ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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停止教室のヴァンパイア 7

 

 放出された魔力は、しかしレヴィアが張った結界に阻まれて即座に防がれる。

 

 しかしその余波はたやすく校舎を破壊し、上半分を跡形もなく吹き飛ばした。

 

「・・・やってくれるね、カテレア!!」

 

 レヴィアは吐き捨てるかのように吠えたて、そしてその声を受けた当事者は姿を現す。

 

「セーラ・・・! 我らレヴィアタンの面汚しが、よくもまあ」

 

 カテレアと呼ばれた女性と、レヴィアはお互いに怨敵を見る目でにらみ合う。

 

「・・・彼女は一体誰ですか?」

 

「魔法陣は旧魔王レヴィアタンの家系のものだった。レヴィアの関係者なのは間違いないが・・・」

 

 蘭とゼノヴィアは戦闘態勢を取りながら首をかしげる中、その答えをサーゼクスは告げる。

 

「彼女はカテレア・レヴィアタン。旧魔王レヴィアタンの末裔にして、レヴィアの親戚筋だ」

 

「ええ、不本意ながらその愚か者は私の親戚です」

 

 心底いやそうな顔をしながら、カテレアはそれを肯定する。

 

 そんなカテレアに、セラフォルーは声を投げかけた。

 

「カテレアちゃん! どうしてこんな・・・」

 

 その悲しげな声に対して、カテレアは憎悪すら籠った目でにらみつけるという返礼がなされる。

 

「よくもまあ、そんな口を! この私から魔王レヴィアタンの座を奪っておいて・・・!」

 

「ハッ! あなたが魔王の座につける器なものか! 寝言は寝ていうものだよ、カテレア!!」

 

 即座に嘲笑を込めた罵倒を返すレヴィアと、カテレアは再びにらみ合う。

 

「・・・行ってくれますね。レヴィアタンの誇りを捨てて偽りの魔王に頭を垂れた愚か者が」

 

「王族の基本理念すら忘れた者がよくほざく。そんなだから魔王になれないんだよ、あなたは」

 

 罵倒の応酬がなされ、そして再び魔力を垂れ流しながら両者はにらみ合った。

 

「レヴィアさん、肉親に敵意しかわかないとか言ってましたけどここまでとは」

 

「ま、セーラ・レヴィアタンのような王の器持ちからしてみれば、こんな小物が肉親だなんてことが腹立たしくてたまらないだろうがな」

 

 少し引いている蘭にアザゼルが茶々を入れながら、そして一歩前に出てきた。

 

「カテレア。シェムハザが言うには禍の団にはオーフィスがかかわっていると聞いたが、本当か?」

 

「・・・ええそうです。無限の龍神(ウロボロス・ドラゴン)オーフィス。この世界における最強の存在こそ我々の頭首ですよ」

 

 その言葉に、その場にいる者たちが驚愕した。

 

 オーフィス。それは、この世界で最強の存在。

 

 ほかの存在に比べて頭一つ二つは優に超える強さを持つ圧倒的な力を持つ最強の存在が、テロ組織の首魁であるという事実に、全員が戦慄を隠せない。

 

 その事実に、レヴィアですら一筋の汗を流していた。

 

「カテレア。三大勢力のはぐれ者を含めた危険因子の集団の組織がこの会談を邪魔するということは、・・・そういうことだね?」

 

「その通りですセーラ。我々が至ったのはまさに真逆の決断。神と魔王がいないのならば、この世界を変革するのですよ」

 

 そう告げるカテレアは魔力を高めるが、しかしそれに対しての返答はおかしなものだった。

 

「・・・クックック」

 

「・・・何がおかしいのです、アザゼル」

 

 笑い出すアザゼルに殺意すら込めた視線をたたきつけるカテレアだが、しかしアザゼルは動じない。

 

「おいおい。真っ先にくたばる三流敵役のセリフだな。陳腐すぎるぜ、オイ」

 

 その言葉に、殺意の密度がさらに増幅される。

 

「この私を、魔王レヴィアタンの末裔を愚弄するか!」

 

「そういうところが三流なんだよ。・・・こいつは俺がやるが、いいか?」

 

「できれば僕がやりたいけど、そうなると本当に僕の意志が隠せないからね。譲るよアザゼル」

 

 レヴィアはそういいながら一歩を下がり、そしてそれを見たサーゼクスは最後の警告を告げる。

 

「カテレア。・・・下るつもりはないのだな?」

 

「ええ。あなたは良い魔王でしたが、最高の魔王ではない。私たちは新たなる魔王を作ります」

 

 その言葉とともに、戦闘が勃発した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、その戦闘とともにレヴィア達の行動も開始された。

 

「それじゃあまあ、魔法使いたちは僕たちで倒すとしますか!!」

 

「千冬さん! ISに集中してください!!」

 

 レヴィアの言葉に反応して放たれる砲撃が、魔法使いたちを一斉に吹き飛ばす。

 

「フハハハハ! 蘭ちゃんの神器は砲撃型! 其の破壊力は並の上級悪魔の比じゃないからね!」

 

 そう堂々と戦場で高笑いをするレヴィアに攻撃が殺到するが、しかしレヴィアは涼しい顔でそれを受け止める。

 

 殺意のこもった攻撃を集中砲火で受けておきながら、レヴィアはそれを小雨に振られた程度にしか感じていない。そんな光景に、ほとんどのメンバーが呆気にとられた。

 

「さあ蘭ちゃん。ちょっと右側の敵をぶっ飛ばして」

 

「はいはい」

 

 唯一冷静なままだった蘭は、右側から一掃するように砲撃を放射。そのまま魔法使いたちを薙ぎ払っていく。

 

「先輩たち! ぼさっとしてないで前衛お願いします!!」

 

「は、はい!」

 

 蘭に叱咤されて、木場はすぐに我に返って前に出る。

 

 聖魔剣とデュランダルの威力はすさまじく、並の魔法使いでは文字通り相手にならない。

 

「ふむ、もう少しできるかと思ったが、これはさすがに弱すぎるな」

 

 

 豪快に十人ぐらい切り飛ばしながら、ゼノヴィアはあきれたかのように告げた。

 

 三大勢力の和平会談を中止にさせるための戦力なのだ。もっと強大であってもおかしくないと考えるのが普通だろう。

 

 だが、ふたを開けてみれば下級悪魔である木場とゼノヴィアだけでも無双できそうな難易度だ。これでは肩透かしもいいところだろう。

 

「言っておくけど、それは君たちが強すぎるだけだからね?」

 

 攻撃をものともせずに正確に一体一体撃ち抜きながら、レヴィアは答える。

 

 彼女も確実に撃破してはいるが、しかしその数は木場たちに大きく劣っていた。

 

「禁手やらデュランダルやら、ふつうお目にかかれない強大な領域に到達しているんだ。今の君たちは中級程度じゃ太刀打ちできないほどの実力者だよっと!」

 

 ISの一機がこちらに狙いを定めて切りかかるが、レヴィアはそれを結界を張って防ぎ切った。

 

「さすがに放射線はきついからね。あたってなんかやれないかな?」

 

「ならば機動性でかく乱する」

 

 いうが早いか、ゴーストは距離をとるとそのまま高速で周囲を移動し始める。

 

 ISの本領発揮ともいえる高速移動に、木場たちはどこに動けばいいのかすらわからない。

 

「さあ、この状態でどうやって俺をとらえて見せる? 言ってみろ!!」

 

 自信に満ちたその言葉を聴きながら、レヴィアは指を鳴らすと蘭に命令を告げる。

 

「蘭ちゃん。ちょっと捕まえてきなさい」

 

「了解しました」

 

 そして次の瞬間。

 

 一瞬で残像を残して消えた蘭が、ゴーストの脚部を確かにつかんでいた。

 

「・・・バカな!? ISのスピードについていくだと!? 転生悪魔といえどここまでの強化ができるわけ―」

 

「あいにく―」

 

 そのまま蘭はゴーストを振り回すと―

 

「神器もセットなんで!」

 

 地面に勢いよくたたきつけた。

 

 むろんそれだけでどうにかできるわけではないが、そこを見逃すほど彼女は甘くない。

 

 次の瞬間には、いくつもの魔剣がIS使いの全身に突き立ち、そして爆発した。

 

「ぐぁああああああああ!?」

 

「レヴィアさん! それで次はどうしますか!?」

 

「んーそうだねー・・・」

 

 レヴィアは少し考え込むが、しかしやることは変わらない。

 

 今やるべきは魔法使いたちの殲滅で十分だ。

 

「よし、それじゃあみんな、この調子で―」

 

「いや、もう終わりだよセーラ・レヴィアタン」

 

 素の真後ろに、白龍皇が立っていた。

 

 ・・・誰もが反応できないなか、ヴァーリはその拳をレヴィアに向けてたたきつけた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・そして、何も起こらなかった。

 

「・・・なんだと?」

 

 唖然とするヴァーリの手を、レヴィアはゆっくりしっかり確実につかむ。

 

「どういうつもりだい、白龍皇?」

 

 その流し目はこれまでにないほど冷たく、返答次第ではそのまま首をはねられると錯覚してしまうほどだった。

 

「簡単だ、俺も禍の団の一員なのさ」

 

「なるほど。会議に参加しないけど近くにいる時間停止能力者。ギャスパー君の情報を売ったのは君だね?」

 

 レヴィアは確信すら持ってそう聞き返す。

 

 これだけ手際の整ったテロ作戦だ。大方何らかの形でスパイが紛れ込んでいることは想定できていた。

 

 できていたが、まさか堕天使側最強戦力がそれだというのはとてもつらいことだ。

 

「・・・コカビエルを止めに来たあなたが、なんでコカビエルと似たようなことをするんですか!?」

 

 砲門を突き付けながら蘭が吼えるが、ヴァーリは未だに余裕の表情を浮かべていた。

 

 この状態で打てば間違いなくレヴィアも危険にさらされる。そんな状況では撃たれるはずがないという確信だった。

 

「いや、オファーを受けたのはコカビエルを持って帰る途中でね。魅力的なオファーだったので受けざるを得なかったのさ」

 

「どんな理由だ? それだけのものがあるんだろうな!?」

 

 デュランダルでいつでも切りかかる準備を整えながら、ゼノヴィアが吼える。

 

 世界に破滅と混乱を巻き起こしてまで得たいものが一体何か。さも大規模なものであるのだろう。

 

 もしそうでないのなら―

 

「アースガルズと戦ってみないか? ・・・そんなことを言われたら、強者と戦うことが生きがいの俺では断れないさ」

 

 ―もはや殺すほかないだろう。

 

「そんなことのために、三大勢力の和平を崩してまでこんなことをしたというのか!!」

 

「その通りだ。まあ、そのあたりは全部上の者の指示なので、俺が言われても分かることじゃないんだがな」

 

 木場にそう返しながら、ヴァーリは全身から魔力を放出する。

 

「ではまず小手調べだ。この白龍皇の力を受けきって見るがいい!!」

 

 そして次の瞬間、白龍皇の身にまとっていたオーラが、一斉に爆発した。

 




因みに、全線で戦闘しているレヴィア達(敵味方)での火力2トップは蘭とヴァーリ。

しかしある一点のステータスに限り、ヴァーリですら話にならないほどのぶっちぎりトップが存在しています。

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