ダンジョンに死人が居るのは間違っているだろうか   作:風風

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その男 ライエル・クレイン

「ほっ、ほっ。その様な事があったとは、実に愉快な話よのう」

 

とある一軒家。

そこに一組の男女がベッドの上で肌を重ねていた。男はうつ伏せになって鍛え抜かれた上半身を惜しげもなく曝け出し、対して女――ネフティスは男に跨っては掌を背に当てている。そう、途轍もなく健全に(背中)()を重ねていた。

 

「笑いごとじゃありませんよ、ネフティス様。新人が死にそうになっていたんですから」

 

「御主が面白い話を持って来るのが悪い。妾はそれに素直な感想を述べた迄よ」

 

「はいはい、申し訳ありません……」

 

咄嗟に口から出た平謝り。

現在、男は主神であるネフティスにステイタスの更新をしてもらっている最中であった。

その際、そう言えばと本日助けた少年の話をするとネフティスは笑い出し、その反応をあまり良く思わない男が反論したのが事の経緯である。

 

「微塵も悪いと思っていない謝り方をしおってからに……。まぁ良い、出来たぞ」

 

ネフティスが身体の上から退くと、男は半身を起こして能力の内容を書かれた羊用紙を受け取る。

 

「うーん、やはり変わっていませんね」

 

自らのステイタスが書かれているそれをジッと見つめ、少々残念そうに呟いた。

 

「当たり前の事を言うでない。そもそも能力の上昇は肉体に経験値(エクセリア)、魂に恩恵(ファルナ)があることによって起こる現象。だが御主は一度死に、妾が無理やり下界に蘇生させたことによって肉体と魂が正常に結びついておらん。そんな御主が成長を望める訳がなかろう」

 

「分かっていますよ。ただの独り言です」

 

そう言って服を着る。

だが何時もと同じなのはここ迄で、更に上から鎧を着用しては愛刀を腰にぶら下げた。

本来なら主神であるネフティスに夕食を用意するなり、暇潰しに書物を読み漁る姿を見せる筈である故に率直な疑問を投げ掛けた。

 

「またダンジョンに潜るのか?」

 

「ええ。今日の分の『食事』を出来ていませんから」

 

「そうか。妾を一人にさせぬよう、存分に喰らってくるが良い。それとあまり遅くならんように。腹が空いて叶わんからな」

 

人を食ったような笑みに、何時もと変わらない態度。然しそれがどうにも嫌いになれず、男は『行ってきます』と少し呆れながらも建物から出る。

 

「……太陽が眩しいな」

 

目を細めてフードを被る。

幾分かマシになった状態で歩みを強め、気分良くオラリオの中心へと向かっていった。

 

 

その男の名はライエル・クレイン。

現ネフティスファミリアに所属するLv5の冒険者。

かつては『炎帝』として恐れられた、アストレアファミリアの元幹部である。




明日は投稿できないので更新。
ここらでペースが落ちると思います。

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