ノゲゼロ夫婦が異世界へ来たようですよ?   作:駄作者

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何とか帰って来ました。遅れて住みません、ですが恐らく今後も最新が遅れると思います。


問題児達は外道に喧嘩を売るようです

「結構よ。だってジン君のコミュニティで間に合っているもの」

 

 ジンとガルドは思わず困惑する。それから直ぐに二人して飛鳥の顔を伺う。

 

 彼女はそんな2人を無視して紅茶を飲み干すと、笑顔で耀に話しかける。

 

「春日部さんは今の話どう思う?」

 

 そんな彼女の問いかけに、耀が真っ先に口を開く。

 

「別に、どっちでも。私はこの世界に友達を作りに来ただけ」

 

「あら意外。じゃあ私が友達第一号に立候補しても良いかしら? 私達って正反対だけど仲良く慣れそうな気がするの」

 

 自分の髪を触りながら飛鳥は問いかける。言っては見たが、彼女にとって気恥ずかしかったのだろう。

 

 耀はしばし無言で考える。そして小さく笑いながら頷く。

 

「……うん。飛鳥は私の知る女の子と少し違うから大丈夫な気がする」

 

『お嬢良かったなぁ……ワシもお嬢に友達が出来て涙が出るほど嬉しいわ』

 

 三毛猫はホロリと涙を流す。そして飛鳥は耀の返事に満足すると、直ぐにリクとシュヴィに話しかける。

 

「それで、御二人はどうなのかしら?」

 

「……【返答】私はリクの決めた方針に従うリクはどう思う」

 

 シュヴィは飛鳥にそう答えると、リクの返答を待つ様に見詰める。

 

 リクはシュヴィの問を聞いた後目をつぶり心の『鍵』を確認する。

 

 そして確認して大丈夫だと判断すると、直ぐさま瞳を見開く。

 

「そうだな……ノーネームは間違い無く弱くて亡霊だろう」

 

「ーーッ!?」

 

 ジンはリクの返事に思わず瞼を強く閉じる。

 

「だがなガルドだっけか? ()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 ジンとガルドは驚きリクを凝視する。

 

「確かに『亡霊』は何者にも認められず、誰の気にも止められない」

 

 リクはガルドを睨み付ける。

 

「だが『亡霊』は誰が認めずとも、意識を継ぎ意識を以て歩む者」

 

 強い意志が込められたような瞳で。

 

「ガルドお前の言った通りだ。ノーネームは実際に脆弱で愚かだ」

 

 そして言い切った。

 

「だから戦える」

 

 戦える、無理では無く、戦えると。

 

 確かにそう言ったリクに4人の視線が注視する。リクは薄く笑う。

 

「そう、戦えるんだよ。立ちはだかる全ての敵、それが何者だろうと『亡霊』の力ーーすなわち〝愚かさ〟で。全てを欺き、出し抜き、『亡霊』らしく。弱者らしく。あらゆる策を弄し恥も外聞もなく。卑怯と煽てられ。下衆と褒められ。低劣と讃えられてーーッ!!」

 

 ーーそして

 

「勝利する」

 

 彼はそう言いきると、愛しの少女を見やり、一緒微笑むと、直ぐに気を引き締めてガルドに向き合う。

 

「そう勝利する。そしてお前らは勝利するまで気づかない」

 

 そして不敵な笑みを浮かべる。

 

「例えサイコロを降って、六以外を出せば自分達が敗北するゲームだろうと〝存在しないはずの者〟がこっそり、()()()()()()()()()()()()()()()()()お前らは最後まで気づかない」

 

 それはまるで人間を俺達を舐めるなと言わんばかりに。

 

「『亡霊』ってのはそう言う存在だカルド……まっ箱庭に来る前から『幽霊』やってた俺としては『亡霊』を舐め腐るテメェのコミュニティは入る気は無いと言って置くぜ」

 

 そしてリクがそう言い終えるとしガルドは思わず息を呑む。

 

 そして全員が静まり返りしばらくの間、沈黙が流れる。

 

 そしてそんな沈黙の中、飛鳥がついに口を開く。

 

「ま。そう言う事だから諦めてちょうだい、ちなみに私、久遠飛鳥はーー裕福だった家、約束された将来などのおおよそ人が望みうる人生の全てを支払って、この箱庭に来た 。それを極小のたったの一地域を支配してるだけの組織に末端として迎え入れてやる? そんな無礼な事を言われて首を縦にふるとでも? だとしたら自身の身の丈を知ってから出直して欲しいわね」

 

 ピシャリと言い切った。ガルド=ガスパーは怒りで体を震わせる。だがそれでも怒りを抑えながら口を開く。

 

「おっお言葉ですがレデ」

 

()()()()()

 

 ガチン! と勢い良くガルドの口が閉じる。

 

 本人はその状況に混乱したようにもがくが、全く声が出せない。

 

「……!?…………!??」

 

「私の話はまだ終わって無いわよ。貴方からまだ聞き出さなければ行けない事があるもの。貴方は()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 飛鳥の言葉に力が宿り、ガルドは椅子にヒビが入る位に勢い良く座り込む。

 

 ガルドは完璧にパニックに陥る。何をしたのか理由や原理は分からないが、完璧に自身の意思で身体を動かせないのだ。

 

 その様子に気付いた猫耳の店員は慌て飛鳥達の元へ駆け寄る。

 

「お、お客さん! 当店での揉め事は控えてーー」

 

「丁度いいわ。店員さんも第三者として聞いて下さる? 多分、面白い事が聞けるはずよ」

 

 飛鳥は猫耳の店員を制すと、猫耳の店員は首を傾げる。

 

 その後、飛鳥は言葉を続ける。

 

「貴方はこの地域のコミュニティに〝両者合意〟で勝負を挑み、そして勝利したと言っていたわね?」

 

「……あぁそうだ」

 

「そう。でも私が聞いたギフトゲームの内容と少し食い違うの。コミュニティのゲームは〝主催者(ホスト)〟とそれに挑戦する者が様々なチップを賭けて行う物のはず……ねぇジン君。コミュニティそのものをチップにするゲームは、よくある事なの?」

 

「やっ、やむを得ない状況であれば稀に。ですが、これはコミュニティの存続を賭けるかなりのレアケースです」

 

 聞いていた猫耳店員もジンの答えを頷いて肯定する。

 

「そうよね。訪れたばかりの私達でもそれくらい分かるわ。だから、そのコミュニティ同士の戦いに強制力をもつ〝主催者権限〟を持つ者は魔王と恐れられた。なのにその特権すらない貴方がなぜ強制的にコミュニティを賭け合うような大勝負を続ける事が出来たのかしら。()()()()()()()

 

 ガルドは悲鳴を上げそうになるが、口はガルドの意識を無視して話し始める。

 

 そして周囲の者達もその異変に気付き始める。

 

 そして理解する。久遠飛鳥の命令には……絶対に逆らう事は出来ないのだと。

 

「き、強制させる方法は様々だ。一番簡単なのは、相手のコミュニティの女子供を攫い脅迫すること。これで動じない相手は後回しにして、徐々に他のコミュニティを取り込み、ゲームに乗らざるを得ない状況にまで圧迫していく方法だ」

 

「まあそんな所でしょう。貴方のような小物らしい堅実な手です。けどそんな違法で吸収した組織が貴方の元で従順に動くかしら」

 

「各コミュニティから、数人ずつ子供を人質に取ってある」

 

 飛鳥はポーカーフェイスではあるが、僅かに眉を潜め、その雰囲気から嫌悪感が滲み出ている。

 

 リクや耀もそんなガルドに不快に思い、耀は目を細め、リクに至っては睨み付ける。

 

 シュヴィはその辺には疎いのか無関心な様子だが、リクの様子からガルドを敵と認識したのだろう、警戒と臨戦態勢を整える。

 

「……そう。ますます外道ね。それで、その子供達は何処に幽閉されされているの?」

 

「もう殺した」

 

 その場の空気が凍り付いた。

 

 心を持つとは言え機凱種(エクスマキナ)であるシュヴィを除くリク、ジン、店員、耀、飛鳥でさえ一瞬だがガルドの行ったことを理解出来ず思考を停止させた。

 

 だがガルドは命令されたままに言葉を紡ぐ。

 

「初めてガキ共を連れて来た日、泣き声が頭に来て思わず殺した。それからは自重するつもりだったが、父が恋しい母が愛しいと泣きわめくから頭に来て。それ以来、連れてきたガキは皆まとめてその日の内に始末する事にした。だがそのことが公になれば組織内に亀裂が入る。そのため始末したガキの遺体は証拠隠滅のため腹心の部下に食」

 

()()

 

 ガチン!!とガルドの口は先程以上に勢い良く閉ざされる。

 

 飛鳥の声は先程以上に凄味を増し、魂を鷲摑む勢いでガルドを締め上げる。

 

「素晴らしいわ。ここまで絵に描いたような外道とはそうそう出会えなくてよ。流石は人外魔境の箱庭と言った所かしら? ねぇジン君?」

 

「彼のような悪党は箱庭でもそうそういません」

 

「そう? それは残念。ところで、今の証言で箱庭の法でこの外道を裁く事は可能かしら?」

 

「厳しいです。吸収したコミュニティから人質をとったり、身内の仲間を殺すのは確かに違法ではありますが……裁かれるまでに彼が箱庭の外に逃げ出せば、それまでです」

 

 それはそれで裁きと言えなくもない。リーダーねガルドがコミュニティを去れば、間違いなく〝フォレス・ガロ〟は瓦解するだろう。

 

 だが飛鳥はそれでは満足できなかった。

 

「そう。なら仕方ないわ」

 

 飛鳥は苛立たしげに指を鳴らす。するとガルドの身体

に自由が戻った。怒り狂ったガルドはカフェテラスのテーブルを勢いよく破壊する。

 

「こ……この小娘がァァァァァァァァ!!」

 

 そして雄叫びを上げ身体を激変させる。タキシードは身体が膨張した事で破れさり体毛は虎模様に変色する。

 

「テメェ、どういうつもりか知らねえが……俺の上に誰がいるか分かっているんだろうなァ!?箱庭第六六六外門を守る魔王が俺の後見人だぞ!!俺に喧嘩を売るってことはその魔王にも喧嘩を売るってことだ! その意味が」

 

()()()()()私の話はまだ終わって無いわ」

 

 ガチン、とまた勢いよく黙る。しかし今の怒りはそれだけでは止まらず。ガルドは丸太のような腕を振り上げ飛鳥に襲いかかる。シュヴィはそれに割って入ると、『偽典・森空囁(ラウヴアポクリフェン)』を展開、真空の刃をガルドに放つ。

 

「ーーーッ!!」

 

「喧嘩は駄目」

 

 真空の刃により怯んだガルドを耀は接近すると、ガルドの腕を掴み。そのまま腕を回すようにしてガルドの巨躯を回転させ押さえつける。

 

「ギッ……!」

 

 少女の細腕には似合わない力に目を剥くガルド。飛鳥とリクは楽しそうに笑う。

 

「さてガルドさん。私は貴方の上に誰が居ようと関係ないわ。それはジン君も同じでしょう。だって彼のコミュニティの目標は、コミュニティを潰した〝打倒魔王〟ですもの」

 

 その言葉にジンはハッとしてすぐさまガルドと向き合う。

 

「はい。僕達の目標は、魔王を倒して誇りと仲間達を取り戻すことです。だからそんな脅しには屈しません!」

 

「く……くそ……!」

 

 どういう理屈かは分からないが、耀に組み伏せられたガルドは抵抗が出来ず、地に伏せている。

 

 飛鳥は少し上機嫌になると、足先でガルドのアゴを持ち上げ、Sっ気溢れる笑みを浮かべ話を切り出す。

 

「ですが。私は貴方のコミュニティが瓦解する程度じゃ満足出来ないの。貴方のような外道はズタボロになって己の罪を後悔しながら罰せられるべきよ。そこで皆に提案なのだけれど」

 

 飛鳥の言葉に頷くジンや店員は、顔を見合わせ首を傾げる。飛鳥は足先を離し、今度は女性らしい細長い綺麗な指先でガルドの顎を摑む。

 

「私達と『ギフトゲーム』をしましょう。貴方の〝フォレスガロ〟の存続との〝ノーネーム〟の誇りと魂を賭けて、ね」


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