捻くれた先輩   作:超素人

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ど素人です。
読みにくいなどあれば遠慮なく言ってください。



ぷろろーぐ。

「はぁ…。葉山先輩のライブ見たかったなー。」

 

文化祭も終わりに近付き、そろそろ葉山先輩のいるグループが、有志でライブを行う時間。

本当なら最前列に陣取って葉山先輩の勇姿を目に焼き付けるはずだったのに…。

 

誰もいなかったはずの屋上の給水塔の影で、もう1人の生徒に聞こえないように呟く。私の存在には気付いてないらしい。

 

体育館のほうから聞こえる歓声が少し大きくなる。

おそらく、葉山先輩達のライブが始まったのだろう。

 

さっきまで寝てた自分を殴りたい。

今すぐにでも体育館に移動したい。

なのに何故、文化祭実行委員長の相模とかいう先輩がこんな所にいるのか。

 

いや、ホントになんで?

そんなとこで負のオーラ全開でたそがれられると、さすがに出ていきにくいんですが……。

 

 

勘弁してくだいよーー!

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

 

今日は、午前中に葉山先輩のクラスである2-Fの教室で、葉山先輩主演の劇?ミュージカル?を最前列で見て、うっとうしい男子達からのお誘いを軽くかわして、少し時間をつぶしてから体育館に移動するつもりで屋上にやってきた。

 

特別棟の屋上の鍵が壊れているのは、女子の間ではそこそこ有名な話で、だいたい誰かしらいる事が多い。

噂では、めっちゃ怖い女番長のお気に入りスポットらしいし。

 

今日は珍しく無人の屋上で、登ったことのない給水塔に登り、お日様を浴びながら、自分の事について少し考えていた。

最近、自分で自分の事がよくわからなくなってきたから。

 

総武高校に入ってもうすぐ半年。

入学してすぐ、葉山先輩を見つけた。

容姿は完璧。周囲からの評判もいい。ついでに頭も家柄もいいらしい。

これだけ揃っていて悪い噂の1つもない。

 

この人が相手なら、好きになれるかもしれないと思った。

初めての恋ができるかもしれない。今までの自分を捨てる事ができるかもしれない。

 

そう思った私は、葉山先輩に近付く為にサッカー部のマネージャーになった。

積極的に話しかけたし、『可愛い私』アピールもいっぱいした。

そうして近くで接してみて、この人ならという思いがもっと強くなった。

葉山先輩の事をもっと知りたいと思った。

今までそんな事を思えた相手がいなかったから、これが誰かを好きになるっていうことだと思った。

 

そう思っていたのに…。

気付けば、葉山先輩以外の周囲の男子にも『可愛い私』を振り撒く、過去の自分と同じ事をしていた。

大して興味もない、知りたいとも思えない相手にも、愛想をふりまく自分がいた。

 

 

小学校低学年くらいで自分の可愛さに気付いた私は、自分が少し愛想よくすれば、男の子達がチヤホヤしてくれる事に気付いた。

それが気持ちよくて、いろんな人から可愛いと言われたくて。

 

気付けば、どんな異性相手にも愛想よく振る舞うようになっていた。

そこから、男の子が喜ぶ仕草や言動などを研究し、男の子の理想の女の子になる為の努力を、そして自分を磨く努力を少しずつ重ねていった。

そんな私を、周囲の女の子が疎ましく思っているなんて気付かずに。

小学校を卒業する頃には、同性からはかなり嫌われていたと思う。

それでも、私の周りには男の子が沢山いた。

何でも手伝ってくれたし、みんな優しくしてくれた。

中学に入ってもそれは変わらず、むしろ周りの男の子は少しずつ増えていった。

私を嫌う女の子も増えたけど。

 

陰では好き放題言われてたみたいだけど、幸いイジメとかは1度もなかった。

無視をされたり、直接文句を言われたりとかは何度かあったけど。

でも、周りにどれだけ男の子が沢山いても、好きだと思える人は1人もいなかった。

あっちが勝手に勘違いする事は多かったけどね。

 

そんな私だったけど、彼氏持ちの女の子を見て羨ましいと思うコトが何度かあった。

直接話したわけでもないけど、近くの席とかで彼氏との事を幸せそうに話す女の子を見て、いいなぁなんて思ったりもした。

 

でも、本当の飾らない私を、可愛く見せようとしない私を、本当の意味で好きになってくれる人なんているのかな…なんて思ったりもして。

今まで不都合なコトがあったわけでもないし、むしろ男の子達はとっても便利だった。

女の子なんだから、可愛いって言われたいのは間違ってないと思うし。

 

でも、ありのままの私を好きになって欲しいなら、私は今までの『可愛い私』を捨てなきゃいけなくて。

ちゃんとした恋をしたいなら、やっぱり『可愛い私』を捨てなきゃいけなくて。

 

だから、変わりたいと思った。

恋をすれば、本当に好きな人ができれば変われると思っていた。

そう思っていたから、葉山先輩を見つけたときは運命だなんて思ってたのになぁ…。

結局私は何も変わってない。

 

「わたしは本当に葉山先輩のこと好きなのかなぁ…。」

 

そんな事を延々と考えていたら、いつの間にか寝てしまったらしい。

起きてスマホで時間を確認してビックリ。

2時間近くも寝てたらしい。

あれ?葉山先輩のライブってもうすぐじゃ…。

 

 

ここで大声を上げず、相模先輩を発見した私を、相模先輩を無視してでもライブを見に行かなかった私を、私は後から褒める事になる。

 

この後ようやく出会うのだから。

葉山先輩とは真逆で、この後起こる事で学校中の嫌われ者になり、家柄も普通な、そんな捻くれた先輩に。

 

 

 

でも、きっと誰よりも好きになった先輩に。

 

 

 

 

 

 




読んで頂きありがとうございました。

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