それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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初投稿になります。宜しくお願い致します。


原作前
春日 雄也


【春日雄也・ボーダー本部・B級ランク戦(市街地A)】

 

『ウラアァ! ……っと。こちら黒木、水上さん落としたぞ!』

 

同じ隊の黒木諒から通信が入った。どうやら生駒隊の水上さんを落としたようだ。

 

『よーし! 諒くんが水上先輩を落としたよー! あとは生駒さん落として終わらせよー!』

 

オペレーター、古賀美奈子の元気な声が聞こえる。

 

『飛ばせば20秒ちょいでそっちに行けるけど、行くか?』

 

『問題ない。生駒さんは俺と雄也でケリをつける。雄也、射線まで追い込みをかけてくれ。それでもう生駒さんは詰みだ』

 

『了解』

 

俺の隊の長、古賀清隆から指示が飛ぶ。俺は最後の一人となった生駒さんを二人で追い込みにかかる。

 

序盤の戦闘では一進一退の攻防を続けてきたが、清隆が王子さんを狙撃して落としたのを皮切りに王子隊が全滅。それを契機に一気に生駒隊を攻め立て追い詰めた。

 

諒が水上さんを落としてくれた、あとは生駒さん一人……。

 

「『3秒後に丁字路のところに押し出す。頼んだ』……アステロイド!」

 

「チッ、こらホンマにヤバいな……」

 

両手にアステロイドを生成し、無数の弾丸を生駒さんに向けて放つ。生駒さんもシールドを出して対応するが、放ったうちの何発かがシールドを突き破り、生駒さんの左肩を貫いた。ヤバいヤバい言いながら退いている。

 

弾丸の勢いに押される生駒さん目掛けて、これでもか、と言うくらい更に弾丸を飛ばしていく。

 

だが、もう少しでケリをつけられそうになったその瞬間、こちらも弾切れになってしまった。

 

「よっしゃ、そしたら今度はこっちの番や。いくら春日でもこっからなら避けられへんやろ」

 

こちらに隙ができたと見て、ボロボロになりながらも生駒さんが弧月に手をかける。

 

距離、目算でおよそ10メートル強。生駒さんの旋空が飛んでくるとして、とても避けられる距離ではない。が、

 

「旋空……『よくやった、雄也。止めを刺すぞ』

 

通信の入った次の瞬間、生駒さんが旋空を放とうとしたまさにその瞬間――弧月を持った生駒さんの腕が清隆の狙撃により吹き飛んだ。

 

「っ……! あー、こらアカンわ」

 

生駒さんはその場に崩れた。それを見ながら俺は合成弾を作り始める。

 

『……チェックメイトだ。せっかくだし、祝砲代わりに景気よく頼んだ』

 

「了解。……バイパー+メテオラ=変化炸裂弾(トマホーク)!!」

 

生成した無数の合成弾を上空に飛ばす。放たれた無数の弾丸は周囲の建物の屋根を越えると、角度を変え雨のように生駒さん目掛けて降り注ぎ、爆ぜた。

 

『トリオン供給機関破損、緊急脱出』

 

生駒さんの緊急脱出を告げるアナウンスが聞こえる。この瞬間俺たち古賀隊の勝利が確定した。

 

最終スコア

古賀隊:7(撃破5、生存2)

生駒隊:1

王子隊:1

 

 

………

……

 

 

【春日雄也・ボーダー本部・古賀隊隊室】

 

「お疲れさまー。これで1位確定したねー! よかったよかった!」

 

隊室に戻りオペレータールームに入ると、美奈ちゃんがポニーテールをぴょこぴょこさせながら可愛らしい笑顔でハイタッチで迎えてくれた。

 

「あー! クソッ! 俺が生駒さんとやりたかったとに!」

 

「まぁ転送位置があれだった。しゃーない」

 

諒は不服を訴え騒いでいた。

 

そういえばランク戦が始まる前からずっと生駒さんを倒すとか言っていたな。確かに最初は諒と生駒さんを戦わせる予定だったが、転送された位置が二人離れていたことと、諒の側には他の面子がいてその対応をせざるを得なかったことにより時間を取られ、今回非常にスピーディーに試合が進んでしまった結果、ついには戦いの中接近することすらできずに終わっていた。……まぁ、ドンマイ。

 

「3人ともお疲れさん」

 

少し遅れて清隆が眼鏡をかけながら入ってくる。同様にクールな顔つきをしているが、鷹のように鋭い目つきをした諒とは対照的に、人当たりのよさそうな笑顔をしている。口調も戦闘時のような固い口調とは違い、かなり砕けた感じになっていた。

 

「お疲れ。最後のあれ、お前が決められたんじゃねーの?」

 

「まぁ頭撃ってもよかったんだけど、それだとどっかの誰かさんが一人だけ0点で終わってかわいそうだったし」

 

「地味に痛いとこ突いてくんなよ……」

 

ニヤニヤしながら言ってんじゃねぇよ。仕方ないだろ、俺だって最初の転送位置があんまりよくなかったんだから。一番近くにいたのが生駒さんだったわけだし。生駒さんを牽制しながら戦闘地帯まで徐々に歩を進め、ようやく到着するかと思いきや2人で殆ど勝負決めてたし……。

 

「悪い悪い、転送位置が悪かったもんな」

 

「はぁ……まぁいいや。何にせよこれで……」

 

「うん。これでB級1位とA級挑戦権獲得が確定した! 今回は諒が頑張ってくれたおかげで7点取れたわけだし、本当に助かったよ」

 

まぁ正直なところ今のこの隊ならA級に入れるだろう力があるだろうし、この結果は妥当だろう。

 

……B級の他のチームには申し訳ない言い方だが、今期については影浦隊とどっちがポイントを多く取れるかの勝負になってたな。

 

結果としては、めでたく俺たちはB級1位確定となったわけだが。

 

「まぁ明後日の隊長同士の会議で色々話があるだろうから、それまではのんびりやってよう……とはいっても明日は夜から防衛任務あるけどね」

 

「進級一発目の実力テストの成績悪かったせいで、補習でのんびりできない奴が一人いるけどな」

 

「え? 諒くんまた赤点取ったの!? 嘘でしょ!?」

 

「うるせぇな。今回赤点は現代文だけだ」

 

「「お、おう」」

 

「……来年は受験生なんだからちゃんと勉強もしなよ」

 

美奈ちゃんは諒を一喝した。

 

「いや、部活で忙しいから仕方ねぇだろ。スポーツ推薦だからそっちに力入れねぇといけねぇし」

 

肝心の諒は言い訳をかました。ただでさえ悪い目つきが余計に悪くなっていた。

 

「……さ、最悪太刀川さんと同じルートで大学行けば大丈夫だろ」

 

俺はとりあえず震えた声でフォローをしておいた。

 

「まぁそうでなくても剣道でどっか大学が拾ってくれるとは思うよ……多分。というかそんなことより、やっと昇格戦まで漕ぎ着けたわけだしもっと喜んだらどうなの?」

 

清隆もボソッとフォローを入れ、話題を逸らした。

 

「いや、やっとと言われても俺は今期からランク戦参加だぞ?」

 

「oh……身も蓋もない……」

 

確かに諒は今期からランク戦に参加だからな……。やっともクソもなかった。

 

「はいはーい! 私はめちゃくちゃテンション上がってるよー! 昇格戦で結果を出してA級になるぞー!」

 

「ほらお前ら、我が妹のこの喜びようを見習え」

 

「いや、確かに嬉しいことじゃぁあるが、俺はお前ら兄妹とはみてぇにA級昇格目指してるわけではねぇしな」

 

「まぁA級に上がるにもこの次が鬼門なんだから、そこを突破しないことには俺は喜べないかな。つか、B級1位とか何回か取ってるわけだし」

 

俺と諒の答えがあんまり面白くなかったのか、清隆と美奈ちゃんからジト目を向けられた。

 

「冷めてるなー……。ところでこの後どうする? B級1位の祝杯と言っては何だが晩飯にでも行かないか?」

 

「悪い、今日はもう晩飯の準備してるだろうからやめとく」

 

「じゃあ俺もパスだな。隊長会議の日にどうせ集まんだろ? その日でいいなら午後以降も空けとくぞ」

 

「わかった。雄也も美奈子もそれでいい?」

 

「はいよ。その日なら問題ない」

 

「私もオッケーだよ」

 

「じゃあ今日はもう解散で。どうせ集まるのなら今日の反省は会議の日の午前中にするとしようか。美奈子、明後日までにログをまとめておいて。データはこの後武富からかっぱらってくるから」

 

「あいあいさー!」

 

さて、ミーティングも終わったし帰るとするか。

 

 

 


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