ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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自分はイッセーも好きですが、匙も結構好きです。

……恋愛的なそれじゃないですよ? 自分は女の裸で興奮します








追記、活動報告でオリジナルISを募集してます。よければどうぞ。


冥界合宿のヘルキャット 終

 

 戦闘が終了しても、悪魔たちはあわただしかった。

 

 なにせけが人はかなり大量に出ている。その治療を行うのは当然だった。

 

「放射能汚染の対策が必要不可欠だ! 魔法を使える奴らを呼んできてくれ!!」

 

「重傷者から治療しろ! 軽症の奴らは後回しにするんだ!!」

 

「おい! こっちに人を呼んできてくれ!!」

 

 怒号が飛び交う中、そこから少し離れたところで、レヴィア達は休息をとっていた。

 

「……ふう。とりあえず今回はしのげたね」

 

 流れた汗をぬぐいながら、レヴィアはそう漏らす。

 

 ISとそれらを基にした新兵器の群れによる襲撃は、どうやら本当に実戦試験でしかなかったらしい。

 

 まだかなり余裕があったはずなのに、人類統一同盟は早めに離脱していた。

 

 油断しているのか、それともそれほどまでの余裕があるのかわからないが、人類統一同盟はやはり脅威と認定するほかないだろう。

 

 今回の戦闘ではISを減らすことはできなかった。相当に余力のある編成で行動していたらしく、撃破してもすぐにカバーが入り離脱されたからだ。

 

「……よう、無事だったか」

 

 そこに、アザゼルが姿を現す。

 

 どうやら彼も戦闘に参加していたらしく、服が何か所か破れていた。

 

 裏を返せば、その程度の消耗で済んでいるということであり、やはり彼もまたかつての三大勢力の戦争を潜り抜けた猛者の一人だということか。

 

「やあアザゼル先生。堕天使側は大丈夫かな?」

 

「ま、損害は軽微ってやつだ。それに、悪魔もそこまでダメージはないんだろう?」

 

「貴族の護衛は精鋭だからね。もっとも、敵も安全重視で言っていたのかお互い大したダメージはないみたいだけど」

 

 レヴィアは努めて軽い口調で言うが、しかし状況は警戒に値するといっていい。

 

 なにせ、冥界は悪魔の本拠地だ。

 

 そこに対して戦闘を事前通告をしたうえで行った挙句、お互いにとはいえわずかな損害して済まして撤退することができるのだ。

 

「やっぱり、これは本腰入れた方がよさそうだね。コアの解析はよろしく頼むよ」

 

「ああ、早いうちにこっちでも量産できるようにしとかねえと、押し切られる可能性があるからな」

 

 お互いに、同じことを考えていたようだ。

 

 技術革新による装備の強化によって、ISと対異形戦の欠点は大きく軽減されている。

 

 すでにISは一機で平均的な上級悪魔クラスの脅威へと成長していた。

 

 このままいけば押し切られる可能性がある。そして、それは十分すぎるほどに脅威である。

 

 今後の展開を考えると、レヴィアもアザゼルも頭を抱えたくなっていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「匙が意識を取り戻したって?」

 

「ああ、ついさっき目が覚めたって言ってたぜ?」

 

 イッセーと一夏は、二人で連れ立って治療用のテントへと向かっていた。

 

「にしても、ヴァーリの奴はホント強いな。……俺、勝てんのか?」

 

「そういう時は絶対勝つって言えよ」

 

 そういいながら匙のいるテントへと入ると、すでに匙は起き上がってすらいた。

 

「兵藤に織斑」

 

「よ、匙! 無事だったな」

 

 イッセーは元気よく挨拶するが、匙の調子はすぐれない。

 

 いな、肉体的な調子は全く持って問題がない。

 

 あるのは、精神的なものだ。

 

「結局、俺は一発でやられちまったな。……死んでないのがおかしいぐらいだ」

 

「匙?」

 

 一夏が訪ねる中、匙は肩を震わせてうつむいた。

 

「お前らは白龍皇相手に一歩も引かずに戦って、しかも兵藤は禁手にまで至ったってのに、情けねえ……」

 

「そんなことはない」

 

 自分の非力に悔やむ匙の言葉を遮ったのは、イッセーでも一夏でもなかった。

 

 そこに、赤い髪を持つ男性が入ってくる。

 

 その姿を見て、テントの中の者たちはいっせいに目を見開いて大慌てした。

 

「さ、サーゼクス様!?」

 

「ここここんなところになんで!?」

 

「お、お見苦しいところをあいたぁ!?」

 

 慌てて跪こうとしてベッドから転げ落ちる者もいる中、サーゼクスはそれを手で制すと、匙のところへと近づく。

 

 そして、軽く出張るが一礼した。

 

「今回は、君のおかげでリアスもソーナも死なないで済んだ。セラフォルーの分も含めて礼を言わせてくれ」

 

「え……?」

 

 思わぬ言葉に、匙は首を傾げた。

 

「でも、俺は一発殴られただけで意識を失ってしまいましたし、それは兵藤や織斑に言うべきです」

 

「いや、確かに彼ら二人の奮戦もほめたたえられるべきものだが、何より君の一撃があったからこそ白龍皇を退けることができたのだ。それを褒めるのは当然だろう」

 

 サーゼクスはそうはっきりといい、そして、それに同意する声が届いた。

 

「まったくじゃ。若いの、そうあんまり自分を卑下するな」

 

 美女を伴って現れるのは、長いひげを伸ばした。老人。

 

 そして、それはこの業界では当然知っておくべき有名人だった。

 

「ほ、北欧の主神オーディン!?」

 

「な、ななななんでこんなところに!?」

 

 あまりの人物に、さらにテント中が驚愕に包まれる。

 

 すでに驚愕のあまり気絶するものすら出てくるレベルで人が出ていた。

 

 そんな狼狽する者たちをあっさりとスルーして、オーディンはにやりと笑いながら匙を見る。

 

「まったく、覇龍すら使える白龍皇を、まさか禁手にも目覚めずに王手をかけるとは恐れ入ったわ。悪魔出なければ真っ先に英雄として迎え入れてたわい」

 

「え、え、え?」

 

 べた褒めといっても過言ではない言葉に、匙は呆気に取られて何も言えなかった。

 

 そんな匙を一瞥してから、オーディンはサーゼクスへと顔を向ける。

 

「おいサーゼクス。個奴にはないか褒美を取らせるべきだろう? 出なければわしがもらうぞ?」

 

「御心配には及びません。すでに略式ではありますが、勲章を授与するつもりでこちらに来させていただきましたから」

 

 そう答えると、サーゼクスは小箱を取り出すと匙の手に握らせる。

 

 その箱の中には、明らかに手の込んだ細工が施された、メダルがあった。

 

「これは、大規模な戦闘で大きな成果を上げた者に渡される勲章だ。私は、これを君に渡しに来たのだよ」

 

「ま、待ってください! 俺は、兵藤や織斑に比べれば全然―」

 

「何言ってんだよ、匙!」

 

 イッセーは、戸惑う匙の肩をバンバンとたたいた。

 

「お前がいなけれや俺も織斑も大変だったんだ。イイから素直にもらっとけ!」

 

「確かにそうだな」

 

 一夏も、それに素直に同意する。

 

「確かに俺たちは白龍皇と戦ったけど、膝をつかせたのはお前だよ。素直にもらっといたらどうだ」

 

「兵藤、織斑……」

 

 戸惑う匙の両手に勲章を握らせながら、サーゼクスはその目をまっすぐに見つめてほほ笑んだ。

 

「謙遜してはいけない。君もまた、この戦いの英雄の一人だ」

 

 それに対して、誰一人として異を唱える者はいなかった。

 

 二天龍の片割れを、それも禁手はおろか覇龍にすら目覚めている存在を、そして何よりも魔王の末裔を、彼は未熟な身で打倒したのだ。

 

 そして、それをすでにヴァーリ・ルシファー自身が認めている。

 

「上を目指すといい。私たちは、君のようなものを待っている」

 

「………お、俺、俺は―」

 

 テント中にいる全員が見守る中、匙は震える声で思いを漏らす。

 

「教師に、なりたいんです」

 

「ああ」

 

「俺の死んだ親も教育関係で、それに会長も学校を作ろうとしていて」

 

「私個人としては、ぜひ応援したい夢だね」

 

「俺、俺……なれますか?」

 

「もちろん。きっといい教師になれるとも」

 

 その言葉に、匙は大粒の涙を流した。

 

「だから、先ずはその第一歩を受け取ってくれるね?」

 

「はい、はい……っ」

 

「うんうん。見所のある若い芽を見るのは久しぶりじゃ。冥界の未来は明るいのぉ」

 

 その光景にうなづきながら、オーディンは髭を撫でつけてイッセーと一夏に視線を向ける。

 

「それに、おぬしらもなかなかいい」

 

「「え?」」

 

 思わず二人して首をかしげるが、オーディンは愉快そうに目を細めると美女を連れ立って外へと出る。

 

「二対一とはいえよく頑張った。このわしが認めるのじゃから自信を持て」

 

 そんな去り際の言葉に、一夏とイッセーは目を見合わせる。

 

 北欧神話の主神の誉め言葉に、どう対応していいのは一瞬迷ってしまう。

 

 だが、イッセーも一夏も目指すところはきちんとある。

 

 だから、これはきっといい傾向なのだろう。

 

「……なあイッセー」

 

「なんだよ織斑」

 

「……次は倒すぜ」

 

「………ああ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「さぁて! 帰ってきたよ駒王町!!」

 

 列車から降りるなり、レヴィアは背を伸ばしながらそう声を放つ。

 

 そしてそれに続いてリアスたちが下りるが、何人かの表情は暗かった。

 

「冥界では大変でしたね」

 

「全くですわ。それに何より」

 

 蘭と朱乃の視線は、一夏の背中に注がれる。

 

 そこには、小猫がしっかりと抱き着いていた。

 

「にゃん♪」

 

「こ、小猫? 猫だぞまるで」

 

「はい。猫ですから」

 

 普段とはまったく違う様子を見せる小猫に、一夏もさすがに戸惑うが小猫は全く意に介さない。

 

「守ってくださいね、一夏さん」

 

「ああ、それは約束……痛い!?」

 

「一夏さん? だからなんでフラグを立てるんですか!!」

 

「あらあら、小猫ちゃんばっかりずるいですわ」

 

 蘭と朱乃につねらえる一夏をとりあえずスルーしながら、レヴィアはとりあえず今夜のことを考えた。

 

 小猫を一夏が落とすとはちょっと驚いたが、これはこれで好都合だ。

 

 あとは手練手管を使用すればうまくすればネコミミクール系ロリを味わうことができるのではないかと、皮算用を始めている。

 

 そんなとき、どこからともなく青年が現れた。

 

「……やっぱり、君がアーシアだったんだね」

 

「え? あの、貴方は?」

 

 戸惑うアーシアにかまわず、青年はその手を取ろうとするがイッセーが割って入る。

 

「おい! アーシアに一体何の用だ!!」

 

 イッセーは警戒心を強めるが、しかし相手は一切構わずアーシアの前で服をはだけて見せる。

 

 一見すれば非常識極まりない光景だが、しかしそれを塗り替えるほどの姿がそこにあった。

 

 そこにあるのは大きな傷跡。一歩間違えれば致命傷といってもいいほどの怪我の跡がそこにあった。

 

 そして、それを見たアーシアは目を見開いた。

 

「その傷は、もしかして……?」

 

「そう、あの時は顔を見せられなかったけれど、僕はあの時の悪魔だ」

 

 その告白に、アーシアは言葉を失っている。

 

「僕はディオドラ・アスタロト。傷跡を消してもらうことはできなかったけれど、僕は君の神器によって命を救われた」

 

 それは、上級悪魔アスタロト家の次期当主の名。

 

 彼は、すなわちアーシア・アルジェントが追放される原因となった、傷を治してしまった悪魔だった。

 

「会合の時はあいさつできなくすまなかった。君にお礼を言いたかったんだ。そして―」

 

 ディオドラはいつの間にかイッセーをすり抜けると、アーシアの手の甲に口づけをする。

 

 それに大なり小なり目を見開く中、ディオドラは照れくさそうに告げる。

 

「君と出会えたのはきっと運命だ。どうか、僕の妻になってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 驚愕の叫びが響き渡る。

 

 夏休みの最後は、波乱の幕開けとなっていた。

 




そういうわけで、戦闘に関してはオリジナル要素多めのヘルキャット編でした。

っていうかこの作品だとレーティングゲームはどうしたって原作まんまになるので、それを避けるためには変化をつけるしかありませんしね。

それに人類統一同盟は勢力としても非常にでかく強大です。

例えるならガンダムOO第一期で、ソレスタルビー〇ングがGNドライブ搭載機を三勢力ひとつ分のモビルスーツの数だけ擁しているようなものです。戦線を広げすぎても占領地の管轄ができないと判断しているからゆっくりと進めているだけで、やろうと思えば人類統一同盟はひと月立たずに人間世界を征服できます。

そんなわけで、戦争的な戦いをやってみました。レヴィア達は後方でしたが、弱い奴から狩るという戦術的に何ら間違ってない戦法をとったことで、苦戦しています。

ですがこの作品の真のハードモードは次の章でお披露目されます。三大勢力は大打撃を受けることになりますので、ハラハラしながらお楽しみください。

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