「お久しぶりですわねモンさん」
ナイトメアと呼ばれた片目を髪で隠している端正な顔立ちの美少女は慣れているのかモンの奇妙なアイサツに疑問を持たずに話し掛ける。
彼女の名前は時崎狂三 モンと同じ精霊であり、モンを助けた命の恩人と言うべき人物だ。
「久しぶり狂三!わーい!」
「あらぁ…」
そんな狂三にモンは久しぶりに会えたのが余程嬉しかったのか、狂三に勢い良く抱き着く。
狂三は勢い良く抱き着かれるが、まんざらでもない様で頭を撫でる撫でられる度にフードに隠れたケモミミがピクピクと嬉しそうに動く。
「ふにゃあ」
気持ち良さそうに大人しく撫でられるモンを見て狂三は珍しく穏やかな表情を見せる。
時崎狂三は精霊の中では非常に危険で残忍な分類になる、其れはDEM社やそしてモンの共通の意見でもある。
なら何故そんな危険な精霊にモンは懐いているのか?
簡単だ恩を返す為と時崎狂三の過去を知り彼女の目的を達成させる為だ、勿論モン自身にも利益がある。
「ふふ…相変わらずですわねモンさんは」
「そりゃあ人間もどき…ううん、精霊はそう簡単に変わらないよ」
「其れもそうですわね…それにしてもモンさんは可愛いですわね」
「そうかな?」
「そうですわ」
そう二人の精霊は会話をしながら、街を歩くが…その途中で狂三と一緒に居るのが余程嬉しかったのかキャッキャとはしゃぐモンだが…周りを見えていなかったのか、明らかにガラの悪い男の身体にぶつかる。
「うわわっ」
「あら…」
バランスを崩して倒れそうになる所を狂三が身体を支え、倒れずにすんだ
「大丈夫ですかモンさん?」
「うっうん…」
心無しかモンの顔が赤くなりながら曖昧に答える、其れもそうだろう目の前に…目と鼻の先に同性でさえ見惚れてしまう程の美貌の持ち主が居るからだ。
「其れは良かったですわ…全く嬉しいのは私もモンさんに会えたのはとても嬉しいですけど…周りをちゃんと見ないと駄目ですわよ?」
「うっ…御免よ……後胸当たってるよ」
「違いますわよモンさん、当たってるのではなくて当ててるのですわ」
まるで誘っているのではと間違える様にとてもいやらしい笑みを此方に向けてくる、そんな表情を向けられただけで頭がクラクラして今直ぐにでも目の前の愛おしい精霊を滅茶苦茶にしたいし逆に滅茶苦茶にされたい…でも駄目!今は我慢!
モンは知ってる、狂三のあぁ言う表情は後でシようと言うサインと言う事を、だからモンは可能な限りの理性を用いて頑張って欲求を抑える…モンはいい子で我慢が出来る子。
「ふふ…其れじゃぁ参りましょうモンさん?」
狂三はそう言いモンの手を握り、ガラの悪い男達の間を抜けようとするが…ガシッと狂三の腕が掴まれた。
「あら、あら?」
「なぁ嬢ちゃん方そりゃあねぇよな?謝りもしないでどっか行くとかそりゃあねぇよな?」
「山原の言う通りだよなぁ…っておいおい!随分可愛いじゃねぇかこの子ら!」
「おぉ!こりゃあ大当たりだな!ねーねー、君達ぃお名前なんていうのー?てか暇ぁ?」
「此れは…また随分古典的ですこと」
狂三が呆れ果てる程、彼等のナンパは古典的過ぎてそして近付きたくなるような魅力も無い酷い誘い方だった。
さて…此れから如何しようか食べる価値も無い小物だが食べようか、そう考えながらふと…隣に居るモンを見た。
「………」
お気に入りのおもちゃを取り上げられた子供の様にえらく怒っていた。