アイドルは労働者(仮)   作:かがたにつよし

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ダァァァアアアアアアア(投稿の音

いまさらですが、玲奈ちゃんってCu/Co/Paのどれなんでしょうね。


4.自分を説明し、理解してもらおう。

群集が爆発した。

 

 

 

それほどの歓声だった。

765オールスターライブのときのような、統率の取れたコールではない。

野生を剥き出しにし、感情のままに叫ぶ歓声であった。

 

まだ一仕事残っている。

彼らを、帝国の臣民にしてやらねばならない。

演説と歌を終えたばかりで、滝の様な汗で衣装と髪は肌に張り付き、喉も体も悲鳴を上げている。

だが、未だ私は彼らの偶像だ。

彼らはその歓声の中、私の言葉を待っている。

 

「帝国、万歳」

 

たった一言。

だが、混沌から秩序を作り上げるのは、それだけで十分だった。

フラコンPが仕込んだ数人のサクラが、先陣を切って復唱する。

行き場をなくした感情が、エネルギーが、熱気が、作られた出口に向かって殺到した。

 

先ほどの混沌からは考えられない、統率の取れた万歳の声が会場に響き渡る。

これこそが熱い狂気。

戦争を仕掛ける帝国の本質。

 

彼らの狂気を一身に受けるのも、悪くない。

世界の独裁者は、こんな気分だったのだろうか。

長く聞いていると、こちらまでおかしくなりそうだ。

万歳の合唱も十分録画できたであろう。

 

私は出てきたときと同じように、ステージ脇へと掃けた。

狂気はまだ収まっていない。

おかしい、やり過ぎたかもしれない。

CPの正統派ライブでリセットする必要があるのではないだろうか。

 

 

 

舞台裏では増毛Pが待っていた。

増毛P、渾身のドヤ顔である。

頑張ったのは私だ。

増毛Pにも世話になったが、ここはプロデューサーらしくアイドルを褒めるところではないだろうか。

なんだか、腹が立つ。

バシン、と女の子が立ててはいけない音のするハイタッチ。

 

「体力が有り余っているようだな。心配しなくて正解だ」

 

初プロデュースアイドル初の大仕事に対して、その感想はいかがなものか。

私は年頃の女の子なんだぞ、一応。

仕事の成功の可否について、心動かすところではないのか。

 

「私が君を舞台に送った時点で成功は約束されている。成功を約束するためにプロデューサーは存在するのだ」

 

……うん、結構。

それでこそ増毛Pだ。

武内Pのように殊勝になられたら、長期休暇とメンタルケアを勧めている。

 

 

 

「クランク・アーップ!」

 

フラコンPの音頭の下、都内某所のホテルのレストランで製作陣+@による打ち上げが行われた。

普段、こういった定時後の飲み会への出席率は非常に低い私であるが、今回は別だ。

アイドル候補生の身には過ぎた事をして頂いた。

そして何より、彼らは日本有数のクリエイター集団でもある。

お仕事の際は、今後とも是非ご一緒させて頂きたい。

そのために、定時後の時間を自分自身へ投資するのはやぶさかではない。

 

そして何より、ご飯とお酒がロハだ。

しかも、その辺の居酒屋のコース呑み放題のようなクオリティではなく、なかなかのものである。

 

「いやぁ、本当に素晴らしい方を紹介して頂いた!」

 

飲食に励んでいると、他への挨拶回りを終えたフラコンPがこちらにもやってきた。

楽しい飲み食いの時間は終わりだ。

 

「346プロダクションは新しいとはいえ、人材が揃っている。そんなところにコネを持っている部下が居ることに、もっと早く気付くべきだった」

 

「彼は、346で企画をやっていたんですよ。お願いしたとき、プロデューサーになってアイドルを連れてくるなんて思いもしませんでした。」

 

「アイドル事業部に異動しまして。今後とも是非、安曇玲奈と346プロダクションをよろしくお願いします」

 

フラコンPは、増毛Pと増毛Pの大学の友人だというADを伴っていた。

いいぞ増毛P。

もっと私を売り込んでおいてくれ。

機会があれば、フラコンだけでなくあなた方が参加する他の作品にも出演させて頂きたい。

 

「安曇さん、素晴らしい演技でした。本当に未デビューなんですか」

 

「えぇ。初仕事も、初CDもフラコン製作陣の方々に用意していただきました」

 

まったく、至れり尽くせりであった。

実績のない新人に此処まで良くしてくれる顧客がいたであろうか。

今後とも、お得意様として末永くお付き合い願いたい。

 

「信じられない、熟練の女優の様でしたよ。やはり、あぁいった演技は元々お持ちのキャラクターなのでしょうか」

 

キャラクター?

あぁ、そんなこともあった気がする。

色々考えた挙句、デビュー作の雰囲気に合わせようとしたんだった。

とはいえ、アレがキャラクターというのは、少々融通が効かなさ過ぎる。

 

「いえ、製作陣の方々とたくさんお話させて頂いて、製作陣の方々が考えるフラコンの世界観、ストーリー、登場人物の性格や背景等を掴む事ができました。それを実現するために、勉強と練習を少々行っただけです」

 

結局のところ、やれといわれた事をやっただけなのだ。

それ以上でも、それ以下でもない。

 

「貴方ほど我々の世界観を理解してくださった人は居ない。どうしても、女性にはこういったミリタリーの世界は受けないようだと、先入観を抱いていたようだ」

 

それは先入観ではなく、真理な気もするが。

しかし、私は趣味ではなく仕事でこの作品に携わっているのだ。

チームが目標を共有する事は、良い仕事の第一歩である。

それぞれが見ているものが違えば、全くちぐはぐな作品になりかねない。

 

「特に、あの演説は素晴らしかった。ただのアイドルのファンの歓声ではない、独裁国家特有の人工的な狂気。一体どこで学ばれたのでしょうか」

 

勿論、歴史に。

具体的に言えば、社会科学のちょっとした応用だ。

 

主人公側は圧倒的な帝国軍の前に意気消沈しているところを、765のアイドルに励まされる。

このときの熱狂は、ステージ上で精一杯のライブを行う彼女達の輝きを見て、「頑張ろう」と思う共感である。

対して、帝国側の熱狂は、強力な行政手腕を持つ独裁者が群集の不安を煽った上で取り除く事を保障する事で生まれる、安心・安全・安定への本能的な欲求である。

 

私のしたことといえば、

「皆さん、今このような不安を抱えていらっしゃいますね」という、不安の表面化。

「その不安は、彼のような原因によって引き起こされています」という、敵の明確化。

「ご安心ください、それらの不安は我々が具体的な手段を以て解決します」という、安心の保障。

後は、これらが群衆の心の隙間に浸透しやすいような声や身振り等を練習すればアラ不思議。

あっという間に人工的な熱狂が完成する。

 

欠点は、群集の不安に結びつくものであって、765の熱狂のように個人に結びつくものではない事。

こっちの熱狂は、「ライブが楽しかった」という記憶に繋がらないため、私のファンが増えにくい。

今回はライブではなく、ゲーム内の世界でライブをするという設定なので関係ないのだが、アイドルのライブでこれはしたくない。

そして、満ち足りた生活を送っている人間には全く効果がない事。

こんな演説をバブル期真っ只中で行っても、誰も反応しない。

この不景気だからこそ、効果があったのだ。

 

この様に「大した事はしておりません」と説明すると、フラコンPが目を泳がせていた。

何か、引いてる?

 

「いえ、私の考えてるアイドル像と、ずいぶん乖離があったもので。アイドルというのは、765の皆さんのように自身が輝く事を目標にお仕事をされている、というイメージがありました。安曇さんにはその様な考えはないのでしょうか」

 

そういう望みは、あいにく持ち合わせていない。

お給料さえ頂ければ、法律に規定された範囲内で何でも行う。

強いて言えば、346の望みが私の望みだ、それを叶えるという意味では。

しかし、まさかこんな事を言うわけにもいくまい。

もっとオブラートに包む必要がある。

 

「望み、という意味では、皆さん(労働者)の味方・希望・見本でありたいと思っております」

 

包みすぎて、趣旨が伝わったかどうか分からない。

 

「あぁ、そこのフラコンPよりよほど我々の味方でしたとも」

 

誰かと思えば、ゲームパートの統括であった。

ルート一本追加の件ではお世話になります。

 

「貴方のような方が1人でも居てくださると、無理を押し付けられることが減る。それだけでも、我々にとってはありがたい。これからも一緒に仕事を、いえ、応援させて頂ければと思います」

 

それはどうも。

いつのまにかファン1号を獲得していたようだ。

これからも、末永く応援して頂けるとありがたい。

 

どうだ増毛P、労働者の味方キャラも悪くないじゃないか。

 

 

 

フラコンの撮影も収録も終わり、代休も消化したある日。

此処からはデビューに向けたCD収録とレッスンで、定時一杯まで働く日が続くはずであったのだが、それらの仕事が召し上げられてしまい、暇である。

 

ギャラもある程度頂いたため、ブルジョワ的娯楽を楽しもうと思う。

次の仕事が決まっていないのは不安ではあるが、将来への不安のため消費活動を抑えるのは本末転倒だ。

私は労働者であると同時に、消費者なのだ。

消費しなければ、経済は回らない。

 

思い立ったが吉日。

私は前世の記憶を引っ張り出し、とある店に電話をかける。

当時、日本酒が飲めなかった私に対して「安物ばかり飲むからだ、俺が本物の味を教えてやる」と上司に連れて行っていただいた店だ。

その後、何度か自分でも足を運んだことがあったが、目玉が飛び出るような価格であった事を覚えている。

いまだ店が存在するなら、今世でもあの味を楽しみたいものだ。

 

電話が繋がる。

当時のマスターとは、若干声が違うが店は続いているようだ。

端的に来店する旨を伝えると、承諾された。

今世では名刺を貰っていないが、まぁ良いだろう。

前世の自分の名前を親代わりに使って、紹介してもらったといえば良い。

 

電話を切って退勤の準備をする。

アフター5の予定があるというのは、良いものだ。

部屋を出る足も、心持ち軽くなる。

 

「ふふふ」

 

「どうかされましたか、高垣さん」

 

第1企画の部屋は、別階層にあったはずだが。

第2企画の我々後輩に、先輩から挨拶に来ていただけるのは非常に光栄だが、それは帰り支度を済ませて行うものではない。

尤も、346トップアイドルの貴方が定時退勤していただけると、後輩である我々も帰りやすいので大歓迎だ。

 

「あなたから、日本酒の気配がしたもので」

 

確かに、今日は飲みに行く予定だ。

だが、それはさっき決めたばかりで、誰にも話していない。

貴方は何者だ。

 

「先輩として、ご一緒したいなぁ~って、お願い」

 

残念だが、今日は1人で飲む気分……

 

「先輩のお願いは、()()られませんよ~」

 

あっという間に右手を巻き取られた。

何だ今の動き。

これがトップスタァの動きなのだろうか。

しかも、全然離れない。

なんだか柔らかいものが腕に当たっている。

前世のままの性別であったら、相当なご褒美なのではないだろうか。

なお、今世は自前で用意されているので、余りありがたみがない。

 

「……分かりました、ご一緒しましょう。予算は十分ですか?」

 

あの店はカードは使えなかったはずだ。

限られた常連客だけ、ツケが許されていたような気がする。

 

「もちろん。お酒に手は抜きません」

 

 

 

***

 

 

 

「高垣さんは、もう行きましたか」

 

「えぇ、さっき部屋の前で安曇さんを捕まえました」

 

346プロで、ある事無い事噂が飛び交う謎の新人、安曇玲奈。

仕事中も休憩中も殆ど人と関わらないため、その人間性は謎に包まれている。

346プロの中でまともに話した事があるのは、プロデューサーである増毛先輩を除けば、トレーナーと私くらいではないだろうか。

とはいえ、トレーナーとの会話はあくまでも仕事上のものであるし、私との会話も、シンデレラプロジェクトメンバーの欠員補充の相談に乗ってもらった、というのが正しい。

ひょっとして、クライアントの方が安曇さんの事をご存知なのではないだろうか。

 

「……高垣さんなら大丈夫でしょう。酒の席で、彼女の人となりを聞き出してくれるに違いありません」

 

「ずいぶんと、安曇さんにお熱なんですね」

 

千川さん、それは誤解だ。

彼女への理解は、シンデレラプロジェクトにとってプラスになると考えている。

 

先日のフライトコンバット新作のライブシーン収録、私はシンデレラプロジェクトのメンバーにアイドル界の金字塔である765プロのライブを見学して頂き、彼女達の今後に資する経験となればと思っていた。

今の765プロオールスターズのライブなど、業界関係者でも滅多に見る事が出来ないからだ。

実際、765プロのライブは彼女達も心動かされるものがあったようだ。

 

問題は、その後の安曇さんが演じる帝国のアイドルのライブである。

デビュー前のシンデレラプロジェクトメンバーにとって、同じくデビュー前の安曇さんのライブが与えた衝撃は、大変なものであったようだ。

独特な感性を持つ双葉さんだけは、あのライブの歓声がアイドルが得るべき歓声と異なっている事に気付いているようだが、他はそうではない。

安曇さんの演技に影響されて、変なアイドル像を彼女達の中に作られたら一大事である。

 

ライブ以来、彼女達の心のケアという火消しに回っているが、余り手ごたえが無い。

やはり、安曇さん自身からあの演技を説明してもらった方が早いだろう。

 

「増毛さんと安曇さんのせいで、こっちはてんてこ舞いです」

 

「増毛先輩にお願いして見せてもらったのですが、あんなライブだとは、こんなにシンデレラプロジェクトのメンバーに影響が出るとは、思ってもいませんでした」

 

「準備無しで見に行くなんて、自殺行為です。今後は事前に教えてくださいね、そうしたら情報を事前に入手しておきますから」

 

増毛先輩は、私に抜かれて一度あきらめかけた出世街道を、安曇玲奈とまた駆け上がり始めている。

眠りかけた鬼は、金棒を担いで目を覚ましたのだ。

 

だが、シンデレラプロジェクトは増毛先輩のプロデュースする安曇さんに対して一歩も引く気はない。

増毛先輩には安曇さんがいるが、私には千川さんがいるのだ。

 

 

 

***

 

 

 

東京都内の繁華街。

その雑居ビルの1つに目的のお店がある。

 

「安曇さんって、なかなか渋いお店をご存知なんですね」

 

自分で見つけた訳ではないけれど。

なにやら怪しいお店や大人のお店の看板を素通りし、狭い階段を上がると到着。

 

「お電話しておりました安曇です。すみません、2人になりました」

 

ぶっきらぼうに席が指示される。

カウンターしかないお店なので、迷うことがない。

 

「お嬢さん方、今日はどうされる?」

 

「5万円で、食事は軽く。お酒はあまり辛くない、飲みやすいのから紹介して下さい」

 

端的な注文と同時に、財布から1万円札を5枚引き抜いて渡す。

当時からこうだった。

お金だけ渡して、後は日本酒のプロフェッショナルに任せるのだ。

カウンター奥の冷蔵庫には数々の日本酒が保管されているが、その辺の酒店では見たことも無い銘柄ばかりである。

付け焼刃の知識でかっこつけるより、この店ではこうした方が美味しいお酒が飲めるのだ。

 

「高垣さん、高垣さんは何を飲まれますか? 飲みたいお酒のイメージを伝えれば、マスターが用意してくださいますよ」

 

「えぇ……、じゃぁ、辛口で冷が合うものを」

 

なんか先ほどまでの自信満々おっとり癒し系お姉さんキャラクター、どこかに行ってませんか。

 

「安曇さんって、こういうお店に通われるんですか……」

 

いや、今世では初めてだし、前世でも片手の回数ほどしか行ったことがない。

今世では前世より可処分所得・時間を倍増させる予定なので、これからは頻繁に通いたいものだ。

ブルジョワ的娯楽万歳である。

 

 

 

店の雰囲気に飲まれていた高垣さんも、出てきた日本酒を一口含んでからはいつもの調子に戻りつつあった。

色々お酒を試されているようだが、今日の5万円というのは決して多い方ではないので、程ほどにして頂きたい。

残弾ナシと通達される事ほど、この店で恥ずかしい事はない。

 

「この間の収録、凄い反響だったようですね~。第1企画でも、話題になってますよ」

 

増毛Pがそんな事を言ってた気がする。

話題になったようで、何よりだ。

全く無視されるよりは次に繋がる事だろう。

出来れば、ポジティブな話題であった方が嬉しいのだが。

 

「なんでも、悪の帝国の総統キャラクターで演説したとか」

 

誰だ、そんな事を広めたのは。

私が演じたのはアイドルであって、断じて独裁者ではない。

 

「見学されたシンデレラプロジェクトの皆さんがそう仰ってましたよ」

 

なんと。

誰が見学を許可した。

何? 増毛P? 裏切り者は身内にいたか。

第五列とはよく言ったものだ。

 

「765プロのステージの後、わざわざ熱気を冷ましてから盛り上げたって」

 

何だか、認識の相違がある気がする。

私は、そんな空気の読めない超大型新人ではない。

製作陣の意図と脚本の通りに演技しただけだ。

又聞きした高垣さんだけなら、伝言ゲームの不備で済む。

しかし、直接見たシンデレラプロジェクトの面々もそう考えているとなると、問題はより複雑だ。

 

幸い、この場には346プロで最も売れているアイドル、高垣楓がいる。

346プロ内に持つ影響力も無視できないものがあるだろう。

1人1人に説明していくより、彼女一人に説明してそこから広げてもらった方が、楽だ。

 

きちんと、私が労働者の味方であることをアピールしなければ。

 

 

 

翌日、定時丁度に出勤するとプロジェクトルームのホワイトボードに見慣れない予定が書き込まれていた。

「14:00~ 初舞台に関するデブリ@CP室」

 

「君が出勤する前、高垣楓と武内から依頼があった。未デビューの第2企画内で、仕事に関する経験を共有してくれないか、とな」

 

増毛Pはそれを受けたらしい。

意外だ。

こういった、自分の企画に資さないことはやりたがらないと思っていなのに。

 

「君が暇そうなものでな。人生の先輩として、後輩を教育してやるのも仕事だろう」

 

暇なのは増毛Pが仕事を持ってこないことに原因があるのではないだろうか。

私は、勤務時間と給与の範疇で、可能な限り仕事をこなす気概に溢れている。

 

「仕事については検討中だ。まぁ、フラコンのCMがGW明けから打たれるから、それからでも遅くない」

 

そうだろうか。

フィルムを切り貼りした15秒CMと30秒CMが打たれることは知っているが、その放送時間帯に問題がある。

土日の朝夜や、平日の夜といったゴールデンタイムの分は765プロ主体でCMが作られている。

私主体のCMは深夜枠だ。

大きなお友達がアニメのついでに見てくれるだろう。

 

そんな事あるか。

録画時点でCMカット機能を使われていたらどうするんだ。

誰も見てくれないぞ。

 

「CMには"Ace, High."もBGMとして使われている。6月の頭にはCDを出し、そこから7月の発売日に向けて販促イベントだ。仕事はたくさん待っている」

 

5月中は、何も無いんですけれど。

 

 

 

プレゼン機材をもちこんでも、シンデレラプロジェクトの面々+@が余裕を持って座れるというのは、この部屋はどれほど広いのであろうか。

私の実家など、この部屋に敷地ごとすっぽり収まりそうではないか。

 

「えー、では。先日のフライトコンバットの新作の実写パートの収録に関するデブリーフィングを行いたいと思います」

 

反応が悪い。

やはり彼女らが勝手に抱いた独裁者のイメージが悪すぎるのか。

仕方が無い、追加ルートで盛大に披露する予定の、純潔乙女モードでプレゼンしよう。

 

彼女らが座っている椅子が1mほど下げられた。

何故だ。

 

「普通にやれ、普通に」

 

余計な指示が増毛Pから飛んできた。

こっちの方が、独裁者っぽく見えないはずなのだが。

 

説明しなければならないのは、やはり、演説の背景だろう。

765プロが温めたステージを一度沈黙させてから使うなど、普通のライブでやる事ではない。

あくまでも、あのステージはゲーム内で行われたライブシーンの撮影であって、現実のライブではない。

観客も(私のステージでは)エキストラだ。

そこを説明し、現実と虚構で切り分けて頂かなければならない。

 

そして、765と私の配役の差だ。

765プロは主人公サイドを応援するアイドルであり、帝国の侵攻で士気が低下している兵士達を勇気付けるのが目的だ。

あの765プロのライブは、目的を達成したといえる。

対して、私は敵方である帝国のアイドルである。

帝国の独裁者に操られ、彼の政策を無条件に肯定するよう、臣民を誘導するのが目的だ。

この2つの違いを理解して頂かなければならない。

 

これら、目的の異なる2つのライブを、経済的理由で同日に撮影したのだ。

ステージは切り替わっていても、観客は同じである。

前のステージの熱狂が残ったまま撮影に入るという事は、混ざってはいけない絵の具を混ぜるようなものなのだ。

製作陣は、塗り分ける事を望んでいる。

そのため、一旦沈黙で会場をリセットしたのだ。

 

最後に、演説の説明。

フラコンPにしたような、細かいところまで説明する必要は無いだろう。

帝国らしい反応を得るため、増毛Pと一緒に勉強・練習したと伝える。

ここで理解して頂きたいのは、アイドルであっても、その場で自分に何が求められているか理解することだ。

そのためには、製作・企画の方々とよくコミュニケーションを取り、彼らが何を考えているか、何を目指しているか理解しなければならない。

 

ご理解いただけたであろうか。

それでは質問をどうぞ。

 

「はいっ、346プロダクションでは、社員さんもアイドルをやるんでしょうか!?」

 

 

 

そういえば、島村卯月の誤解を解いていなかった。

 

 

 




誤字修正ありがとうございます。
逐次確認・反映させて頂いております。

委員会では、誤字脱字が酷すぎるとして、作者を懲罰大隊に送り込む案が検討されております。
今更ですが、事業部内の部署割りはテキトーな捏造です。



楓さんのキャラクターはこれで合っているのだろうか。
でこつん&神剣白羽鳥がないと不安だ。


6/4追記
武内Pとちっひのパートを修正いたしました。
デレステのフェスで諭吉が呑まれた作者の感情が暴走したようです。
投稿後、みりあちゃんのSSRが出ました(テノヒラクルー

6/11追記
凛斗様にイラストを頂きました。
3〜4話のフラコン演説シーンです。

【挿絵表示】

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