シルヴァリオグランドオーダー   作:マリスビリ-・アニムスフィア

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序章 特異点A 極点英雄聖戦 アドラー 6

 さあ、英雄譚(グランドオーダー)を始めよう。

 かつての英雄譚(ティタノマキア)を超越し、新たな光となるために。

 

「創生せよ、天に描いた星辰を――我らは煌く流れ星!」

 

 発動する星辰光(アステリズム)

 遍く世界を焼いた浄化の光を身に纏い、天頂神へと挑む。

 輝ける放射性分裂光(ガンマレイ)浄化焼却光帯(グランドオーダー)が激突する。

 臨界点突破。超次元にまで響くかのような激震は、その通りに遥か彼方のカルデアにまで到達した。

 

 しかし、唾競り合うだけで、不利なのはこちらだ。なぜならば、相手はまさしく致死の光。黄金光は、触れるだけで掠るだけで、細胞に、遺伝子に、この肉体に致命的なまでの損傷を与えていく。

 その激痛は、ただの光の帯による灼熱に耐えるよりも難しい。だが、その全てを、胆力で耐える。身体を崩壊させる破壊光の影響は、気合いで、剣戟の傷は根性で。

 正しく光の英雄らしく、意志力でもってしのぎを削る。

 

「なるほど。その光、まさしく世界を焼いた(創り出した)神の光か。凄まじいものだ。だが――」

 

 ただ熱いだけの光(・・・・・・)など英雄が頓着するものではない。

 

「だったらァ!!」

 

 更に出力を上昇させる。こちらはただの光を束ねた光帯である。■■■分の熱量であろうとも、光の英雄にとっては遠い。

 彼は聖戦として輝ける恒星との戦いを想定しているのだ。鋼の恒星に焼き尽くされることなど想定済み。皮膚が融解するのを意志力でねじ伏せ、身体を動かす。

 身体の大部分に重度の火傷、いや炭化しようとも構うものか。本来は消滅するところを気合いと根性で身体を繋ぎ止めて、剣を振るう。

 だから、俺は出力をあげて消滅させようとする。

 

「ならばこちらも上げるのみ」

 

 互いに連鎖爆発が如く覚醒して、出力を上昇させ続けていく。相手が上回れば、またそれを上回り、際限なく、際限なく、際限なく。

 

 至近の間合いにて衝突する両者。両者は互角のように見えるが、その差は大きい。

 資質として勝っているのは後塵である俺である。操縦性を除いて全資質が高い。付属性は特に高いものがあり、それだけに、光帯の出力を際限なく上昇させてもなおアダマンタイトは悲鳴をあげない。

 逆にヴァルゼライドは、集束性と付属性に特化している。出力もこちらと同等であるならば、あとはもう相性ということになる。

 

 資質の相性。

 そう、この場合、強いのはヴァルゼライドだった。星辰光(ほし)の強度が、あちらの方が数段も上なのである。

 よって、強度においてヴァルゼライドに軍配が上がる。鍔迫り合いをしたところで、相手と同じ土俵で戦う限り、俺に勝ち目などありはしない。

 

 だが――星の性質が、それを赦さない。

 まるで、運命が正面からぶつかれと言わんばかりに互いの星は似通っている。

 世界を焼いた灼熱の光帯と旧暦において世界を焼けるとされた放射性分裂光。それをどちらも互いの得物に付与しての剣戟の応酬。

 ならば、拡散性で勝るこちらが遠距離攻撃に徹するか? 

 ――否だ。

 

 そんなもの英雄には通じないという信頼があった。光帯を束ねた放射光(ビーム)であろうとも、鋼の英雄は乗り越える。

 何より、こんな雄々しい男を前にして、遠距離で戦う? それが有利だから? 片腹痛い。そんな弱気の男にどうして、次の英雄譚が描けようか。

 英雄とは常に雄々しく前進する存在なれば、例え不利であろうとも、正面から挑むのみ。

 

「その意気や良し。来い新鋭よ。貴様の信念が本物であるならば、この俺を乗り越えていくが良い。だが、勝つのは俺だ」

「いいや、俺だ!」

 

 自分がどうして、この男とこんなにも競っているのか、この衝動はどこから来るものなのかわからずに、俺はただ戦い続ける。

 剣戟の応酬。互いに破滅の光を身に纏い、剣技の全てをぶつけ合う。劣るのはこちら。手数も技量も劣っている。

 

「――ッ、まだ!」

 

 覚醒の余波でセントラルは吹き飛んで、いつの間にか周りは更地と化している。

 もはや余人の介在する余地を完全に失って、英雄譚の激突は更なる深度をもって繰り広げられる。

 役者を変えて、聖戦はここに成れり。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「くぁぁあ――」

 

 不可視の斬撃が、打撃が、衝撃が、マシュを蹂躙する。空間そのものに殴られているかのような感覚、されど、光の使徒はこの程度では諦めない。

 だが、気合いと根性で突破を試みようとも、その全ては封殺されている。なぜならば、相手も光を奉じる光の信奉者なれば、気合いと根性は備えているからだ。

 

 何より、ギルベルトという人間の天稟は、凄まじい。努力値もまたヴァルぜライドに匹敵する。順当に高資質。かつて、この場でヴァルゼライドと戦った際、数日前に強化処理を施されたというのに、あのヴァルゼライドに肉薄し、一部では圧倒していた事実を鑑みれば、ヴァルゼライドに劣るマシュ・キリエライトでは、この結果は当然であった。

 

「ふむ、これが人造英星(デミ・サーヴァント)というものか」

 

 音速を超えつつある戦闘速度に対して、審判者はその思考を他に割く余裕すら持っていた。さらに言えば、彼は一歩も、戦闘開始地点から動いていない。

 計算された攻撃、ち密な迎撃行動。さらに己の星を十全に扱い、形成された楽園は、もはやそこに至れぬもの何人たりとも通さない。

 通りたくば流れ星ではなく、恒星となるが良い。それこそが、極楽浄土(エリュシオン)の主たる白夜の審判者の願いなのだから。

 

「どうやら我々とは資質の振り分け基準が異なるようだ。君の場合、確かに劣等に属する資質ではあるが、桁が違う。

 英星とは、事実極晃星からその太源を現世に引きずり出した姿。もっとも本質的であり、極晃星そのもの。特異点が人の形をしているのと同義だ」

 

 彼は戦闘中にあってなお、目の前の存在をつまびらかにしていく。英星、人造英星。彼の眼は、その裏にある黒幕が有する真なる目的にまで手を伸ばそうとしていた。

 全ては、彼の理想の為に。何より、英星というシステムを用いれば閣下を復活させることも可能。アドラーが失った英雄譚を再び始めることができるのだ。

 

 その性能、その機構、実に素晴らしい。世界は未だ広く、努力し前人未踏に到達する人類のなんと素晴らしきことか。

 何より驚くべきは、英星の現界に必要とされる天星奏者(マスター)との感応接続(リンク)現象だ。深いところで繋がった両者は互いに影響を与え合っている。

 

 たとえば、相手の出力が増大すれば、こちらもまた増大する。覚醒が波及し、連鎖覚醒、相互進化を成すのだ。

 

「ごふっ――」

 

 その覚醒速度は、ヴァルゼライドと戦っているリツカという極限の敵との闘いによって凄まじいほどの高まりを見せている。

 その覚醒に合わせて、マシュもまた同時に覚醒している言えば、相乗覚醒となり、その進化の度合いはギルベルトを容易く振り切っていく。

 

「素晴らしい。つまり、私が閣下を呼び出したならば。私は閣下とつながることができるということだな」

 

 光と光の超融合。

 自分とヴァルゼライドであれば、他の追随を赦さぬものになるだろう。閣下が言っている自覚せよという意味もまたわかる可能性もある。

 真に閣下と同じ存在になるのならば、それほど素晴らしいことはないだろう。なぜならば――。

 

「もしそんなことが可能ならば、世界はどれほど素晴らしいことになるか!」

 

 まさしくそれは、ギルベルトが望む楽園に他ならない。天に輝く恒星(ヴァルゼライド)だけがある世界。天頂神の世界に他ならない。

 悪などいない。勝利者しかいない。それならば、かつてヴァルゼライドが語った己の欠点による世界の滅びなどおきない。

 

「さらに人造英星だ。ヴァルゼライド閣下の人造英星を作ったのならば、まさしくヴァルゼライド閣下と一つになれる。私はヴァルゼライド閣下であり、私になれるのだ。世界は、更なる躍進を以て前進し、人類から悪徳は消え去り、理想の新世界が訪れる」

 

 恍惚に告げるギルベルト。そのことにどんな意味があるかなど、決まっている。全てはヴァルゼライドのような人間の為に。

 ギルベルトはヴァルゼライドのような人間にこそ報われてほしいと望んでいるのだから。その想いは、何も色褪せてはいないのだ。

 あの日、あの時、この場所でヴァルゼライドに語った言葉に嘘偽りなどありはしない。全ては報われない勝利者の為に。

 

「あなたは――!」

 

 光の信奉者。異なる英雄譚を奉じるマシュは、その考えが危険であると看過した。同じ光に属する者として、その考えには同調しやすい。

 だからこそ、浮き彫りになるのは同じ部分ではなく差異だ。

 

 ヴァルゼライド閣下と同調して増やす? そんなことをすればどうなるのか、光の使徒一年生のマシュ・キリエライトは、理解する。

 まだまともな領域にいる彼女であれば、その危険性がどのようなものかわかる。実際に人造英星などというものになっているのだから、より顕著に彼が行うことがどういうことになるかわかっている。

 

 気合いと根性があれば、耐えられるが、そうでなければ死に至る。何より、この人造英星も資質が重要なのだ。それは後天的に付与できるものではなく、先天的。

 マシュ・キリエライトという調整された、それ専用に生み出されたオリハルコン調整素体(ホムンクルス)でなければ、到底人造英星など成功するはずもない。

 

「気合いと根性で耐えればいい。調整された? ああ、そうだろう。ならば、後天的に調整すればいい。ヴァルゼライド閣下ならできる」

「確かにできるでしょう。ですが、その手法もわからないのにどうするのですか」

「実験すればいいだろう。君という成功例がいるのだから、君を解析すれば、その手法はおのずと明らかになる。不可能ではないし、ヴァルゼライド閣下ならやるぞ」

「それでどれほどの人が犠牲になってでも、ですか」

「無論。それで世界が救われるのならば。安心すると良い、被験者になるのはまず我々だ。我々ができるのだ、他の者に出来ない道理はあるまい。真実、私ができるのならヴァルゼライド閣下なら当然できるだろう」

 

 人類最高峰の人間たちが実験に成功したというのなら、当然余人にはできない。だが、光の亡者はそれが理解できない。

 なぜならば、人類最高峰(ヴァルゼライド)の真実は、スラム街の劣等なのだから。

 

 ならば、彼ができたのならば、余人に出来ないはずはない。出来る。そう思えば何も不可能などありはしないのだ。

 

「ああ、素晴らしきかな天文台(カルデア)よ。その躍進が、この世界を楽園(エリュシオン)へと変えるのだ!」

 

 審判者の歓喜が特異点へと響き渡る。どこまでも自分本位の理想は、されどそれゆえに――強い。

 

 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

「相変わらずむちゃくちゃやりやがる光の亡者どもめ」

 

 特異点の向こう側。

 冥王の極晃星における銀月の海にて、その存在は慟哭(なげき)を吐き捨てる。

 狼の面貌をつけた、超常存在。かつて、古都プラーガに現れた冥府の番犬が、ここに再臨を果たしていた。それは、人理という歴史の石積みが崩れ去ってばらばらになってしまったゆえの間隙を利用した再誕であった。

 何よりあちら側から接触があったゆえに、こうして再び滅奏の使者は蘇った。

 

「こうならない為に、滅奏を繋げてたってのに」

 

 相性の悪い光側の接触を、この光の亡者どもを滅奏する(ほろぼす)ために、極晃星を軋ませてまで無理に貸し出した反星辰体。

 それでもって、星辰体炉心(せいはい)を抑え込み、光の亡者どもに対する鬼札として、相手を滅ぼす心づもりであったが。

 

 真なる逆襲劇の継承者がいない為に、その試みは失敗に終わる。

 何より問題だったのは、今回行ったことすら黒幕からすれば想定通りだったということ。光と闇のぶつかり合いは聖戦の再現となり、より原形をとどめた雷霆(ケラウノス)審判者(ラダマンテュス)の召喚に成功させてしまった。

 

 あれらは破格の星であり、光の使徒なればこそ、召喚難易度は1%ほどだ。如何に、特異点をアドラーにすることに召喚されやすくなっているとは言えど、これほどまで完璧に召喚されるなどありえない。

 光は光では止められない。光は互いに影響を及ぼしあいより強い光になるだけだ。アレを止めることができるのは、闇の滅奏か、光でも闇でもない灰の界奏くらいのものだろう。

 

 だが、しかし――。

 

「こちらは出ることができないか」

 

 あちらに残されていた英星の縁は既にない。アーサー王も、アーチャーも既に特異点から離脱している。こうなってしまえば、いかに滅奏であったとしても手出しできない。

 目の前で逆襲すべき英雄譚(ヒカリ)が増大していく様を見ているしかできない。

 

 だからこそ、思うのは

 

「全ては、新しい英雄譚次第か」

 

 業腹ではあるが、今はそれしかないのだ。

 

 全ての運命は、新たな英雄に託されている。

 




ギルベルトの暴走がとらまらねぇ……。

最後の狼が言っていたことをFGOに例えると。
ヴァルゼライド閣下星5
ギルベルト星5
それが一回の十連ガチャで五枚ずつ出ちゃったのが、今回の状況です

アドラーピックアップのくせに、ピックアップされてないギルベルトがすり抜けてきて、ピックアップされてるはずのチトセネキは全力で召喚拒否というかフレンドガチャの底に紛れ込んでる星0のゼファーさんの尻を追ってる。

アドラーピックアップ
星5ヴァルゼライド
星5カグツチ
星4チトセ
星4サヤ
星3パチモンアマツ

え、マルスさん? マルスさんは二章でピックアップです

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