「建造ドックの修理が終わりました!」
『オワッタヨー』
明石と妖精たちの協力でついに建造ドックが復活した。現在は金剛が暴走して穫ってきた資源があるから焦る必要はないのだが、やはり早く人員をある程度確保したいと思った俺は建造ドックにて資材の投入を試みていた。
「軽巡洋艦を希望したいんだが頼めるか?」
建造ドックにて俺の専属妖精に頼んでみる。
『ソウデスネ、クチクカンガデルカモデス』
「駆逐艦なら問題ないな。出来ればで良いので軽巡洋艦を頼む」
『リョーカイデス!』
困ったことに誰が建造されるのかはランダムなのだ。このあたりは妖精たちの気まぐれらしい。俺は6回分の建造を頼んだ。
「……」
妖精たちが資材を建造ドックの奥へと運んでいく様子を眺める。燃料、弾薬、鋼材、ボーキサイト、最後に様々な大きさの謎の黒い箱……あの中には……
「……産み出す以上、どんな娘であっても絶対に沈ませはしない」
それだけは絶対だ。
ーーーーーー
「はっ!」
「…フッ」
ボクが横凪に払った木刀を金剛さんが頭を下げ、右手でいなす。続けて振ろうとするがすでに彼女に距離をとられていた。右足を前に出すのとほぼ同時に続けて左足を動かし、床を滑るように移動して再び金剛さんに迫る。
「…せいっ!」ブンッ
「おっと」バシイッ
金剛さんがボクの木刀を両手で挟み込んで止め、そこから足払いをかけてくる。
「…っ!」
視界が回転する。
「うわっ!?」
「うーん、ちょっと足払いに弱すぎですネ」
最近のボクの日課は武道場で金剛さんと近接戦闘の訓練をすることだ。毎回、金剛さんに有効な攻撃が当たらない。
「普通そんなことしてくる深海棲艦はいないよ……」
「そうデスケド、相手にやる分にはけっこう効きますヨ?」
「そうなの?」
「起き上がるまで無防備になる場合が多いデス」
「そもそもボクの足払いで転ばせることが出来るの?」
「せっかく刀があるんデスからワザとよけさせたりして相手の重心が崩れるように誘導出来れば……」
「金剛さん相手だと全く隙がない件」
「そんなことないネー」
「見つからないよ……」
「少しずつ重心のコントロールも上達してるのでそのうち出来るようになると思いマス」
「うん」
「さて、シャワーを浴びに行くデスヨ」
「はーい」
「……」
「~~♪~~~♪」
シャワー室で金剛さんの体をあらためて観察する。無駄な贅肉がなく、出るところが出ている大人の体だ。爆乳ではないけど胸も大きいし……前に触らせてもらったことがあるが柔らかかった。自分の体を見る。泣けてくる。
「どうかしたのデスか?」
「いや、本当に金剛さんってスタイルいいなーと思って」
「健康に気を使ってるデス」フフン
「……どうやったら胸って大きくなるの?」
「……人に揉んでもらう?」
「えっ」
「残念ながらワタシはテートクに揉まれたことないデス」
「そ、そう……」
(つまりもとから大きいと……羨ましい)
「大きくしたいならワタシが揉んであげるデス」ニヤッ
「えっ!?ちょっとそれは遠慮……って何でこっち来るの!?」
「実は前から皐月の肌には興味がありマシテ」ズイッ
「え……」タジッ
あっという間に金剛さんに捕まった。
「すっごい柔肌デス……」サワッ
金剛さんに触れられた瞬間、体に電気が流れたような感覚がした。
「ちょ、ちょっと金剛さん!?や、やめっ、うひゃっ」
(な、なんかよく分からないけど触り方が!)
「も、もちもちデス……」プニプニ
なんかかなり際どいところを触られている。というかさっきからなんか変な感じがーーー
「んあっ!?あっ、ちょっ、ぁん……」
「……なんだかイケナイことしてる気分デス」ゴクッ
(自覚あるならやめてよぉ……!)
変な気分になってきた。これはマズい気がする。
(助けてええええええええええええ)
ガララッ
「お姉さまー?」
シャワー室の入り口が開き、榛名さんが顔を出す。
「提督が12:00に食堂に集合するようにと言って……何してるんですか?」
「まだ十分時間がありマスネ。……これデスか?皐月の柔肌がどのようなものか確かめていたのデス!もちもちデス!」
「は、榛名さん、助け……」
「もちもち……ですか。榛名もいいですか?」
どうやら榛名さんも興味を持ったらしい。
「もちろんデース」サワッ
「な、何で金剛さんが返事して……ぁぅ、んっ」
さっきから変な声が出てるし体がおかしい。力が入らない。
「金髪幼女の乱れる姿……エロいデス……」
幼女言うな。
「な、なんだかイケナイことしてる気分ですね……あ、本当にもちもちしてます」プニプニ
「あっ、あっ、んぁぁ、ひぅっ!?」
(ほ、本当にマズい!やめて、これ以上は───)
「「病みつきになります(なるデス)」」
(助けて司令官!助けてえええええええええええええ)
ーーーーーー
俺は食堂にて全員の集合を待っていた。まだ来ていないのは皐月と金剛姉妹の3人だ。
「……ん、来たか」
食堂入口に3人が姿を現す。何故か皐月が泣いているのだがこれは?
「えー……?」
皐月は俺の姿を見つけると駆け寄ってきて背後に隠れた。
「う……ぐすっ……」
そのまま俺の背中にしがみつくと金剛と榛名の2人を涙目で睨み始める。
「さ、皐月、Sorryネ……」
「ご、ごめんなさい……」
「うー!」
必死な顔で謝る金剛と榛名に対して皐月が威嚇する。
……わけが分からない。みんなもポカンとしている。
「一体何をしたんだ?」
「ちょっと肌を触りマシタ」
「腕をぷにぷに」
(……それだけでこんなになるのか?)
「うー!」
「……胸を揉みマシタ」
「……太ももさわさわしました」
「……」
「皐月の肌がもちもちでつい……」
「病みつきになってしまいまして……」
(何やってんだよ……)
「もちもちねえ……」
「……う?」
さっきから「う」としか喋らない皐月の頬に手を添えると優しくなでてみる。
「確かにもちもちだな……」
最初はビクリとした皐月だが、なで続けるうちに自分から頬をこすりつけてくるようになった。
「う…んぅ…うー♪」スリスリ
((((((何だこの可愛い生き物))))))
「さ、さすがテートクデス……」
「皐月ちゃんが一瞬で……」
幼児退行したままだが。
「……本題に入っていいか?」
「うー……」
「なでててやるから話をさせてくれ」ナデナデ
「う♪」
「えー、それでは本日よりこの佐世保鎮守府に新たに着任する艦娘たちを紹介する!」
俺は妖精たちに無線で連絡を入れた。
「連れて来てくれ」
『イマショクドウノマエニイマス。ケッコウガンバリマシタヨ』
「ありがとう」
食堂入口から6人の艦娘たちが姿を現す。先頭はおっとりした感じのオレンジ色の制服を着た茶髪のくせっ毛少女。2、3番目は緑と白のセーラー服に同じく緑のスカートを着た皐月と同い年ぐらいの茶髪のショートカットの少女とロングヘアの姉妹らしき艦娘。4番目はまた皐月と同い年ぐらいの紺色のセーラー服を着た薄紫色の横髪だけが長い少女。5、6番目はともに目のやり場に困る格好だ。下着がギリギリ見えないくらいの長さのセーラー服を上だけ着た齧歯類のような前歯を見せる少女と丈の短い青と白のセーラー服(袖無し)を着て頭にウサミミのような黒いリボンを付けた金髪少女だ。
「入って来た順に挨拶を頼む」
「軽巡洋艦神通です。よろしくお願いします」
「睦月型駆逐艦の一番艦の睦月にゃしい」
「同じく二番艦の如月ですわ。ふふっ」
「同じく三番艦の弥生です。怒ってないです」
「駆逐艦雪風です!どうぞよろしくお願いします!」
「駆逐艦島風です!速きこと島風の如しです!」
「6人とも歓迎する。俺がこの佐世保鎮守府の提督をやっている飯野勇樹少佐だ。基本的に規律は厳しくないので敬語を使うかどうかは自由だ。よろしく頼む」
「「「「「「……」」」」」」
俺が挨拶をするが6人の視線は俺の背後から顔だけ出してなでられている皐月に集まっていた。神通が右手を小さく上げて尋ねる。
「ええと、提督、その子は……?」
「まあ、お前たちが来る前に一騒動あってな。気にしないでくれ。彼女は睦月型駆逐艦の五番艦の皐月だ」
「にゃしい!」
「あら、やっぱり妹なのね」
「……カワイイ、デス」ボソッ
「しれぇになでられて気持ちよさそうです」
「ふーん」
「では今から歓迎会を行う。いきなりで悪いが歓迎会の後、お前たちには遠征を頼みたい。まあ、まずは歓迎会を楽しんでくれ」
「「「「「「はいっ!」」」」」」
「やっと遠征部隊が編成出来たな……」
彼女たちを遠征へ送り出した後、俺は今後の出撃予定を考えていた。早いところ、出撃可能海域を増やしていきたい。海域を順に突破していかないと難関海域への出撃許可がもらえないのだ。深海棲艦はその海域の拠点を潰さない限り何度でもわいてくる。普通は見つけ次第破壊するものだが、新人提督のためにワザと残されている海域もある。その中でも有名なのが最後の試練の───
「……司令官」
「何だ?」
膝の上に乗っている皐月が声をかけてくる。
「も、もうなでなくてもいいよ……」
「そうか?何だか気持ちよくてな。お前の髪は本当に綺麗な金髪だよ」ナデナデ
「あ、ありがと……」ナデラレナデラレ
「……ウラヤマシイデース」
「……オネエサマ、コンカイハガマンデス」
「……さて、次の海域は……」
沖ノ島だ。
金剛と榛名の毒牙にかかった皐月。提督は関係ないので憲兵の出番はありません(笑)
今日も鎮守府は平和です。