ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
襲い掛かるはぐれ悪魔祓いと堕天使、そしてケルベロスの群れに対して、一番に動いたのは蘭だった。
「させない!」
「え、ちょっと!?」
「蘭ちゃん!」
元浜と松田の制止の声を聴きもせずに前に出る蘭は、即座に両腕を構える。
そして、それは現れた。
八つの蛇がまとわりついた筒のようなそれは、間違いなく
だが、その出力はあまりにも甚大。
例えていうのならば、疑似的な
「まずは一発!!」
そして、そこから莫大な破壊の奔流が放たれた。
「な、なにぃいいい!?」
「これは・・・ぐぁああああ!!!」
その奔流の前に、突出していた堕天使や悪魔祓い、そしてケルベロスが一撃で吹き飛ばされる。
そしてそのままコカビエルに向かっていったが、コカビエルは背中から十枚の翼を出すと楯のよう体の前にかざす。
そして、宙に浮かぶ椅子を消し飛ばしながらその奔流が結界を突き抜けた。
「・・・あ、やっちゃった」
「えええええええええ!?」
あまりの破壊力に、イッセーは大声を上げるほかない。
それだけの圧倒的な破壊力の奔流に、敵が全員一旦動きを止めていた。
「ああ、あれが蘭の神器なんだ。なんでもやつらおう? とかいうドラゴンを封印してるってレヴィアが言ってたな」
そう一夏が説明しながら、さらに自分が突出する。
「・・・ほう? これはそこそこ楽しめそうだな」
そして、破壊の奔流を耐えきったコカビエルがうれしそうな表情を浮かべて光の槍を一夏に向けて投げ放った。
このままなら確実に直撃。そしてそうなれば一撃で死んでもおかしくない。
だが、一夏は全くためらわずに直進しながら、手首につけている腕輪を構える。
「行くぜ、不知火!!」
次の瞬間一夏の体が光に包まれ、そして巨大な具足を身にまとう。
肥大化したとでも例えるべき両腕と両足。そして背中に浮遊する翼。
それは、間違いなくISだった。
白と青で色分けされたそれは、間違いなく最強の戦術兵器、インフィニット・ストラトス。
「行くぜ、不知火!!」
そして一気に加速し、その勢いのままに一撃をケルベロスへと叩き込む。
神器によって強化された一撃を、鍛え上げられた技量で導き、ISの加速力で叩き込む。
あらゆる条件が好条件であるがゆえに、魔獣殺しは一瞬で達成される。
そして、その妙技によって生まれた一瞬のスキをセシリアは見逃さない。
「お行きなさい、ガンポッドビット!」
スターダスト・ティアーズのビットが射出され、聖剣で構成された弾丸が隙を見せた悪魔祓いを撃ち抜いていく。
そして、一歩遅れながらもリアスたちもすぐに我に返った。
「行くわよ、私のかわいい下僕たち!!」
消滅の魔力を全力で放ちながら、リアスもまたコカビエルへと一撃を放つ。
それをコカビエルは一言も発さずにあっさりとかき消すが、その時間のロスをついて、一夏はコカビエルの眼前へと迫っていた。
「さすがに早さだけはあるな」
「他は神器で補えるしな!」
一夏の渾身の斬撃を、コカビエルは翼を盾にしてあっさりと防ぐ。
さらにコカビエルは余っている翼を器用に動かして、ビットによる攻撃をすべてはじいた。
「さすがに、圧倒的ですわね・・・っ!」
「そういうことだ小娘に小僧。ただ速いだけの玩具で俺は殺せんぞ?」
憐憫の感情すら浮かべてコカビエルは笑う。だが、しかしその表情がわずかに喜色を浮かべた。
「・・・ほう? 思ったよりはやるようだな」
コカビエルの視界の先、リアスたちは敵を前にして善戦していた。
すでに敵の五分の一が撃破されており、あたりには血しぶきが待っていた。
「うぉおお吐きそう! だが頑張るぜ!」
「これが終わったらレヴィアさんにご褒美もらってやる眼鏡ビーム!!」
松田と元浜すら一対一で堕天使を抑え込むという所業を見せ、気合で何とか食い下がっていた。
「なかなか面白いペットを持っているようじゃないか。セーラ・レヴィアタンもリアス・グレモリーも引きが強い」
「私の可愛い下僕を侮辱するとは、万死に値するわね!!」
一夏とセシリアの攻撃を捌きながらのコカビエルの挑発に、リアスはそれとわかっていても怒りを燃やす。
そして、それを受けてコカビエルは歯を剥いた。
「なら倒して見せろ!! 神の子を見張るものの一角を崩せるこの機会、好機と思えぬのならお前たちの器も知れるものだ!!」
「ぐぁ!?」
いうと同時に、コカビエルは一夏にケリを叩き込んで弾き飛ばす。
そして、巨大な光の槍を生み出すと、アーシアに向けて投げつけた。
「・・・アーシア先輩!?」
すぐに蘭が砲撃を放つが、それでも完全には殺しきれない。
そしてアーシアにむけ、いまだ上級堕天使レベルの光力を発揮する光の槍が迫り―
「アーシア! 逃げ―」
「その心配は不要だ、兵藤一誠」
「お待たせ、イッセー君」
―その槍を、二振りの刃が切り裂いた。
莫大な破壊力を生み出す聖剣と、光を喰らう魔剣。
それらを持つものはすなわち―
「ゼノヴィアさん! ご無事でしたのね!」
「木場! 無事なら無事って言えよな!!」
セシリアとイッセーの歓喜の声が届き、二人は笑みを浮かべながら剣を構えた。
そして、それと同時に魔法陣がより強大な輝きを放つ。
「―完成だ」
陶酔したバルパーの声が響く中、エクスカリバーが合一して一振りの剣となる。
そして、魔法陣は莫大な力を放出する。
「あと二十分もすればこの都市は吹き飛ぶ。開戦の火ぶたとしてはまあ十分だろう」
「ご苦労バルパー。これでようやく戦争ができるというものだ」
バルパーのこ言葉を受け、コカビエルは満足そうにうなづいた。
そして、イッセー達は一様に顔を引きつらせる。
当然だ。魔王たちの増援が来るまではあと三十分はかかる。レヴィアが来るにしてもギリギリだろう。
何とかしなければ街が崩壊する。だが、とてもじゃないがこのままでは間に合わない。
「・・・さて、それではそろそろ余興も終焉と行こうか。フリード」
「はーいなボス!」
その言葉とともに、片手をあげてフリードが姿を現す。
そして、猟奇的な笑みを浮かべながらフリードはエクスカリバーを手に取った。
「こいつで邪魔な連中をズンバラリンと切り裂きパーティすればいいんでしょ? 処刑用BGM流してそれまでにできるかどうかレッツチャレンジ! ってかんじで?」
「わかってるじゃないか。ああ、しっかりと楽しんで来い」
「そしてエクスカリバーの力を示してくるといい、それがお前の役目だフリード」
フリードに満足そうにうなづいたコカビエルとバルパーに、全員がさらなる脅威を感じてわずかながらに気おされる。
コカビエルだけでも強力だというのに、ここに四本まとめて合一化されたエクスカリバーが追加されるのだから難易度が大幅に上昇する。
「・・・さて、それではお前たちとの戦いもそろそろ終わらせておくとしようか!!」
そして、コカビエルの視線が一夏に向けられた。
そして次の瞬間、一夏の目の前にコカビエルが映る。
「速い!?」
「違うな、貴様らが遅いのだ」
即座に振り下ろされた一撃を何とか受け止めるが、さらに横っ腹に翼の攻撃が叩き込まれ、一夏は結界にたたきつけられる。
今の一撃でシールドエネルギーは飽和し、絶対防御まで発動。エネルギーの大半は消滅したうえに意識まで飛びかけた。
「一夏さん!?」
「次はお前だ!!」
そしてその隙を突いて、コカビエルは蘭へと光の槍を放つ。
並の悪魔なら一撃で数十はまとめて滅ぼせる圧倒的な光力。だが、それを蘭は何とか耐えきった。
「・・・ほう。戦車とはいえ並の耐久力ではない。・・・神器か」
「この・・・っ!」
反撃の砲撃をあっさりとかわしながら、コカビエルは感心する。
「だが所詮は下らぬおもちゃ。その程度で俺を殺せると思うなよ!」
「なら、こんなおもちゃはどうですの!」
真後ろに回り込んだビットが砲撃を放つが、コカビエルは見ずに即座に叩き落す。
「ぬるいな小娘。確かにこの中では有数の腕だが、俺を相手にするにはまだまだ足りんぞ?」
「くっ! これが神の子を見張るものの力・・・っ」
聖剣といえど、伝説クラスでないのならば相手もならない。
最上級の堕天使のそのまた上クラスの力に、セシリアは歯噛みする。
「さて、それではそろそろ終わらせたいところだが・・・」
その時だった。
「・・・僕は、剣になる」