友人帳の世界に転生しました!   作:まるくら

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二年ぶりの更新とかあっはっはっは、もうどんだけ間が開いても関係ないな……。


第11!

「し、死ぬかと思った……」

 

毛の塊に押しつぶされていた夏目も含めて、三人で荒くなった息を整えようと息を吸い込む。山を崩してわかったが、どうやら白毛玉の仲間っぽい奴らが重なって山になっていたようだ。押しつぶされてたのは夏目なのに、体力なさ過ぎて俺も死にそう。

 

「助けてくれてありがとうございます、名取さん。それと……この前会った時は、名前聞いてなかったよな」

「マコと呼んでくれ。あだ名のようなものだ」

「ああ。ありがとう、マコ」

 

ぐっイケメンの笑顔が眩しいっ!!あれてか、キラキラ発動系イケメン俳優と性格の良すぎる細身イケメン現役DKに挟まれた凡人俺の図。俺だけ作画コハエ〇スとかになってくれたりしない?じゃないと俺苦しくて死んじゃーう。

あっ顔布で見えないから関係ない?ってそんなことより。

 

「この毛玉達は……」

「道を歩いていたら突然後ろから転がってきたんだ。走って逃げたけど、追いつかれてこんなことに」

 

転がってって、なるほどそれでこいつら、揃いも揃ってうちの白毛玉に会った時みたく毛並みが乱れてるんだな。

 

「おい、白毛玉、」

『なんだ』

「うっわ怖っ!全員でこっち向くな!」

 

小さければいいってもんじゃない。大量の目が一斉にこっち向くとかどこのホラーだよ!

 

「お前らじゃなくて、うちの、」

「なかま」

「なかま」

「なかま」

 

一匹喋りだしたかと思えば、それに呼応するように他の毛玉達が言葉を繰り返す。いやこっわ!やっぱこれホラーだろ!催眠術をかけられて自我を失った果てに化け物の仲間にされるとかそういう系のホラーだろ!

 

「さいご」

「最後?」

 

毛玉達の言葉に困惑していると、頭の上に乗っていた白毛玉が跳ねて毛玉の塊の中へ飛び込んでしまった。

 

「さいご」

「さいご」

「やっと」

「やっと戻れる!」

 

毛玉達が歓喜する毎にバラバラに呟かれるその声が一つにまとまっていく。これあれだ。主人公が考えなしに行った行動が、巡り巡って敵に塩を送る形になって、敵が本来の力を取り戻す的なあるある展開だ!なんて考えているうちにうごめく毛玉達の境目がわからなくなっていき、四肢のある獣のような形を取り始めた。それもなかなかビッグサイズな。

 

「いや犬じゃね?」

 

真っ白くて、ふさふさの毛で、かなり大型な……これサモエドだあ。

 

「最後の一体を連れてきてくれたこと、感謝する。マコよ」

「え、あ、はい」

「茶色いのと黄色いの、実に美味かったぞ」

「ウインナーと玉子焼きって言ってくれないか」

「……玉子焼き美味かったぞ」

「さては横文字苦手だな?」

 

あ、目を逸らした。じゃない。さっきから何を口走ってるんだ俺は。いや気が動転してるだけなんだけど、それが、えー、あーっと、

 

「落ち着き給え友よ。私はこんななりをしているが、あまり力を持たない性質だ。怯える必要はない。言っただろう、お主には感謝しているのだ」

「感謝って、いったい何を」

「私には、大妖が休むうろを守るという役目があったのだ。誰に頼まれたのでもないが、小さきもの達が口々に不安を漏らすのが哀れで、この持て余す身体を小さきもの達の為に使ってやろうと思ってな。しかしどこから噂を聞き付けたのか、私の前に新参者と思しき払い屋がやってきたのだ。力をつけるために手練れの手助けを受けていたのだろう、やたらに力の強い術のかかった符を打ち込まれそうになって、元々力の弱い私は散り散りになって逃げたのだ。件の大妖は私と払い屋が争っているうちに逃げていたしな。ただ、散り散りに逃げたせいで上手く考えることも、上手く話すこともできなくなってしまって……長年募らせていた、夏目に会いたいという思いだけが私に残されていた。マコにだ会ったのはその最中のことだ。夏目の匂いを辿っていくうちに奇妙な匂いが混ざってきてな。気になってその匂いを辿ってみれば、その先にマコが居たのだ。人の形をして、人の匂いがするのに、何故だか妖の匂いもする。しかも、近づいてみれば私の姿が見えると来た。もともと夏目の匂いを追ってそこにたどり着いたのもあって、マコと共に居れば夏目に会えるやもしれぬと行動を共にすることにしたのだ。食わせてくれたういんなあや玉子焼きが美味かったのも理由の一つではあるが」

 

「それで、見事この通り夏目に会うことができたと」

「ああ。そして、運よく元の姿を取り戻すこともできた」

「名取さんに会いに行ったのは?」

「夏目の匂いがついていたから、関りがあるのだろうと思ってな」

「夏目に会いたいからと話しかけてきた妖は初めてだよ」

 

でしょうね。払い屋なんて危険性のある相手に態々話しかけに行くような妖なんてそういないだろうし。匂いが奇妙とかいう点においては、俺も危険性のある相手になるのだろうに、こいつ何の警戒心もなく飯をせびりに来たからな。かなり力が強いらしい双子ともすぐに仲良くなってたし。力はなくとも、なかなかに肝の座ったやつだ。

 

「さて、夏目殿」

「ああーそうだ、名取。お前に少し聞きたいことがあるんでこっちに来てくれないか」

「何かな」

 

夏目達の様子が見えないところまで名取さんを連れてくる。

危ね~、夏目が名取さんに友人帳のことを伝えているのかわからない以上、あいつの話を名取さんに聞かせるわけにはいかないからな。

 

「それで、聞きたいことって?」

「お前が夏目に隠して調べていることだ。夏目と生活圏が近い分、夏目がそれに関わらないよう配慮できることもあるだろう」

「それは助かるけど、何故君が?」

「守りたい者がいるのも、傷つけたくないと思うのも、妖も人もそう変わらんだろうさ」

 

まあ俺ほとんど人間だけど。

 

「……最近妙な妖がここら辺に現れたらしくてね。私も他の払い屋伝づてに聞いた話だし、噂が広まって払い屋が集まる前に私が何とかしたいんだ」

「妙な、というと?」

「強い妖を二体連れているらしい。鬼だとか言ったかな。あとは、人の匂いを纏っているだとか……」

「スゥー……」

 

俺じゃねーーーーか!!


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