修羅幼女の英雄譚   作:嵯峨崎 / 沙城流

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2 『曰く、状況把握は迅速に』

 人が消えた、屍が大勢伏せた戦後の大地にて。

 ソルフォート・エヌマは目を強く瞑った。

 かぶりを振り、長い白髪を大きく揺らす。気持ちの切り替えは大切だ。幼女になる、という常識にそぐわない状況下において、必須の技能だと言えた。

 理解しがたい現実に首を絞められつつ、嘆息。

 

「……やはり、夢ではないようじゃのう」

 

 混乱は、次第に落ち着いた。

 予想外の姿に変貌したものの、命を繋ぎ止めたことに違いはないのだ。元々、ソルフォートは難しく考えることが苦手である。いまの状況を「死ぬよりマシ」と受け入れることはできる。ちっぽけな身体のことも──英雄らしさを欠片も感じられないどころか、侮られそうなまであるが──我慢は可能だ。

 異性に変化したことに関しても、同じことだった。

 身体能力以外のことを問うつもりもない。

 なにせ、女と関わったのも何十年も前の話だ。

 いまや彼、いや彼女(・・)の唯一の関心事といえば『この身体がどの程度の実力を持っているか』のみだった。目指す憧れの方角は変わらない。ならば英雄に近づくための方法として、強さのほどが知りたかった。

 凡人の思考回路は、相変わらずの猪突猛進だった。

 

(身体能力は如何ほどじゃろうか)

 

 見目相応ならば、一も二もなく鍛錬し直したい。

 幼女の身空では、どれだけの鍛錬が可能かは疑問だが、一分一秒も無駄にできない。せっかく訪れた二度目の機会なのだ。この二度とない幸運を活かして、今度こそ英雄の座に手をかける。そのためには、従来に勝るほどの研鑽を、自らに強いなければならない。

 小さな手を開閉して、徐々に身体を動かしていく。

 身体を慣らす一環として、試しに走ってみる。

 

「……っあた」 

 

 ぼこぼことした地面に顔面から突っ込む。

 感覚が合わず、あえなくずっこけてしまった。

 ひりつく痛みが顔中を襲うも、彼女は「何のこれしき」と立ち上がる。この痛みも生きているからこそ感じるものだ。そう思えば、笑って受け入れられる。

 

(痛いもんは痛いんじゃがな……)

 

 以降も、身体の具合を確かめるため、その場で飛び跳ねたり、剣を振ったりと軽く動いてみた。終えてみての感想としては「驚くほど違和感がない」だった。

 当然ながら『元のソルフォートの身長や腕、脚の長さ』と『現在の身体』は全く異なる。そのせいで感覚がいまいち掴みづらかったものの、身体能力や技の冴えは幼女化以前と同程度のようだった。むしろ、視覚などの衰えていた五感、錆びつき始めていた身体能力は、身体自体が若返ったせいか向上してすらいた。

 彼女は猛烈に感動していた。

 想像以上だった。いままでの努力を引き継ぎ、なおも精進に励めるなど夢のようである。ただ、生前通りの力が発揮できる割に、身体に筋肉がついていない。

 その点については驚かなかった。

 

(きっと、わしの元の身体にあったオドを、この身体に移したんじゃろう。それだけでも無茶苦茶な話なのじゃが、それだけに留まるまい。まさか……わしの身体にあった筋肉も魔力に変換し、オドとしてこの身体に移しておるのか?)

 

 『魔力』は、身体能力に大きな影響を与える。

 基本的には、体内で保有する魔力量が多ければ多いほど、身体能力が高くなる。たとえば、走り込みや素振りなどで身体を鍛えれば、体内で生成される魔力──一般的にオドと呼ばれる魔力──が活性化し、筋肉がつくとともに、保有魔力が増えていく。

 簡潔に言えば、身体能力はオドの量、筋肉。薬品や魔術の効力によって左右される。筋肉もないような女子どもが、戦士を圧倒する膂力を持ち得る理由だ。ただ、身体を鍛えればオドも筋肉も増えるため、鍛錬を積んだ戦士を女子どもが圧倒することはそうない。

 ならば、彼の場合はどうだったのだろうか。

 人生を努力に費やしたソルフォート・エヌマ。オドが無制限に増加するのなら、彼は研鑽に研鑽を重ねていたのだから、オドも筋肉量も大量に持ち得たはず。

 だが、実際には、彼の体内魔力量は微々たるもの。

 以前の彼の身体能力の大半は、筋肉が担っていた。

 

(理由は、わしのオド上限が低かったからじゃが)

 

 個人差はあるが、身体には一種の天井がある。

 体内で生成されるオドを、体内に留めておく上限のことだ。これをオド上限と呼ぶ。単純な話、オド上限が低いほど、オド保有量は少なくなるわけだ。

 つまり鍛錬を積んで大量のオドを生成しても、受け皿の上限を超えてしまえば無意味。上限以上のオドは体外に発散されていく。コップに大量の水を注いだとしても、容量以上の水を保持できないことと同じだ。

 努力して伸びる天才か、努力しても伸びぬ凡才か。

 その分水嶺が、オド上限が引く一線だ。

 言うまでもなく、ソルフォートは後者だった。

 

(ただ、この幼い身体には筋肉がついておらん。オド上限がいくらか知らぬが、鍛えて筋肉を付ければ、そのぶん、老人だった頃の身体能力を超えるのは間違いない。上限の多寡は気になるところじゃが、そこはおいおい試す他あるまい)

 

 結論づけた、そのときだった。

 きゅるるる……と、妙に可愛らしい音色が鳴る。

 いままで夢中で身体の具合を確かめていた。

 ソルフォートは腹を擦りながら思う。

 

(腹が減ったのう)

 

 なにか胃に入れる物を探そうと、周囲を見渡した。

 だが、ここはすでに夜の帳が降りた戦場である。

 闇夜に満ちた平野を照らすのは、星月と衰えた火のみ。幼女の五感が鮮明ゆえに、蠅の羽音は耳障りに思え、血や臓物の異臭で鼻が曲がりそうだった。

 ここに長居はしたくない。そう思うのだが──。

 満天の星空の下で眺める戦場は、内実に反して、綺麗な光景に見えた。敗残者の屍が夜の暗幕で隠され、煌びやかな星だけが浮かんでいるからだろう。何にせよ、老人の身体では自慢の視力も近眼気味であり、こんな奇妙な心地になるのは初めてだった。

 もちろん、情感どうこうで腹は膨れない。

 早急に、腹拵えする方策を立てる必要がある。

 

(陣形後方の食糧庫は撤収……もしくは略奪か焼き討ちされとるじゃろうが……置いていった可能性も捨てきれん。ひとまず確認しに行き、命尽きた兵の保存食を漁りつつ、人のおる村を目指すこととしよう)

 

 時間が惜しい現状、狩猟の選択肢はない。

 周囲は焼け野原。

 まず生息域に行き、探し、調理──あまりに骨だ。

 

(食べられる植物……は、ほとんど判別できん。若いうちに勉強を怠るべきではなかったのう。……否、剣を振る時間を削るわけにもいかなかったのじゃ)

 

 ──ならば、後悔することもないだろう。

 ソルフォートは思い直し、立ち去る準備を始める。

 付近の屍の山々を巡り、死体を物色。

 小柄な男の脚絆と靴をかっぱらい、己の脚に通す。

 まさか戦場を素足で彷徨うわけにもいかない。足に傷口をつくらないためだった。だが、小柄とは言え、成人男性のサイズに幼女が合うはずもない。

 当然ブカブカだった。しかし、素足より断然いい。

 次に、細い腰に腰帯を巻きつけた。腰回りが短かすぎて、二周ほど巻いた。とりあえず、これで落ちることはないだろう。きつく締めた帯に吊り下げるのは、死体から剥ぎ取った携帯食料とダガー。

 鎧は諦めた。筋力的に問題はないが、元の所有者との体格差が激しすぎて、身体と鎧の隙間が空きすぎている。身動きもしずらく、装着する旨みがなかった。

 最後に、幼女は古びた愛用の剣を握る。

 傍から見れば、さぞ滑稽な姿だっただろう。

 だが、強い意志の宿る黄金色の瞳だけは──。

 老成した、戦士らしさを覗かせていた。

 

 

 

 ※※※※※※※※※※

 

 

 

 ──帝国歴二二〇年。

 大陸中央、やや西部に位置するマッターダリ地方。

 そこは、強国三つが火花を散らす激戦区だった。

 強国のうちひとつはガノール帝国。大陸東部の大部分を占めており、ソルフォートが最期に対峙した『人類最強』も所属する、大陸最大の国家である。現状、大陸すべての国家と敵対関係にあるという超大国だ。

 かくも広大な支配領域により、面する国家も多い。

 そして戦線もまた長い。帝国戦線で大陸を縦に割っている──という事実で推して知るべし。この、常識的に考えて防衛不可能とも思える戦線を、なんと持続するどころか、なおも広げ続けている。

 それだけ、帝国の誇る英雄たちと兵卒たちが、誰も彼も怪物揃いという証に他ならない。

 

(問題も多い国家ではあるがのう)

 

 その帝国と、正面から相対する強国はふたつ。

 苛烈な階級社会を形成するビエニス王国。

 そして、西部を支配するラプテノン王国だ。

 二ヶ国は同盟を結び、対帝国戦線を敷いている。ゆえに、この地方での戦と言えば、もっぱらビエニス・ラプテノン連合軍とガノール帝国の諍いである。

 他国から支援は受けるが、構図自体に変化はない。

 

(わしら傭兵たちの部隊は、この二ヶ国のうちラプテノン王国に雇われ、編成されておった)

 

 つまり凡人と『人類最強』が対峙した争乱は、例に漏れずビエニス・ラプテノン連合軍と帝国軍による野戦の一幕だったわけである。結果は帝国の完勝だ。

 生き延び続けてきた凡人が倒れたあと、連合軍と傭兵たちは壊滅状態に陥ったらしい。単純な負け戦だったが、最年長者の戦死は傭兵たちの士気に打撃を与えたようだった。当人は感じていなかったが、ソルフォートにも少なからず人望があったのかもしれない。

 そう思えるほどの潰走ぶりだった、とのことだ。

 ただ凡人自身は「奴らは歓喜のあまりに駆け出したのではないか」と考えている。

 

(今頃は、博戯でわしの死に賭けとった奴が、並々注いだ酒で乾杯でもしとるじゃろう。奴らにはいままで迷惑をかけた。そんなわしが最期に残せる、唯一の置き土産じゃ。これで溜飲を下げてくれればよいが)

 

 傭兵たちの潰走劇の舞台たる、マッターダリ地方。

 特徴は、踏破するには難しい標高の山々だ。

 マッターダリ山脈と呼ばれるそこは、急勾配の斜面に、獰猛な野生生物が根城を張っている。その盆地に構えるバラボア砦が帝国の手に落ちたいま、帝国軍の足止めをするのは山脈の峰だけである。

 ビエニス・ラプテノン連合軍は、細長く蛇行した渓谷を抜けた先にある、デラ支城まで撤退した。この退却劇の際、帝国軍の追撃によって全滅まで追い込まれなかったことには、ひとつ理由があるらしい。

 どうやら、渓谷の入口となる洞窟が、岩肌の角度と生い茂った枝葉で巧妙に隠されていたようだ。連合軍退却の際、紛れ込んだ密告者によって帝国軍の知るところになったものの、当初この抜け道を認知しておらず、いまは対策の時間に追われているらしい。バラボア砦の一室で、方針を定める会議をしているようだ。

 ──先ほどから、伝聞調である理由は単純明快。

 

(かれこれ、ここで一晩過ごしてしまったのう)

 

 幼女は腹の唸りを鎮めながら、身を潜めていた。

 件の、バラボア砦に程近い草葉のなかである。

 

(いままで、通りがかる兵士たちの言葉から戦況を予想を立てておったが、ひもじさもそろそろ限界に近い……この身体、なかなか融通が利かん。以前の身体では、一食二食忘れて鍛錬に励んでもどうということはなかったと言うのに。ただ年老いてからは、眩暈が酷くなったがのう)

 

 空を見遣れば、眩い太陽が山脈から覗いている。

 辺りを漂っている清澄な空気が、鼻孔を通じて身体に染み入ってくる。ソルフォートが出方を窺っているうちに、新しい朝を迎えていた。

 彼女は、昨晩から気配を殺しながら、敵地の砦前で大人しく情報収集に徹していた。それまでは食物を探し求めていた。当たりをつけて周囲を彷徨っていたものの、食糧庫は空。近辺の村は見つからなかった。

 近辺の村の筆頭だった、ダーダ村という小さな農村も、無残に焼き払われた後だった。焼き払った下手人は統率を失った傭兵だろうか、戦勝で浮かれた帝国軍だろうか、あるいは帝国軍を装った連合軍だろうか。定かではないが、彼女にとっての重大事項は、食糧は焼失していた、ということだけだった。

 ──他に、近場で食糧があるだろう場所は?

 そこで思い浮かんだ場所こそが、周辺に建つ城砦。

 帝国軍により陥落したバラボア砦だった。

 ゆえに、幼女は茂みのなかで、飯にありつくための機会を窺っているのである。

 

「……なんと言うか。アイリーン様が景気よく、山ごと(・・・)吹き飛ばせば全部済む話では?」 

「馬鹿を言え。無闇に山を破壊されてみろ。吹っ飛んでくる土塊の余波だけで、俺たちは生きたまま土葬されるぞ。それに面倒な輩もいるからな。あの山の頂上に神々が御座すとか何とかってな」

「わかってます。わかってますよ、これはただの愚痴ですから。そんな真剣な話じゃないですよ。……独り言に対してこれ見よがしにとは、伍長も人が悪い」

「ナッド伍長補佐、緊張感を持て。もう学生気分じゃ通用しないんだからな」

「いやはや伍長。ナッド伍長補佐は緊張しきっているようですよ、言葉にゃ出ませんがね。軽口程度は許してやってくれやせんか」

 

 ──帝国軍により陥落したバラボア砦。

 幼女が潜む雑木林周辺にある、山林に続く道にて。

 五人組の兵装姿の男たちが、早朝の日差しを眩しげに受けつつ、巡回任務に従事している。

 

(あれは……まあ帝国軍じゃな)

 

 彼らが帝国兵であることは、疑いようもない。

 会話内容や装着する鎧から、察するにあまりある。

 なかでも、ナッド伍長補佐と呼ばれていた茶髪の男は、いっとう真新しい装備に身を包んでいる。

 士官学校上がりで日が浅いのだろう。おそらくは配属されたばかりの新兵に違いない。顔つきも二十代そこそこの若輩だと、ソルフォートは分析する。

 

(会話内容の割には緊張しきりの若者じゃな)

 

 彷徨う視線は忙しない。行きつ戻りつを繰り返す。

 身体の動きも硬い。歩行には乱れがある。もしもソルフォートがビエニス・ラプテノン連合軍の兵士だったのならば、彼を真っ先に狙っただろう。

 そんな、熟れていない様には懐かしさを覚える。

 

(わしも四十年ほど前は、あのような緊張に身を縛られておった。修行と思えば解れるようになったが)

 

 大昔から、英雄への執着が強いのは変わらない。

 彼らは世間話に興じながら、幼女の目前を横切る。

 

「で、だ。いま『人類最強』……じゃなかった、アイリーン中将は、まだバラボア砦にいるのか?」

「いや、昨日の衝突後は急ぎ足で北方の戦地に戻ったと聞く。代わりに『六翼』のベルン中将が派遣されてくるらしい。下士官の間でもっぱらの噂だったが」

「ぬか喜びは御免だが、真実ならこれほど頼もしいこともないな。──アイリーン様よりラスティマイン中将は、まあなんだ。安心できる」

 

 新兵以外の四人は、軽口を挟みながらも、油断なく視線を巡らせている。彼らはおそらく長い。役職として伍長が頭を張る班ならば、強者、謂わば英雄格は含まれていないだろう。事実、立ち振る舞いと体格から想像し得る筋量も、想定は越えていない。

 だが、ソルフォートに楽観視はしていなかった。

 

(オド量は外見には表れんからのう。それに加えて)

 

 英雄に非ずとも、彼女が相手取れるとは限らない。

 彼の思想として「凡人だからこそ傲慢は命取り」というものがある。他を圧倒する、英雄という名の怪物ならいざ知らず、凡人は多少の楽観で命を落としてしまう。慎重さとは、只人にとって美徳に他ならない。

 欲に駆られた同僚、後輩は例外なく死んでいった。

 彼らの二の轍を踏むことはできない。

 

(ふむ、かの『人類最強』はここからすでに去ったのか。残念と言うべきか、幸運と言うべきか)

 

 ソルフォートを半端者と評した、黄金の女──。

 大英雄、アイリーン・デルフォルを思い浮かべる。

 昨日の今日で、顔を合わせるのは得策ではない。

 まだ、彼女の高みに届いていない。

 

(会うとすれば、まだまだ先の話じゃな)

 

 こつん、と額を小突いて気を取り直す。

 口惜しさと羨望を煮込んだような心地が、想像上の大英雄を中心に渦巻くものの──いまは、食欲以外にかまけている場合ではない。

 

(そろそろ覚悟を決めんとな。戦で散った知り合いに情はあるが、敵討ちじゃと襲いかかるのは愚の骨頂じゃろう。元は敵対しておった国家とは言え、な)

 

 幼女はぐっと拳をつくって、決心を固める。

 物事には優先順位が存在する。彼女の場合は「英雄になるため、御伽噺の英雄と遜色ない『強さ』を手にすること」が一番。「そのために生命活動を続けること」が二番、他は二の次、三の次だ。

 配属されていたラプテノン軍に思い入れはない。

 殊勝に復讐を掲げ、食糧(大事なこと)を取り零すなど真っ平だ。

 とりあえず腹を満たさねばならない。

 ならば、芝居をひとつ打つかのう──と。

 ソルフォートは雑木林でわざと音を立てた。

 

「……ッ! 何者だ!」

 

 機敏に反応したのは、大柄な男だった。

 伍長と呼ばれていた男は、得物である直剣を構えながら、幼女が隠れる茂みに殺気を飛ばす。他の班員は伍長と同じく臨戦態勢をとり、新兵はわずかばかり遅れて剣を握る。腰に差した剣を抜き、腰を低く保つ。基本を抑えた姿勢に、いささか感心する。

 幼女は、自らの装備を外し、草葉の陰に隠す。

 これで、不審感を与える物品はすべて取り払った。

 一秒ほど間をおいて、緩慢に姿を現わす。

 外面的には、ただの村娘のような幼女が、だ。

 

「な……小さい、女の子?」

 

 てっきり、連合軍の残党だと思っていたのだろう。

 だが、草葉から現れたのは予想の遥か下。

 ただの幼女である。きっと拍子抜けだろう。

 しかも、敵軍で見たことのない姿形に違いない。

 この時点で、だいぶ五人組の気が緩んだらしい。

 伍長の溜息を合図に、殺気は霧散した。

 そして、ぶっきらぼうに話しかけられる。

 

「お前は難民か? ……どこの村だ」

「……わしはダーダ村の幼女じゃ」

「随分パンチの強い自己紹介だな」

「その、村が焼かれてしまってな。住む家と、両親をなくしてしまったのじゃ。よければわしに、仕事と食べ物を恵んではくれまいか?」

 


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