その運命に、永遠はあるか   作:夏ばて

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七話

夢か。

 

壊滅寸前の部隊を庇い、包囲網を何とか切り開き逃したものの、敵の渦に取り残されたリーシャはとうとう力尽きた。

 

もしくは死に際の幻か。

 

笛を用いて幻神獣を操る警備部隊長ベルベット・バルトは、もはや自分の手を下すまでもないと後方から眺めていた。

帝国軍に伝わる機竜使いの奥義の1つ、『神速制御』の餌食となったリーシャは三十体のガーゴイルを十数体にまで減らしはしたが、心身ともに極限を越えてしまった。

もはや立ち上がるのもままならない。

そんなリーシャの目に映っていたのは夢か幻であってほしいと願う光景だった。

そして夢か幻でしか説明しきれない光景でもある。

 

「なあに無様に這いつくばってんだよ、姫」

最後はガーゴイルの合金の爪で腹を引き裂かれる、そのはずなのに一撃だ。

一撃で頭上から急降下してきたシオンが、ガーゴイルを仕留めた。

こともなげに初撃で葬ったのが彼でなければ、運が良かったで片づけられるが、これが現実であるならブレードを片手に構えているのは、あの下手な射撃をあっちこっちへ撒いていた機竜使いだ。

 

(ブレード……?)

そういえばこれまでにシオンの接近戦を見た事があったか。

いやない。

 

そもそも男に対してあまり良い印象がなかったので、無意識のうちに見下していたかもしれない。

弱い機竜使いになど負けることはないと図に乗っていて、おかしな点が見えていなかった。

 

そうだ。

この男がステアリード流を習得したシズマの弟弟子ならば。

ステアリード家の長兄ならば、あの流派を踏襲していないはずがなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

渦の外に追いやられた騎士団のメンバーは城壁まで避難させた。

あと1秒でも駆け付けるのが遅れていたら、リーシャは天に召されていたところにギリギリ割って入れた。

 

よし、この事件が終わったら女王から莫大な謝礼を貰うことにしよう。

 

「おっと、どうやら命知らずな鼠が飛び込んできたようだ」

≪エクス・ワイバーン≫を纏うベルベットが地面に降り立つ。

百はいるであろう部下に指で合図を送ると、逃げ道を塞ぐように周囲の装甲機竜が立ち位置から一歩二歩とこちらに近づく。

 

「何をぼさっとしている。わたしを置いてさっさと逃げろ馬鹿者」

かすれた声をかけてきたリーシャの腕に力が入る。

活路を再び開こうと、力を振り絞ろうとするリーシャを≪ティアマト≫ごと足の裏で押さえつける。

「お前さ、シズマから命は大切にしろとか習わなかったのかよ。替えのきかない王女様が犠牲になろうなんて、女王が聞いたら泣くぞ」

シャリスかノクトもそのような判断を投げかけたようだが、この退くことを知らない頑固者のお姫様は残ることを選んだ。

王族としては失格だ。

もともとはただの伯爵令嬢で、急遽王女として持ち上げられれば戸惑いはすると思うが、もう5年も経っているのに王族の責任を放棄するとなると、もはや改善の兆しは見当たらない。

 

「はははははっ、王女だと? そいつに説明してやれリーズシャルテ。私は帝国の所有物に成り下がった女ですって、その腹に刻まれた烙印を見せつけてな!」

「っ!」

リーシャが息をのんだ。

単純な怒りが増している様子を見るかぎり、虚言というわけではなさそうだ。

声にならない叫びを上げて、立ち上がろうとするリーシャをさらに踏みつける。

 

「なあ」

驚愕の表情を望んていたのに平然と調子を崩さないシオンに、不満そうな色がベルベットの顔に浮かび上がる。

「うちの姫様とさ、一騎打ちしてくれない? それでそっちが負けたら俺達を見逃してよ」

リーシャがこうして打ちひしがれているのは、加勢に入る前にベルベットと一騎打ちをし、敗れたからである。

傷を負って立ち上がることさえやっとのリーシャとの再戦の要求に、ベルベットや周りの機竜使いからは下品な高笑いが起こった。

 

「今更何を、そんな一方的な条件吞めるはずがなかろう! やってしまえ!」

嘲りの笑みを浮かべた機竜使いが、シオンの眼前に降りた。

 

「そういうことでな、悪いな兄ちゃん」

大剣を上段に構え、一気に振り下ろした。

空をきり、そして≪ワイバーン≫の障壁と接触した。

 

「……はっ?」

間の抜けた男の声。

恐る恐る自分の右肩へ目を持っていくと、肩から先が消え、かわりに血しぶきが噴き出していた。

平静を失ったことにより装甲が強制解除された男は、大粒の汗を垂らして無い腕を必死に擦ろうとする。

 

「早く止血しないと死ぬよ?」

斬り上げ、シオンのブレードの軌道が目視できなかったわけではない。

あれほど見事に剣を振るったとなると、あまりにも自然過ぎて意識の枠から外れてしまう。

 

そしてなにより、異変に気づいたベルベットは一流の機竜使いの証明であった。

障壁に衝突すれば、武器の軌道は必ずと言っていいほど左右どちらかにズレる。

修正すれば軌道上へ戻すことも可能だが、シオンが見せたように肩から先だけを綺麗に落とすなんて芸当は、障壁が消えている状態でなければ出来やしない。

 

「姫さんが装甲機竜に執着してんのって、その帝国の所有物に成り下がった証に負い目を感じてるからか?」

三度の飯より装甲機竜を愛していたリーシャは、とにかく装甲機竜に熱心だった。

リーシャに付き添えば装甲機竜を絡めた遊びしかしておらず、子供らしく遊びなんて思い出にはない。

負い目の反動で気を紛らわすために装甲機竜に没頭したり、口調もわざと崩している、なんてこともやりかねない。

 

耐えるように唇をかみしめているリーシャから、≪ワイバーン≫の脚部をおろし、大地に手にしていたブレードを突き立てる。

「あのな姫様、この世にはお前らが想像できないゴミ溜めみてーなところで、懸命に生き抜こうとしているガキもいたりするんだ。贅沢の限りを尽くしてた貴族のお嬢様が、どんな絶望を目の当たりにしたかについては何も言えねえけどよ、お前や俺や、あの王子様以上に辛い人生を歩みながらも、挫けず真っ直ぐ生きている人間なんて腐るほどいるぞ」

語気を荒げることはない。

言葉の途切れた隙を縫うようにシオンは語り掛ける。

 

「生きてるんだ。理不尽な運命に悩まされて当然だろ。

だけどな姫様、これだけは覚えておけ。

運命ってのは抗うか、克服するか、受け入れるか、ぶっ壊すか。

どんなに目を逸らしたくなるような運命だとしても、諦めて逃げるのだけはナシだ」

否定したり、投げ出すのは簡単だ。

消し去りたい過去なんて誰しもが抱えている。

でもそんな過去も自分の一部で、その経験があるから今がある。

 

「下ばかり向いてウジウジしてても得なことはないぞ。ほら立てよ、リーズシャルテ」

そう言うや否や、シオンが突き刺したブレードの柄を≪ティアマト≫が固く掴んだ。

「……黙って聞いていればシオンの分際でこのわたしに説教だと」

「死にかけてた割には威勢のいい軽口を叩けるじゃないか」

「小休止を挟んでただけで、それが済めばこのゲス共を殲滅するつもりだったのに、余計な横槍入れてくれるな」

悲鳴をあげる各部に力を込め、言うことの聞かない体に鞭を打ってブレードを支えに立ち上がった。

挑みにかかるような双眸で、シオンを睨む。

 

「知ったような口を聞くな。わたしはまだ、折れてなんかいない。負けてなんかいない。諦めてもいない」

一騎打ちで投擲し、撃ち落とされた≪キメラティック・ワイバーン≫の機甲殻剣を拾い上げると、それをベルベットの足元に投げつけた。

まるで決闘を申し込むかのように。

 

「死んだお父様にどうして見捨てたんだと、今でも怒鳴りたくなる。心底嫌って、恨んだよ。呪ったりもした――けど、尊敬もした」

そこまで言って、リーシャは意味ありげにシオンを見た。

 

「わたしも、アイツを倒してから諦めるとしよう。それなら文句は言えまい」

新王国の玉座に座ることは叶わなかったが、一月にも及んだクーデターを戦い抜いてからこの世を去った英傑の娘の表情はまだ死んでいない。

 

 

 

 

 

 

 

学園の機竜格納庫へと戻ったノクトはひとまずライグリィ教官に事態を報告してからルクスへと伝言を渡した。

とはいうものの『来て』とシオンに言われたのをそのまま伝えただけだが。

「シオンからお呼びがかかっていますので、お願いします。ルクスさん」

事務的に用件だけを告げるノクトに頷きを返したルクスは、二本の機甲殻剣のうち黒鞘に手をかける。

「駄目です兄さん!」

即座にアイリが腕を掴んできた。

非力なアイリに握りしめられたからといって痛みがあるわけではないのに、心臓が絞めつけられたかのように苦しくなる。

 

「ごめんアイリ。リーシャ様を助けに行くよ」

「兄さんの気持ちは分かります。でも、この世界にはどうしようもないことだってあるんです。いくら頑張っても覆せないものが、いっぱいあるんです」

傷ついてほしくない。

辛い思いをしてほしくない。

最悪の未来を想像してしまうからこそ、アイリは懇願するような瞳でルクスがその鞘を離すのを待つ。

「僕の力だけではどうしようもないことが沢山ある。それはあの日に思い知ったよ」

照れくさそうにはにかみながら、ルクスは空いた手でアイリの銀色の髪をそっと撫でる。

「でもねアイリ。僕もここが好きになったから、大切だと思える場所が壊れてしまうのは嫌なんだ」

「兄さん……」

僅かに開いたアイリの唇から、切ない吐息が漏れた。

何かに耐えるように目を閉じ、眉尻を寄せる。

「リーシャ様を助けたらすぐ戻ってくるって約束する。僕は死なない。アイリを置いていくつもりもないよ」

きつく掴まれている手を外し、ルクスは昂然とした歩調で開け放たれている扉をくぐる。

 

シオンは神装機竜である≪ミハイル≫を城塞都市に持ち込んでいなかった。

大型の幻神獣一体だけならまだしも、多数を相手に立ち回れるのかは定かではない。

 

いくら強くとも、反乱軍と幻神獣が混じり合う戦地を≪ワイバーン≫で乗り切るのは厳しいと踏んでいるからこそ、加勢を求めているのか。

 

ルクスとてシオンの実力を知り尽くしているわけではない。

半分。

シオンの言葉を鵜呑みにするなら、半分までしか実力を披露していない。

その域から超えた力を出してほしいと要求したこともあるが、『だりぃ』で一掃された。

 

つまり現状においてシオンは不確定要素。

全力で挑めば単独で解決できるかもしれない。

逆もまたある。

 

そんなシオンがわざわざ応援を要請したのなら、自分で解決する気が限りなくゼロに近いだろう。

 

「クルルシファーさん、お願いがあります」

「何かしら?」

「あなたの≪ファフニール≫を起動させてください」

白い鞘ではなく、色違いの黒の鞘から機甲殻剣を抜き、ルクスが頼み込む。

 

「前にも言ったでしょう? 私はユミル教国の命で、戦いに出向くわけにはいかないのよ」

「巻き込まれている『騎士団』を引き連れて安全圏まで撤退してください。戦闘に介入する必要はありません」

「命の危険が及ばない後方支援が私の主な役割、そうも言ったわよね?」

間違っても設けられている規則を犯そうとはしないクルルルシファーだが、そのルールも原則にすぎない。

特例として志願さえすれば留学生でも許可は下りる。

 

「虫のいい話を持ち掛けているわけではありません」

編入初日の昼休み、学園の屋上で彼女から受けた雑用の依頼。

時の経過とともにうやむやにしてしまえと決めていたが、まさか交渉材料として役に立つとは思いもよらなかった。

 

柄にあるボタンを押しながら叫ぶ。

 

「――顕現せよ、神々の血肉を喰らいし暴竜。黒雲の天を断て、≪バハムート≫!」

淡い光の粒子が高速で集束し、黒い機竜が姿を現す。

巨大な機械の装甲が開かれ、包み込むようにルクスを纏う。

 

「これが答えです」

禍々しくもどこか美しい、漆黒の神装機竜≪バハムート≫。

『黒き英雄』を探して。

その依頼の完了するのと同時に、クルルシファーは機甲殻剣に手をかける。

 

 

 

 

 

 

不自然に開けた空間。

重々しく大気を掻きむしる装甲機竜の駆動音は、まるで世界そのものに歪みを呼んでいるようにリーシャには聞こえた。

 

数的有利な状況下にありながらベルベットが一騎打ちを承諾してくれたのは、しょうもない男のプライドを保つためだろうか。

定期的に行われている校内戦とはまた異なり、反乱軍が観客として見守る中、リーシャは勝てると己に訴えかけていた。

 

一昔前の決闘方式にのっとり、使用するのは剣一振り。

どちらか一方が命を落とすまで続けられ、リーシャが勝利すれば大人しくお縄に、敗北なら城塞都市を反乱軍に明け渡す条件をシオンが提示し、今まさに開始の合図がかかろうとキャノンを天へ向け突き上げられる。

 

大丈夫だ、勝てる。

改めて自らに言い聞かせ、ブレードを中段に構える。

 

――ドオンっ!

固体化したように張り詰めていた空気を、キャノンの咆哮が打ちぬいた。

 

相手よりも先手を取る。

暴走の一歩手前、何とか≪ティアマト≫を纏っているのだからこちらが不利なのは重々承知だ。

短期決戦で決着をつけようと、加速の勢いを乗せた一撃を≪エクス・ワイバーン≫にお見舞いする。

一振りでケリがつけばいいが、元帝国の近衛騎士団長は甘くはない。

 

「腰が入っていないな、リ-ズシャルテ!」

いともたやすく受け止められ、力任せに押し返される。

 

警戒しなければならないのは目視不可の攻撃『神速制御』。

肉体操作と精神操作を重ね合わせるため発動にはきわめて高い集中力が必要となり、ベルベットの仕掛けるタイミングを見極めなければ勝機は見いだせない。

弾き飛ばされたリーシャは≪ティアマト≫を一回転させ地に足をつける。

 

「どうした、膝が笑っているぞ?」

震えてなどいない。

これは単なる武者震いだ。

引き上げた闘志を持続させるにはこうして言い聞かせるしかない。

 

斬りつけ、薙ぎ、防がれ、左右からくる敵の攻撃をいなし、ふたたび斬撃をみまう。

敵の剣がひらめくたび、攻撃と防御の衝撃が機体を通じて肉体に響くたび、歯を食いしばって苦痛に耐える。

 

≪ティアマト≫を自由自在に乗りこなせるようになってから、ブレードを片手に近接戦を演じるのは初めてではないだろうか。

特殊武装の≪空挺要塞≫で撹乱し、≪七つの竜頭≫で隙を突けば大抵の機竜使いは成す術もなく撃墜できるし、校内戦でもそうだった。

白兵戦に苦手意識はないが、それでも得意としているのは中距離から神装も交えた戦闘だ。

 

学園に入学するまでの間に教育係を務めていたシズマから護身術として剣を教わったことを、数日前レリィがステアリードの流派をかじっていると発言していたが、そこまで多くを学んではいない。

足の運び方、間合いの掴み方、剣の振り方などごくごく当たり前の基本しか教えてもらえなかったのは、ステアリードにとってリーシャが部外者であるからだ。

気安く外に流派を漏らすことが禁忌だというのはリーシャも理解していて、基礎だけだとしても武人から直々に指導を受けられたことはとても幸運だった。

 

互いの白刃が衝突し、火花が飛び散る。

剣戟はもはや何合重ねたか分からぬほどだ。

 

それでも戦闘の初期に手に入れた攻勢は、徐々に手放していると実感している。

 

思い切り叩きつけられる大剣の力を流しきれず、リーシャは後方へ吹き飛ばされる。

 

ベルベットが優勢な展開に湧き起こる歓声。

 

外野がうるさい。

気が散るから静かにしていてくれ。

 

そう思い、目を切ってしまった過ちに気づいた刹那、正面より大剣が大振りで迫る。

 

「よそ見をする余裕があるのか!」

戦場では一瞬の油断が命取りだ。

いつだか習った格言を、そのまま言葉通りに飲み込んだことはない。

開始から終了まで緊張しっぱなしも、それはそれで余計な疲れが出るし、敵と向き合っても一息つく時間は確保しなければすぐバてる。

 

ほんの一瞬だ。

一秒にも満たない時間、外野へ意識が向いただけなのにこうなるとは。

 

ブレードを盾にするか。

間に合わない。

躱すか。

間に合わない。

 

ダメだ、間に合わない。

 

直撃の軌道に乗るベルベットの一撃をどうしても回避する手立てが浮かんでこない。

頭が真っ白になる。

死ぬって、こんなにもあっけないことだったのかと、当事者であるリーシャはやけに冷静に分析していた。

決闘の代償に支払われる城塞都市に反乱軍の拠点が築き上げられたら、新王国はどうなるのだろうか。

住民や学園の生徒は無事に解放されるのだろうか。

旧帝国の思想にどっぷり浸かっているこいつらは民のことを奴隷としてしか見ていないから、早いうちに城塞都市から逃げてほしい。

 

威勢よく啖呵を切ったのにこの体たらくで皆に顔向けでき――

 

 

 

 

 

『右の膝を抜け』

 

 

 

その時、リーシャの中で何かが起こった。

考えたうえでの行動ではない。

それは言葉では到底言い表すことのできない、直感的に引き起こされたある種の爆発だった。

 

≪ティアマト≫の右膝関節を折ったリーシャは、ずいと右半身が斜めに崩れ落ちる。

左足を前方へ踏み込み、半身の体勢で体を支えようとする。

 

 

『前に出すな。裏手へ振り切れ』

一たび始まれば二度と止めることのできない不可逆的な変容。

意識などしていない。

腰を横に回して重心を巧みに操るリーシャは、右足を軸に弧を描く回転をしてみせる。

 

捻った体の目の前に振り下ろされたブレードを間近で見ると、ところどころ刃が欠けている個所がある。

 

――どれだけ私は冷静なんだ。

 

左の足先で荒れた大地を削りながら、リーシャは思う。

呼吸をすることすら忘れていたのかもしれない。

軸足を入れ替え、きっちり一回転したところで止まる。

 

力任せに叩きつけたベルベットの攻撃は空を切り、踊り子を連想させる見事なステップで躱したリーシャが無防備な側面をとった。

 

「え?」

ここでようやくリーシャは可愛らしい素っ頓狂な声を上げた。

冴えわたっていたのが嘘のように、たった今引き起こされた現象に素で戸惑う。

 

斬られそうだった。

ここまではいい。

その後は、たしか………『右の膝を抜け』って。

 

シオンから竜声で飛んできて、そしたら勝手に身体が反応して……。

 

『ふわふわ浮わついてる思考に異色が混ざりこめば、機体制御に長けてる機竜使いなら反射的にその選択肢を選んじまうんだよ。無意識な生存本能が暴れ狂う死と隣り合わせの瞬間限定だけどな』

 

遅れて押し寄せてくる事実にリーシャは思わず息を吞む。

戦慄を帯びた面持ちが段々と上がり、見開いた瞳に映るのはにやりと口の端吊り上げているシオンだった。




俺はここにいるRPGがリメイクされるので舞い上がってます

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