ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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ハイスクールD×Dのまとめウィキを作ってみました。

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戦闘校舎のフェニックス 5

 そして夕食をとってから深夜。今度はレヴィア達に呼び出されて夜の山で特訓を開始することになる。

 

「さて、ここからはより実践的な特訓をやっていこうと思う」

 

 ジャージ姿のレヴィアはそう言った。

 

 とはいえ、昼の特訓でも戦闘訓練は積んでいたし、これ以上さらに何を特訓するというのだろうかという疑問が起こる。

 

「レヴィアさん? 具体的にはどうするんですか?」

 

「答えは簡単。・・・それぞれの戦い方を作り上げるのさ」

 

 そう告げるレヴィアはすぐに説明する。

 

 戦闘職の育成というのは、本来数年かけて培っていくもの。祐斗も小猫も何年も訓練を積んでいるからこそあの強さを持っているのだ。

 

 そんな状況下で素人が全方位で特訓をしたところで、足手まといが生まれるのがオチ。そんな状態ではたとえ一夏が協力してくれたとしても勝算はそこまで大きくないだろう。

 

 ゆえに、レヴィアは対策を考える。

 

「要は限定特化型の戦力を作るんだよ。それなら、型にはまれば短期間でもそこそこの戦力になるからね」

 

 道具とは、シンプルな方が使いやすいものだ。

 

 十得ナイフとコンバットナイフの二つがあって、戦闘に十得ナイフを選ぶやつはそうはいない。つまりはそういうことである。

 

 特化型は安定性において汎用型にかけるがしかし突破力では上回る。この短期間で戦力として運用するならば特化型にする方が役に立つだろう。

 

「というわけで、これから君たちを特定条件に特化した戦力に切り替える。まずは松田君!」

 

「はい!」

 

 真っ先に呼ばれて、松田は緊張しながら返事をする。

 

「君は身体能力だけなら木場くんや小猫ちゃんにも劣らない。だから君はアーシアちゃんの護衛・・・というより運搬役だ」

 

 それについてイッセー達にも理解できた。

 

 夕食の時にも、イッセーとアーシアに関しては攻撃を避ける技術が必要だとリアスに言われた。

 

 イッセーは赤龍帝の籠手の能力の都合上長期戦で真価を発揮するため。アーシアは、回復能力というレーティングゲームにおいて反則一歩手前の能力を最大限に生かすためだ。

 

 だが、アーシアは誰がどう見ても文系少女。今から鍛えたからといって、そんな高い身体能力を確保できる可能性は低かった。

 

 だからこそ、松田だ。

 

 彼の高い身体能力を機動力特化で鍛え上げることで、アーシアの足となる。

 

 そうすれば、アーシア自身は回復に専念できる分より特化した戦力になるだろう。

 

「よっしゃ! シスターの体を触り放題!! 燃えてきたぜ!!」

 

「うんうん。と、いうことでこれね」

 

 そういってレヴィアが渡すのは巨大なお盛だった。

 

 誰がどう見ても数十キロはあるであろうおもりを、レヴィアはぽんと松田に渡す。

 

「重い!? なんですかコレ!?」

 

「アーシアちゃんの二倍ぐらいの重さのおもりだよ。これを軽々運べるようになれば、アーシアちゃんぐらい簡単に運べるはずさ」

 

 なるほど確かにその通りだ。

 

「というわけでそのままランニングから始めようか。最終的には全力疾走で十分ぐらいはできるようになってもらわないとね♪」

 

「ちくしょぉおおおおおおおお!! やってやるぁああああああああ!!!」

 

 滝のような涙を流しながら、松田は全力で走っていった。

 

 だが、イッセーにも元浜にもそれを笑う余裕はない。

 

 おそらく、それと同レベルの苦難が襲い掛かってくるのは間違いないのだから。

 

「次は元浜くん! ぶっちゃけ君が一番戦力じゃない」

 

「はっきり言いましたねレヴィアさん! 知ってたけどさ!!」

 

 こっちも同じく号泣する。

 

 しかしこれは仕方がないだろう。

 

 高い身体能力をもとから持っている松田や、神滅具という強大な異能をもつイッセーとは違う。彼は本当に戦闘能力という意味では最弱だ。

 

 転生した時も兵士の駒一つで済んだ。これは松田も同様だが、しかし同じ駒価値一でも幅というものはある。

 

 ぶっちゃけ彼が今回の合宿メンバーで一番価値がない。

 

 だが、それでも元浜はくじけなかった。

 

「それでも俺は頑張りますからね! すべてはハーレムを作るために!!」

 

 そう、こんなところでくじけているわけにはいかない。

 

 全てはハーレムを作るため。何が何でも上級悪魔にならなければならないのだから。

 

「それでレヴィアさん! 俺は一体何をすればいい」

 

「簡単だよ。女の乳をつかんでから逃げればいい」

 

 沈黙が生まれた。

 

 だが、レヴィアは一切それにかまわず続ける。

 

「簡単に言えば、とにかく一人引き付けるんだ。少人数同士の戦場ならば、一人足止めできるかどうかが大きく変わる。元浜くんは今回はそれに集中してくれ」

 

 普通なら、これはかなり残酷な言葉だろう。レヴィアも内心そう思っている。

 

 ようは、お前は役に立たないから囮になれといっているのだ。

 

 だが、完全文系というかオタク系の元浜をこの短期間に戦士に育成することはとてもできない。少なくともレヴィアにはできない。

 

 だから、レヴィアは頭を下げようとして。

 

「―大丈夫ですレヴィアさん。俺は頑張ります」

 

 そんな言葉を聞いて、レヴィアは動きを止めた。

 

「俺が一番役に立たないのはわかってます。・・・だからってへこたれてちゃいられませんしね。・・・そう、ハーレムを作るためにもまずは一勝しないといけませんし!」

 

 そう一手に借りと笑う元浜に、レヴィアはすまなそうに微笑んだ。

 

「・・・ありがとう。じゃあ、君の場合はもっと大変だ」

 

「・・・へ?」

 

 ぽかんとする元浜の肩に、手が置かれた。

 

「じゃあ、私と一夏さんが相手をします」

 

「要は追いかけっこだよ。俺達二人から全力で逃げろ」

 

「・・・・・・・・・・・・ハイ」

 

 一転して絶望の表情を浮かべた元浜が、ドナドナよろしく連れていかれる。

 

 そして、最後に残ったのがイッセーだった。

 

「・・・イッセーくん。正直言って、今回のレーティングゲームは君が切り札だ」

 

「俺が?」

 

 イッセーはどうにも実感がわかない。

 

 自分が弱いのは昼の特訓でよくわかった。

 

 木場のような剣術も、小猫のような体術も、朱乃のような魔力の才能も、アーシアのような回復能力もない。ましてや身体能力でも松田に大きく引き離されている。

 

 はっきり言って元浜と大して変わらない。駒価値八の神滅具持ちという立場からしてみれば、むしろ最も悲惨だといってもいい。

 

 だが、レヴィアは静かに首を振った。

 

「というより、まともに戦って勝ち目があるのはたぶん君だけだ。ほかのみんなじゃ火力が足りない」

 

 ライザー・フェニックスはそれだけの脅威なのだ。

 

 どれだけ小物臭い醜態をさらそうとも、期待のルーキーといわれたその実力は本物。そして、フェニックスの不死の力も本物なのだ。

 

「フェニックスの不死を突破する方法は大きく分けて二つ。桁違いの出力で消し飛ばすか、精神の限界を超えるまでボコり続けるかの二つ。このうち、前者を行えるところまで行けるのはおそらく君だけだ」

 

 レヴィアは、まっすぐイッセーを見つめて言い切った。

 

「・・・君が、切り札だ」

 

 その言葉に、イッセーは自身が全くなかった。

 

 まったくなかったが、それでも信じた。

 

 なぜなら、それを言っているのはレヴィア・聖羅だ。

 

 彼女はこういう時消して嘘を言わない。そういう立派な人物だとわかっているから、信じられる。

 

「わかりました、レヴィアさん」

 

 だったらもはややるしかないだろう。イッセーは腹をくくる。

 

「それで、俺はどうすればいいんですか?」

 

「簡単だよ。・・・最大まで倍加を高めて僕に魔力の一撃を叩き込むんだ」

 

 その言葉にイッセーは唖然とする。

 

 それはそうだろう。かつて初めて神器を最大限に発動させた時ですら、一撃で中級堕天使であるレイナーレを葬ったのだ。

 

 それをレヴィアにたたきつけることにイッセーは躊躇するが、レヴィアはにやりと笑うと堂々と両手を広げる。

 

「大丈夫。絶対に倒れないと約束しよう。・・・限界を超える一番簡単な方法は、限界まで全力を出すことを繰り返すことだからね?」

 

 レヴィアの顔に恐怖はない。

 

 フェニックスの不死すら突破する火力に到達しようとも、自分を殺すことはできないという自信があったからだ。

 

「さあ、気合を入れなよイッセーくん。・・・切り札になるためには楽な道はないということだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「そ、そういえば・・・そういえば・・・」

 

 数日後の深夜特訓の帰り、元浜は気になったことがあったので聞いてみることにした。

 

「なんだよ? それと、冷たすぎるのは体に悪いぞ?」

 

「いや、最近はやっぱり冷たい方がいいってニュースでやってたぞ?」

 

 一夏と松田はスポーツドリンクを飲みながら、それに聞き返す。

 

「いや、そりゃ勝手に結婚決められるのはあれだけどさ? でも、レヴィアさんも言ってたけど貴族っていろいろ縛りあるだろ? ノーブラなんたらとか」

 

「ノブレスオブリージュですよ?」

 

 蘭が訂正するが本題はそこではない。

 

 実際確かにそうだろう。貴族というものは特権を持っているが、それは責任を果たしてこそだ。そうでなければいずれ地球の様々な国家のようにクーデターが起きる。

 

 また、その特権を維持するためにも様々なしがらみが存在する。その一つが婚姻だろう。

 

 今までの話や態度を見る限り、リアスはわがままなところはあるが決して責任感がないわけではない。少なくとも貴族の責任を果たそうという気概ぐらいはあるはずだ。

 

 それなのに、リアスはこの結婚に関してだけは決して首を縦に振ろうとはしなかった。

 

「そういえばそうですね。私は結婚が勝手に決められるのがいやだったので考えもしませんでした」

 

「だよなぁ」

 

 蘭に同意されて元浜はさらに首をかしげるが、そこによくわかってそうな人が乱入した。

 

「ああ、それは簡単だよ。そういう意味では僕と同じさ」

 

「おわっ!? レヴィアさん・・・っていうかイッセー無事か!?」

 

 松田がレヴィアに背負われているイッセーをみて驚きの声を上げるが、しかし冷静に考えれば今更の話でもある。

 

 なにせイッセーは全力全開をとにかく連発しているのだ。必然的に消耗は大きいというものだろう。

 

 だからレヴィアは一切気にせず、普通に簡単に説明する。

 

「リアスちゃんはあれで結構乙女なんだよ。だから、リアスとして愛してもらいたいのさ」

 

 そう苦笑するレヴィアだが、その口調は割と重いものだ。

 

 ・・・人というものは、結構色眼鏡でものを見る生き物だ。

 

 親の七光りということわざがあるように、家族や家系というものを重要視してしまうのが人というもの。それは悪魔にとっても変わらない。

 

 ましてやリアスは72柱の一つであるグレモリーだ。魔王すら輩出したその名は重く、それゆえにどうしても付きまとってしまう。

 

 リアスは、結婚する相手にはそれ抜きで愛してもらいたいと思っている。

 

「わがままなのは間違いないさ。貴族の婚姻は家の存続や影響力すら考慮に入れるべき商談。もちろん相手の心情を考慮した政略結婚も多いけど、恋愛感情を最優先にはしていられないさ」

 

 なにせ、結婚したということは相手の家系と自分の家系が家族になるということだ。どれだけ努力しようとも、影響がないわけにはならないのだ。必然的に政治的な影響力も大きくなってしまうだろう。

 

 だからこそ、地位ある貴族にはどうしても婚姻に責任が伴う。貴族を出奔するわけでもなくそれを無視するわけにはいかないのだ。

 

 だから、レヴィアは最初から愛情を考慮しない。真なるレヴィアタンの末裔という自分の立場で、それを優先した婚姻などするわけにはいかないとすら思っている。

 

 ゆえに、レヴィアはリアスのそれをわがままだと思っている。それは貴族として問題があるとすら思っている。

 

 しかし―

 

「それでも、リアスちゃんは条件は付けたんだ。それをグレモリー卿も呑んだんだ」

 

 大学を卒業するまでは待つ。それは、リアスが自分の責任も考慮して出した苦渋の決断だっただろう。そして、ジオティクス・グレモリーもそれを飲んだのだ。

 

 だが、彼は事情も説明せずそれを破談にした。

 

「だから、僕は一夏くんや君たちを差し向けるのさ。最初に貴族として恥ずかしい真似をしたのは彼なのだから、それ位はしないとフェアじゃない」

 

 そう言って、レヴィアは苦笑した。

 

「・・・なんていうか、面倒な性格してるよなレヴィアさん」

 

「同感だ。意外と面倒くさいなレヴィアさん」

 

「うるさいよ、そこ」

 

 そういい合う三人を見ながら、一夏と蘭は顔を見合わせて苦笑した。

 

 実際それもあるのだろうが、ほかにも理由はきちんとある。それは彼女も一度言っている。

 

 簡単だ。一夏と蘭は周りの勝手な都合で行われる結婚が気に入らない。それが理由の一つだ。

 

 織斑一夏は両親に捨てられた。だから親の勝手な都合に子供が振り回されることが気に入らなくてたまらない。

 

 五反田蘭は普通の家族のもとに生まれた。だから、普通に恋愛で結ばれない婚姻が気に入らない。

 

 レヴィアにしてみればある意味当然の政略結婚なのに、眷属の心情を気にして介入できる機会を用意した。

 

 本当に、人のいい眷属思いの主に出会ったものだと二人は思う。

 

「私の分も頑張ってくださいね、一夏さん。出ないとレヴィアさんの心意気が無駄になっちゃいますから」

 

「わかってるさ。絶対に、このレーティングゲームは負けられないな」

 

 二人は笑い合うと、決意をしっかりと込めなおした。

 

 


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