ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
そんなある日のこと、レヴィア達は風紀委員室で作業を行っていた。
色欲の権化たるレヴィアであるが、別に学校内でしているわけではない。
やるなら学校と同じ規模のセットを作ってそこでやるというド級のまねをぶちかます。それがレヴィアという女だ。
なので一夏としても蘭としても学園内では平和に過ごせているのだが、その静寂は無残にも破られた。
「・・・た、大変だぁあああああ!!」
「なんだい松田くん? ここは風紀を守る場所なんだからもうちょっと節度をもって」
「大変だレヴィアさん! イッセーに彼女ができた!!」
「なんだって!? それは本当かい!?」
思わずカップを取り落とすほどの元浜の叫びにレヴィアは動揺した。
「なんだと!? あの兵藤に女ができたって!?」
「そんな! 一年前に比べたらだいぶましだけど、それでも変態なのに変わりはないのに!!」
「っていうか、レヴィアさんにすい尽くされて欲望出てこないだけじゃね?」
「いいえ、それでもエロい会話は普通にする程度の欲望は残ってるわ」
「それダメダメじゃん。なんで告白されたんだあいつ」
「あの、レヴィアさんの場合はどうなるんでしょうか?」
あまりにもあれな風紀委員たちの反応に、蘭がおずおずとフォローを入れるがしかしそれは弱弱しい。
じっさい蘭としてはレヴィアで慣れているとはいえ変態すぎるイッセーたちには困っているところもあるので、それは仕方がないことなのだが。
「いや待てよ。そりゃあいつら変態で女の敵だったけどさ、それでも根はいいやつらばっかりじゃないか。レヴィアみたいな女だったら好きになってもおかしくないんじゃないか?」
「一夏くん? それ、僕が変態だって暗に肯定してるよね?」
「自覚してください」
レヴィアの鋭い視線に対して、蘭がバッサリと切り捨てた。
先輩に対してあれな対応ではあるが、風紀委員たちは風紀委員長が風紀に半ばケンカを売っているのは自覚しているので何も言わなかった。
「・・・ふむ、それで? いったいどんな子なんだい?」
「お嬢様学校の制服を着た、天野夕麻ちゃんって子だ。・・・あんな美少女があの学校にいたとは、俺も気づかなかった」
元浜の眼鏡キャラらしい解説台詞を聴きながら、松田は涙を流して床を殴りつけた。
「しかも週末にはもうデートだとよ!! くそ、あの野郎罰ゲームか何か扱いされて涙を流せばいいんだ!!」
「いや、それはちょっとかわいそうじゃありませんか?」
友人に対してあんまりな物言いに、蘭はさすがに声を上げた。
「友達なら祝福してあげましょう? だって、イッセー先輩いい人じゃないですか。レヴィアさん並にいやらしいけど」
「蘭ちゃん、君は本当に俺たちに対して優しいなぁ」
「それはもう、レヴィアさんで慣れてますから」
「ああ。レヴィアのおかげでだいぶ慣れたなぁ」
蘭と一夏は遠い目をして過去を懐かしむような表情を浮かべる。
「・・・やはりレヴィアさんに喰われたという噂は本当らしいな」
「俺らもがっつり食われているから、まぁそっとしておいてやろうな」
元浜と松田はうんうんとうなづき合いが、しかしその間にレヴィアは深く考えていた。
「・・・ふむ、う~ん」
「どうしたんだ、レヴィア?」
一夏がそれに気づいて声を変えると、レヴィアは少し不安げな表情を浮かべていた。
「うん、確かだけど、この子この学校の子じゃないと思うよ?」
「え?」
特に外見的に高校生で間違いないような形だったので一夏は首をかしげるが、レヴィアははっきりと断言する。
「他行とのもめ事を考慮して、周囲の高校の生徒の顔は全部把握してる。あの高校に天野夕麻何て名前の女子生徒は存在しない」
そうはっきりと断言しながら、レヴィアは指を口元に当てて考え込む。
「・・・考えすぎだとは思うけど、蘭ちゃんちょっとデート覗いてくれないかな? その日は僕と一夏くんは用事があるの知ってるだろ?」
「・・・何かあるんですか?」
いつもよりわずかだが真剣なトーンの声に、蘭は目を細めて促した。
そして一瞬、一般人の動体視力ではわからないような高速の動きで、ハンドサインが展開される。
それを見て、一夏と蘭はレヴィアの懸念を理解した。
「蘭、任せた。俺とレヴィアも終わったらすぐに行くから」
「任せてください!」
やあ! 俺は兵藤一誠! 親しい奴からはイッセーって呼ばれてるぜ!!
夢はでっかくハーレムを作ること。おっぱい一杯夢いっぱいを合言葉に、女子比率の大きい難関校に合格した、エロと熱血で生きる男さ!
入学直後にきれいな同級生に童貞食べてもらったりといろいろあったけど、それでもまだ彼女はできないのが残念だった俺にも彼女ができた。
その名も天野夕麻ちゃん! 黒髪美少女のむちゃくちゃ可愛い女の子!
そんなわけで今日は初デートだったんだけど・・・。
「死んでくれないかな?」
いきなり、夕麻ちゃんがそんなことを聞いてきた。
え? ど、どういうこと?
これはまさかあれか? 昔覗きの常習犯だったことをうらんでいる女たちによる報復か何かだったりするのか?
た、確かに女尊男卑がひどかった最近の情勢的によく捕まらなかったって自分でも思うときはあるけど、え、これマジで?
「ご、ごめん夕麻ちゃん。よく聞こえなかったからもう一度言ってくれるかな?」
なんかの冗談だと思って、俺はもう一回聞いてみる。
あ、これどっきり? どっきりだよね?
「死んでくれないかなって、言ったの」
夕麻ちゃんははっきりとそう言い切った。
え? あれ? これ、どういうこと?
「ごめんねイッセーくん。何も知らない坊やの君には悪いんだけど、恨むならあなたに神器《セイクリッド・ギア》を与えた聖書の神様をうらんでくれると嬉しいかな?」
よくわからないことを夕麻ちゃんの背中から、黒い翼が生える。
まるで黒い白鳥というべき綺麗な翼を見とれていると、いつの間にか夕麻ちゃんの手には光り輝く槍があった。
いや、光り輝いているんじゃない。アレ、光そのものだ。
え、これ、どういう状況?
訳が分からなくて、俺は全然動けない。
「じゃ、そういうことで」
夕麻ちゃんの手が振り上げられ―
「逃げてくださいイッセー先輩!」
その夕麻ちゃんに向けて、光の奔流が放たれた。
「・・・チィッ!」
夕麻ちゃんは間一髪でそれを交わすけど、その一撃は公園の地面を大きく削り取った。
そして俺はその衝撃で吹っ飛ばされる。
「うわぁあああああ!?」
地面にたたきつけられてむちゃくちゃ痛い!?
な、なんなんだこれ、いったい何なんだ!?
「大丈夫ですか、イッセー先輩」
と、そこにいたのは赤茶色の髪をしたよく知る後輩。
五反田蘭ちゃんが、なんか龍みたいな大きい筒をもってそこにいた。
「逃げて・・・いいえ、私から離れないでくださいイッセー先輩」
「え、え? どういうこと?」
すごい真剣な表情をしてる蘭ちゃんに、忌々しそうに舌打ちをする夕麻ちゃん。
にらみ合う二人についていけず、俺は首をかしげてしまった。
「そう、あなた悪魔ね? 悪いけどこっちも仕事なのよ。邪魔しないでくれるかしら?」
「悪いけど、この人はダメな人だけど大事な先輩の一人なの。堕天使なんかには殺させない」
一触即発。そういう状況下としか思えなかった。
だけど大事な先輩か。織斑がいるから違うのはわかるけど、だけどこれはこれですごいうれしい・・・じゃない!
ど、ど、どうすればいいんだこれは!
なんかいつの間にかぞろぞろと人が集まってるけど、どうも普通の人じゃないっぽいぞ!?
「イッセー先輩。説明は後でするから、とにかく私から離れないでください。はっきり言って、守り切れる自信もあまりないです」
「え? 俺ってマジで殺されそうなの? 覗きって殺されなきゃならないような罪!?」
「それとこれとはたぶん別問題です。だけど、レヴィアさんと一夏さんが来るまでは安心できません」
周りを警戒しながら、蘭ちゃんは汗を一筋流しながら厳しい表情を浮かべる。
くそ! なんか俺にできることはないのかよ!?
俺はせめて警察に連絡しようかと思ったけど、さっき吹っ飛ばされた時にスマホを落としてしまったらしい。
ああもう! 年下の女の子に体張らせてる場合じゃない! 何とか・・・何とか・・・何とか!
くそ! 誰か助けてくれぇえええええええ!!
「・・・え? イッセー先輩、それって?」
「この紋章、グレモリーの!?」
目を閉じてとにかく困り果ててたら、そんな驚きの蘭ちゃんと夕麻ちゃんの声が聞こえてきて、俺はなんとなく目を開けた。
なんかポケットからすごい輝きが放たれてる。探ってみたら、駅前でもらったチラシが輝いていた。
「あなたの願い、かなえます!」だなんて胡散臭いチラシが、なんかマジで輝いている。
え、ええ!? ナニコレぇえええええ!?
あ、なんか人が出てきたぞぉおおおおおおお!?
「貴方ね、私を呼んだのは。あら? 蘭じゃない?」
「リアスさん! すごくちょうどいいところに!!」
そこにいたのは、駒王学園二大お姉さまとすら呼ばれるスーパー美少女、リアス・グレモリー先輩だった。
え、え、ええええええ!? なんでリアス先輩がこんな胡散臭いチラシから出てくるんだぁああああ!?
「リアス先輩! この人が、神器のせいで堕天使に殺されそうになってるんです!」
「そうなの? まったくもう、聖書の神ももう少し人を選べばいいのに・・・あら?」
蘭ちゃんと話しながら、リアス先輩は俺の方を見て興味深そうに眼を見開いた。
「あらあら。これはまた・・・」
「あの、できればすぐに決断してほしいんですけど!?」
「ちょっとグレモリー! こっちは仕事で来てるんだから、眷属にする気がないなら邪魔しないでくれるかしら!?」
俺をしげしげとみるリアス先輩に、戸惑いながらの蘭ちゃんの催促と、イラつきながらの夕麻ちゃんの文句が届く。
それを聞いてから我に返ったリアス先輩は、微笑みながら俺を抱きしめた。
「ちょうどいいわ。この子、私がもらうわよ」
・・・・・・・・・・・・・・・。
え、え、ええええええええええ!?