「僕とナツはドラゴン、それも炎の竜王、『炎竜王イグニール』に育てられたんだ。ただし血はつながってない。僕とナツは拾われたからね。僕とナツは生きていくためには無力だった。そんな僕たちに力と読み書きを教えてくれた。そして7年前、イグニールは姿を消していた。もちろん僕とナツもそれぞれ違う場所でいなくなっていたんだ。
これが僕とナツの話」
ゼレフは少し寂しげな表情で語った。
(本当のことでないにしろ、ナツのことは事実だからね、今はそれで我慢しておくれ。2人とも)
目で語ったのか同じ事情を知るルーシィとジェラールは静かにうなづいた。
「さて、じゃあ本題のドラゴンスレイヤーについてだね。
ドラゴンスレイヤーとは名の通り竜を狩る魔法、失われた魔法だ。人にはそれぞれ特化した属性というのを持っている。ただ扱えないわけじゃない。グレイ、君もそうだろう?」
「ああ、俺は魔法自体は氷がメインだからな、使えるようにウルに教えてもらったからな。親父も滅悪魔法を持っていても氷自体はウルに教えてもらったようだし。」
「そう、そこだ。僕たちは使える魔法に特化した属性を持ってはいてもそれ以外の魔法を強くできないといった理を持たない。ただ失われた魔法には属性を教えることしかできない。そしてそれを自分独自で編み出すことはできないんだ。この世界には失われた魔法。この場合は滅する魔法と言っておこうか。滅する魔法は伝授することでしか人が手にすることができない魔法だ。そしてなぜ滅竜魔法だけが極秘か。それは滅竜魔法を使えることのできる人間の魔力の底にある種ができる。それが滅竜魔法の種、竜の種だ。その種がない限り滅竜魔法を使うことができないんだ。ただしこれが厄介なものでね、この種を持った人間はいつか竜になってしまうんだ。この魔法を最初に受け入れた滅竜魔法の母、『アイリーン・ベルセリオン』によって発覚した。その後滅竜魔法は厄介な魔法として知られ、300年前に撲滅した。まあ正確には撲滅はしていないんだけどね。
そして僕とナツはイグニールから滅竜魔法を教わった。そしてある人のおかげでその種から竜化することはないように処置してくれたのさ。」
ゼレフの話が終わったころには時計の針が合わさった時間になっていた。
「さ!これで滅竜魔法に関してはわかったよね?」
「う、うん。ありがとう」
「ああ、じゃあそろそろ寝ようか、明日もみんなハードだよ?」
そうして全員が眠りにつき始める。
・・・・
「…ナツ起きてたね?」
「…うっせー、俺だって気になって寝れなかったんだ。」
「なら今度イグニールと僕の話をしてあげるよ。気になってるんだろう?」
「ほんとか!なら頼むな!兄ちゃん!」