ノゲゼロ夫婦が異世界へ来たようですよ? 作:駄作者
「(うわあ………なんか問題児ばっかりみたいですねぇ……)」
茂みに隠れていた黒いウサ耳でガーターベルトのミニスカートの少女は悩んでいた、と言うのも彼女のコミュニティは訳あって衰退しており、彼女は彼等を勧誘しようと異世界から召喚した訳だが、呼び出した彼等の様子から客観的に協力する姿が想像できず、陰鬱そうに溜息を吐いた。
ちなみに彼女が呼んだのは本当は3人なのだが、上手く行けば人材が増えると言う事もあり、むしろ3人と一緒に勧誘しようとすら思っていたりする。
そんな中、十六夜は苛立たしげに口を開く。
「で、呼び出されたのは良いけどなんで誰もいねぇんだよ。この状況だと、招待状に書かれていた箱庭とか言うものの説明をする人間が現れるもんじゃねえのか?」
「そうね。なんの説明も無いままで動きようがないわ」
「……。この状況に対して落ち着き過ぎているのもどうかと思う」
少女は全くだとこっそり突っ込む。
と言うのも余りにも落ち着き過ぎていて、出るタイミングを計れないでいたからだ。
「(まぁ、悩んでいても仕方ないデス。これ以上不満が噴出する前にお腹を括りますか)」
彼女は彼等からくる罵詈雑言に怖気付きそうになるが、腹を括って出る事を決意する。
すると十六夜が溜息交じりに呟いた。
「ーーしかたねぇな。こうなったら、
黒ウサギは驚きの余りに飛び跳ねる。
5人の視線が黒ウサギに集まる。
「貴方も気付いていたの?」
「当然だ。隠れんぼじゃ負け無しだぜ? そっちのやつらも気付いてたんだろ?」
「風上に立たれたら嫌でも分かる」
「……まぁな……そこの
「【肯定】確かに生命反応と動態反応からいるのには気付いていた、後、リクあれからは精霊の反応が 無い……だから多分
「へぇ? 面白いなお前等」
十六夜は軽薄そうに笑いながら目を鋭く光らせる。リクとシュヴィの2人を除く3人は、理不尽な招集を受けた腹いせに殺気を籠めた冷ややかな視線を茂みに隠れる彼女に向ける。
「や、やだなぁ御五人様中、御三人様。そんな狼見たいに怖い顔で見られると黒ウサギは死んじゃいますよ? えぇ、えぇ、古来より孤独と狼はウサギの天敵でございます。そんな黒ウサギの脆弱な心臓に免じてここは1つ穏便にお話しお話しを聞いて頂けたら嬉しいでございますョ?」
「良しそれじゃあ話してみな」
「断る」
「却下」
「お断りします」
「あっは取り付くシマも無いですね♪ ですが最初の御方は、ありがとうございます」
黒ウサギは両手を挙げ降参のポーズを取る。
だが黒ウサギはそんな中、冷静に5人を値踏みするのだった。
「(肝っ玉は及第点。この状況でNOを言える御三方の勝気は買いです。YESを言いながらも隙の無い御方もそれなりよし、まぁ、扱いにくいのは難点ですけども)」
黒ウサギはおどけつつも、3人にどう接するべきか考えを巡らせる中、リクはそんな黒ウサギの目を見て少し眉を顰めた。何故なら今の黒ウサギの目は嘗て
「(これは……何かあるな、だが情報が足りなすぎる)」
リクは思案する。例え自分達と似たような事をしようと所詮は真似事、それは自分の様な弱きものが行うからこそ意味が有る。
ならば騙し討ちや誘導はこちらが有利、だがその為には必要な情報が今の所では足りない、その為リクは黒ウサギと違っていかに情報を聞き出すかを思案し始める。
そんな中、耀が突然、黒ウサギに接近し黒ウサギのウサ耳を鷲掴みにして力いっぱい引っ張る。
「えい」
「フギャッ!」
黒ウサギは耳を引っ張られた事で思考が中断され思わず声を出した。
「ちょ、ちょっとお待ちを! 触るならまだしも初対面で遠慮なく黒ウサギの素敵耳を引き抜こうとは、どう言う了見ですか!?」
「好奇心の為せる業」
「自由にも程があります!」
黒ウサギは頭の中がパニックになりながらもそう突っ込みを入れる。
「へぇ? このウサ耳って本物なのか?」
「……。じゃあ私も」
そんな黒ウサギを見かねた十六夜と飛鳥は黒ウサギの元へ近寄る。
「ちょ、ちょっと待ーー!」
黒ウサギはそう叫ぶが2人は容赦なく近付いて来る。
「(……何だこれ、何かさっきまで真剣に考えてた俺が馬鹿みたいだわ)」
リクとシュヴィに助けを求めようと見つめて来た黒ウサギと3人を見ながら、リクは先程まで真剣に考えてた自分が馬鹿らしく思え、思わず溜息をこぼすのだった。
「ーーあり得ない。あり得ないのですよ。まさか話を聞いて貰う為に小一時間も消費してしまうとは。学級崩壊とはこのような状況に違いないデス」
「いいからさっさと進めろ」
半ば本気で涙目な黒ウサギは何とか話を聞いて貰える状況を作る事が出来た。五人は黒ウサギの目の前の岸辺に座る。
とは言え、まともに話を聞こうとするリクとシュヴィを除く3人は、彼女の話を『聞くだけ聞こう』と言う態度で耳を傾けてる訳だが。
黒ウサギは気を取り直して咳払いをする。
「それではいいですか、御五人様。定例文で言いますよ? 言いますよ? さあ、言います! ようこそ、〝箱庭の世界〟へ! 我々は御五人様を歓迎すると同時に御五人様にギフトを与えられた者達だけが参加できる『ギフトゲーム』への参加資格をプレゼントさせていただこうかと召喚致しました!」
「ギフトゲーム?」
「そうです! 既に気付いていらっしゃるでしょうが、御五人様は皆、普通の人間ではございません! その特異な力は様々な修羅神仏から、悪魔から、精霊から、星から与えられた恩恵でございます。『ギフトゲーム』はその〝恩恵〟を持つギフト保持者がオモシロオカシク生活できる為に作られたステージなのでございますよ!」
黒ウサギは両手を広げながら箱庭についてを話す。
すると飛鳥は質問する為に手を上げる。
「まず初歩的なのからだけれども、貴女の言う〝我々〟は貴女を含めた誰かなのかしら?」
「YES! 異世界から呼び出されたギフト保持者は箱庭で生活するに当たって、数多とある〝コミュニティ〟に必ず属して頂きます♪」
「だが断る!」
「属して頂きます! また『ギフトゲーム』で勝者となった者にはゲームの〝
「主催者って誰?」
「様々ですね。暇を持て余した修羅神仏が人を試す理由で開催されたり、コミュニティの力を誇示する目的で独自に開催されたりする事もあります。特徴としては、前者は自由参加が基本的ですが〝主催者〟が修羅神仏なだけあってかなり困難で難解なものが多く、場合によっては命の危険もあります。しかし、その分だけ見返りも多く、〝主催者〟次第ではありますが、新たな〝恩恵〟を得られたりもします。
なお後者ですと参加者側がチップを用意しなければなりません。この場合、参加者が敗退した時はそれらすべて〝主催者〟のコミュニティに寄贈されます」
「後者は俗物ね……それでチップは何を?」
「それもまた様々です。金品・土地・利権・名誉・人間……時にはギフトを賭け合う事も可能です。新たな才能を他者から奪えば、高度なギフトゲームなどに挑む事も可能になるでしょう。ただ、ギフトを賭けた戦いとなると、御自身の才能も失うかも知れないのであしからず 」
黒ウサギは黒い笑顔を見せる。
飛鳥はそんな黒ウサギに挑発的に問いかける。
「そう、だったら最後に一つだけ」
「はい何でしょうか?」
「ゲームそのものはどうやって初められるのかしら?」
「コミュニティ同士のゲームを除けば、それぞれの期日内に登録して頂ければOK! 店内でも商店街でも商店が小規模のゲームを開始しているので良かったら参加して言って下さいな」
飛鳥は顔を顰める。
「……つまり『ギフトゲーム』はこの世界の法そのもの、と考えればいいかしら?」
飛鳥の言葉に黒ウサギは少し驚く。
「ふふん? 中々鋭いですね。しかし八割正解と言った所でしょうか、我々の世界でも強盗や窃盗は禁止されてますし、金品による物々交換も存在します。ギフトを用いた犯罪など持ってのほか! そんな不逞な輩は悉く処罰しますーーですが『ギフトゲーム』の本質は全くの逆! 一方の勝者だけが全てを手にするシステムです。店頭に置かれる商品だろうと、店側が提示したゲームをクリアすればタダで手にすることなども可能なわけです!」
「そう。中々野蛮ね」
「ごもっとも。しかし〝主催者〟は全て自己責任でゲームを開始しますので、つまり奪われるのが嫌な腰抜けは初めから参加しなければいいのです」
黒ウサギは1通り説明すると、1枚の封書を取り出す。
「さて。皆さんの召喚を依頼した黒ウサギは、箱庭の世界における全ての質問に答える義務があります。が、それら全てを語るには少々お時間がかかるでしょう。新たな同士候補である皆さんを何時までも野外に出して置くのはお忍び無い。ここから先は我らのコミュニティでお話させていただきたいのですが……宜しいでしょうか?」
「待てよまだ俺が質問して無いぜ」
清張していた十六夜が威圧的にそう言う。
「……どういった質問です? ルールでしょうか? ゲームでしょうか?」
「そんなのは
それは2人を除く十六夜を含めた三人が聞きたい事だった。
リクとシュヴィもそんな真剣な十六夜から彼等にとって重要な事である事が伺えた。
十六夜はそれを何もかも見下すように言う。
「この世界は……
そして五人は無言で黒ウサギの返事を待つ
「YES! 『ギフトゲーム』は人を超えた者達だけが参加出来る神魔の遊戯。箱庭の世界は外界より格段に面白いと、黒ウサギは保証します♪」
黒ウサギは笑顔でそう返事をするのだった。