勇者の後始末人   作:外清内ダク

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第21話-05 邂逅、再び

 

 

「お得意の手で行きます……かっ。」

 鋭く呼気を吐き捨てて、カジュは翼をひるがえす。全速力で逃げるカジュの背に、偽獣法師(イミタティオン)藪蚊(やぶか)の如く群がってくる。矢継ぎ早に撃ち込まれる《火の矢》《熱線》《電撃の槍》。その軌道をカジュは即座に見極めて、最小限の動作で回避しながら指先に術式の光を溜めていく。

 術式ストックは数秒で完成。敵がストックを使い切った隙を見計(みはか)らって……今!

「《石の壁》。」

 ずどん!!

 数枚の《壁》がカジュの背後に出現し、敵の進路と視線を塞ぐ。無論、《風の翼》で高速飛行する敵は容易(たやす)く壁の左右をすり抜けて来る。そこへ再び《石の壁》。また《石の壁》。《石の壁》。しつこいまでの乱打によって、戦場に迷路ができあがる。

 地上の迷路などに付き合う義理は敵にはない。偽獣法師(イミタティオン)たちは高度を上げて壁を飛び越え、一度見失ったカジュをすぐさま捕捉した。偽獣法師(イミタティオン)3人が目配せで合図。三方向に分かれてカジュを包み込み、一気に肉迫するや《死神の鎌》の青ざめた刃を走らせる。

「きぃあ!」

 三方からの同時攻撃。打つ手も逃げ場もありはしない。窮地のカジュ、その細い腰に光の《鎌》が(えぐ)り込み、身を上下ふたつに()じり斬る!

 ……と。

 無惨(むざん)に断たれたカジュの身体が、微風に揺らいで、溶け、消える。

「!」

 驚愕に凍りつく偽獣法師(イミタティオン)。《幻影の戦士》だ! 《石の壁》で死角に入ったその一瞬に、カジュは《幻影》と入れ替わっていたのだ。

 では本物はどこに?

 その答えを求めて視線を動かすより早く、

 ざ!!

 と、赤い熱風が彼らの喉元を吹き抜けた。直後、天高く()ね飛ばされる偽獣法師(イミタティオン)首級(くび)3つ。

 緋女!

 巨人ゴルゴロドンを倒した彼女は、その場をヴィッシュに任せて転進。苦戦中のカジュを支援すべくこの場へ駆けつけたのだ。緋女の到着に気づいたカジュは、《石の壁》乱打で敵の視界を塞ぐと同時に足場を作り、緋女もまた一目でカジュの意図を察して《壁》蹴り跳躍、ただ一太刀で偽獣法師(イミタティオン)3人までを討ち取ったのである。

「ぃよっと」

「ぐっじょぶ。」

「おうっ」

 華麗に着地する緋女。背中合わせにカジュも空から舞い降りる。互いの背後を補い合って警戒の目を走らせる。彼女たちに合図は()らぬ。咄嗟(とっさ)の時にもすぐさまひとつの生物の如く連携できる。ゆえに打ち合わせも最小限。

「作戦は?」

「誘い込み漁。」

「おっけぇ!」

 火花の爆ぜるようにふたりが飛んだ。緋女は《壁》の迷路に身を隠し、一方カジュは《幻影の戦士》を展開。上空にいた偽獣法師(イミタティオン)たちが《幻影》含めて6人のカジュを発見し、手分けして追跡を開始する。

 迂闊(うかつ)な動きだ。緋女の到着にまだ気付いていないのだ。わざわざ自分から戦力を分断してしまった偽獣法師(イミタティオン)が、たちまち緋女の跳躍斬りで各個撃破されていく。

 彼らが戦術ミスに気付いたときにはもう生き残りは10名を割っていた。ここまで来れば完全に手遅れ。体勢を立て直すどころか状況の確認さえできないままに、緋女とカジュの連携攻撃で散々に叩きのめされ、嘘のようにあっさりと全滅してしまった。

 

 

   *

 

 

〔つうわけで片付いたよ。〕

「よっし! いい仕事だ!」

 勇者の剣で骸骨戦士(スケルトン・ウォーリア)を叩っ斬りつつヴィッシュは隣の兵士に目を向ける。兵士は喜色もあらわに(うなず)き返し、声張り上げて味方の快勝を(しら)せに走る。疲れ顔の勇者軍にもひととき元気の色が差していく……味方の活躍は共有するに()くは無し。とりわけ緋女とカジュは勇者軍みんなのアイドルだから鼓舞の効果も層倍である。

 ひとまずここまでは順調だ。カジュの方は早くも最終城壁に取りつかんとしているし、ヴィッシュ率いる精鋭部隊も敵を撃滅しながら怒涛の勢いで驀進(ばくしん)中。ミュートと巨人ゴルゴロドンさえいなければなんとも(もろ)い。しかも死霊(アンデッド)軍の密度が目に見えて薄まっている。おそらく予備戦力まで使い切り、手薄な戦場に支援を飛ばすことさえできていないのだろう。

 戦の勝敗は、とどのつまり数で決まる。千と2千がぶつかりあえば2千が勝つのが当然の理。ゆえに数的有利を保つため大勢集めて陣を組み、局地的な数的有利を掴むため機動と法撃で敵を分断する。そうした工作を妨害するには自分も機動し、陣形を千変万化させねばならない。戦はひたすらその繰り返しだ。だから状況に応じて柔軟に動ける予備戦力が必須になる。

 畢竟(ひっきょう)、予備戦力の枯渇とは、相手のあらゆる攻撃に対して無防備となることに他ならないのだ。

 それを百も承知のミュートがこのまま手をこまねいているはずはない。必ず何か仕掛けてくる……

 と思ったその矢先、前方の味方から天地を引き裂くような絶叫が聞こえてきた。

 見れば、異様な怪物の姿がそこにある。無数の骸骨で造られた巨大な蛇――妄黙の骨蛇(サイレントライン)。全長は象獅子(ベヒモス)を軽くひと巻にできるほど。とぐろを巻いて頭をもたげれば2階建て兵舎の屋根より遥か上まで伸び上がる。それほどの巨体をうねらせ戦場を()いずり、行く手の兵士を片っ端から()き潰していく。

 こんな化け物が合計5匹! 敵の気配など全くなかった場所から突如出現し、勇者軍の突出部を包囲してしまった。まずい。いったん安全を確保してからの進軍だったので油断していた。先鋒を援護する態勢ができていない。

「カジュ! バカでかい骨の蛇が出た。あれはなんだ?」

〔即席死霊(アンデッド)。パワーは不死竜(ドレッドノート)同等だけど強度は並の骸骨(スケルトン)とそう違わないよ。〕

「一体どこから湧いて出やがった」

〔魔王城の城壁から作ったみたいだね。〕

 ――なるほど。

 なるほど、脅威だ。確かに強力。実際、勇者軍の将兵は顔色を変え、懸命に立ち向かいながらも身は恐怖に(おのの)いている。

 が、ヴィッシュの見方は違う。

 ミュートはついに、死守すべき魔王城そのものをすら切り崩しはじめたのだ。これで一時的に戦力は補強できようが、妄黙の骨蛇(サイレントライン)を作れば作るほど城壁の穴は広がっていく。中長期的に見れば間違いなく自殺行為。それが分からぬミュートでもあるまい。ということは……

「……いよいよ後がないな」

〔同意。なお、術士の腕前から考えて、同時に制御できる蛇はせいぜい20匹と予想。〕

「よし。今は企業(コープス)の介入が一番怖い。お前と緋女はコープスマンを潰せ」

〔ラジャ。蛇とミュートは。〕

「俺の仕事だ」

 ヴィッシュは勇者の剣を背中のホルダに納めると、手近な兵舎の屋根へよじ登った。ここからなら戦況が手に取るように分かる。妄黙の骨蛇(サイレントライン)の猛攻を受け、自身や戦友の血で濡れながら、一歩も退かず戦い続ける勇者軍。その頭上へ向けてヴィッシュは高々と声を張り上げる。

「前衛、槍を横腹にブチ込め! なければ(くい)でも木材でもいい! 刺したら後退してよし!

 破城槌(はじょうつい)隊、攻撃準備! 急げ!」

「?」

 その場の全将兵が、一斉に頭へ疑問符を浮かべていたに違いない。槍を刺すだけ? しかも城門もないのに破城槌(はじょうつい)

 しかし戸惑いも一瞬のこと。ここまで魔法のような采配で見事に自分たちを導いてくれた勇者への信頼が不審に(まさ)った。

 槍兵は我先にと進み出て、次々に妄黙の骨蛇(サイレントライン)の横腹へ突き刺しては逃げていく。その過程で圧殺される者も少なくないが(ひる)みはしない。さらに槍を持たない者は、崩れた建物の(はり)やら柵やらを引き抜き、数人がかりで抱えて妄黙の骨蛇(サイレントライン)へ突っ込んでいく。

 やがて蛇は左右に突き立ったいくつもの棒で針山のようになってしまった。無論相手はしぶとい死霊(アンデッド)(くい)を刺した程度では倒せない……

 が!

 けたたましい音を立て、不意に妄黙の骨蛇(サイレントライン)の巨体が大きく(かし)いだ。全身に突き立った槍と丸太が、周囲の建物に引っかかったのだ。

 無論、妄黙の骨蛇(サイレントライン)には建物を()ぎ倒すだけのパワーがある。しかしそれは正面からぶつかればのこと。横に張り出した杭の先端に力を受ければ回転力(モーメント)が生じることは避けられない。むしろ突進の勢いが大きければこそ反動は巨大な回転力(モーメント)と化して骨蛇を襲い……

 妄黙の骨蛇(サイレントライン)は尾を空中へ振り出して派手に横転、そのまま横腹から地面に叩きつけられた。

「今! 破城槌(はじょうつい)、背骨を()し折れ!」

 大型の四輪車に乗せた破城槌(はじょうつい)が、屈強の男4人に押されて妄黙の骨蛇(サイレントライン)へ突撃。直後、耳を覆うような轟音とともに蛇の脊椎(せきつい)がふたつに折れる。痙攣して(もだ)える妄黙の骨蛇(サイレントライン)、そこに周囲の歩兵たちが殺到し、これでもかとばかりに戦槌(メイス)や大盾を叩き込む。

 やがて妄黙の骨蛇(サイレントライン)は完全に沈黙し、かわって勇者軍の歓声が湧き起こった。竜並みの怪物をこうもあっさりと我が手で打ち倒したのだ。士気に与える影響は計り知れない。この様子を見た別部隊の大将たちも真似をしはじめる。ヴィッシュは手近な術士を呼び寄せ、東方面の本隊にもこの戦法を伝えさせる。指示が済めばすぐさま次の蛇に狙いを定め、手勢に号令をかけはじめる……

 ――これであと2歩……いや、1歩半。

 ヴィッシュは忙しく立ち働きながら、ひととき、魔王城中枢の方角へ目を向けた。彼はあそこにいるはずだ。最終防壁の前で、自ら魔王を守る城と化して立ちはだかっているはずだ。

 四天王、死術士(ネクロマンサー)ミュート。

 ――待ってろ。俺が王手(チェック)をかけに行く。

 

 

   *

 

 

 ――来い! 返り討ちだ!

 そう高らかに宣言するかの如く、死霊(アンデッド)軍は残る力を結集しての最終攻撃を開始した。魔王城最終防壁の前を埋め尽くすほどにひしめく骸骨(スケルトン)。そこここに妄黙の骨蛇(サイレントライン)が大樹のように林立し、高みから勇者軍を睥睨(へいげい)する。不死竜(ドレッドノート)骨飛竜(ボーンヴルム)、その他生き残りの全兵力を惜しみなく投入した魔王軍最終防衛ライン――死術士(ネクロマンサー)ミュートの底力そのものと言うべき大軍が、亡者の呻き声を轟かせながら津波のごとく押し寄せてくる。

 これに立ち向かうはも意気も盛んなる勇者軍。もはや敵に余力無し、泣いても笑ってもこれが最後の一戦と、最高潮に達した士気で幾万の(とき)を轟かせ、魔王城を震撼(しんかん)させる。

 ――みんながんばれっ。

 応援の声を喉の奥へ飲み込みながら、カジュはぶつかり合う両軍の頭上を飛び越えた。味方を援護したいのは山々なれど、彼女らには為すべきことがある。空中のカジュへ嵐のように矢弾(やだま)撃ち上げる死霊(アンデッド)。その軍勢の真ん中めがけてカジュが構築済みの術式を解き放つ。

「《べたべた》。」

 地面を粘着質に変える術。単純だが効果的な妨害に足を取られ、あちらこちらで骸骨(スケルトン)が将棋倒しになる。さながら骨の絨毯と化した敵陣を、

「いっくぜェ―――――ッ!」

 緋女が炎風となって駆け抜ける。

 骸骨(スケルトン)を踏み割り、不死竜(ドレッドノート)()き斬り、横手から喰いかかってきた妄黙の骨蛇(サイレントライン)大顎(おおあご)をあろうことか空中回し蹴りで蹴り倒し、

「カジュ!」

「《凍れる(とき)の結晶槍》。」

 空中から投げ下ろされたカジュの必殺技が、倒れた妄黙の骨蛇(サイレントライン)の頭をブチ抜く。

 勢いそのまま敵陣切り裂き、ふたりはものの数秒で最終防壁の前に到着。カジュが立てた《石の壁》を足場にして緋女は防壁を軽々飛び越えた。

 向こう側に着地して、緋女は、はっと息を飲む。

 壁の奥に隠されていたのは、別世界のように雅趣あふれる庭園だった。

 丹念に刈り込まれた庭木と芝生。しずしずと淀みなく水を伝え続ける噴水。清雅なる空気の奥に、白亜の宮殿が完璧な左右対称(シンメトリー)で調和する。そして中央に(そび)え立つ天守閣は、5基の尖塔が数限りない(はり)によって精緻な蜘蛛の巣の如く繋ぎ合わされ、星まで届かんばかりの威容を遥か天空へと貫き通している。

「きれい……」

 つい、素直な感想が口から漏れた。

 血を(たぎ)らせて殴り込んだ緋女さえ、思わず目を奪われる……それほどの美々(びび)しさ、清らかさ。静寂(しじま)の中にひととき立ち尽くし、緋女は深く息を吸う。

 ここが――魔王城中枢。

 太刀を握る手に力が籠もる。柄糸(つかいと)(きし)んで鈍く鳴く。火照(ほて)った額を汗がひとすじ(つた)い落ち、止めようもない武者震いが緋女の身体を突き動かす。

 ここが魔王の鎮座する地。

 ……最終決戦、その舞台!

()ったらァァァァァッ!!

 カジュァ! どこだァ!」

〔天守閣8階に目標発見。〕

「っしゃあ!!」

 気合一発緋女が跳ぶ。宮殿の壁蹴り、屋根越え、(はり)と柱を足掛かりにして尖塔の外壁を昇竜の如く駆け(のぼ)る。

 標的はひとり、四天王コープスマン。奴を討ち取り、企業(コープス)の干渉と増援を止める。

 一息に壁を登りきり、勢い余って目的階を通り過ぎ、上の階の手すりを掴んで静止して、腕力ひとつで上下反転。

「オっ……ラァ!」

 流星のように天井蹴って降下。硝子(ガラス)の窓をブチ割りながら部屋の中へ突入した。

 そこは四天王の執務室。クスタ織りの上等な絨毯、壁面を埋める書類棚。いささか窮屈(きゅうくつ)に詰め込まれた黒檀デスク7台の脇に身を寄せ合う男たち。いずれも高名なテイラーの手になる高級スーツに身を包み、しかし顔面は恐怖で蒼白に染めた企業(コープス)社員、それが6名。

 戦う気概もなさそうな企業(コープス)どもに拍子抜けして、緋女は片眉を跳ね上げる。

「どいつがコープスマン?」

 彼女の背後、窓の外の空中に、カジュがふわふわ降りてくる。

「部下を盾にしてコソコソ隠れてる奴だよー。」

 ぎく!

 と肩を震わせる男の気配が、確かに社員たちの向こうにある。

 緋女は深く深く溜息をついた。なんだか殺す気も失せてくる。

退()いてろ。邪魔しないなら斬らねえ」

 面倒くさそうにパタパタ手を振る緋女に、社員たちは海辺のフナ虫を思わせる素早さで部屋の隅へ逃げ寄っていく。その後ろから、中年男の卑屈に丸めた背が見えてくる。引きつった()び笑いに焦りの汗をひとすじ落とし、コープスマンは逃げ腰で数歩あとずさる。

「や、やあ」

「じっとしてろ。痛くないようスパッとやったる」

「待て! 待て待て待って、チョト待って! チョットだけでいいんだホント!」

「うっせーなァ、斬り間違えたら(いて)ーぞ、嫌だろ?」

「仕事を残して死ぬのはもっと嫌だっ! 僕は企業戦士なんだよ? 抱えてる案件が山ほどあるんだ。それにケリをつけるとは言わないまでも、せめて後を誰かに託す段取りはしとかなきゃ死んでも死にきれない! 分かるでしょっ? 人情だよこれは!」

 コープスマンは媚態(びたい)をなして緋女にすり寄ってくる。この時もしコープスマンが(わず)かでも逃げるそぶりを見せていたら、緋女は迷わず斬り捨てただろう。だがあまりにも情けなさすぎるコープスマンの態度が緋女の闘志を鈍らせた。見よ、あの(てい)たらくを。ズレた眼鏡に()れた上着。ボサボサに逆だった髪を撫でつける余裕すらないミジメなありさま。こんな奴はいつでも斬れる。それに戦う意志もない者を一方的に惨殺(ざんさつ)するのも気が引ける……

「頼むよ! 少しだけ時間をくれ!」

「……どのくらいだ」

「待ってくれるの!?」

 このやり取りを窓の外で聞いていたカジュが顔色を変えた。

「緋女ちゃん、耳を貸しちゃダメだ。」

「いやあー仁義があるなあ! さっすが剣聖の一番弟子!」

「うっせー!! やることあんならさっさとしろや! どんだけ待ちゃいいんだ!?」

「だーいじょうぶ! 長々待たせはしませんよっ! なぜならば……」

 ぬるり、とした異様な質感の笑みを浮かべて、コープスマンは眼鏡のズレを片手で直した。

()()()()()()()

 瞬間。

「緋女ちゃんっ。」

 鋭く響くカジュの叫声(きょうせい)。転瞬身を引く緋女の神速。そのいずれよりも一息速く――

 縦二条(ふたすじ)

 氷河よりなお冴えた刃が、緋女の両肩を斬って裂く!

「がッ!?」

 苦悶。噴血。ぐらつく緋女のその前に、ひとり剣士が立ち上がる。知っている。緋女は、この女を。待っていた。再びの邂逅(かいこう)を。だのに奴はつまらなそうに……露骨な失望を声に(にじ)ませ、たじろぐ緋女に吐き捨てる。

(ぬる)い」

 紺の僧衣(そうい)に身を包み、異様にギラつく抜身の双剣ぶら下げて、()()()(もた)げる氷の微笑。底知れぬ狂気を暗く宿した悪夢の如き()()()()()

()其様(そん)(ところ)(くすぶ)ってるのか、緋女」

 5人目の四天王――シーファ。

 

 

(つづく)


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