ブゥーハハハハハ!
零、百合、そしてイマジン達とナオミは買えるだけの食料を勝って機動六課庁舎まで戻っていた。
「しかし本当に重いねこれ、おっと」
全員は両手では抱えきれない程の荷物を持ち、前を見るのも精一杯だ。
おまけにすごく重いと来ているので足腰も無事では済まない。
「あっ!?」
「どうしたんですか?モモタロスさん」
零はモモタロスの方を向いて聞いた。
「こ、腰をやっちまったああ…わりいが冷コー、俺の分も持ってくれねえか?」
モモタロスは片手で腰をおさえながら言った。
「わ、分かりました。頑張ってみます」
そう言って零は百合やイマジン達に手伝って貰い、零の持つ買い物袋の上に何とか乗せた。
その次の瞬間だった。
「ぐおおっ!?」
「え?」
「まさか?」
「嘘でしょ?」
零はゆっくりと荷物を降ろし、片手で腰をおさえ始めた。
「腰が痛い…」
「くぅ〜…」
零とモモタロスは全く同じ姿勢で腰をおさえていた。
「ハハハ!二人共全く同じポーズだー!」
「確かに同じだね」
「二人共笑ってる場合じゃないですよ!」
「まあまあ、ここいらで休めばいいじゃない。
「そうや。ちょうどそこに甘味処もあるしのお」
キンタロスが近くにあった店を顎で示して見せた。
「甘味処じゃなくて喫茶店じゃん」
「何でもええやないか。休める事には変わらんし」
「それもそうだね」
「でも、お金はあるんですか?」
「あ…」
イマジン達とナオミは荷物を置いて各々の財布の中身を覗いた。
「…無い!/です!」
イマジン達とナオミは声を合わせて言った。
「仕方ありませんね…」
百合はため息をついて自分の財布を取り出した。
その中身はざっと十万円が入っていた。
「ありがとうございます、百合さん」
「ごめんね〜また今度返すからさ」
「いつも協力して貰ってますし、大丈夫ですよ」
「わーい、やった〜」
「すまんのぉ、おおきに」
「ほら、二人共、歩ける?」
「な、何とか」
「俺も一応は歩けるぜ…」
その二人の足は生まれたての小鹿のようにプルプル震えていた。
「はぁ…だから日頃運動しなさいって言ったのに」
「先輩も張り切りすぎていつも無茶するんだからそんな事になるんだよ」
「……ごめんなさ〜い」
二人はウラタロスとキンタロスに背中におぶって貰い、喫茶店の中に入った。
窓側の方で座り、二人も椅子の方に降ろして貰い、椅子に腰掛けた。
「モモの字、腰は大丈夫か?」
「先輩、腰は大丈夫?歩ける?」
「大丈夫?骨は折れてない?」
「あ、ああ。お前らイイヤツだなぁ…」
「ここで先輩が戦えなくなったら僕達が戦うハメになるからね。そんなのいやだし」
「カメテメエこの野郎!うっ!」
そう言ってモモタロスが立ち上がろうとした時だった。
その瞬間、腰に激痛が走り、モモタロスはゆっくりと椅子に座った。
「お店の中で騒いじゃダメだよ?先・輩」
「スケベ亀この野郎…あいたたたたぁぁ〜」
ウラタロスがモモタロスを抑えた所でリュウタロスが店員を呼び、各々メニューを頼んだ。
「そう言えば零さんと百合さんが付けてるそのヒーローブレスってかなり便利ですよね。色んなヒーローの力も使えますし、とてもカッコイイです!」
ナオミは二人の腕についたヒーローブレスを見て言った。
「いや、それが便利って訳でもないんですよ」
「?何でですか?結構使いこなせてると思うんですが」
「これを使えるようになるのは長期間の特訓が必要で、しかもその特訓も大変で…」
「特訓って、どんな?」
「例えば、ヒーローの力を制御出来る様な身体と体力が必要って事でジープに追い回されて何度も轢かれたり、データから作り出したヒーローの必殺技を段々強くしながら受けていったり…とか」
「い、一番辛いのは…?」
「仮面ライダーだと仮面ライダークロノスね。訳も分からないまま身体に強い衝撃が来るからいつ来るか怖くて怖くてしょうがないわ。ウルトラマンだと、ウルトラマンオーブね。オーブカリバーの必殺技がどれもこれも痛いのなんのって…」
「それは辛そうですね…」
「辛いと言うか、生き地獄よ。幸い医療はすごく整ってるからすぐに治るし、それは良いんだけど完治した途端すぐ特訓よ。これなら死んだ方がマシだって何回思ったのかしら。フフッ」
百合は虚ろな目で虚空を見据えながら苦笑いをして言った。
ナオミにはとても想像がつかないが、それ程辛い事をやって来たのは百合の表情で何となく察した。
「そう言えば、零さんは何故急に腰を?」
「零は少し前までずっと事務仕事だったのよ。おまけに重い物も持たないどころか他のか…人の仕事も押し付けられてたし、疲労とかが溜まってたのかもね」
零の代わりに百合が説明した。
「事務仕事、そんなに辛いんですか?」
「…いや、仕事自体は辛くないんだけど、その量が多いし、たまに手違いで死ん…じゃないや、手違いで来ちゃったりする一般人もいるから、時々その対応もやらないといけないしで、体力が持たないって言うか」
「はへぇ〜、辛そうですね〜、いつもお疲れ様です」
「ありがとうナオミちゃん…」
二人は声を合わせて言った。
すると、遠くの方で大きな爆発音が聞こえた。
それを聞いて店の中はざわつき始めた。
「ナオミちゃん、皆、行きましょう!」
「おう!」
「な、なあ、それはいいけどよ…腰が痛いから身体を貸してくれねえか…?」
「とりあえず私の身体を使っても良いから荷物持って急ぐよ!」
「じゃあ、僕は零の身体に憑いて連れていくよ。キツかったら言ってね」
「は、はい」
「それじゃ、決まり」
そう言ってウラタロスとモモタロスは零と百合に憑依した。
「僕に釣られてみる?」
「俺、ようやく参上!」
零(ウラタロス)と百合(モモタロス)がポーズを決めた。
「よし!早速行こうぜ!」
「うん!時間は…おっと、ナイスタイミング」
時計は二時二分二秒を刺しており、零(ウラタロス)はその瞬間に扉を開けた。
そこにはデンライナーが止まっており、デンライナーへ乗れる空間に入った。
そして、音が発生した地点までデンライナーで急ぎ、デンライナーから直接機動六課庁舎に乗り込んだ。
「おい!大丈夫かよ!」
「早く逃げて!」
零達は局に残っていた職員達を逃がしながら煙の出現元を探した。
「一体どこから…あった!」
零(ウラタロス)は扉の隙間から煙が出ていたのを発見し、ウラタロッドで扉を壊した。
その次の瞬間だった。
「どわっちゃっちゃっちゃあー!」
半分悲鳴にも近い叫び声をあげながらなのはとヴィータが部屋の中から飛び出して来た。
「うわぁびっくりした!二人共大丈夫!?」
ウラタロスは二人を宥めながら聞いた。
「ご、ごめん零君」
「わ、わりいな」
「別に良いよ。それに僕は零じゃない」
「え?」
なのはは零の方を見た。
よく見なくても零にはメガネが掛けられており、雰囲気もなんだか違う。
「…ウラタロス君?」
「そう、正解」
「とにかく、助けに来てくれてありがとう」
「ああ。他の皆も逃がしているから、僕達も逃げよう」
零(ウラタロス)は二人を連れてその場を後にした。
「そう言えば、一体何が起きたんだい?」
零(ウラタロス)は走りながら聞いた。
「ヴィータちゃんと二人でドラゴンクエストやってたんだけど」
「どっかから『どうせゲームをするならリアルなゲームをやろうぜ』って声が聞こえて、ボスキャラのダークドレアムが出てきちゃったんだ。しかも何かに憑依した状態で」
「なるほど、要するにゲームのキャラを現実に出して僕達を倒そうって魂胆か。次の転生者も中々やるね」
「早く倒さないと!」
零(ウラタロス)達は外に出てリュウタロス達と合流し、出てきたボスと対峙した。
「巫女…?」
「の割には随分禍々しい雰囲気だね、何か憑依してるからだけど」
「……」
「何でも良いよ。お前倒すけどいいよね?答えは聞いてない!」、
「俺の強さは、泣けるでぇ!」
リュウタロスとキンタロスが決め台詞を巫女に浴びせた。
「まずは巫女さんの方をどうにかしないと…!」
「でも、どうするんだ?俺の腰はまだ治ってないし…痛たた…」
ウラタロスから解放された零は腰を抑えながら百合の方を見て言った。
「ふむ………あっそうだ!あのライダーの出番よ!」
「あのライダーって?」
「良いからちょっと貸して」
百合は零のヒーローブレスに手をかけ、一人のライダーの強化形態のフォームが描かれたボールをスピンさせた。
「ほらアンタも行って!」
「お、おわああ!?」
百合は零を持ち上げてボールの方に投げた。
『METAMORPHOSE!BLACK RX RIDER TYPE VAIO!』
零は仮面ライダーBLACK RXの強化形態であるバイオライダーを象ったアーマーを装着し、そのまま地面に転げ落ちた。
「それなら腰がやられてても助けられるでしょ」
「なるほど、こいつは最適のライダーだ」
零は身体を液状化させ、巫女の元に向かった。
この状態なら腰の痛みも関係なくぬるぬる動けるので問題は無い。
「な、なんだありゃ?」
「スライム…?」
零は巫女の口から体内に入った。
そして、その紅白の巫女は目を開いた。
「ふっ……」
巫女は身体に力を貯め始めた。
「む……?」
憑依していたダークドレアムも何かの気配に気付いた。
「な、なんだお前は!?」
「うるせえ!さっさと…出やがれぇぇー!」
傍から見れば巫女が一人二役で漫才をやってる様に見えるが、実際はその身体の中で零とダークドレアムが身体を奪い合っているのである。
「ッシャオラァ!」
巫女は身体の中からダークドレアムを追い出し、零もその巫女の中から脱出した。
「私を追い出すとは…中々やるではないか」
「だ、ダークドレアムさんもな…」
相変わらず零は腰をおさえていた。
「お、おい、大丈夫か?」
敵のダークドレアムも流石に心配になってくるほど痛がっていた。
「大人しく…座ってます」
「あまり無茶はするなよ…」
「はい…」
零は変身を解除して周辺にしゃがみこんでいた。
「じゃ、じゃあやろう…勇者共」
「な、なんか乗り切れんがやるしかないのう」
「さあ、かかって来るがいい!…なんか乗り切れんな」
あ!やせいの ダークドレアムが あらわれた!
「待て待て待て待てゲームが違うゲームが違う!やり直しだ!」
ダークドレアムが あらわれた!
「そーそー。よしやるぞ!」
「なんかシュールな光景だな…」
ヴィータは半ば呆れつつ言った。
「お前倒すけどいいよね!答えは聞いてない!」
「もうそれは良いから行くよ!」
「変身!」
「変身」
「変身っ!」
イマジン達はデンオウベルトを装着してガン、ロッド、アックスフォームに変身した。
「変身!」
百合もヒーローボールをスピンさせ、飛び上がった。
『METAMORPHOSE! BRAVE RIDER TYPE QUEST GAMER!』
百合は仮面ライダーブレイブ・クエストゲーマーを象ったアーマーを装着し、手にはガシャコンソードを持っていた。
「これより切除手術を開始する」
「なりきってるねぇ、百合さん」
「さあ、俺達も行くで!」
百合、アックス、ロッド、ガンは横一列に並び、武器を構えた。
「おっしゃー!そんなやつ倒…ん?」
ヴィータは後ろに何か黒い板の様な物が立っていることに気が付いた。
ヴィータはその後ろに回り込み、裏も何か無いか確認した。
裏には何も書かれていなかった。
「なんだこれ?」
ヴィータは板のあらゆる所を触ってみた。
すると、コントローラーの差し込み口の様なものを見つけた。
「ヴィータ、何やっとるん?これなんや?」
はやてがヴィータを見つけ、ヴィータの元に近寄った。
「ヴィータさーん!」
はやてに続いて部下であるボーイッシュの青い髪の女の子とツインテールの女の子がデバイスを装着してヴィータの元に来た。
「スバルにティアナも来たか」
「そりゃああんなのが来たら何事かってなりますよ」
「スバルが行きたいって言ったからじゃ…」
「はぁ…何でもいいけどよ。とりあえずアイツを倒すの手伝ってくれ」
「はい!」
「それで何をすればいいんですか?」
「そうだな…とりあえずゲームコントローラー持ってきてくれ」
ヴィータは黒い板に付いていた穴を触りながら言った。
そして、数分と立たずにスバルがゲームコントローラーを持ってきた。
「これですか?」
スバルはヴィータにゲームコントローラーを渡した。
先刻ほどヴィータがなのはとドラクエをやっていたゲーム機のゲームコントローラーである。
「そうそうこれこれ。よっと」
ヴィータはコントローラーを板に差し込んだ。
すると、戦いが始まる様な音楽と共に板が変化し、ヴィータ達の場所は九十度移動して、板は二つのライフゲージの様な物となってダークドレアム側と百合達側の上空に浮いた。
「これドラクエじゃねーだろ!これロックマンだろ!
ヴィータに怒られて板は元に戻り、ヴィータ達の場所も元の場所に戻った。
そして、板には白い枠と共に百合達の名前や「こうげき」や「まほう」などの文字と白い三角形が表示された。
「なるほど!よし!お前らもキャラクターだ!ほら、はやても!」
「え?は、はい!」
「な、なんやそれえ!」
三人も控えとして百合達の後ろについた。
「よしよし、それじゃあ行くぞ!お前ら!」
そう言ってヴィータはゲームコントローラーを握りしめ、いつの間にか出来ていた椅子に腰掛けた。
途端にヴィータの表情と目が変わり、手慣れた操作で各々のステータスやスキルを素早く確認し、コマンドを打ち込んだ。
そして、その打ち込んだ通りに百合達は行動を始めた。
「まずはアイテムでゲージを回復!」
「魔法で攻撃力アップや!」
「その後は私のスキルでダークドレアムを束縛!」
スバルは素早くダークドレアムの急所に打撃を打ち込み、バインド魔法をダークドレアムにかけた。
「ぐ…!」
「一気に決めるぜ!お前ら!」
ヴィータは最後の仕上げでアイテムを総投資して攻撃力やかいしんのいちげきを出やすい様にして、必殺技のコマンドを選んだ。
『FULL CHARGE!』
『RIDER FINISHER!』
電王達はライナーパスをベルトにかざしてエネルギーを溜め、百合もヒーローボールをもう一度スピンさせてガシャコンソードにエネルギーを溜めた。
「行っけー!」
「ハァァッ!」
「とぁっ!」
『TADOLE CRITICAL FINISH!』
百合はガシャコンソードから高威力の衝撃波を放ち、ロッドもデンガッシャーを投げて狙いを定めてそこにキックを放ち、アックスも飛び上がって空中でデンガッシャーを振り下ろし、ガンはデンガッシャーから高威力のエネルギー弾を放った。
「こんなもの!」
しかしダークドレアムは動じず、四人の攻撃を弾き返した。
「うわあああ!」
「ぐっ!」
「ぬぅっ!」
「ああっ!」
その場で四人は倒れ、後方の三人と交代した。
「ヤベェ…!」
スバル達三人は身構えた。
すると、空の彼方からもう一つのデンライナーが出現し、ダークドレアムに体当たりをした後、ヴィータ達の後ろに止まった。
「デンライナー?」
「何で?デンライナーは一つしか無いはず…」
デンライナーの中から二人の青年と電王に似たライダーが降りてきた。
「黎斗さん、どうやら成功した様です」
「あれは…?」
「確か、大我くんと、飛彩くん?」
すると、空中に巨大モニターが浮かび上がり、一人の男性の顔がアップで映された。
「流石神の才能を持った私だァ!ブゥーハハハハハ!ついに時空すら超えられる様になったとは!ますます自分の才能が恐ろしいィ!」
「うるさっ!」
「なんだこいつ!」
男性は大きく目を見開きながら、高笑いをしていた。
「楽しそうな事やってるじゃねえか。混ぜてもらおうぜ」
「調子に乗ってヘマをするなよ」
そう言いながら大我と飛彩はゲーマドライバーを装着し、バンバンシミュレーションズと新たなガシャット、タドルレガシーをゲーマドライバーに挿入し、仮面ライダースナイプと仮面ライダーブレイブに変身した。
「ハイパー大変身!」
エグゼイドも電王のガシャットを抜き、マキシマムマイティXと金色のガシャット、ハイパームテキガシャットをゲーマドライバーに装着した。
『ドッキーング!パッカーン!』
エグゼイドはマキシマムゲーマから金色のオーラをまとって飛び出した。
『輝け!流星の如く!黄金の最強ゲーマー!ハイパームテキエグゼイド!』
エグゼイドはレベルの壁をも超えた、金色の身体と無敵の力を持つ最強の姿であるムテキゲーマーに変身した。
「患者の運命は、俺が変える!」
エグゼイド、スナイプ、ブレイブははやて達を後ろに下がらせ、三人でダークドレアムの前に立った。
「行くぞ!」
「来い!異世界の英雄よ!私が倒してくれよう!」
「後悔するなよ?俺の強さは、半端じゃねえぞ!」
「さあ、俺達を使って奴を倒すんだ」
「なあに、まだ一ターンしか経ってねえんだぜ」
ブレイブとスナイプはヴィータの方を見て言い、強く頷いた。
ヴィータははっとして気付き、コントローラーをもう一度握りしめた。
「…よし!信じてるぜ!」
ヴィータは三人の行動を選び、Aボタンを強く押し込んだ。
『ガッキーン!キメワザ!』
『ガッチョーン!ガッチャー!キメワザ!』
『ガッシュゥゥーン、キメワザ!』
「はああああああ…!」
三人のライダーはエネルギーを溜め始めた。
「え、とブレイブ!ヴィータ!私も手伝うで!」
「…どうするんだ」
ブレイブは少しだけヴィータの方を見て言った。
「やっちゃえ!合体技だ!」
「よし!」
『BANG BANG CRITICAL FIRE!』
『HYPER CRITICAL SPARKING!』
『TADOLE CRITICAL STRIKE!』
「なのはちゃん技を借りるで!エクセリオンバスター!」
スナイプは陸地で大量の弾丸を放ち、ブレイブとはやては空中で聖なる雷と集束魔法を同時に放ち、その後にエグゼイドが強烈なムテキの乱打を浴びせ、ダークドレアムのHPをゼロにした。
『究極の一撃!』
「ぐあああああーーッ!」
ダークドレアムは断末魔をあげながら倒れた。
『GAME CLEAR! 』
ダークドレアムが倒れると同時に電子音声が流れ、三人はガシャットを抜いた。
そして、時間制限が来たのか、永夢達が乗っていたデンライナーも消えてしまった。
「ウェ!?」
「何故…」
「何で消えた…」
「すまない、どうやら時間制限があったみたいだ」
上空のモニターから黎斗が言った。
「なんですかそれ!」
「恐らく、持って一時間程度なのだろうな。時間制限があるとは思いもしなかった」
「んだよそれ!聞いてねえぞ!」
「まあ、そういう訳だから本物のデンライナーに頼ってくれ。帰ってくる時はちょうど今位に帰ってくればいい」
「はぁ…分かりました」
「君達の健闘を祈る」
そう言って黎斗は通信を切った。
「この私を倒すとは…中々やるな…」
「教えて、どうしてこんなことを…」
百合は立ち上がってダークドレアムに近付いて言った。
「…俺達ゲームのキャラクターは、いつも同じ事しか出来ない、同じことしか話せない。そして、勇者にやられる運命の者も少なくはない…俺達も同じように生きているのに、そこに不満を思いながら勇者達を倒そうとしたら、そこの巫女の身体に憑いた状態で出てきたんだ」
ダークドレアムは巫女の方を指さして言った。
「あの巫女に覚えは?」
「さあな、会ったこともねえ」
「そう…でも、確かに同じことしか出来ないって悲しいわね。決められた運命程悲しいものは無いわ」
「分かってくれるだけで嬉しいぞ…さて、お前らは俺をこの素早さで倒せる程の強さがあると分かった。俺はお前達の戦いには着いていけないが、これをやろう」
そう言ってダークドレアムは手のひらからダークドレアム自身が描かれたヒーローボールを二つ取り出した。
「これは…!どうして?」
「お前が変身するのを見て、それを見て真似して作り、この俺を素早く倒す事が出来たらやろうと思っていた。倒した奴は違うが、お前達は間違いなくこの俺を素早く倒せた。約束通りこいつらをやろう」
そう言ってダークドレアムはヒーローボールを百合に渡した。
「…着けてみていい?」
「ああ、どうせすぐゲームの中に戻ることになるし、ゲームの中に戻れば忘れてしまうかもしれんがな」
「まあまあ、そう言わずに」
そう言って百合はダークドレアムのボールをスピンさせ、飛び上がった。
そして、ダークドレアムを象ったアーマーを装着した。
肩や胸などのアーマーはほとんどダークドレアムの物と同じである。
「どう?どう?」
「ああ…一時ではあったが現実世界に来れて、言いたいことを言えて良かった。さらば───」
全て言い終わらぬ内に、ダークドレアムは光となって消滅した。
「ダークドレアム…」
「……またいつか会いましょ」
そう言いながら百合はダークドレアムのボールを握り締めた。
今回はここまでです!
社長便利すぎるな本当。
それではまた次回!