シルヴァリオグランドオーダー 作:マリスビリ-・アニムスフィア
「何をやっているんだい、ゼファー、似合わな過ぎだろ。君、そんなキャラだったっけ」
遠ざかっていく冥狼を見ながらルシードはそう一人、ごちていた。まさかまさか、かつての親友と再会などという事態になるとは思いもしなかったわけである。
いや、アレが親友だと気が付けるのはさすがであるが、あまり難しいものでもない。頑張って威厳を出そうとしているのかもしれないが、端々から香る、めどくせー、働きたくねぇー、などといった無職オーラは誤魔化すことは不可能。
何よりあの滅奏の輝きだ。生まれる瞬間をルシードは見ているわけで見間違えるわけもないだろう。だからこそ、あの意味不明な恰好とかには色々とツッコミたいわけで。
などとルシードが思っている間に、リツカは、新たに現れた英星と話をしていた。
「あの、助けていただきありがとうございます」
「まあ、良いのよ。助けるのは当たり前だもの。私はマリー。マリー・アントワネットよ。で、こちらがアマデウス」
「よろしくね」
「リツカです。こっちはオレの英星のマシュで、ジャンヌさん」
「よろしくお願いします」
「まあ、貴女可愛いわ」
「あ、ありがとうございます」
「で、そっちの人が、新しく召喚された英星なんだけど」
「ああ、僕か。僕はルシード・グランセニック。なんだってこんなところに召喚されちゃったのかわからないけど、一応英星だね。でも、僕は戦う気はないよ。ここには麗しの花もいないし、君に召喚されたとは言え僕はあまり戦いたくないからね」
麗しの花?
「まあ、それは仕方ないし、とりあえず今は体勢を整えたい」
『やーやー、ダ・ヴィンチちゃんだよー。話は聞かせてもらった。そこに丁度良い森があるからそこで休むと良い。そこには敵はいないようだ』
「ありがとうダ・ヴィンチちゃん」
ダ・ヴィンチちゃんの言葉通り、森があり、ひとまず安全な野営地を確保する。どこから敵が来るかわからない為、火は使えないが、ひとまず休める。
そうなると全身の疲労を認識するし、何より傷も深い。
「ジャンヌさんは大丈夫ですか?」
「ええ、私は大丈夫です。貴方方の方が、怪我としては酷いかもしれません。なにより私は英星ですから」
「ジークフリートさんは?」
「問題ない」
「マシュ?」
「はい、大丈夫です。先輩こそ、大丈夫ですか?」
「オレも大丈夫。ひとまず休めばなんとかなるよ」
「それはよかったわ。それなら、ここは皆さんで情報交換をいたしましょう?」
「そうですね。情報はなによりも大事です。我々はこの時代に疎いので、どうすればこの時代を修復できるのか、そのヒントになります」
まずは現状の確認。それが何よりも肝要であった。未だ、自分たちは、この特異点に来たばかり。何かを知る前に戦闘に巻き込まれてしまった。
よって、改めて現状の確認が必要だった。今のままでは、この特異点を修復するということすら不可能。
「では、私から話しましょう」
ジャンヌさんから話し始める。急務は情報の確認と把握。誰がどの程度の情報を得ているのか、何がわかっていないのか。
これからともに戦うのか、それとも別れるにしろ、少なくともここにいるメンバーは共通の敵、強欲竜団を相手にする。
そのためにも、まずは現状の把握が必要だった。特に、オレやマシュはこの時代のことに疎い。新暦人にとって旧暦の歴史というものは、初耳のことなのだ。
わずかに伝わっている事柄以外、何一つ知らないまっさらな状態。説明は受けたが、ここでもう一度確認することで、より理解を深めるのだ。
まず、全ての元凶について。
それは竜の魔女と呼ばれるもうひとりのジャンヌ・ダルク。
どういうわけかこの時代には二人のジャンヌ・ダルクが存在している。英星システム的には、どうやらあり得ることらしいが、それはおかしいのだというのは本人だった。
竜の魔女は復讐を口にしている。何もかもを殺しつくし、このフランスを殺しつくす。その証拠に、己を火刑に処したピエールなる人物を殺しているらしい。
だが、本人が言うには、復讐心など何一つ持ち合わせていないのだ。だからこそ、彼女には、あの自分が、自分ではないように、誰なのかわからないのだという。
最悪なのは、その竜の魔女がファヴニル・ダインスレイフを召喚し、強欲竜団によってこの時代を蹂躙しているということだ。
もはや、この時代に無事な場所などありはしない。
当然だろう。人間では強欲竜団には敵わない。アレは並の星辰奏者ですら苦戦するほどの難敵なのだ。それが今やその首魁である滅亡剣が英星となり、強欲竜団自体が
その危険度は、かつて古都プラーガを含むアドラー帝国東部戦線にて蹂躙劇を斬り広げていた頃よりもはるかに高い。
それ自体が極小の小惑星なのだ。一つ一つは、星辰奏者に及ばずとも数が多く何より死を恐れない。そこそこの質に量を加え、圧倒的質を蹂躙する。
何より彼らは、戦いなれている。星辰奏者との闘いに、英星との闘いに。多数で一を蹂躙することに慣れている。その戦略、戦術も合わさって最悪極まりない、群体にして一つの生物となっているのだ。
彼は旧暦の存在ではないため、まず間違いなくこの特異点の歴史を歪めている者であり、討伐対象だ。
さらに五騎の英星たちの存在。さらに増えている可能性すらある。彼らもまた、この時代の存在ではないため、討伐対象である。
巨大な亀のような竜を連れた女性に、槍をもった貴族然とした男、拷問器具を武器とする女、莫大な出力に滅奏を乗せる弓兵の女に、あらゆるものを武器とする狂乱した騎士。
誰も彼も一騎当千の英星だった。
こうやって上げ連ねていくだけでも、戦力差は莫大であり、厳しいことこの上ない。
問題は、やるべきことがそいつらの打倒という事。
原因は十中八九竜の魔女であり、この特異点を特異点足らしめている存在に間違いない。
だからこそ、それを倒して聖杯を回収することが任務になるのだが――。
「それをするには、何もかもが足りない」
こちらの戦力は、マシュ、ジャンヌ、ジークフリート、マリー、アマデウス、オレ。ルシードはせっかく召喚されたが戦う気がない。
――彼の戦いはまた別にある。
ゲーティアがそういうのならば、ルシードを攻めるわけにもいかないだろう。それに、戦いたくないのなら戦わない方がいいのだ。
絶対に。
「そうなると、各個撃破しかないか」
敵の戦力を個別に襲撃して減らしていき、全ての元凶が座主であろうオルレアンをめざす。ゲリラ作戦。
「あるいは、敵の首魁を狙うか」
もしくは、戦力差が大きく、こちらの戦力が少ないのならば、やるべきことは暗殺だ。誰にも気が付かれないように潜入し、竜の魔女を倒す。
しかし、問題はダインスレイフだ。あの男が、早々簡単に暗殺を赦すはずもない。
「困ったわねぇ。アマデウスなにか良い案はないかしら?」
「んー、とりあえず、寝たらどうだい? 今考えても無駄なら考えない。明日考えよう」
「まあ、駄目な人の典型的な考え方よ」
「当然だとも。なにせ、僕は音楽以外駄目な人間だからね」
「でも、アマデウスに賛成よ。皆さんお疲れだから、明日また考えましょう? 特にマスターは、疲れているでしょう?」
「確かにすこしは」
ならば休まなければというマリー王妃の言葉で、今日はここまでにして休むことになった。野宿である。暗がりの中、眠ることになる。
見張りはジークフリートがやってくれるという。なにより、英星ならばねむらなくとも問題にはならない。
――ゲーティア。
――なんだ、マスター。
――どうすればいいと思う。
眠り、自らの内にいるゲーティアへと話しかける。
――やるしかあるまい。我らには退くという選択肢が遺されていない。しかし、戦力差は大きい。ならば、敵を各個撃破しつつ、戦力を探すほかあるまい。
――まだ、この特異点に英星がいるってこと?
――無論だ。人理とは、そういうものだ。必ず戻ろうとする力が存在する。人類を存続させようとする意志がな。
ゆえに、この特異点にはまだ、こちらの味方になってくれるサーヴァントがいるはずであるとゲーティアは言った。
それならば希望が持てる。こちらも英星をそろえれば、より多く出来ることが広がる。
今のままでは満足に強欲竜団と戦う事も出来ない。戦力差が大きすぎるのだ。
ならばそれを縮めることが肝要。少なくとも、寝る前に聞いたマリーたちの話を思い出す。
「私たちの情報が役に立ちそうよ」
マリーさんたちは、このフランスを巡ってきたという。あの硝子の馬車で巡った。どこもかしこも地獄であったことに変化はありはしないが、それでも数少ない生存者たちと遭遇し、少なくない情報を仕入れて来た。
それは英星の情報。
「人が多く集まる場所には英星がいるようなのです」
「なるほど、竜の魔女に召喚されたわけではない英星であるならば、未だどちらの陣営にもついていないということ。そうであるならば、彼らは襲ってくる敵を迎撃する」
戦闘も起きるが、自分たちで逃げるよりも英星の近くにいる方がマシということなのだろう。
「…………」
どのような英星がいるのかはわからないが、ゲーティアがいうには、この特異点を救うに適した英星が召喚されるのだという。
ならば、あとは敵よりも早く英星をみつけること。これが何よりも重要だ。幸いなことに移動手段としてマリーさんが馬車を持っている。彼女の力で創り出されたそれを使えば、素早く移動が可能だ。
ならば、あとはカルデアに頼るしかない。カルデアは、ある程度の範囲にいる英星を探り当てることができる。英星はその成り立ちゆえに強く星辰体と感応している。
それを観測すれば、おのずと居場所はわかるということだ。
◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「いいわね、あいつが寝ている間に、特異点にいる英星の居場所を割りだすのよ!」
オルガマリーの一声で、職員たちが仕事に取り掛かる。
やっていることは、特異点より送られてくるデータの可視化とそれによる英星の居場所の算出であった。一つの世界を観測し、それを形にするのは旧暦の大型演算装置が必要になるが、半導体技術が失われた新暦にそんなものなどあるはずもない。
ゆえに、才能、気合いと根性で職員たちは、莫大な計算をこなしていく。全ては世界を救うために。誰も、きついなどという言葉は使わない。
かつての英雄が如く、誰もが
だが、そうだからこそ彼らは奮起する。それだけが自分に出来ることであるからだ。
「レフ、シバの調整はどう?」
「ああ、今丁度特異点に合わせた調整が済んだところだ。時間がかかってすまない」
「いいわ。いきなり旧暦だもの。これからもっと深度が深くなるはずよ。その時に困らないように、もっと細かい調整をしておいて」
「わかっているよオルガ」
「それなら、一度休んでくれませんかね、副所長もレフ教授も」
「やあ、ロマニ。君が管制室に来るなんて珍しいね」
「カルデアに閉じ込められたんだ、メンタルケアに走り回っていたんだよ。でも、ここ最近はそういうことも少なくなった。やるべきことが出来たからかな」
人間やるべきことがあれば、必死になる。それが世界の為だというお題目があるのならば、誰もが奮起するのは当然だった。
そういう人間ばかりが、ここには集められているからだ。誰もがあの鮮烈な光を忘れていない。
かつてアドラーにて起きた
かつて古都プラーガにて起きた騒乱を生き延びた人々もここにいる。
誰もがあの戦乱の中で光を見た。
それは、鮮烈な光であった。それに心打たれた者は多い。
「ロマニ、私たちが休めるわけないでしょ」
「それはわかってますよ。リツカ君の存在証明をし続けなければ、特異点に呑み込まれてしまいますからね。でも、所長やレフ教授が倒れたら元も子もないでしょう」
「ふっふっふ、そういう時の私なーのさ」
管制室に現れたのはさらに珍しい人物だった。
「レオナルド・ダ・ヴィンチ」
「かたいかたい。そこはもっと心を籠めて、ダ・ヴィンチちゃんと呼んでくれても良いのだよ」
「いえいえ、店長それは無理ですって」
「ムリムリ。だって、店長元男ですし」
「元男にちゃんづけは、結構厳しいですって」
「はいはい、双子は、さっさと仕事にとりかかる」
「ラジャー」
「了解です」
双子は、計算を行っている職員たちのところへ向かっていった。
「……それで。何しに来たのかしら」
「なに、みんな頑張っている中ダ・ヴィンチちゃんだけ工房にひきこもっているわけにもいかないのさー。そういうわけで、少しばかり計算機を創ったりしてきたところさ」
双子が何やら組み立てを行っている。それは、階差機関。いいや、それをさらに発展させた解析機関だ。
「バベッジ卿に怒られそうだけど、まあ、そこはそれ。機械式コンピュータ。新暦は機械の抵抗がないからね、半導体なしに色々な計算を行うにには、これが必要だろう?」
そう、戦っているのはマスターだけでない。カルデアもまた、戦っている。
ゆえに――。
「ああ、任せたまえ。かならずや、君たちの頑張りが無駄になどならないようにする。誰もが幸せな世界を創ってやるとも」
人知れず、マリスビリーは作業を続けるのであった――。
遅くなったが更新です。
とりあえず、詠唱と能力考えないとなぁ。
シルヴァリオグランドオーダー 夏イベ。
夏だ、海だ、水着だ!
配布は水着アッシュ。
というわけで、水着英星ピックアップ1
星5水着総統閣下(競泳水着)
星4水着糞眼鏡 (ブーメラン)
星4水着滅亡剣(パーカー黒竜水着)
星4水着レイン(パレオかわゆい水着)
ピックアップ2
星5水着ガラハッド《ブーメラン》
星4水着ミステル(正統派)
星4水着アヤ (なんかすごい)
星4水着ティナ&ティセ(スケスケ)