それぞれの戦う理由   作:ふぃりっぷす

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資格試験も終了したので、またペースを上げていけたらと思います。(大体こんな宣言をする時点でペース上がらない)

では今回も宜しくお願い致します。


香取 葉子②

【春日雄也・三門市内市街地】

 

太刀川隊とのエキシビジョンマッチから1週間が経った。

 

ついにA級に上がったということで何かが変わるのかと思いきや、特に何も変わりのない生活を送っていた。

 

それどころか昇格早々申し訳ないがうちの隊は来季のランク戦は不参加なので、今までよりもゆったりとしているくらいだ。

 

強いて言うなら、A級に上がったことで独自にトリガーの改造ができるようになったので、諒が忙しい合間を縫ってその辺のことに尽力しているらしいくらいか。

 

……まぁ、来季の新入隊員絡みの仕事を大量に振る、と嵐山さんや忍田さんに宣告されているので楽ができるというわけではないが、その仕事がない間、俺はある程度楽をさせてもらおう。

 

だが今日は……

 

「ごめん雄也! 待った?」

 

「いや、俺もさっき着いたばっかだから気にしないで、葉子。とりあえず店に入ろうか」

 

以前葉子と約束していたこともあり、今は2人で昼飯を食べに来ている。

 

お祝いだから、と葉子が出すと意気込んではいるが、年下の女の子に財布を開かせるのもあまりいい気はしないし、何なら俺が全部出すつもりだが……ブー垂れるだろうな、きっと。

 

ウェイターに席に案内され、とりあえずメニューを開いてみた。パスタか何かが有名な店らしくメニューの多くがそれで占められている。

 

とりあえず注文し、軽く周りを見渡してみる。洋風の白を基調とした小洒落た内装となっているようだ。

 

「……なんと言うかこういうオシャレな店は慣れないな」

 

「そうなの?」

 

「こういう店はたまにしか足を運ばないからなー」

 

桐絵とはこんな洒落たとこ来たことないし、普段飯食いに行くといったら基本的に諒かレイジさんとだから、こういうところにはまるで縁がない。

質より量だもんな、あの2人だと。いや違う。質も量も、か。この場合の”質”は”タンパク質”のことだが。

 

まぁ冗談は置いといて、こういう店に来るにしても、せいぜい清隆と一緒に美奈ちゃんのリクエストに付き合わされたときか、那須隊の面子と行くときくらいだから、機会としてはそう多くはないし、何より女の子とこんなところに2人で来るのは初めてなので余計に落ち着かなく感じているのかもしれない。

 

そんなことを思っていると、ウェイターがドリンクを先に持ってきてくれた。

 

A級昇格を祝して、と乾杯しまた雑談に入った。

 

何か普段と変わったことを話すわけでもなく、学校でのこと、ボーダーでのことなどいつも通りの会話のネタとなっていた。

 

相変わらず部隊の面子に不満があるみたいな部分がちょこちょこ垣間見えるのが若干不安ではあるが。

 

葉子の愚痴を聞いていると、料理が届いた。

 

人気の店らしく値段は張るが、見栄えはかなり良く味にも期待できそうだ。

 

さっきまで若干膨れっ面だった葉子も多少は落ち着きを取り戻し、華に見せてあげよう、と携帯で写真を撮っていた。

 

―――

――

 

腹も膨れたところで、俺たちは店を後にした。

 

特にこの後の宛てはなかったが、「ランク戦やろう!」と葉子に誘われたので、今はボーダー本部に向かって歩いている。

 

「そういや葉子とランク戦するのも久しぶりだな。あ、でも部隊の方のランク戦では今期は3回くらい当たったっけ?」

 

「全部負けたけどね……何なの!? あの黒木ってやつ! 強すぎなんだけど!」

 

B級ランク戦で今季香取隊とは3回ほど当たっている。そのうちの3回とも葉子は諒に落とされている。

 

葉子もかなりセンスはあると思うが、あいつが相手では正直荷が重い。若村や三浦の援護も難なく捌いて逆に返り討ちにし、1人で3人を倒してしまうなどという離れ技もやってのけたし。

 

一応香取隊は今季B級の上位ランクインしている部隊なのだが……あいつやっぱおかしいだろ。

 

「あいつの強さははっきり言って異常だから……こないだもサシで太刀川さんに勝ったし」

 

「あんなのどこで見つけてきたの?」

 

「1年のとき同じクラスで席があいつの前だったんだよ。スカウトされてこっちに来たってことは知ってたから。ちょっと声かけてみたら割と気の合うやつで、そのままうちに勧誘したってとこかな? ちょうどフロント張れる攻撃手ほしかったし」

 

「え? 何それ、ずるい!」

 

嵐山隊と共に新入隊員関連の仕事もやっているので、スカウトされた人間などの情報も実は前もって手に入れることができる。

 

ずるいっちゃずるいが一応仕事の一環だから仕方がない、ということにしてほしい。

クラス一緒になって席も前後になったのは本当に偶然わけだし。

 

「はっはっは。運も実力のうちってこった。……とは言え上がるまでに結構苦労したけどね」

 

「あんなに強いのに?」

 

「まぁ今でこそあの強さだけど、最初はトリオン体の運動性能の向上に感覚がついてこれなかったとか言ってたかな」

 

「どういうこと?」

 

「なんかトリオン体だと動けすぎるらしい。実際、入隊時の戦闘訓練の結果は確か1分ちょいくらいだったはずだし」

 

「嘘!? あんなに強いのに!?」

 

「マジマジ。敵に飛び掛かろうとしたら、飛びすぎて天井に頭ぶつけてそのまま落下して悶えて15秒。その直後訓練中にも関わらず俺に話しかけてきてさらに30秒。最後は悩んだ末に結局真っ直ぐ敵の口元目掛けて飛んでいって、弧月ぶっ刺して倒してたな」

 

「めちゃくちゃじゃん……」

 

本人もトリオン体になると運動能力が上がるということは理解していたようだが、元の運動能力が桁違いだから、運動性能向上の恩恵が通常以上のものだったらしい。

 

それこそ、自身の身体の動かし方を完全に理解していた諒にとってはその誤差が致命的なものとなり、トリオン体に上手く馴染めないでいた。

 

ただ、慣れてしまえば、というわけで、B級のランク戦が始まる頃には特に問題なく動けるようになっていたが。

 

「まぁなんにせよ、そういうわけであんだけ戦えるようになったのも実は結構最近のことなんだよ」

 

「そうなんだ……麓郎や雄太もあれくらい強かったらなぁ……」

 

ここでまた葉子が部隊のことでぼやいてしまった。

 

実際性格的に合わない部分はあるのだろう。特に、熱くなりやすい若村とは水と油だろうし、間を取り持っているはずの三浦にはどっちつかずの優柔不断のように思っているかもしれない。

 

そんなこともあって、必要以上にイラついてしまっているのだろう。

 

「まぁそう言ってやるな。あいつらはあいつらでちゃんと努力はしている」

 

「でも……」

 

「あんまり言うな、な?」

 

「うん……」

 

あー、目に見えて落ち込んでるな。話題変えとくか。

 

「ところで、銃手に転向してそろそろ半年くらいだけど調子はどう?」

 

「あ、そうだ! 聞いてよ! もうすぐマスター級になれそうなんだから!」

 

これには正直驚いた。

葉子に関してははっきり言って素質はあるし、マスター級にはそのうちなれるだろうとは思っていたが、思った以上に早い。

 

攻撃手としてもかなりの実力を持っているし、そのうち万能手に転向してもいいんじゃないかとも思う。わりと器用だからその辺も上手くこなせるだろう。

 

だが……ちょっと癪だな。よし。

 

「マジか……早いな。じゃあ今日はその溜まったポイントを吸い取ってやるか……」

 

「ちょっ! そういうのやめない!?」

 

「はっはっは。頑張ってポイント減らされないようにするんだな」

 

「いじわるー!!!」

 

気付けばもう本部は目の前だった。

 

まぁせっかく溜まったポイントを削りまくるのもかわいそうだったので、とりあえず10本だけやって、その後は訓練室でしごいてやった。

 




そろそろ原作に入らずとも原作のストーリーに触れよう、と決心した今日この頃。


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