ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット   作:グレン×グレン

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戦闘校舎のフェニックス 4

 

「ひー、ひー、ひー・・・」

 

「ふー、ふー、ふー・・・」

 

 山道を息を荒げながら、イッセーと元浜はひーこらひーこら上っていた。

 

 全身から汗をだくだく流しながら、それでも何とか先行する女性陣に追いつこうと必死になって登っていく。

 

 それだけの苦労をしている理由は、山道だからではない。

 

 背中に結構な量の荷物を背負っているからだ。

 

 こんなものを背負っていれば、慣れている人でも悲鳴を上げるのではないかというぐらいの量の荷物を背負っている。

 

 それは悲鳴も上げるだろう。普通上げる。

 

「あ、部長。山菜をとってきました。今日の晩御飯に使いましょう」

 

「いい景色だなぁ。元写真部だし、一度ぐらい風景をとるのもありか?」

 

 その隣を平然とした顔で木場と松田が通り過ぎていく。

 

 身体能力の高い松田はともかく、線の細い祐斗にすら平然と追い抜かれているのだが、二人は不満を抱かない。

 

 なぜなら―

 

「お先に失礼します」

 

「あ、じゃあ先に行ってますね」

 

 くわえてさらにそれ以上の荷物を持った小猫と蘭が平然としてさらにその先を言っているからだ。

 

「くそ、あれが戦車(ルーク)の駒の力か・・・」

 

「ち、小さい子が怪力・・・萌えるけどそんな余裕がないな、イッセー・・・うぷっ」

 

 元浜は本気で吐き掛けている。

 

 仮にも最近トレーニングを始めていたイッセーはともかく、典型的なオタク系の元浜にとってこれは地獄以外の何物でもない。戦闘経験のある悪魔の身体能力はシャレにならないということか。

 

「なあ、少し持とうか?」

 

「駄目よ織斑くん。そんなことしたら特訓にならないわ」

 

 一夏が気を利かせて持とうとするが、しかしリアスがダメだしをする。

 

 ちなみに、リアスたち戦車以外の女性陣は軽装である。

 

 このあたり、女尊男卑の匂いがしないでもないが、これはただのレディーファーストでありイッセーたちも納得してるので文句はなかった。

 

「でも、元浜君の荷物は少し持ってあげていいよ? っていうかこのままだと、ついても特訓できそうにないし」

 

 レヴィアは苦笑しながらOKを出すが、しかし元浜自身がそれを防ぐように手のひらを向ける。

 

「大丈夫だ織斑。俺は、なんとしても登りきって見せる」

 

「いや、無理しない方がいいと思うけどさ」

 

 顔色が青くなっている元浜がさすがに心配な一夏だが、元浜はしかし気合を入れた表情を見せる。

 

「そう、だってみんなが服を脱いで一緒に歩いてくれてるんだ。そんな状況下で奮い立たなきゃ男じゃない」

 

「誰かぁあああああ!! 荷物持ってあげて!! 元浜が幻覚見てるぅううううう!!!」

 

 イッセーの絶叫が響き渡り、そしてやまびことなった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんなこんなで山頂の別荘にたどり着き、そして特訓の火ぶたが切って落とされた。

 

「まあ、松田くんと元浜くんとイッセー君の三人は、とにかく戦闘慣れしてくれないと意味がないんだけどね?」

 

 と、レヴィアは辛辣だがそんな意見をはっきりと口にする。

 

「質問! 十日で戦闘訓練ってできるもんなんですがレヴィアさん?」

 

「いい質問だ松田君。まあ、君たちなら最低限形にできると確信しているともさ」

 

 そうレヴィアは告げると、口元に淫靡な微笑を浮かべる。

 

「このレーティングゲームで勝ったら、お尻の穴使わせてあげる」

 

「「「絶対勝つぞ、ファイッオー!!」」」

 

 男とは、非常に情けない生き物なのである。

 

 それはともかくとして、特訓の一日目が開始された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LESSN1 木場裕斗による剣術特訓。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「痛い!?」

 

「元浜くん、適当に振り回しているだけじゃあ何の意味もないよ!」

 

 木刀を持たされて剣術の訓練をすることになったが、しかしイッセーたちは手も足も出なかった。

 

「戦うときは相手だけじゃなく周りも見る。そうじゃないと相手の動きに反応できないからね」

 

「うわぁ、俺全然戦える気がしないぜ」

 

「んなこと言うなよ松田。俺も自信がなくなってきた」

 

 いきなり自信を無くす松田にイッセーは活を入れたいところだったが、自分も自信がなくなってきてどうにも入れきれない。

 

 先日の堕天使との戦いで強いのは知っていたが、まさかこれほどまでとは思わなかった。

 

 と、そこに別口で体を温めていた一夏が木刀をもって近づいてくる。

 

「じゃ、次は俺だな」

 

「あ、織斑ならいけるかもな」

 

 ぼろぼろになった元浜が、一縷の望みを託して一夏を見つめる。

 

「イケメン同士の戦いか。すごいことになりそうだな」

 

「だな。織斑って剣術習得してるって聞いたしな」

 

 イッセーと松田はそう表しながら観戦するが、すぐにため息をつく。

 

「「「・・・見切れない」」」

 

 高水準の戦いに、三人の動体視力の限界を超えていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LESSN2 姫島朱乃お姉さまによる、魔力特訓。

 

「いいですか、魔力は全身から集めるようにイメージするのです」

 

 そういいながら展開する朱乃の魔力を見つつ、アーシアも含めた四人は一生懸命魔力を集めようとする。

 

「できましたぁ!」

 

 アーシアはすぐに魔力を集めることに成功したが、しかしイッセーたちはそうはいかなかった。

 

「ええい! せっかくファンタジーの存在になれたのにファンタジー能力が使えないでどうするんだ!」

 

 元浜が額に汗すら流して気合を入れるが、しかしなかなか魔力が生まれない。

 

「あらあら。やっぱり初心者には厳しかったかしら?」

 

「ふむ、じゃあ少しアプローチを変えてみるかな?」

 

 少し困った表情を浮かべる朱乃の前に出て、レヴィアはさらりと一言告げてきた。

 

「三人とも、イメージするんだ、僕のスカートの内側を」

 

 ・・・とたん、三人は黙り込んだ。

 

 それを見て、レヴィアはにやりと笑う。

 

「さあ、持ち上げたくないかい? スカートの内側をその目に移したくはないかい? だったら魔力で風を起こすイメージをしてみるんだ」

 

「あの、レヴィアさま? それはさすがにハードルが―」

 

 あまりにあれな発言よりも、一足飛びで難易度が上昇している試練に対して朱乃は声を出すが、しかしそのあと絶句することになる。

 

「・・・うぉおおおおおおおおおおお!!! 燃えろ、俺の中の魔力ぅうううううう!!!」

 

 元浜の眼鏡が光り、そしてそのとたんに莫大な魔力が放出される。

 

 それらは暴風と化してレヴィアのスカートをめくり、その内側の縞々パンツをイッセーたちの視界に収めることに成功した。

 

「ひゃっはぁああああ! パンツだぁああああ!!」

 

「ボーダー! しかも青と白!! シンプルだけどそれがいい!!」

 

「でかした元浜! お前やっぱりすごいな!!」

 

 三人は抱き合って喜びあう。

 

 その様子を涙すら浮かべながら、レヴィアは素直に祝福した。

 

「やはりこの三人のやる気を出すならエロい方向が一番だね。うんうん、僕は信じてたよ」

 

「あらあら。欲望に忠実なのは悪魔らしいですわね」

 

 朱乃も最初は絶句したが、これはこれで面白いので放置することにした。

 

「ですが、私にやったらお仕置きしないといけませんわね。基本的にはびりびりと」

 

「いいじゃないか朱乃ちゃん。見えそうで見えないぐらいたくしあげた方が三人ともやる気を出すよ?」

 

「や、やる気を出すじゃありません! イッセーさんいやらしすぎです!!」

 

 アーシアが顔を真っ赤にして起こり始めるが、そんなアーシアの肩をレヴィアはツンツンとつついた。

 

「おやぁ? パンツで興奮して怒るのはイッセーくんだけでいいのかなぁ?」

 

「え? いえ、その松田さんと元浜さんもいやらしすぎるのはよくないと思いますが・・・」

 

「そっかそっか~。イッセーくんがほかの女で興奮するのはそんなにいやか~? だったらアーシアちゃんがやってみるかい? 僕は残念だけどそういうことなら身を引くよ?」

 

「はぅうう! 駄目です! そんなことは主がお許しになりません! ああ、主よ、私をお導きくださ・・・あう!?」

 

「あ、ごめんごめん。ちょっと本気で悪乗りしすぎたよ」

 

 神に祈りだして激痛に悶えるアーシアに、さすがに罪悪感が沸いたレヴィアがすぐに謝る。

 

 成り行きで悪魔に転生したとはいえ、信仰心をいきなり捨てるというのは難しいだろう。

 

 少しずつゆっくり共生していかないとと考えながら、レヴィアはイッセーたちの方を向く。

 

 そして、眼が点になった。

 

 そこには、魔力を使って野菜の皮むきを行っている三人の姿があった。

 

「・・・なに、やってるの?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

LESSON3 塔城小猫による格闘特訓。

 

「俺は・・・もう、だめだ・・・」

 

「元浜ぁあああああ!!!」

 

 息も絶え絶えになって倒れ伏す元浜を抱きかかえ、イッセーは絶叫した。

 

 ぶっちゃけこれが一番大変かもしれない。

 

 なにせ小猫は容赦なく拳を叩き込んでくるのだ。戦車によって強化された筋力で。

 

 普通に死ねる。マジで死ねる。

 

「・・・動きは早いですが、やはり素人ですね」

 

「くそ、どさくさに紛れて合法的にタッチしたいのに!!」

 

 さっきからタックルだけで挑んでいる松田だったが、しかしイッセー達とは違いかろうじて勝負になっている。

 

 このあたり、人間時代の元の身体能力の性出てきているというべきだろうか。

 

「兵士の駒で転生したのに、プロモーションもなしにこれですか」

 

「ふっふっふ。これでもガタイには自信があるのさ! さあ、元浜じゃないけどそのちっさいおっぱいをタッチしてやるぜ!!」

 

 多少青あざを作りながらも、松田は決して止まらない。

 

 そう、タックルならば事実上合法的に女性に触れることができるのだから。

 

 その熱意の元に、再びタックルの連打が仕掛けられるが・・・。

 

「ならどうぞ触れてください」

 

「ぐぅおおおおおおお!?」

 

 即座に寝技に持ち込まれ、悲鳴が上がる。

 

 いかに身体能力が高かろうと、それだけで戦いに勝てるわけではない。

 

 最低限の技量が必要だということを、松田はその体に叩き込まれていた。

 

「強すぎだろ小猫ちゃんも。それに比べて、俺たちマジで情けないぜ・・・」

 

 その圧倒的な光景に、イッセーは少し落ち込んでしまう。

 

「そんなことはありません。イッセー先輩たちにも長所はあります」

 

 小猫はそう否定するが、しかしイッセーには思いつかない。

 

「具体的には?」

 

「いやらしいところ」

 

 それは誉め言葉にはならないということぐらいはよくわかる。

 

 それはそれとしていやらしいことをやめられないあたり、自分たちは割とどうしようもないのではないかとすら思ってしまうのだが。

 

 だが、小猫のことばはまだ続いた。

 

「それと、頑張り屋さん」

 

「・・・っ」

 

 その言葉に、イッセーは少しすくわれた気がした。

 

 そして、それに応じるように元浜が立ち上がった。

 

「ふ、ふふふ・・・。ロリコンの俺が、合法的にロリッコにタッチできるチャンスを逃すわけにはいかないさ・・・」

 

「うぉおおおおお!!! せめて、せめて頭を胸に当ててやるぅうう!!」

 

 元浜も松田も、気合を入れてなお特訓を続けようとしている。

 

 そんな光景を見れば、イッセーも黙ってはいられない。

 

「よっしゃ! 俺も気合入れるぜ!!」

 

 そして突進行い、投げ飛ばされた松田という名の砲弾に元浜もろとも弾き飛ばされた。

 


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