ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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旧校舎のディアボロス 6

祐斗Side

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕、木場祐斗はISの戦闘を間近で見ることはこれが初めてだ。

 

 人間界における最強の戦術兵器、IS(インフィニット・ストラトス)

 

 正直に言えば、少し侮っていたといってもいい。

 

 強力とはいえ所詮は人間界の兵器。武闘派の上級悪魔クラスが一人いれば、充分撃破できる。狭い屋内なら僕達でも勝算があるだろう。

 

 ・・・甘かった。心からそう反省してしまうほどに甘かった。

 

「蝶のように舞い、蜂のように刺す!」

 

 その動きはあまりにも速く、迅かった。

 

 一瞬で目で追いきれない速度に到達したと思ったら、それを壁に激突する前に減速して跳ぶように別方向へ。

 

 そして、隙をついて手に持っているブレードで切りかかる。

 

 ただそれだけの稚拙な戦法なのに、僕たちは手も足も出てなかった。

 

「これが、男女両用型ISの性能なのか・・・!」

 

「いえーすでーす。これが人類統一同盟から流出した男女共用型ISコアと、日本第二世代IS「打鉄」の性能でーす。さすが、技術大国ニッポン!!」

 

 口調はふざけた調子だが、しかし実力は本物だ。

 

 あれだけのスピードの動きを目で追って確かに反映させられる。それができるからこその脅威といっていい。

 

 少し、科学を舐めすぎていたようだ・・・。

 

「まあ、そんなわけで君たちにはそろそろ終わってもらおうかなんと思っているわけですよ? どうする? どうする? もうちょっと頑張っちゃう?」

 

 ぜひそうしてくれた方がこちらも楽しめる。

 

 そういわんばかりの醜悪な表情を浮かべながら、その少年はブレードを振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やらせねえよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 僕が反応するより早く、それをブレードが弾き飛ばす。

 

 ISにはかなりのパワーアシストがかけられている。それをあっさり突破するとは、いったい何が起こってるんだ?

 

 だが、その疑問はあっさりと解消された。

 

「あ~あ。レヴィアさんの許可もなく使ったら、今夜はお仕置きですよ?」

 

 五反田さんが苦笑しながらため息をつき。

 

「・・・また、IS」

 

 小猫ちゃんは目を大きく見開いた。

 

 そこにあるのは白と青で塗り分けされたスマートな機体。

 

 フリードが纏っている打鉄よりもスマートなそれは、一目で高性能機であることがすぐにわかった。

 

「・・・おんやぁ? そっちも流出したISコア使っちゃってるの? ちょっとちょっと、興ざめ何だけ・・・ど!!」

 

 フリードはそう文句を言いながら、ブレードを使って切りかかる。

 

 だが、それは織斑くんには届かない。

 

 すべてをあっさりとかわし、織斑くんは一瞬でフリードの後ろに回り込む。

 

「俺の・・・」

 

 それにフリードは反応して振り返りざまに切るが、織斑くんは軽くジャンプするようにしてそれをあっさりと避ける。

 

「・・・仲間に・・・」

 

 そして反対側に回り込むと同時に、勢いよくブレードを振り上げた。

 

「・・・手を出すんじゃねえ!!」

 

 その一撃はスラスターを損傷させ、シールドエネルギーを大きく削る。

 

 なんて破壊力、そしてなんて技量。

 

 相当の技術で開発された武器を、相当の技量で振るわなければあそこまでの威力は出すことはできないだろう。間違いなく高水準の一撃だった。

 

 他国の代表候補生に匹敵するであろうレベルの脅威。それが目の前にあった。

 

「・・・う~ん。これはちょっちやばいかねえ」

 

 フリードはそういうと、ロケットランチャーを取り出すと真上に向ける。

 

「悪いが今回は帰らせてもらうぜイケメン&ロリコンビ! 次あったときが、本当の殺し合いだ!!」

 

「な、待て!!」

 

 織斑くんはすぐに追いかけようとするが、しかしフリードが引き金を引く方が早い。

 

 天井が崩落し、そこからフリードが強引に脱出する。

 

 一夏くんは追いかけるよりも倒れた人を崩落から救うことに意識を傾けたので、追撃は困難だった。

 

「逃げられましたね」

 

「ああ」

 

 五反田さんと僕は、苦い顔でうなづき合う。

 

 あのまま戦えば、間違いなく織斑くんが勝っていただろう。

 

 生身での戦闘能力は互角だっただろうが、ISの性能とISの動かし方では織斑くんの方が上だった。

 

 それがわかったからこそ、フリードは仕切り直しを選択したのだ。

 

「・・・また来たら面倒」

 

 小猫ちゃんの気持ちもよくわかるよ。正直話していて疲れるタイプだしね。

 

 それに、今度仕掛けてくるときはもっと広いところだろう。屋外の可能性が非常に高い。

 

 この地下室もかなり広いけど、ISクラスの機動兵器の本領を発揮するには足りないだろうからね。

 

「何度来たって関係ない。俺が、必ず守ってやるさ」

 

 織斑くんは微笑みながらそう言ってくれるが、しかしそれは呑み込めない。

 

「それじゃあグレモリー眷属の名折れだよ。僕も、皆を守って見せるさ」

 

 そう、僕はグレモリーの騎士だ。

 

 仲間を守るのは織斑くんだけの仕事じゃないからね。

 

 その言葉を聞いて、織斑くんは不敵な笑みを浮かべる。

 

「そうだな。俺もIS抜きでこれぐらいはできるようになってやるさ」

 

「ああ、お互い頑張ろうね」

 

 そういい合い、僕たちは握手を交わした。

 

 やはり彼は侍の血筋を感じさせる。とても好感の持てる在り方だった。

 

「って皆さんのんびりしてる場合じゃないです! イッセー先輩を助けに行かないと」

 

 そういえばそうだった。

 

 持ちこたえていてくれよ、イッセーくん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 両足が激痛で震えて、しりもちをつきそうになる。

 

 だが、イッセーは決して倒れなかった。

 

「案外持つわね。並の下級悪魔ならこれで殺せてるんだけど、結構素質があったのかしら」

 

『Boost』

 

 そうあきれながら、レイナーレは槍を新たに生み出して一歩一歩近づいていく。

 

「夕麻ちゃん。アーシアに何をする気だ!?」

 

「その子の神器をいただくのよ。そして私に移植するの」

 

 レイナーレはそういいながらほほ笑む。

 

「その子の神器の名前は聖母の微笑(トワイライト・ヒーリング)。回復系の神器の中でも、桁違いの能力を持った一品なの」

 

『Boost』

 

 レイナーレは簡単に告げてくれる。

 

 元来、回復の力を持った神器はいくつも存在する。

 

 だが、その大半は聖書の神に祝福された存在に限定され、悪魔や堕天使には効果を発揮しない。

 

 もし発揮するのならば、禁手(バランス・ブレイカー)という進化形態に到達してあるいは、という形になるのだ。

 

 だが、アーシアの神器はそんなことをしなくてもけがを治療してくれる。それも、禁手に匹敵する圧倒的な回復量でだ。

 

 もし、堕天使の中にそんな力を持つものがいれば、そんな存在が重宝されないだなんてあるだろうか。

 

「そう、その子の力を使って、私は至高の堕天使になるの! だから、死んで頂戴?」

 

 そう笑顔でいうレイナーレは、常軌を逸しているように見えた。

 

 少なくとも、何も悪いことをしていない少女に対して、殺すと告げる表情ではかけらもない。

 

『Boost』

 

「ふざけんな! なんで殺す必要があるんだ! そんなことしなくても神器だけ抜き取ればいいだろうが!!」

 

「ごめんなさいねぇ。今の技術だと、殺さないで抜き取るなんてできないのよ。だから、悪く思わないでくれるかしら」

 

 イッセーの弾劾もレイナーレには届かない。

 

 今のレイナーレの目には、自分が栄光をつかむ姿しか見えていない。

 

 人の命に価値を見出していないも同然の表情だった。

 

「ふざけんな! デートの時の優しい夕麻ちゃんはどこ行ったんだよ! 全部演技だったってのか!?」

 

『Boost』

 

 イッセーは、今でもあのデートはいい思い出だったと思っている。

 

 何の変哲もないデートだが、笑顔の夕麻が見れただけでも頑張った買いがあったと思っていたのだ。

 

「ええ、実にありきたりなデートだったは。素人のガキが初めてデートになったらああなるわね。デート自体はつまらなかったけど、舞い上がってるあなたを見るのは楽しかったわよ?」

 

「・・・素敵な名前だなって、思ったんだぜ?」

 

「頑張って付けたもの。貴方は赤が似合うから夕暮れ時に殺そうと思ってつけたの。皮肉が効いてるでしょう?」

 

「・・・・・・告白されたの、初めてだったんだ」

 

「私みたいな可愛い子に告白されて舞い上がっちゃったんだ。うふふ、童貞らしいわねぇ」

 

『Boost』

 

「レイナーレぇえええええ!!!」

 

「あっははは! 腐った悪魔の餓鬼が私の名前を呼ぶんじゃないよ!」

 

 そういうなり、レイナーレは光の槍を連続して放つ。

 

「そこで串刺しになってなさい!!」

 

 本来、この戦いは勝負にはならないだろう。

 

 神器をろくに覚醒させていない。戦闘経験が全くない。ましてや戦うための技術を何一つ習得していない。そして何より下級悪魔。

 

 無い無い尽くしの状況で、しかし彼は最後まであきらめなかった。

 

―ゆえに、この勝利は必然である。

 

『explosion!』

 

 イッセーの左腕が赤く輝き、そして莫大な出力が放出される。

 

 その力の奔流に対して、イッセーは躊躇なく一歩を踏み出していた。

 

 戸惑っていたらレイナーレを逃がしてしまう。それだけは絶対に許せない。

 

「うぉおおおおおおおおお!!!」

 

 迫りくる光の槍を体当たりで粉砕し、イッセーは足を進める。

 

「・・・え、な、なんなの!?」

 

 レイナーレは恐怖に駆られて逃げ出そうとしたが、しかし間に合わない。

 

 すでにイッセーに足をつかまれ、動きを封じられた彼女になすすべはなかった。

 

「吹っ飛べ、クソ堕天使ぃいいいいいい!!!」

 

 その全力の拳は、すでに上級悪魔の領域にすらとうたつしたものだった。

 

 その渾身の拳は、平凡な少年が、勇気を振り絞て放たれた一撃だった。

 

 ゆえに、レイナーレに耐えられるわけがなく―

 

「私は、至高の堕天使に―」

 

 その拳は、レイナーレをその願望ごと粉々に打ち砕いた。

 


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