アイドルは労働者(仮)   作:かがたにつよし

8 / 14
天海春香という無垢な善性が、薄汚れた玲奈ちゃんに襲い掛かる!


7.文字か言葉か、あるいは心か。

 

 

フラコンの販促イベントは例によって765プロダクションとの調整に難航していた。

765プロから1人の参加の確約も得られない状態であったため、宣伝HPの参加者は直前まで「未定」の2文字が踊っていた。

 

フラコンのロケでは秒単位のスケジュールで動いていた彼女達だ。

十中八九来ないだろう。

そういう甘い考えがあったことは否めない。

蓋を開けてみたら、765プロから1名参加することになっていた。

 

 

参加者は、天海春香。

 

 

765プロ、いや現役アイドルを代表するトップアイドルだ。

今の私が、同じ舞台に立って良いような人ではない。

 

だが、これはフラコンの販促イベント。

オーディションでも、歌番組でもない。

天海春香と真っ向からぶつかる事が目的ではなく、フラコンの新作がより売れるよう、観衆に興味を持ってもらうことが目的だ。

 

周囲の人々を観察する。

観客の内、大きな割合を占めているのはやはり、生粋のフラコンファン。

直前までゲスト欄は未定だったのだ。

せめて、765プロから来る可能性くらい記載しておけば、アイドル好きもかなりの割合で交じっていただろう。

とはいえ、私はともかく隣の天海春香は誰もが知っているトップアイドル、道行く人が立ち止まるため、観衆内フラコンファンの割合は時間と共に減少する筈だ。

販促としては、初めはフラコンファンならではの濃いネタでトークを進め、徐々にアイドルファンにも通じるようなライトなネタに移行していくのが良いだろう。

 

 

 

「緊張、しているんですか? 今日が初デビューだと聞きました」

 

考え事をしていて、黙っているのを緊張と捉えられたのだろうか。

緊張しているのは確かだが、初デビューで大勢の観客の所為ではなく、貴女によるところが大きい気がするが。

 

「困ったら私を頼ってくださいね。私の方が、アイドルとしてちょっとだけ先輩なんですから」

 

包まれる手、衣装越しに伝わる柔らかな感触。

人の幸せを映す、金剛石の笑顔。

 

これが、トップアイドル。

 

心が天海春香に持っていかれる。

走っていた思考が一つ一つ欠け落ちて、彼女の海に沈んでいく。

彼女を見ていれば幸せになれる。

彼女を応援していれば全てが上手く行く。

 

そんな理想郷に連れ出されそうになった。

あぁ、これが白亜の城、”普通の女の子”が至る輝きの頂点。

その外周の城壁で踏みとどまる。

 

「ありがとうございます。頼りにいたします、先輩」

 

残念だが、私はそれと縁の無い世界の住人。

そんな夢と魔法の国(ユートピア)は、夢見る女の子だけに旅券(パスポート)を発行しておいてくれ。

 

 

 

「今回のお仕事を頂いたとき、6みたいに飛行機に写真を貼って頂けるのかなって思ってました。そしたら、まさかのムービー出演でビックリしました」

 

こっちは骨皮筋衛門状態の脚本にビックリしたよ。

ストーリー面は765プロが参加する事以外、ガリガリの状態だったんだからな。

まぁ、こんな事を暴露しても売り上げには繋がらないだろう。

むしろ、完成度の低い作品と思われかねない。

 

「いやぁ、765プロオールスターズの参加が確約いただけた時点で企画だけが突っ走りましたからね~ システムは何とかなったんですが、ストーリーがどうにも。天下の765プロに中身スッカスカの脚本を郵送するハメになるとは思いませんでしたよ」

 

おい広報。

貴方は消費者心理と言うものをご存知か。

買い手を不安にさせてどうする。

 

「その脚本も、安曇玲奈さんのおかげで随分肉付きがよくなりました、助かりましたよ」

 

そこで私に振るのか。

コアな話は前半に済ませるのは間違っていないが、やりすぎると天海春香が置いてけぼりになる。

流石に彼女を放置して話を進めるのは不味い。

しかし、私の気遣いは彼女の好奇心溢れる声に砕かれた。

 

「安曇さんって、脚本も書かれるんですか!?」

 

演技か、それとも先輩としての配慮か。

そう勘繰った私の視線は彼女の瞳に吸い込まれ、その認識を改める事になった。

 

天海春香は本心からそう言っている。

 

透き通った声、輝く瞳。

裏表の無いその声は、天海春香は何も演ずることなくここにいることを示していた。

彼女はその存在そのものがアイドル、偽る必要は無いと言う事か。

 

これでは下種な勘繰りを働かせた私が酷く醜く、矮小な存在のようではないか。

道理で帝国のアイドル役の仕事が私のところまで回りまわって来た訳だ。

誰かが彼女の横に並び立った時、彼女は人の幸せだけではなく醜さまで見せてしまう鏡となる。

年頃の女の子ではそのときの卑屈さに耐えられないだろう。

 

しかし、私は鍍金のアイドル。

そういった感情は鉛と重コンクリートの格納容器にしまって久しい。

346プロのハイエンドになることを約束され、約束した身だ。

トップアイドルを相手に気圧されることなく会話が出来る事を証明させて頂こう。

 

「いえ、あくまでもフラコンPと脚本家の御二方に私の考えを述べさせて頂いただけです。そこでストーリーや世界設定に関する話が非常に盛り上がって、その勢いで脚本家の方が加筆修正されたんです」

 

残念ながら脚本を書くという、ゼロから創造する作業は苦手としている。

人類という作家が日々執筆している歴史(ファンタジー)のパロディやそこから得られる不謹慎で小粋なジョークが好きなだけだ。

 

「それでも凄い事です! 私もお仕事でプロの方の取材をすることがあるんですが、ちゃんと勉強しないとプロの方の専門的なお話に興味を持つこともできないんです。プロの方と対等にお話しできる安曇さんは本当に良く勉強されたんですね」

 

天海春香。

貴女は本心からそれが言えるのか。

私は大学に進学し、一応とはいえ専門性を身に着けるため努力した身だ。

プロフェッショナルへの敬意は当然持ち合わせている。

だが貴女は高校生でデビューした後、今までトップアイドルとして走ってきた。

いつ、プロフェッショナルへの敬意を持つに至ったのだろうか。

それとも、生来持ち合わせていた輝きのひとつなのだろうか。

ステージ袖にいる脚本家が照れてソワソワしている。

 

「勿論、帝国のアイドルを演ずるに当たって色々と勉強させて頂きました。でも、そういうことを恥ずかしがることなく堂々と言える様にはなりませんでした。やっぱり、天海さんは生来のトップアイドルなんですね」

 

こちらでも、隣の芝は青い。

 

 

 

フラコンの世界設定やシステム面などコアな話を一通り終えた後は、私の”Ace, High.”のお披露目である。

観衆の中には数人ほど撮影のエキストラとして聞いたことがある人間がいるかもしれないが、誤差の範疇だ。

皆さん初見だと考えてよいだろう。

 

「安曇さん、アレやってください! シーンとさせてから爆発させるやつ!」

 

観客の熱気を冷ましてから帝国の狂気を作り上げる演技の事だろうか。

あの時は連邦側主題歌を先にやったから、その手段をとらざるを得なくなった面が強い。

今日は私が先発だ。

別にそんな小細工をしなくても良いのではないだろうか。

 

(ほら、進行のカンペにも)

 

耳打ちする天海春香。

彼女の目線の先にはスタッフからの演説要求。

演説前の熱気についてはサクラを交ぜてあるから心配するなと。

 

「深夜版CMで少しお聞きになった方も多いかもしれません。安曇玲奈さんで帝国側主題歌”Ace, High.”皆さん盛り上がって行きましょう!」

 

わざわざアップテンポの曲の様に紹介する広報担当、サクラに釣られた歓声。

CMで流れたのはほんの少しなので、ミスリードするような紹介はいかがなものか。

聞き様によっては、テンションが上がるかもしれないが。

幸いな事に、ここは秋葉原。

こういうものも許容してくれる懐の広い土地だ。

 

ステージ上が片付けられ、私とマイクスタンドだけになる。

初めての曲を、今か今かと待つ観衆。

申し訳ないが、その期待を少しだけ裏切らせて頂く。

 

 

 

***

 

 

 

今回は撮影ではないため数千人の観衆を揃えたわけではないが、それでも大歓声を得る事が出来た。

例によって、帝国の狂気が混じった大歓声だ。

歩行者天国を行く人が、何事かとこちらに目線を向ける。

そのまま合流してくれる方もいらっしゃって何よりだ。

今日の仕事の7割5分はやりきった感じがある。

 

しかし、今日のイベントはこれで締めではない。

”Ace, High.”はどちらかと言えば中座であり、トリは天海春香の連邦側主題歌だ。

このまま狂気の歓声を続けるわけには行かない。

 

ゆっくりと右手を天に伸ばす。

腕の高さに応じて歓声が徐々に大きくなってゆく。

撮影では必要であったこの感情も、販促イベントの中座には不要であるから、ここで出し切って頂きたい。

頃合を見計らって頂で拳を作り、素早く締める。

先ほどまでの歓声が幻となり、水を打ったような静けさが蘇る。

 

私が脇に避け、ステージ上が再度トーク形式に作り直された。

 

 

 

「やっぱり、2度聞いても色褪せないインパクトですね。私もこんな役やってみたいなぁって、憧れちゃいます」

 

どうだろうか。

私みたいに苦労して小細工を仕込まなくても、純粋にアイドルとして人々を魅了できる貴女の方が余程憧れるのだが。

お互い、無いものねだりと言う事だ。

天海春香のようなトップアイドルでも、そういう感情を持っていると分かっただけでも儲けものだろう。

少し、親近感を感じる。

 

 

「私は何をやっても”天海春香”なんです。お話の登場人物を違和感無く演じれる安曇さんは、何か演技に秘訣とかあるんですか?」

 

秘訣、と言う表現は正しいのだろうか。

アイドルは女優じゃない、個性を売る存在だ。

天海春香は普通の女の子の究極。

そのキャラクターは”普通の女の子”ではなく、”天海春香”という代名詞で世間に認識されているのだ。

それは、どのような役を与えられようとも変わる事はない。

 

「むしろ、アイドルとしては天海さんのほうが王道だと思います。アイドルは女優じゃありませんから、誰かに定められたキャラクターを演じるのではなく、自分の個性を押し出して行くものです」

 

だから、「何をやっても”天海春香”」とはアイドルとして頂点を極めた存在にだけ許された称号なのだろう。

 

「新人さんからストレートに肯定されると、なんだかくすぐったいですね。じゃあ、安曇さんはどんな個性でアイドルとしてデビューされるおつもりなんですか?」

 

当然の質問。

だがここは公開会場、先程の問答と矛盾無く答えなければならない。

実際、私のアイドルに対する考え方と女優は紙一重。

一般的なアイドルのように個性を押し出さず、脚本や台本を創作者の意図を汲み取って演ずるのが私だ。

 

「私は働く皆さんの味方・希望・見本でありたいと思い、アイドルと言うお仕事についております」

 

私はあるのか無いのか良く分からない個性ではなく、自身の考え方や価値観に基づいてアイドルをやっている。

だから、求められた仕様と期間に従って、仕事を進めていく。

なぜなら、私にとってアイドルとは労働者なのだ。

 

 

 

演技と言えば、天海春香に聞いておきたいことがある。

 

「765プロの方々って、映像切り抜き用の原色の垂れ幕の中で1人ずつ撮影した後、編集で合成して複数人のシーンにしている箇所があるんですが、アレ、どうやったんですか?」

 

秒単位で動く765プロのアイドル達が一向に揃わず、フラコン製作陣が取った非常手段。

スケジュールの確保が出来たアイドルから順に撮影し、合成する事とした。

どう考えても違和感のある映像しか出来上がらないはずだが、蓋を開けてみたらまるで一緒に撮ったかのような演技。

こちらとしては、タネの分からない手品を見せられた気分だ。

 

「えぇと、どうやったかと尋ねられると、難しいですね……」

 

えへへ、と可愛い笑顔で観客の気を引きながら思案の時間を作っているのだろうか。

言葉に出来ないような卓越した技術をお持ちであるのならば、是非言語化の努力を惜しまないで頂きたい。

それは、後世に伝えるべき技術だ。

 

「私1人で、他のプロダクションの方に言うのは恥ずかしいんですけれど」

 

765プロダクションの秘伝であるならば、内緒と言う答えも想定していたが、教えていただけるならば幸いだ。

プレイヤーの皆さんも、あのシーンの撮影方法には度肝を抜くだろうし、ここでひとつ、765プロダクションの株を上げておくのも悪くない。

前半でお世話になった恩返しだ、そう、軽い気持ちだった。

 

次に天海春香が口を開いた瞬間、私は息を呑んだ。

 

 

 

「皆で1つなんです、765プロダクションも、私”天海春香”も。昔は皆でお仕事する機会や一緒にいる機会がたくさんあったから、そんな事意識もしなかったんですけれど、皆少しずつ売れて行って、バラバラでお仕事することが多くなって来ると、急にそう意識し始めたんです。

 

始めは数少ない機会を大切にしようと思っていました。でも最近は皆とても忙しくて、その数少ない機会さえ中々無いんです。皆、トップアイドルですから、こんな事言うのは贅沢なのかもしれませんけど……。

 

今回、765プロオールスターズのお仕事が頂けたとき、本当に嬉しかったんです。また皆と一緒に仕事が出来るって。でも、ちゃんと皆揃ったのはライブシーンだけで、それ以外は少なくても誰か1人は欠けてしまっていて。

 

けれど、それは悲しいことじゃありません。このお仕事の中で一度でも皆が揃うんです。765プロのため、たくさんの方々にスケジュール調整に動いていただきました。じゃあ、私達も765プロとして最高のモノを届けよう、そう皆で相談しました。

 

場所が違っても、時間が違っても、同じ画面に映るなら私達はひとつなんです。

だって、私達は”765プロダクション”だから」

 

 

 

声も、表情も、身振りも。

全てが別次元の存在であった。

特段の練習や、理論に基づいたものではなく、彼女の思うまま表現しているのだろう。

そこに一切の違和感が無い。

 

あぁ、貴女は間違いなくトップアイドルだ。

見てみなさい、観客も、スタッフも、ステージ上の広報担当も貴女に飲み込まれている。

貴女は皆の幸せを映す、夢の鏡。

ただ1人、貴女の隣に立つ私だけは、ありのままの私が見える。

 

 

 

全員呆けていてはイベントの進行に支障をきたす。

誰でも良いから無事な人間は居ないかと探したところ、輝く頭がステージ袖で大きな欠伸をしていた。

良い度胸をしているな、増毛P。

アイコンタクトでイベント進行させるようお願いする。

私のアイコンタクトに気が付いた増毛Pが、ステージ端に居た広報担当を進行表でひっぱたくと、広報担当が再起動した。

 

「あー、失礼しました。ええ、ゲーム内ムービーで765プロが出てくるシーンはほとんどが1人あるいは複数人ずつ撮影して合成したものです。そのクオリティは是非購入して皆さんの目でお確かめください」

 

ディレクターズ・カット版には1人ずつ撮影しているシーンを入れるのもいいかもしれない。

無駄なフィルムが無いから、こういうところで765プロの尺稼ぎをするしかないだろう。

 

「ではそろそろイベント時間も少なくなってまいりましたので、大トリと行きましょう。765プロダクションオールスターズで連邦側主題歌”Idol in the Sky”どうぞ」

 

広報担当の紹介に、今日は私1人ですよ、と訂正しようとする天海春香。

 

「いいじゃありませんか、あの時1度同じ歌を歌った春香さん達は、何人で歌っても”1つ”なんでしょう?」

 

 

 

***

 

 

 

「どうだった、トップアイドルとのトークショウは。君にこれ以上勉強する必要があるとは思えないが、勉強になったか?」

 

残念だが、人間死ぬまで勉強だ。

勉強になったか、と問われると否と答えるべきだろう。

ニュージェネレーションズがバックダンサーをしたライブもそうだったが、自分と全く異なる存在は参考にすることすら出来ない。

嫉妬のような暗く、非生産的な感情が湧き出るばかりだ。

まだ、その辺の大学に潜入して基礎教養の講義でも聴いたほうが余程勉強になる。

 

「増毛Pには、信頼できる人は居ますか? 相手が考えている事が分かる、以心伝心できるような存在が」

 

私には居るだろうか。

大学で得た友人は、価値観こそ合うものの、以心伝心できるような存在ではない。

まぁ、私自身が言葉、それも文書にしないと伝わらないと考えているフシもあるが。

 

「なんだ、天海春香に嫉妬しているのか?」

 

中々可愛いところもあるじゃないか、と増毛P。

勝手に変な印象付けを行うのは止めて頂きたい。

 

「安心しろ。テレパシーで会話できるような人類は居らん。居るとすればそいつはエイリアンだ」

 

有名な映画に出てくる、人差し指をあわせる仕草をする増毛P。

1人だけじゃ寂しそうなので、私もそれに乗って人差し指をくっつける。

季節はずれの静電気が2人の間に走り、思わず指を引っ込めた。

 

「……企画時代に、何個か仕事をお願いしたことがあるが、765プロも昔からあぁだった訳ではない。彼女らもぶつかり合いながら、お互いを理解していったのだろう。トップアイドルが数年がかりで至ったことを、デビューしたての新人が悩む事じゃない」

 

それはご指摘の通りだ。

だが、フラッグシップ・プロジェクトもフロント・フラッガーもボッチプロ、ボッチユニットだ。

悩みようが無い。

 

しかし、ソロ活動が嫌なわけではない。

むしろマネジメントも格段に楽だし、他者に気を使わなくて済む。

特に、アイドル業界といった主張の強い女性が多く居る世界は、魑魅魍魎が跋扈していることだろう。

そんなところで複数人プロジェクト・ユニットに所属すれば、胃袋が溶けてなくなってしまう。

 

女性に必要以上に気を使うのは、前世だけで十分だ。

事務作業を頻繁にお願いする娘には、有名店のお菓子などを包んだこともあった。

マンネリ化しないよう、流行の最先端を我が子に教えてもらうよう頼み込んだ事もある。

また、女の子同士の派閥争いに巻き込まれないよう、プレゼントの質と頻度には細心の注意を払っていた。

全く、非生産的な事に心をすり減らしていたものだと思う。

 

「女の子に、夢を見ている訳ではありませんから」

 

現実は嫌と言うほど知っている。

だからこそ、天海春香の言う765プロの存在がどうしても受け入れられない。

 

「偶にあるぞ、ほんとに仲の良いアイドルグループ。ファンが夢見るアイドル像そのままっていうのがな」

 

まるで神話みたいだが、と付け加える増毛P。

彼女らにとってアイドルは天職だったのだろうか。

輝きを作るのではなく、輝いている部分だけを見せるのでもなく、純粋に輝く存在。

 

「765プロとかはまさにそうだな。彼女ら自身の素質もあっただろうが、プロデューサー等の存在も大きいだろう」

 

プロデューサーか、増毛Pをちらりと見る。

いや、増毛Pでは無理だ。

年頃の多感な女の子を理解できない、残念な存在だった。

 

だが、武内Pなら、シンデレラプロジェクトならどうだろうか。

言葉足らずだが、アイドルと真摯に向き合おうとする彼ならば、灰被りの少女達を白亜の城の舞踏会へ連れ出すことだって出来るかもしれない。

あの無垢な輝き溢れる少女達ならば、ガラスの靴で大理石の階段を駆け上がれるかもしれない。

 

 

 

翌日、代休を取らずに出勤した。

別に労働意欲に溢れている訳ではない、次の週末にくっ付けて長い連休を楽しもうと考えているのだ。

また、一仕事終えたばかりで、増毛Pが次の仕事を持ってくるまで比較的時間的余裕がある。

定時まで小一時間ばかり、仕事で346プロに顔を出していない間の情報収集でもするとしよう。

 

「で、ココなんですか」

 

そうだともウサミン殿。

最近、島村卯月以外のシンデレラプロジェクトの皆さんがよそよそしくて、私に情報を寄越してくれないのだ。

数少ない情報提供者であるウサミンこと安部菜々さんのご助力に頼るしかない。

 

「仕方ないですね……といっても、週末は安曇さんとニュージェネレーションズ・ラブライカのデビューがあっただけですよ」

 

それは私でも知っている。

シンデレラプロジェクトのデビューの方の様子が知りたいのだ。

 

「様子と言われても、菜々も現地に行った訳ではありませんし……。スタッフさん達は、新人のデビューにしては凄い盛り上がったと仰ってましたね」

 

流石、無垢なアイドル達だ。

武内Pは彼女らをファンが夢見るアイドルそのものに育て上げるだろう。

 

「あ、そういえば今日、ニュージェネレーションズの本田未央ちゃんが無断欠席しているとか」

 

……その道は決して平坦ではないかもしれないが。

 

 

 




はるかっか難産。
いや、安産型だと思うけど()

次話からアニメ準拠のストーリー?に戻ります。
感想で皆様からの期待を一身に受けるちゃんみお。
乞うご期待(ぇ

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。