不定期だし仕方ないね
施設内に足音を響かせながら、零と二人はずっと追いかけ回されていた。
サイレンが鳴り響き、赤いランプが至る所で回っており、後ろでは銃を構えたショッカーの戦闘員達が二人を追いかけていた。
「いたぞ!」
「捕まえろ!」
兵士らしき男性達が二人を指さして叫ぶ。
「ここもダメ…!」
「とにかく逃げるぞ!捕まったら終わりだ!」
零は百合の手を引き、横に曲がって、前方から来ていた兵士達とショッカー達を互いに突撃させ、足止めした。
「今の内に!」
「ええ!急ぎましょう!」
二人はすぐ先にあったエレベーターに駆け込み、零はドアを閉じるボタンを押した。
「アンタらに用は無いのよ!」
百合は入ろうとしてきたショッカー達を蹴飛ばし、その直後にエレベーターのドアが閉まった。
安堵のため息を吐く二人を、ショッカー二十世はずっとモニターで見ていた。
「ここまで脚本通りだよ、零君、百合君。いや、ナンバーゼロとナンバーハンドレッド。君達を生み出して良かった…本当に良く育ってくれたよ二人共…さあ、帰ってこい…!」
ショッカー二十世はモニターの前で手招きをし、目を妖しく光らせた。
一方、モモタロス達一同のカードはどこかの公園に落下していた。
「痛たた…一体何が…」
モモタロスはカードの中から見渡せる限り見た。
「どうやら、公園みたいだね」
「何でそんなこと分かんだ?カメ公」
「ほら、あそこに遊具が見えるじゃない」
「ああん?どっちだ?」
「センパイがプリンを食べる時にスプーンを持つ方の手の方だよ」
「なるほど!」
モモタロスは言われた通りの方向を見た。
そこには大きなペンギンの形をした滑り台が立っていた。
ウラタロスの言う通り、ここは公園で間違い無さそうだ。
「ここをぐるっと見渡すと柵も立ってるし、入口みたいな所にもネームプレートがよく貼ってある石柱もあるしね」
「流石カメちゃん!」
「流石やのう、カメの字」
「まあね。とは言っても、ますこの状況をどうにかしないといけないけど」
ウラタロスがそう言った瞬間、全員のカードが宙に浮かび上がった。
否、浮かび上がっているのではない。
何者かに拾われたのだ。
「こんなところで何やってんだ?モモタロス」
一人の男がカードとなったモモタロス達を見ながら言った。
「ああっ!て、テメエは!」
モモタロスはカードの中でその男を指さした。
「門矢士!」
「よっ、久しぶりだな」
士と呼ばれた男は額から二本の指を弾いて挨拶した。
「で、一体何があったんだ?」
士は滑り台にもたれながらモモタロス達に話を聞いた。
「ああ、実は…」
モモタロス達は事の成り行きを簡潔に話した。
「それで、今に至るって訳か」
「なあ、どうにか助けてくれねえか?士」
「そうは言ったってな…ライダーカードなら兎も角、こんな訳の分からないカードじゃ変身も召喚も出来ないな」
「アイツじゃダメなのか?確か…ディ…ディ…ディーゼル!」
「ディエンドだよ、センパイ。海東の持つディエンドライバーでも無理?」
「恐らくな…ここの世界で俺達以外にカードを使える奴でもいればどうにかなるんだろうがな」
「じゃあ、まずはその人を探して、元通りにしてもらおうよ。動けなきゃ意味無いし」
「リュウタロス君の言う通りや。ほな、早速動こか、士」
「ああ、分かった、はやて」
士はカードが痛まないよう、変身用のカードがしまってあるホルダー、ライドブッカーとは別のホルダーを用意し、その中にモモタロス達のカードを入れた。
「スリーブにでも入れるか?」
「この状態でも少し苦しいからなあ、要らんわ」
「そうか」
士はそう言い、ホルダーの中にモモタロス達をしまい、ホルダーを服のポケットに入れた。
「とは言っても、どうやって探すんだ?そいつ」
「むやみやたらに歩く訳にもいかないしね。こっちから待ってみる?」
「待ってても来なきゃ意味が無いだろう、待ち合わせた訳でも無かろうに」
「それはそうだけどさ…」
「でも、今は探す他無いでしょう。それに、この街の事を俺達はあまり知らない」
カードの中でガイが腕を組んで言った。
「それもそうだな。俺も今さっき来たところで、あまりここを知らないんだ」
「決まりだね。早速動こうよ」
「おっし」
士は早速公園から出た。
「ここは…友枝中央公園と言う名前だったんだね」
ウラタロスが公園の名前を確認した。
「あのデカイペンギンが目印みたいだな」
士はペンギン滑り台を見ながら言った。
「キャーッ!」
すると、遠くの方で悲鳴が聞こえた。
「早速おいでなすったか…行くぞ!」
士はヘルメットを被り、マゼンダのバイクに乗り込み、エンジンを吹かせて走り出した。
そして、士はベルトを腰に巻き、ライドブッカーからマゼンダ色のライダーのカードを取り出した。
「変身!」
士はカードをベルトに挿入し、片手でベルトを回して変身した。
『カメンライド!ディケイド!』
音声と同時に透明のカーテンと九つのアイコンが現れ、カーテンを突き破ると同時に透明のライダーの幻影が現れ、士に同化し、仮面ライダーディケイドに変身した。
「飛ばせぇ!士!」
「言われなくても分かってる!」
人々が逃げ惑う中、破壊者は一人その中に立ち向かっていった。
「だめ…!どのカードも通用しない…!」
一人の少女は 四体の怪人達に手を焼いていた。
「頑張るんやさくら!ここで負けたら終わりやで!」
「そんなこと言われたってぇ〜!じゃあケロちゃんは何かアイデアでもあるの?」
「んなもんあらへんっ!」
「ちょっとは考えててよぉ〜!」
さくらと呼ばれた少女が、ケロちゃんと呼ばれた羽根の生えた謎の生物と会話している間にも怪人達は街を破壊していた。
「このーっ!」
さくらは一枚のカードを使い、怪人達を攻撃した。
しかし、効果は無いようで、寧ろ怪人達の怒りを買ってしまった様である。
「コロス…ジャマヲスルモノハコロス…!」
「コロシテクレヨウ…コロシテクレヨウ…!」
怪人達はじりじりとさくらに向かって来ていた。
「ほえ…どうしよう…ケロちゃん助けて!」
「おう任せとけさくら!こんなやつら簡単に───」
生物が一体の怪人に向かっていった。
怪人は生物の頭を掴み、生物を睨んだ。
「オレタチガ…ナンダッテ?」
「なんでもないでーす…」
生物は怪人の手から離れ、さくらの元に戻った。
そして、一息吐き、怪人達の方を向いた。
「今日はこの辺にしといたるわ!」
「ケロちゃん何もしてないでしょー!怖くなって帰ってきたんでしょー!おバカ!おバカ!おバカ!おバカ!」
「いや、んなこと言われたってなぁ」
「ゴチャゴチャウルサイヤツラダ…サッサトタベテヤル!」
そう言って怪人達は一斉にさくらに飛びかかった。
「きゃあーっ!」
さくらは思わず頭を抑え、うずくまった。
『カメンライド!ダブル!』
『フォームライド!アタックライド!』
不思議な音声と共に四発の光弾が四体の怪人に直撃し、怪人達はその場に撃ち落とされた。
「大丈夫か?」
金と青の二色のライダーに変身したディケイドは銃を手に持ちながらさくらの元へ駆け寄った。
「立てるか?」
「う、うん。あなたは…?」
「俺は、通りすがりの仮面ライダーだ。覚えておけ」
ディケイドはさくらに手を伸ばし、さくらはその手を取って立ち上がった。
「仮面…ライダー…?」
「変な名前やなぁ」
「名前なんて気にしてる暇はないぜ!」
ディケイドは銃を構えて言った。
「グルゥゥッ!」
怪人四体が一斉に襲いかかった。
「いつまでも進歩しないやつらだ」
『フォームライド!』
ディケイドの半身の青の部分が銀色に変わり、武器も銃から薙刀の様な武器へと変わった。
「伏せろ!」
ディケイドに言われ、さくらと生物は頭を押さえてうずくまり、ディケイドは武器をムチの様にしならせ、四体の怪人達を薙ぎ払った。
「はあっ!」
『カメンライド!ディケイド!』
ディケイドは元の姿に戻り、ライドブッカーをソードモードにして怪人達に斬りかかった。
怪人の攻撃をものともせず、ディケイドは怪人達に斬りこんでいく。
『ファイナルアタックライド!ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
ディケイドは大きく飛び上がり、十枚のホログラムのカード型エネルギーを出現させた。
「!!」
一体の怪人はその場から逃げ出そうとした。
「逃がすか!」
カードは自動で怪人に狙いを定め、ディケイドはカード群の中に飛び込み、右足にエネルギーを溜め、エネルギーが詰まった右足で怪人に飛び蹴りを食らわせた。
そして、ディケイドが着地して立ち上がると同時に怪人は爆発した。
「俺に触れると火傷じゃすまないぜ」
ディケイドは怪人が立っていた場所を見ながら言った。
「次はお前達がこうなる番だ」
ディケイドは三体の怪人達の方を向きながら言った。
「コ…コノ…!」
怪人達三体はカプセルを取り出した。
ディケイドはそれを見てライドブッカー・ガンモードで怪人の手元を撃ち抜き、カプセルを中身ごと破壊した。
「グッ!」
「悪い、こっちも急いでるんでね」
『アタックライド!イリュージョン!』
ディケイドはイリュージョンのカードを使って三体に分身した。
「あの人も…カード使い…!」
さくらは息を飲みながらディケイドを見ていた。
『ファイナルアタックライド!ディ・ディ・ディ・ディケイド!』
三人のディケイドはライドブッカーの銃口を三体の怪人に向け、それと同時にカードのホログラムが現れた。
そして、ディケイド達は光弾を放ち、カード群の中を通り抜けてビームになり、三体の怪人達を一掃して一人のディケイドに戻った。
「こんなもんか」
ディケイドは変身を解き、士へと戻った。
「………!」
士は自分を見ているさくらの方に気が付き、士はさくらの方を向いた。
「ん?どうした?」
「さっきの…仮面なんとかって言うの、とても強いですね!」
さくらは目を輝かせながら言った。
「凄いだろ。これでもまだ二割も出してないぜ」
士は指を二本立てて得意げに言った。
「とりあえず、ここからどうする?この子に話でも聞いてみる?」
ウラタロスがカードの中から士に言った。
「ああ。…なあ、ちょっといいか?」
「はい?」
「この辺で、カードになったやつを元に戻せる…なんて奴いるか?…なんて流石に…」
「私それ出来ますよ」
「そうそう、お前が出来るなんて事が…出来るのか!?」
士はさくらを二度見した。
「はい。カードさえ貸してもらえれば」
「それじゃあ早速…」
士はカードホルダーを取り出し、中からモモタロス達のカードを出した。
「結構数があるが…いけるか?」
「…いけそうか?さくら」
「うん、大丈夫だよ。では少し時間をください」
「ああ」
士はさくらがカードを元に戻す様子を見ていた。
「モモタロスイマジンさん!ウラタロスイマジンさん!キンタロスイマジンさん!リュウタロスイマジンさん!クレナイ・ガイさん!オーナーさん!ナオミさん!高町なのはさん!フェイト・テスタロッサさん!八神はやてさん!」
さくらは魔法の杖でカードに書かれた名前を呼びながら一枚一枚元に戻していった。
そして、数分と経たないうちに全員が元に戻った。
「へへっ、ありがとな嬢ちゃん。えっと…」
元に戻ったモモタロスはさくらに近付いた。
「き、木之本桜です」
「桜ってんのか。俺はモモタロス。言っとくが、鬼じゃねえからな?」
「僕はウラタロス。宜しくね」
「俺はキンタロスや。さっきの関西弁の奴はどこや?」
キンタロスは生物のことを探した。
「わてのことか?」
生物はキンタロスの顔の前に飛んできた。
「さっきのはお前やったのか。名前は何て言うんや?」
「わてはケルベロスや。さくらからはケロちゃんって呼ばれてるけどな」
「ケルベロスか。しかし、こんなに小さなケルベロスがどこにおんねん」
「しょうがないやろ。小さいもんは小さいんやし」
「そういうもんかいなぁ」
「そういうもんや。それで、ずっと聞きたかったんやけど、あんたらはどうしてここに?」
ケルベロスは腕を組みながら士とモモタロス達を交互に見た。
「俺は色んな世界を巡って破壊された世界を修復している。とは言っても、その世界の軸となる奴を探して助けてるだけだけどな」
「世界の破壊者が世界を修復とは、また面白い話だね」
「面白くも何ともねえよ…まあ、俺達も似たようなもんだ」
「士はどうやって世界を行き来してるんや?」
はやては士の方を見て言った。
「俺は龍騎の力と俺自身の力で様々な世界を修復している。世界が破壊される分岐点まで行き、世界が壊される前にな」
士は仮面ライダー龍騎のカードを見せた。
龍騎の持っているカードの中に一枚、[タイムベント]と呼ばれるカードがある。
それを使って龍騎は過去と未来を行き来することが出来る。
士も同じように過去を遡り、世界を元に戻しているのだ。
「俺達もデンライナーでちょちょいっと行ってパパッと解決するだけだぜ。メンバーも頼もしい奴等だぜ」
デンライナーも時の空間を走る電車。
はやてやなのは達が務める時空管理局との連携で様々な並行世界を行き来して世界を元に戻している。
双方ともあまり違いは無いのだ。
「ねえ、少し気になった点があるんだけど…いいかな?」
なのはがおもむろに口を開いた。
「なんだ?」
「確か、全ての世界のヒーロー、ヒロインが消されちゃったんだよね?」
「ああ、その通りだ」
「どうして、仮面ライダーディケイドは、残っているの?全て消されたのなら居ない筈なんだけど…」
「ああ、確かに全てのヒーロー達は消え去った。ヒーローだけじゃない、その世界の人間達も全て消されそうになっていた。そして俺も消されるところだった…だが」
「だが?」
「見たこともない二人組の男女に助けられたんだ。ユウスケやなつみかんは助けられなかったけど、俺だけでも、って」
「その二人組の顔は?」
「フードに隠れていて見えなかったが、そいつらはこう言った。『いつか会える』、ってな」
「変な奴らだな。まるで未来に起きることでも知ってるみてえだ」
「確かに、結構不自然だよね。一体どう言う事なんだろう…?」
「…とにかく、今は考えてる場合やないで!あの二人を探さな!」
「それもそうだね。多分、あの二人もこの世界のどこかに飛ばされたと思うから…!」
「決まりですね。そうとなれば早速行きましょう!」
そう言ってガイはオーブリングを取り出し、オーブオリジンへと変身した。
「シュアッ!」
オーブは胸の前で手をかざし、手を下ろした。
「さあ、乗ってください」
オーブはしゃがみこんで手を差し出し、それにモモタロス達は乗り込んだ。
「あ…あ…」
「で、デカイなぁ…」
さくらとケルベロスはオーブを見上げながら言った。
「お前達は?来るのか?」
「…!」
さくらは息を飲み、そして頷いた。
「分かった。くれぐれも無茶だけはするなよ」
そう言ってオーブはもう片方の手のひらを差し出し、さくらとケルベロスはその手のひらに乗った。
オーブはゆっくりと立ち上がり、緩やかに浮き上がった。
「シュゥゥ…ワッチ!」
オーブは全員を落とさないように飛び上がった。
二人は大きな広場に来ていた。
「んん…?明るい?」
「見て、いつの間にか地球に来ているわ」
百合は遠くにあるステンドグラスを指さした。
いつの間に下がっていたのか、ステンドグラスの外には青い空が広がっており、部屋の中を青い光が満たした。
「一体何で…」
すると、急に光が無くなり、二人の前に謎の男が光に照らされて現れた。
「やあ、零君、百合ちゃん。久しぶりだね」
「…誰だ?」
「私を覚えていないのかい?…まあ、無理もないか。君達と会ったのは君達が赤ん坊よりも前だったからね。覚えていないのも無理はない」
「待って下さい。私は貴方みたいな人とは会ったことがありません。嘘なんて言わないでください」
「…フッ、そうだな。君達は本当に大きくなった。そして強くなったね、柊零、藤森百合。いや、プロトゼノセルNo.0とプロトゼノセルNo.100」
「ゼノセル…ゼノ細胞だと?」
「プロト…ゼノセル?」
「ああ、そうだとも。君達は私の実験体の中の一人でしか無かった」
「どう言う事だよ!」
「そうだな…私は数年前、神々の闘いを見た事がある。その神々は全て死に絶え、消滅した。だが、神々は完全には消滅していなかった。神々は微量な粒子や細胞を残していた。私はそれらを回収し、実験に実験を重ね、百種類以上のゼノ細胞を作り出した。しかし、殆どは死に絶え、私の研究も無駄になるのか、と絶望さえした。しかしだ。No.0とNo.100の二種類は生き残り、私はそれらを複製し、そして複製元の二つのゼノ細胞を異世界へと飛ばし、宿り主を探させた。二つのゼノ細胞は無事宿り主を探し、その胎盤の中へと入ってその宿り主の子供となった…生まれてきた子供はどちらの親にも似ない子供となった。そして、片方は被虐の人生へと進み、もう片方は短命の人生を歩み、若くして命を落とす宿命へとあった。そして、双方とも強大な力を手にし、世界を駆け回るようになった…これがそのお前達だ」
「…つまり、俺達のこれまでの人生は…」
「全て…この身体が仕組んでいたって事…」
「ああ。…あるいは、今は死後の世界で、その細胞が君達に幻を見せているのかもしれないなぁ…」
そう言って男がニタリと笑うと、二人の前に過去に倒した敵達が現れた。
「ウガァァァァ…!」
「ルシフェル…!」
「ハァァァァァ…!」
「ファイエルまで…!」
敵達の目はどれも黒く、群れを成して二人に近付いて来ていた。
「そんな…そんな…!」
「あ…ああ…!」
二人は一歩一歩後退していき、二人は背中をぶつけた。
「………!」
「………!」
もしかすると、これも幻の一つなのかもしれない。
これは幻なのか、本物なのか。
そんな思いが頭をよぎる。
「う…」
「はっ………!」
「うわあああああああああ!」
今回はここまでです。
なげえよ(直球)
今までの過ごしてきた時間は全て幻だったのか。
それとも、肉体に刻まれた宿命の中だったのか。