「ほう?そのような場所が存在するとは。世も末よな」
女の声が辺りに響く。
ところどころに
――――。
「そうであろうな。でなければ、御主が妾の元に来ることは叶わんからの」
そういって女は微笑みを浮かべて脚を組んだ。色白で、世間では
「ふふっ、興味本位に試してみたが中々に悪くなさそうよな。すまんの、ここ数十年は暇をしておったのだ。許せ。……して、御主は何を思う?」
――――?
「勘違いするでない。妾は単に、面白い話をした久方ぶりの客人に礼をしようというだけよ」
女の目は鋭い。
だけに限らず、声、雰囲気、振る舞いが全て異なっていた。暗に嘘は許さないとでも言いたいのであろう。
――――。
「……それで、良いのだな?」
ふいに『ソレ』は揺らめきを抑える。
騎士が誓いを立てるように示した所作が女を満足させたのか、
「何をしておる、付いて参れ。条件有りではあるが、御主と契約をしてやろう」
不思議そうに留まる『ソレ』を優しく叱りつけながらも歩く。先には装飾の施された大きな扉があり、女の目が向けられている事から目的地がそこなのは明らかであった。
「妾も最近は退屈しておったのだ。昔と違ってここに来る骨のある者達も減っていく一方であったしの。であるが故に、この機を逃す術はあるまい」
なんとも自分勝手な言い分を垂れ流す女の後ろを『ソレ』は追いかける。
「確か下界では神々が子を持ち、それらを一つに纏めたものをファミリアと呼ぶのであったな。ならば妾もそれに準じ、ここにファミリアを創ると宣言しようではないか」
優雅な足取り。
その魅力的な身体に纏わる美しいドレスも相成って、それはまるで一つの高価な絵画のようである。
そしてあっと言う間に扉の前に立つと――。
「ネフティスファミリア。それが下界に降りた際に名乗るファミリアの名よ。さあ、魂の救済を行う妾の最初で最期の僕となれ。哀れで愛らしい元人間よ」
不遜に、冥府の女神ネフティスは言って扉を開け放った。
ダンまちが書きたくて書いた。
かなり思いつきなので更新は遅めです。
そんな作品ですが、お付き合い頂ければ幸いです。