう?早速すぎっしょ?それがさ〜、告白できんかったんよ〜!する前にされた的な?』

 

えぇ!?

まさかですね。そんな感じに見えなかったのに。

 

「海老名先輩も戸部先輩のこと好きだったんですか!?」

 

『あ〜、違うっしょ〜。俺が告るまえに他の奴が横から告ったんよ〜!マジないわー、ホントないわー。』

 

は?いやいや、まさか。

先輩じゃないよね?

 

「そ、そうなんですねー。」

 

『それまでも結構助けてくれたんよ〜。アドバイスとかさ〜。マジ感謝してたんよ?俺が緊張してる時も声かけてくれたし。なんだヒキタニ君めっちゃいい奴じゃ〜んとか思ってたのに。ヒドクね?』

 

もう、その後は適当に相槌を打つだけだった。

最後に、口止めされて電話を切った。

葉山先輩が口外するなって言ったらしい。

私は、告白する事知ってたから話したみたい。

 

え、どうゆうこと?

先輩が海老名先輩に告った…。

戸部先輩の話では、フラれたらしいけど。

 

ダメだ…。これ夢かなぁ。

あー、ちゃんと痛いや。

 

「ねぇ?いたいよぉ…。せんぱい。」

 

言ってくれてもよかったじゃん。

好きな人がいるなら、教えてよ。

私バカみたいじゃん。

 

んーん、バカなんだ。

先輩のためって言い訳して。

勝手に依頼を調べたりして。

結果も勝手に調べて。

それで勝手に落ち込んで。

先輩からしたらいい迷惑じゃん。

だから、これは自業自得だ。

 

 

 

私が悪いのに。

そう言い聞かせてるのに。

勝手に溢れてこないでよ。

泣く権利なんかないじゃん。

お願いだから、止まってよ…。

 

 

 

 

 

 

 




次も割と早く投稿できそうです。

読んで頂き、ありがとうございました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。