東方短編集   作:村雨 晶

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新しい書き方のテストも兼ねて


大妖精

「なあ、お前、湖の神様を見たことあるか?」

 

 

「蛙?ちげえよ馬鹿、人型のだよ」

 

 

「俺は見たことがある。ガキの頃にな」

 

 

「ガキの度胸試しってあったろ?湖まで行ってよ、村まで戻ってくるあれさ」

 

 

「その時に妖怪に襲われてな、もうダメだって思ったときにその神様が助けてくれたのさ」

 

 

「ああ、緑の髪に、透明な羽。ありゃ絶対に神様だ。間違いねえ」

 

 

「あん?その形なら妖精じゃねえかって?……ああ、実のところ俺もそれは考えたさ」

 

 

「だがよ、考えてもみろ。妖精がわざわざ人間助けて、心配するか?それに、喋り方だって姿だって子供っぽい妖精とは比べ物にならねえ」

 

 

「だから、あれはきっと湖に住んでる神様さ。社は見かけたことねえが、秋の神様だって社はねえ。似たようなもんだろ?」

 

 

「まあ、実はよ。神様に助けられた直後に社、作ったんだよ。感謝の印にさ。ガキの作ったもんだから、そりゃあ粗末なもんだけどさ」

 

 

「もう一回会えんじゃねえかって打算もあった。だが、神様はそれ以来一度も見かけねえ」

 

 

「きっと信者がいなくて出てこれねえのさ。守矢神社の神様たちだって、外でそうなりそうだからこっちに来たって話だしよ」

 

 

「ああ、だからよ、お前が湖の近くを通った時はさ、社で拝んじゃくれねえか?」

 

 

「なに、俺が作った粗末なもんさ、手え合わせて道中の無事を祈ってくれさえすればそれでいい」

 

 

「なんでそんな妙な事頼むかって?……あれだよ、一回会って礼がしてえのさ、助けてくれてありがとうってよ」

 

 

「だが現れられないんじゃ話にならねえだろ?だからよ、頼むよ。俺とおまえの仲じゃねえか」

 

 

「その位ならやってもいい?おっしゃそれでこそ俺の親友だ!」

 

 

「ん?他にも話していいかって?そりゃもちろん。増えてくれるんなら願ったり叶ったりだ」

 

 

「おっといけねえ、仕事の時間だ。遅れたらあの道具屋の兄ちゃんに嫌味を言われっちまう」

 

 

「じゃあな!社の件、頼んだぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おはよう、チルノちゃん」

 

 

「……うん、また大きくなってたの。力もなんだか溢れてくるし」

 

 

「なんだかお母さんみたい?アハハ、せめてお姉ちゃんでお願い」

 

 

「私、このままどうなるんだろう?妖精なのにこんなに成長しちゃって」

 

 

「……ずっと一緒にいてくれるの?うん、ありがとう、チルノちゃん」

 

 

「そういえば、湖の近くの……なんていうのかなあれ、ちっちゃい神社みたいなの」

 

 

「最近人がよく来るんだけど、チルノちゃん何か知ってる?」

 

 

「湖の神様?そんなのいたっけ?」

 

 

「チルノちゃんも知らないんだ。誰なんだろうね、一回会ってみたいな」

 

 

「じゃあ、今日はみんなと何して遊ぼっか?」

 

 




(早く会ってみてえなあ、あの妖精みてえな神様に)

(会ってみたいな、湖の神様、優しい神様だといいな)



神と信者はすれ違えども、それは確かに信仰だった

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