Muv-Luv LL -二つの錆びた白銀-   作:ほんだ

114 / 121
隔意の遊惰

 

 先ほどまでは、光線級が存在しない対BETA戦としては理想を超えて幻想ともいえるような状況だったが、あくまでそれは十全たる準備ができていればという前提があってこそだ。十分に余裕のあった推進剤と、なによりもCP将校が前線に出ているからこそできた的確な指示。それらが崩れると数という絶対的な暴力で押しつぶされる。

 

『訓練兵諸君、お優しい連隊長代行殿は言葉にしなかったが、貴様らの連携練度低さを嘆いておられた。実機の、それも実弾演習だ。加えて今回に限っては連隊内通信には制限を加えない。存分に励み、学びたまえ』

 その危機的状況を作り出したであろうターニャ本人は、表情こそ変えていないがどこか愉しげでさえあった。全域通信で煽るように意味のない言葉を投げて見せる。

 

 

 

『中隊、いや第二大隊の訓練兵共ッ! この程度で狼狽え騒ぎ立てるなッ!! これよりは大隊残存戦力を統括して行動する』

『00701より第三大隊各機へ。こちらも大隊規模での指揮へと切り替える。詰まらぬ泣き言を漏らす暇があるならば、わずかなりとも列機の抜けた穴を埋めよ』

 

 連携練度が低いとターニャは言うが、間違いなくA-01は精鋭であり、そして今この場にいる面々は幾多の難局を乗り越えてきたのだ。第二第三の各大隊長が指示を下せば、速やかに隊列を再編していく。

 推進剤残量の問題は留意しているのだろうが、慌てて脚を着けるようなこともない。無理な加減速は減らしつつも最低高度からの掃射でBETA先頭群を削り取る。

 

 

 

『フェアリー01からフェアリー各機へ。指示あるまで我が中隊はこのまま巡航速度にて高度を維持したままに観測任務を続ける。推進剤残量には注意しつつ、回避に関しては最低限の機動で済ませろ。また僚機や小隊、中隊のみならず、周辺友軍の動きにも留意せよ』

『『『了解ッ!』』』

 

 まりもがオープン回線ではなく中隊内に限定して指示を下す。

 武たち第一中隊の新任少尉たちも動揺はあったが、まりもから指示が与えられれば、即座に意識を切り替えられる。こちらも具体的な指示には乏しいが、急ぎ対応する局面ではないと言われれば落ち着けるものだ。

 

 武も推進剤残量は気にかかる。推進剤や弾薬に関しては出撃前に計器にて確認したが、マガジンやタンク内を目視で追認したわけではない。が、今はそれを確かめる術がない。

 

(いや……推進剤も予備弾薬も、機体挙動から推測できる限りは満載に近い。危機感を煽るための欺瞞情報ってところか?)

 

 弐型の搭乗時間は短いが、ユーコンにて開発衛士の真似事程度には乗り続けていたのだ。ある程度の機体挙動は身体で覚えている。とくに追加燃料タンクとしての役割を担っている大型化された脚部は、そこに燃料が入っているかどうか位は戦闘機動に入れば気が付ける。

 その感覚を信じる限り、今のところおかしいのは表示データのほうだろうと思える。このあたりの判断は武だけでなく、他大隊長の言葉からもそのように伺える。

 

 

 

『CP将校殿のお言葉通りだ。これほどまでに整えられた「演習」条件だ。他中隊の動きを見るだけでも意味はあるさ』

『それにマリニからここまでさほどの距離は飛んでないだろ? 周辺敵勢力の掃討さえ完了すれば、脚部走行でも帰りつける。なんなら機体は担いでやるから強化装備で歩いていってもいいぞ?』

 

 併せて孝之と信二とがわざとらしいまでに笑ってくれるならば、緊張も和らぐ。眼下にはBETA群中核ともいえる集団が見えるが、光線属種のいない現状、空を飛ぶ戦術機にとっては脅威足りえない。そして部隊中核たる第二第三大隊が再編され攻勢に転じた今となっては、戦力的予備ともいえる武たちの第一中隊が慌てて無理な機動を取るほうが連隊内の連携を崩す。

 

 加えて信二が言うように、マニリからこの戦域までは巡行飛行にて1時間弱。よほど極端なまでに推進剤を使っていないければ十分に余裕はあり、また走ったとしても3時間程度の距離だ。冗談に紛れさせてはいるが、本当に推進剤残量が少なければ脚部移動で戦線を維持しながらの段階的後退もできる。ある程度マリニまで近づけば、あとは中隊ごとに帰投して弾薬と燃料とを補給すれば良い。

 

 

 

『ふむ……フェアリー01、ちょっとした雑談だが、元訓練教官としては他大隊の動きをどう評価するかね?』

 

 今もなお第一中隊の任は後方の他中隊へ向けた観測であるが、通常の戦場ならば最前線のわずか後方で緊張を強いられる立場だ。だが今は光線級の存在しない状況下のために、一定高度を半ば自動的に周回するだけで十分以上に情報が集まる。本来なら偵察用UAVで対処するような任であり、こうなると機体を操作する衛士は一定航路を取るためにも無駄な機動をしないほうが良く、むしろ自動操縦のほうが望ましいくらいだ。

 結果としてこの時点で最も忙しいのは中隊付きCP将校たるターニャだ。その本人が雑談というのならば、まりもも付き合わなければならなくなる。

 

『はッ、不測の事態ではありましたが、少しばかり動揺が大きすぎます。XM3と改装された不知火、なによりも光線属種不在というあまりにも容易な状況に慢心していたと言われても反論の言葉を持ちません』

『なるほど慢心、か。そのあたりは貴官だけの責ではあるまい。まあ大隊規模での連携判断に欠けるのは、この連隊に担わされた任の特殊性を鑑みれば仕方がなかったとは言える。とはいえ仕方がないで放置するわけにもいかん。これから身に付けてもらわねば、な』

 

 そして答えるべきかを一瞬逡巡はしたのだろうが、まりもは他大隊長ではなく、中隊員を諫めるような言葉を選ぶ。はぐらかされた形ではあろうが、ターニャも特に追求せずに軽く流す。雑談という体を崩すつもりはなさそうだった。

 

 そして武からははっきりとは聞き取れないが、後席にてターニャはまりもとの会話の合間にもいくつか他にも指示を出しているようだった。あるいは「撃墜」と判定された各機へも、同様の問いを発しているのかもしれない。

 

 

 

 上空からの観測任務を続ける武たち第一中隊にとっては、最前線のそれも戦闘中とは思えないどこか緊張を欠く弛緩した時間だったが、他部隊も当初のように順調にBETA先頭集団を漸減しつつあった。

 たしかにいきなりの僚機消失の際には一瞬の混乱を表したが、バラバラに動いていた四個の中隊がいまはいくつか数を減らしたとはいえ二個の大隊として機能し始めている。接敵当初のように各中隊どころか小隊単位で各個に目標を想定するのではなく、簡易的ではあるが薄く防衛線を構築するような陣形を形作っていた。

 

(ああ……そうか。よくよく思い出せば「連携」ってのは、まあそういう意味だったよな……)

 

 三度目ともいえるこの世界線において、武自身は間違いなく今までの経験上最も恵まれた環境にいる。それはA-01のみならず、在日国連軍や帝国全軍にも言える話だ。

 

 対BETA戦においては、軍事的な「全滅」の意味が変わるほどに前線での損耗が激しい。その場において他部隊との「連携」と言えば、一般的な意味合いとは別に、抜けた穴をいかに埋めあうかという咄嗟の判断の積み重ねだ。

 ユーラシアの各戦線においては、BETA先頭集団と接触した瞬間に戦術機大隊が文字通りの意味で半壊することさえ日常なのだ。満足な支援砲撃がなければ僚機が一瞬で突撃級に引き潰されることは珍しくもなく、逆にAL弾頭による重金属雲が形成されるような恵まれた環境であれば今度は通信環境に支障が出る。

 

 

 

 A-01は隊員の選出基準が00ユニット候補ということもあり、実戦経験の有無などはさほど重視されていなかったはずだ。加えて投入される任務にしても夕呼が必要とする局面の限られてきたため、技量は高く極地的な戦闘には強いが、大規模防衛戦などの戦術機連隊としての当たり前の防衛ライン構築の経験が浅い。

 しかし喀什攻略に際してA-01に求められる能力と目的とは、侵攻作戦ではあるもののXG-70dの周辺に展開しつつ、それを防衛するというものだ。間違いなく激しい損耗が想定される状況であり、先の世界線における武の体験からしても、死に逝く戦友たちを置き去りにしながらの侵攻が確実視されてしまう。

 

 寸前まで隣で語らっていた者たちが消え失せたとしても、嘆く間も与えられずに先に進めなければ「あ号標的」にまで到達することすら困難だろう。場合によっては武の経験通りに部隊を分け、最低限を割り切った編成で文字通りに決死の殿軍を命じる必要さえあるだろう。

 

 その際、残る者も進む者もどれほど割り切って対応できるかは、やはり経験の差というものが出る。いま疑似的とはいえ、戦場でそれを体験させられているのは、意味があるはずだ。

 

 

 

 

 

 

『さて第一大隊の訓練兵諸君、そろそろ貴様らも仕事の時間だ。第二中隊全機、砲撃用意』

 

 武が戦場ではあってはならぬほどに意識を飛ばしていたが、後席のターニャはやはり状況の推移を十全に捉えていたようだ。

 

 第二第三大隊からなる本体が前線を構築し、突撃級を主体としたBETA先頭集団の足止めに成功している。その後方から移動速度が異なるために分断されていたBETA中核集団が押し寄せ、理想的なまでに敵が密集している。

 しかも光線属種の居ない戦場だ。いまならば突撃級は難しいがそれ以外であれば、間接砲撃でかなりの数を一掃できる。

 

『ッ!? 00201、了解ッ!!』

『ブリッジス訓練兵、いかに温いとはいえここは戦場だ。新兵だからとあの土木機械共は区別してくれんぞ』

 

 だが意識が逸れていたのは武だけではなかったのか、第二中隊を預かる立場であるはずのユウヤの反応が遅れた。ただそれも初陣の、しかも慣れぬ隊員を率いてのいきなりの中隊長抜擢だ。無理もないと言えなくはない。

 ターニャも余裕があるためか、ユウヤの反応の遅さを軽く叱責するだけに留めた。

 

 

 

『では、先の予定通りに、そちらの射撃管制はピクシー00に一任する』

『ピクシー00、りょうかい』

 

 射撃管制に限らず、第二中隊のCP将校としての任はコールサインをピクシー00とするイーニァに当てられている。普段のナビゲーターとしての立場との違いからか、いつものおっとりとした幼さではなく、どこか緊張した声で答えが返ってきた。

 

 しかしそんな声の危うさとは別に、中隊内への指示は的確だったのだろう。分隊ごとにわずかずつずらされた間接砲撃は、10秒ほどの連続投射とその後の効果確認、そこから目標地点を変更しての再度の投射。それを幾度となく繰り返し、無駄に重なることはなくBETA群を粉砕していく。

 陸海を問わず砲撃の効果とは、射爆理論まで厳密に考えずとも、突き詰めれば確率論だ。環境から受ける各種の変数ゆえにどうしても揺らぎが生じる。ただ今回に限れば観測データは今まで武たちが集めていたものだ。気象条件も電波状況も良好な中での観測だったために、その精度は高い。

 

 今まで他中隊が突撃砲で対処していた以上の数が、瞬く間にレーダー上から消えていく。砲兵が「戦場の女神」と崇められるのが、実感できる戦果だった。

 

 

 

 一般的な榴弾砲からすれば、Mk-57はその携番通りに57mmと小口径だ。たしかに口径長は長いが、HE弾での面制圧においては長砲身のメリットは無い。当然、155mmと比すれば制圧火力としては個々に見れば劣る。しかし飛行中の戦術機からの投射であり射程においては高度と機動性とで相殺でき、また総火力においてはその発射速度でカバーできてしまう。

 

 戦車級を主体とする中核集団であれば、中隊規模のMk-57からの間接砲撃であっても、十分以上にその数を減らしていける。さらに第二第三大隊がBETA先頭群を押し留めるどころか削り崩す勢いなのを見る限り、第二中隊の直掩として下がってきた武たち第一中隊の出番はなさそうだった。

 

「ああ、そうだ。フェアリー02からピクシー01へ。『死の八分』を無事乗り越えられたようでなによりだ」

『ッて、タケルッ、オレは何もっ!!』

「第二中隊長殿、ご自身の隊の成果を誇るべきでありますよっと。見てみろよ、初陣としちゃあ十二分に誇れる撃破数だぜ?」

 

 後方からの圧が減ったことで、前線の部隊も殲滅速度も上がっていく。

 それを見て余裕があると判断した上で、緊張しているであろうユウヤを気遣って、武は気楽に声をかけた。ただユウヤ自身が自分のもたらした結果に納得できていないのは、その顔を見ればわかる。

 

 当初は嫌っていたらしい帝国式の近接戦闘技術さえ習得して、弐型を万能の戦術機として作り上げたという矜持もあるのだろうし、自身の技術を試してみたいという欲があることは武であっても察することはできる。

 だが、それでも近接密集先頭など、避けることができるならば避けるに越したことはない。たとえいまこの戦場が想定以上に実戦運用試験や衛士の技能向上に向いた環境だと言っても、新兵と病み上がりで構築された中隊を前面に出すことなど、さすがにターニャでも選ばないはずだ。

 

 

 

 

 

 

『しかしこれは少々想定状況が簡単すぎたかね?』

「は、はははっ……A-01の練度が予想以上にこなれていたとお考えになられてはいかがでしょうか?」

 

 武がこっそりとユウヤを気遣っていた横で、戦域全体を見渡しているターニャはどこか不満げに機内通話に限定して言葉を漏らす。さすがにこれ以上に無茶な条件での出撃は避けたいので、武は笑ってごまかすしかなかった。

 

『たしかに香月大佐が選出した人員は優秀であるようだな。弐型の実戦運用という面でも、貴様が指摘していた予備マガジン交換のモーションなども改善はされ、問題は解消されている、か』

 

 続けてターニャが言うように、ユーコンで初めて乗った時以上に弐型の挙動は洗練されていた。不知火から大きく変わった突撃砲の予備マガジン収納位置による動作干渉なども、基本は軽く屈むことで交換時間を短縮する方向で調整されている。今のように跳躍中ならば少し膝を上げるくらいで解決する。

 

 

 

『あとは……この支援突撃砲用の中刀か?』

「こちらは巌谷中佐殿のお言葉通り、問題が山積みではあります。ですが……」

 

 ターニャが言い出したことだが65式近接戦闘短刀を銃剣として装着する案は、87式突撃砲であれば同時に追加されたウィンチワイヤーとの併用でほぼ問題もなく各部隊に広まった。ただ支援突撃砲の場合は長砲身化の関係でもともとが重く、そこに銃剣を装着することでのバランス悪化が問題視されており、ウィンチワイヤーがあっても衛士によっては装着していない場合もある。

 

 さらに74式長刀の代替として、支援突撃砲に中刀とも言えるほどの刀身を持つ新規設計の近接戦闘刀を装着した物を技術廠に依頼していた。そちらも先日試製02式中刀として提供された。一応は要望通りに支援突撃砲に装着することも可能だったが、近接兵装としてはトップヘビーに過ぎ、取り回しは悪かった。

 

『ふむ? 今もこうして持ち歩いているところを見るに、それなりには使えるものか?』

 

 言い淀んでいる武の言葉を促すように、ターニャが重ねて問うてくる。こうまで問われると、戦闘中とはいえ、機械的に周辺警戒を続けていたる身としては答えざるを得ない。

 

 

 

「74式長刀の代替として考えれば使えたものではありません。また突撃砲のオプションが105mm滑空砲ユニットに変更されたことでの携帯段数増加を考慮すれば、今後は増加装甲に突撃砲三門という形か、あるいは四門すべて銃剣装備の突撃砲が標準となるやもしれません」

『続けたままえ』

「はッ、ですが元より74式長刀を携帯するならば滑空砲ユニットは当然持ち込めず、支援突撃砲の砲撃精度を維持しつつ近接戦闘にも対応可能である点は、やはり優位であります。なによりも74式に比べ複雑な取り回しが困難なことは確かではありますが、むしろそれらはモーションの単純化、運用の簡易さを齎しております」

 

 74式長刀は元より戦術機そのものを一本の刀と見立てるような、示現流の考えを基礎としている。つまるところは剣術に精通していればその本質を導き出せるが、一般の衛士であれば使いこなすことが難しい。

 だがこの試製02式中刀はウィンチワイヤーに突撃砲本体を懸架して使うこともあり、複雑な挙動は取れない。単純に突き出すき斬り払うか、打ち下ろすかといった程度だ。

 

『ああ、なるほど。打撃支援や砲撃支援といった中・後衛が使うならばむしろ適しているとも言えるのか』

「まあ正直に言えば、その際でも87式の方が使い勝手は良いとは思われますが」

 

 苦笑気味に武は口にするが、結局のところ無理に使うほどではない、としか言いようがない。だが、機体すべてが近接戦闘用のブレードエッジとも言える武御雷であれば、使いどころはあると武は考えていた。

 

 

 

 

 

 

 そんな風に武とターニャとが雑談に興じている間にも、第二中隊の砲撃を背景に、A-01は正対していた連隊規模のBETA群の殲滅を順調に進めている。もうしばらくすれば兵士級などの足の遅い小型種で構成された後続集団とも接敵するだろうが、それらは戦術機にとっては障害にもならない。戦車級と要撃級とが排除できれば、あとは単純な掃討戦に移るだけだ。

 

『さて、そろそろ観客の方々がお見えになられる。訓練兵各員は一層励みたまえ』

 そして後方から連絡でもあったのか、ターニャが増援の到着を口にする。同時に味方の識別信号を発する戦術機大隊の接近が感知できた。

 

『こちらソ連陸軍第211戦術機甲大隊、大隊長ラトロワ中佐だ。今より我が大隊は貴官らの支援に入る』

『こちら在日国連軍、ターシャ・ティクレティウス少尉であります。支援に感謝を。まあ……御覧の通り、土木機械どもの駆除を実弾演習を兼ねて実行している最中です。お願いするようなこともありませんが』

 

 しかしターニャはいつも通りの気怠さで、明確に所属を名乗ることもなく、支援そのものが不要であるかのように応える。

 

 

 

(いつもの社会主義嫌いというか、遅れてきたことへの当てつけか、それともXM3搭載機の動きを見られることへの拒否感か……まったく判らねぇな)

 

 ソ連軍から支援として来たのはSu-37系列とみられる機体で編成された戦術機大隊だ。A-01が先行して出撃してきたということもあるが、少しばかり遅い到着ともいえた。しかも支援の航空機などもない。

 ターニャでなくとも、ソ連軍の思惑を邪推したくもなるが、そもそも増援自体が不要だともいえる。むしろこの場に足の遅い機甲戦力などがあれば、それの護衛のために戦術機の機動性を損なわれる。A-01が戦術機のみで構成されているからこそ、ターニャが駆除と言い切るほどに安定した行動がとれていたとも言える。

 

『……なるほど、たしかに我らの出番はなさそうだな。後ろからゆっくりと観戦させてもらうとしよう』

 ターニャの悪意は相手にも伝わっているのは間違いない。ラトロワと名乗った中佐も、嗤って傍観を選択する。

 

 

 

『さて、訓練兵の諸君。歴戦にして万国の労働者様たるソビエト衛士の方々が貴様らの働きを評価してくださるようだ。無様を晒すことなく、早急に処理したまえ』

『『『了解ッ!!』』』

 

 あとは文字通りに排除だけといえる程度には数も減っている。具体性のないターニャの指示ではあったが、ここで遅れを見せるようではこの後どれほどの無理難題が積み上げられるか分かったものではない。

 連隊員全員の団結した返礼とともに、残敵の掃討はより激しく続けられた。

 

 

 

 

 

 




ルビコンでの仕事が何とか一区切りついたので更新できました。

え~光線級がいないと対BETA戦は緊張感がないっと言いますか、戦術機vsBETA(光線級抜き)だと本当に速度も射程も戦術機側が優位すぎて、これたとえ脚部走行限定でも引き撃ちで終わってしまうなぁ、と。
ちょろっと書いてますが、ここに戦車とか自走榴弾砲とかがいたほうが、それらの速度に足を引っ張られて危険なことになってしまいそうです。オールTSFドクトリンは、全軍の機動速度を高く保てるという面で十分に意味があのかもしれません。

で、ジャール大隊出てきただけで終わってしまいましたが、たぶんカムチャツカは次でサクッと流して終わらせる、予定です。


TwitterというかXやってます、あまり呟いてませんがよろしければフォローお願いします。と言いますかシャドウバンの禊の最中なので、避難所作ってます。でもなぜか模型系というかWarhmmer40のだらけです。
https://twitter.com/HondaTT2
https://twitter.com/Honda2TT (避難先)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。