ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
この作品は、インフィニット・ストラトスD×Dのリベンジだといいましたよね?
接近してくるISは合計四機。
数の上ではこちらの方が上だが、相手はISを纏っていることを考慮すれば不利なのはこちらの方だともいえる。
ゆえに、こちらも遠慮はかけらもしない。
「まずはセオリー通りに!!」
レヴィアが広範囲に拡散させながら魔力攻撃を一気に放つ。
如何に防御一点特化とはいえ、レヴィアはすべてのステータスが上級悪魔相当の存在。その火力は生半可な軍事兵器を圧倒的に上回る。
その魔力弾の雨あられは、生半可なIS搭乗者ではかわすことができずにハチの巣になっていただろう。
だが、四機のISは流れるように動くと、それをすべて回避してのけた。
そして、そのうち黒い一機が先行してライフルを放ちながらさらに接近。同時にオレンジ色の機体が背中からさらに腕を展開すると、四本の腕全てにマシンガンを装備して弾幕を張る。
それは、人間なら即座にハチの巣になるような凶悪な弾丸。ISは間違いなく最強の戦術兵器なのである。
だが、それは所詮人間の話。
「ははははは! 効かないねぇ」
レヴィアが片手間に放った障壁が、弾丸をすべて弾き飛ばす。
彼女の耐久力は、障壁の性能も含めてのもの。その強度は半端な核シェルターなど歯牙にもかけず、ISの携行火器程度では破壊することなど不可能。
だが、そんなことはお互いにわかりきっている。
ここまではお互いにただの様子見。その実力を確認するためのウォーミングアップに過ぎない。
「さて、それじゃあ一夏君よろしく!!」
「ああ、行ってくる!!」
「私も行きます!!」
防御の合間を縫い、一夏と蘭が敵陣へと切り込む。
さすがに、ISを相手にして主力戦闘をおこなえるほどには松田も元浜も強くなっていない。それを考慮すればこれは当然の選択だった。
「やはり来たか、織斑一夏!!」
黒いISがブレードを転送して一夏に切りかかり、一夏もまた剣で切りかかる。
まともに勝負をすれば、鍛え上げられた
だが、そんな想定は前提が間違っていれば意味がない。
ブレードと剣がぶつかり合うちょうどその時、強烈な稲光が発生する。
それは強化された一夏の剣を弾き飛ばし、敵手のISのブレードにまとって攻撃を強化した。
「……神器!」
「ああそうだ。まさかお前だけが神器を持っていると思ったか?」
そういいながら、黒いISは手慣れた動きでブレードを操ると一夏に攻撃を仕掛ける。
すでに一夏はISも強化しているが、しかしほかの機体が援護射撃をしていることもあり、なかなか突破できなかった。
その動きを見て苛立たし気にしながら、黒いISはしかし攻撃の手を緩めない。
「なるほど。ただの足手まといかと思ったが、血を継いでいるだけはあるということか」
「……なに?」
その言葉に、一夏は一瞬けげんな表情になる。
血を継いでいる? いったい誰と?
そういった疑念は確かにあるが、しかしすぐに切り替えると戦闘に意識を集中する。
それは相手をとらえてから聞き出せばいいだけのことだ。少なくとも、戦闘中に考えているわけにはいかない。そしてさせてくれるほど相手は甘くない。
ゆえに相手に集中しながらも周りの様子を確認して―
「……はぁっ!?」
思わず全方位視界があるにもかかわらず、顔を向けてしまうほどの驚愕に包まれた。
そこにあるのは、20メートル近い巨人。
一つ目の巨大な鉄の巨人が、いつの間にかそこに立っていた。
「レヴィア! レヴィア、あれなんだ!?」
「僕に言われても困るかなぁ!! 蘭ちゃんとりあえず撃ってみて!!」
「あ、はい! わかりました!!」
と、即座に蘭は砲撃を放つが、それを敵のISは盾で防御した。
どうもエネルギーフィールド発生装置のようだが、しかしそれにしても出力が強大だ。
さらに、その巨大なISは楯からクレイモアを引き抜くと、遠慮なく振り回してこちらを切り捨てにかかった。
「う、うぉおおおおおおお!!!」
「しぬしぬしぬしぬ!!」
松田と元浜が一直線で逃げる中、レヴィアもまた念のために後退しながら砲撃を敢行する。
それを器用によけ、そして楯を使って防ぎながら、敵大型ISはレヴィア達を追いかける。
「レヴィアさん! 先輩方!!」
蘭は即座に狙いを大型ISに集中させる。
とにかくあのISは危険だ。こちらとしても数を一機ぐらいは減らしておかないと難易度が高い。
上に集中攻撃を叩き込もうとして、しかしそれをさせてくれるほど相手も甘くない。
「させないよ!!」
四本腕のISがその全ての腕にロケットランチャーを構えて砲撃を開始する。
人間を凌駕した運動能力で蘭はそれを回避するが、しかしロケット弾の連射は止まらない。
使い捨てのロケットランチャーを放っては即座に新しいものに交換し、四本腕は遠慮のない弾幕を張り続ける。
「あの機体、拡張領域がいったいどれだけあるの!?」
ロケット弾を時に撃ち落とし時にかわしながら、蘭は動きを警戒する。
状況は、想像以上に緊迫していた。
そして、そんな中一夏は特に追い詰められていた。
敵の数は二機に減ったが、しかしその二機が非常に手ごわい。
黒いISは雷撃を身にまとって攻撃するが、そしてそれ以上に厄介なのが赤いゴーストである。
両手に持っているものは間違いなく神器。それも非常に強力な類だ。
下手をすればイッセーが持つ赤龍帝の籠手にも匹敵するかもしれない高性能な神器。
そして何より、それを振るう女の動きに違和感があった。
(……なんだ?)
強化されたことによるISそのものの性能差によって相手を引き離しながら、一夏はその疑念を確実なものにしていく。
間違いない。自分はこの相手を知っている。
そう、その動きは優れた者であると同時に見慣れた者だった。
そして、どこかが違っていた。
そう、まるで動きが洗練されているかのように―
「………っ!?」
そこまで思い至り、一課の動きは一瞬止まる。
「もらったぞ、織斑一夏!!」
無論、そんな隙を逃すはずがなく黒いISが襲い掛かるが、しかしその一撃は一夏の眼前に生まれた結界によって防がれる。
「一夏君、どうした!!」
巨大ISの一撃を腕で受け止めながらの器用な芸当に、敵のIS使いは虚を突かれていったん距離をとる。
「織斑、どうした!?」
「何やってんだよ織斑!!」
地上近くだったことをいいことに、松田と元浜がカバーに入るが、一夏の目にそれは入らない。
それ以上に、信じられないという気持ちでいっぱいで、何も考えたくなくなるほどだった。
「………おい」
「ああ、気が付いたのか?」
赤いISの担い手が、当たり前のように答える。
「腕を上げたな、一夏。私と別れてからも鍛錬を続けていたようでうれしいぞ」
「そんなことはどうでもいいだろ。………なんで、お前がそんなところにいるんだ!!」
一夏は絶叫じみた大声で、目の前にいる彼女を非難する。
人類統一同盟に大義があるかどうかは関係ない。
だが、あいつらは高確率で彼女に危害を加えている。
なのに、なんでお前が人類統一同盟にいる―
「―答えろ、箒!!」
「―知れたことだ。……あの時、私の手を取ってくれたのはお前じゃなかった。ただ、それだけのことだ」
赤いISの担い手―篠ノ之箒はマスクを外し、冷徹な視線を一夏に向ける。
そこには、海よりも深い断絶が存在していた。
そういうわけで箒登場。彼女は人類統一同盟の一員です。
しかも割とエース級。持っている神器はさすがに前作の予定とは違いますが、それでも強力なのを用意しております。
まあ、こうなるとほかのメンバーもほぼ推測できてしまうのですが、その辺はあえて明言はしないでおきましょうか……