ハイスクールストラトス 風紀委員のインフィニット 作:グレン×グレン
日々の努力というものは、間違いなく大事である。
やれば必ず伸びるとは言えない。やらなくても伸びる者は伸びる。だが、たいていの人にとって継続する努力は伸びるために必要なことである。
だから、それをしているものは伸びるのだ。
其のため、レヴィアは眷属にトレーニングを徹底させている。
例えば―
「ハイ! あと1kmで終了だからね!」
「「ハイ!」」
早朝フルマラソンとかである。
拷問というなかれ。悪魔というものな基本的に人間よりスペックが高い生き物だ。フルマラソンを走りきれるようになる確率も、人間に比べればはるかに高い。
人間だって努力すればフルマラソンを走りきることも不可能ではないのだから、悪魔ならもっとできるようになるはずなのだ。
じっさい、三人そろってプロのマラソン選手並みの速さでマラソンを継続している。何年も前から少しずつ伸ばしているからこそだが、努力の成果はしっかりと出ているのだ。
「いやでもさぁ、アーシアちゃんだっけ? あの子すごいねえ」
「そうですね。悪魔は言葉はわかるけど書くのは別なのに、もう日本語を漢字まで覚えてきてますからっ!」
「なんか、俺より頭いい気がしてきたんだけどさ! 大丈夫かな、俺」
新しい悪魔の思わぬ才女っぷりを話のタネにしながらマラソンを続けていく。
特に一夏は微妙に落ち込んですらいるが、しかし二人は特に気にしていない。
「君は君で平均以上だから問題ないよ。それに、勉強ができればいいってわけじゃないからね」
レヴィアは笑顔でそういうと、ペースをわざと落として一夏に並ぶ。
そして、そんな一夏の頭をやさしくなでる。
「君は僕の剣だろう? だったら頑張れ僕の
「・・・ああ!」
元気が入ったのを確認して、レヴィアはペースを元に戻した。
「さ、ラストスパート行くよ!!」
そしてゴールとして設定した公園についた時、すでにそこには先客がいた。
「あら、レヴィアじゃない」
「よ、よう・・・一夏」
ヘロヘロの状態で腕立て伏せをしているイッセーと、その上に乗っかっているリアスという取り合わせだった。
「イッセーくんの特訓か何かかい? ハードトレーニングは体壊すよ?」
そういいながら、レヴィアはペットボトルを取り出すと水分補給を始める。
「だ、大丈夫ですレヴィアさん・・・。俺も、まあ、これぐらいはできないと・・・」
「あまり無理しない方がいいですよイッセー先輩。学校がつらくなりますからね?」
「あら? イッセーならこれぐらい大丈夫よ? なんなら後で保健室でお昼寝する?」
「あと五百回ぐらい頑張らせていただきます!!」
蘭の心配も何のそのといわんばかり豪快に腕立て伏せを続行するイッセーに、どうしたんだと一夏は首をかしげる。
「・・・ああ、リアスちゃんは寝るとき裸派だったね」
「はだ・・・っ!? 駄目でしょうリアス先輩、女性が異性にみだりに裸を見せたりしたら!!」
そういう方向では堅物の側に属する一夏は速攻で止めに入るが、リアスはまったく気にしない。
「あら、いいじゃない別に減るものじゃないし」
「女の尊厳が減ります!」
「イッセー相手なら大丈夫よ。一緒にシャワーを浴びたことがあるもの」
「もうちょっと貞淑さを身に着けてくださいよ! イッセースケベですよ!!」
などと言い合っている二人をよそに、レヴィアはやはり力尽きたイッセーをツンツンとつついた。
「とりあえず、ギリギリのラインを見極めるところから始めた方がいいよ? 限界超えると一気に壊れるしね」
「いや、だけど俺弱いし・・・」
「だったらなおさら無茶しちゃだめですって。こういうのって、結構長い間時間をかけて強くなっていくものなんですよ?」
蘭にも説得されるが、イッセーはあまり納得していないようだった。
無理もない。イッセーは今までそういった特訓すら特にしたことがない人生だったのだから。
そういう意味では素人が陥りやすい横道にそれているといってもいい。
だが、それでもいいだろうとレヴィアは思う。
間違えながらでも、自分で経験したことはなんだかんだで力になることだ。
試行錯誤や失敗も、取り返しが効くのであれば立派な成長。一生懸命取り組んで、地道に前に進むのはイッセーの美徳だろう。
「ま、最初のうちは手当たり次第にやってみるのもいいかもね。何かあったらすぐにいうんだよ? 僕にとっても君は大事な弟分だからね」
「はい! とにかく努力と根性で頑張るッス!!」
イッセーは力強くうなづいた。
それを見て、レヴィアは優しく微笑む。
少しずつ日差しが強くなっていく中、日常はいつも通りに進んでいた。