けいおん! LOVE!LOVE!LIVE!   作:伝説・改

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#1「出会いと再会と-軽音楽部入部(1)-」

クラスの振り分け表を見た俺と平沢は、早速1年間お世話になる教室へと向かう。

中に入ると、まあもちろん知らない顔ばかりで。

 

「あ、和(のどか)ちゃん!」

 

一方平沢は知り合いがいたようです。俺を置いて彼女は知り合いらしきその人のところへ行く。

 

「良かったー!同じクラスだねー!」

 

「ふふ、そうね。まさかまた一緒になるとは思わなかったわ」

 

「だねー。いやーこれで1年生は安泰だよー」

 

「あら、もう友達ができたの?」

 

「うん!ほらほら、りょうくんこっちこっち!」

 

自分の席に座ろうとした直後にまさかのご指名がかかったため、ちょっと困惑しながら彼女の方へ向かう。

 

「日暮遼祐くん!さっき池に落ちそうになった時に助けてくれたんだー」

 

「落ちそうになった!?……あんた、入学早々、いきなりやらかしたのね……」

 

頭を抱えた『和ちゃん』は申し訳なさそうにこちらを見る。赤い眼鏡をかけた真面目でしっかりしてそうな子だった。

 

「ごめんなさい、唯が迷惑をかけて」

 

「いやいや、迷惑なんて思ってないって。まあびっくりしたのは確かだけど」

 

「ならよかった。……真鍋和よ。よろしくね、日暮くん」

 

「こちらこそ」

 

なるほど、平沢の池に落ちそうになったアレは平常運転なのかもしれない。

となると、彼女が今日こうして五体満足でいられるのは目の前の真鍋や周りの人のおかげなのだろう。平沢は運が良いのか良くないのかわからない子である。

ちょうどそのタイミングで担任の先生らしき人物が教室に入ってくる。先ほどまで話に花を咲かせていたクラスメイト達は自らの席に戻る。それに混じって、俺たちも解散となった。とは言っても、あいうえお順で席が指定されているため俺の後ろの席には平沢が座っているのだが。

入学式の段取りを説明されたのち、段取り通りに行われた退屈な入学式を終え、教室に戻ると今度は軽い自己紹介をする事になった。

興味を引こうと頭のおかしい所謂『事故紹介』をするやつも現れず、何事もなく終わると思っていた。のだが。

 

「門村浩史です。えっと、陸上部に入りたいと思ってます。1年間よろしくお願いします」

 

「門村、浩史……?」

 

底に眠っていた記憶が、ふと呼び覚まされる。

確かにあそこで自己紹介をしている彼は、見覚えのある姿をしていた。

各自の自己紹介タイムを終えて本日の日程が終了した直後。席を立って、彼の席へと向かう。

 

「あの、ひ……門村」

 

「ん?どうしーー」

 

俺の顔を見た途端、彼の表情が変わる。

ああ、間違いない。

 

「もしかして、遼祐?」

 

「お、おう!やっぱり浩史だよな!」

 

門村浩史。小学校1年生から6年生の途中までずっと同じクラスで、いつも一緒に遊んでいた所謂幼馴染という奴。自分で言うのは恥ずかしいが、『心の友』的なものである。

 

「懐かしいなあ、6年の時に転校しちまって、結局連絡無かったからさ」

 

「あー。まあ、色々あったからねー」

 

「ま、しゃーないよな。にしても、まさかこっちに帰ってくる事になるなんて想像もしなかったよ」

 

「家の都合でね。とりあえず僕だけこっちで住む事になったんだ」

 

「丁度いいや、俺も前の中学の知り合いがいなくてさ」

 

「またよろしく、遼祐」

 

「おう」

 

まさかの旧友との再会に心を躍らせていた時だった。

 

「りょうくんりょうくん、帰ろ!」

 

平沢唯襲来。決して嫌なわけではないが、やっぱりこの距離感はまだ慣れない。

 

「あー悪い。この後用があってさ。また今度な」

 

「うぅ、残念。じゃあまたね〜」

 

バイバイと手を振られ、平沢は真鍋と2人で教室を後にした。

 

「もう女の子と仲良くなったんだ、早いなー」

 

「向こうが懐っこいだけだよ。それよりこの後時間あるか?折角だしどっかでゆっくり話でもしようぜ」

 

「じゃあ、うちに来なよ。一人暮らしだから気兼ねしなくていいよ」

 

「わかった。んじゃ、行こうぜ」

 

俺たちは鞄持ち、2人で教室を出た。

その後帰路から浩史の家まで話は尽きる事なく、久方ぶりの楽しい時間を過ごすことができた。

夕方になり、家に帰って夕飯の支度をしなければならない時間になったので惜しみながらも解散となり、家路に着いた。

 

「にしても」

 

色々あった一日だった。

高校の入学式、旧友との再会、懐っこい女子とその保護者登場と。立て続けのイベントに不満はないとはいえ流石に疲れた。

早く家に帰って夕飯を作って休もう。そう思いながら自宅のドアを開け、台所へ向かい、冷蔵庫を開けた。

 

 

「しまった、買い物するの忘れた」

 

 

 

 


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