ハイスクールD×D~救われない物語~   作:ルシファー
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始まりの天使

 アザゼルは一度、起きたことをサーゼクス達に報告する。
 そして姫島朱乃とリアス・グレモリーを冥界に撤退させるように言うが……

『そうは言ってもアザゼル、貴族達が悪魔の手柄がないと納得しないよ』
「だから!タンニーンが来るんだろ?そいつで十分だろうが!なんならお前んとこの眷属も寄越せ!」
『今、各地で英雄派の襲撃がある。人員を割くわけには……それに、貴族達は純血の悪魔が手柄を立てることを望んでいるんだ』
「んなもんてめーがちょっと殺気出して脅しゃ黙るに決まってる。彼奴等は尊い血筋とやらは子ではなく自分に宿ってると思ってるからな、殺されそうになれば直ぐに口を閉ざすぞ」
『力で脅していては、私は旧魔王達と何も変わらない』
「つまり旧魔王の方が統治ができてたってことになるな………は、皮肉だなおい。統治の面では前の方がマシなんだからよ」
『………………』
「まあ、この際仕方ねー。足手纏い守りながら頑張ってやるよ………」

 アザゼルは通話を切ると舌打ちをして頭をガシガシかく。そして、次の相手に電話を始めた。

「シェムハザ、俺だ」
『アザゼル、どうしたのですか?』
「日本神話と北欧神話の会談、仲介役代わってくれ。俺は護衛に当たる」
『…………それは、面倒だからですか?』
「悪神と……下手すりゃ歴代最高のブーステッド・ギアの使い方を工夫している赤龍帝相手にするなら面倒な仲介役を選ぶさ」
『詳しく聞かせてください』




 アザゼルの報告にシェムハザははぁ~と大きなため息を吐く。

『アザゼル、私は和平を結んだのは早計なのではと思えてきましたよ……』
「言ってやるな……サーゼクスはまだ若いんだ」
『サーゼクス、ですか………貴方が悪魔と和平を結んだのは、私とバラキエルの為でしょう?』
「…………」
『バラキエルには悪魔に転生した娘、私には悪魔の妻と、子供……アザゼル、何も貴方が背負う必要など……』
「なあシェムハザ、俺は天界にいた時、どの役職にいたか覚えてるか?」
『天使長でしょう?』
「そ、神は完全、故に悪魔を作り出したのは神、悪魔とは堕天使のことである、何て言い伝えのせいでルシファーに本来の伝承を取られてるが、俺は元々天使長………理由は俺が最初に生まれた天使だから」
『………存じています』
「んでその後にミカエルだのガブリエルだの、お前等だのが生まれた………」

 アザゼルは過去を懐かしむように目を瞑り語る。シェムハザは何も言わず、アザゼルの言葉を聞く。

「俺は天使堕天使の兄ちゃんだからよ、全部背負って、格好付けてーんだ。だからよシェムハザ、俺の格好付けに、弟らしく呆れながらつき合ってくれや……」
『………貴方は、何時もそうだ。天使に嫌悪され、堕天使に不信感をもたれても、それが弟妹の為なら何時も自分から汚れ役を引き受ける……いえ、天使堕天使だけではない』
「人間だって神が生み出した、俺らの立派な兄弟さ……俺らみたいな力や、長い寿命はなくても、な」
『その生き方は、必ず貴方を押しつぶす…………と、忠告しても無駄なんでしょうね』
「解ってんじゃん」
『…………解りました。仲介役、引き受けましょう………ただし、今の堕天使達が和平を結べているのは、偏に貴方が居るからだと言うことをお忘れなきように……』
「おう」
『ではまた…………兄さん』
「ん?…………切れちまった」



 ディハウザーはイッセーが机においた物を見る。

「………これが?」
「ああ、見つけるのに苦労したぜ、殆ど原形をとどめて無いのばっかだったからな……原形保ってたのはそれだけ…………それを使えばおそらくロキを倒せる」
「……………」

 イッセーの言葉にディハウザーはそれを手に取り眺める。

「とはいえ別の神話体系だ……どの程度効くかは解らんがな」
「いえ、何もないよりはましです」
「そういって貰えると探した甲斐があるな………そうそう、ヴァレリーの報告によるとどうもフェンリルはロキの言葉こそ絶対、的な洗脳が施されているらしい……多分「無価値」で消せる、やってみろ」
「ご助言感謝します」
「言ったろ?お前には名を売ってもらうって……それと、姫島朱乃の件、忘れるなよ」





 朱乃は結界の中で雷を放つ。会談までもう何日もない。
 神はもちろん、人間である赤龍帝にすら歯牙にかけなかった自分の力では、限界がある。
 その限界を超える方法はあるのだが、朱乃は決してその手段を使いたがらない。

「……あんな力なくとも、私は……!」
「少なくとも赤龍帝には勝てなかったようですね」

 不意に聞こえた声に振り返るとそこにはディハウザー・ベリアルが立っていた。

「ディハウザー様………あの、何か?」
「先の戦闘に置いて、何故雷光を使わなかったのか不思議で」
「──ッ!?」
「あれは貴方本来の力のはず、何故使わないのですか?」
「あんな汚れた力、使いたくありません!」
「…………」
「………!し、失礼しました。ディハウザー様、貴方がどこでその事を知ったのか知りませんが、どうか、その事にふれないでください」

 叫び、慌てて謝る朱乃を見てディハウザーはふむ、と顎に手を当てる。

「差し支えなければ、教えていただけますか?」
「……………少し、長くなります」



 ディハウザーは朱乃の憎しみという名の私情が大量に含まれた説明から、何とか翻訳する。
 要約するなら多くの恨みを買ったバラキエルのせいで母は死んだ、だから嫌いとのことだが、実に下らない。
 それを言うなら姫島家とて恨みを買っている場所がたくさんあるだろう。襲撃者の中には、そのような類が混じり姫島朱璃の殺害を言い出した者が居たかもしれない。
 悪魔だって、やってきたことを振り返れば堕天使より多くの恨みを買っているはずだ。何より、姫島朱璃は全てを理解した上でバラキエルを選んだ。だというのに娘は姫島朱璃があたかも悲劇の女のように、ああ、実に下らない。
 イッセーも憎悪の念を利用できないか、ディハウザーの持つ札を通してこの会話を聞いているはずだが、どのような反応を示しているのだろうか?
 彼も一応は母親の望まぬ道を歩いているのだから、共感?
 それとも母親も堕天使を恨んでいるに決まっていると決めつけているのだから、嫌悪だろうか?
 恐らく後者だろう。少なくとも、ディハウザーはそれを幸いにもベリアルと言う血筋でひとくくり出来る自分とクレーリア辺りに置き換えてもクレーリアがベリアルを恨むなどとは考えられない。

「………成る程、だから堕天使の力は使いたくないと」
「はい……」
「……………………では、一つだけ裏技を教えましょう」
「……裏技?」

 ディハウザーはニコリと笑みを浮かべると懐から王の駒を取り出す。

「これは王の駒、使用者の力を高める駒です………レーティングゲームの上位陣は殆どがこれを使用している」
「………ディハウザー様も、ですか?」
「ご想像にお任せしますが、どうかこのことはご内密に………まあ少なくとも、それを使えば堕天使の力に頼ることなく力を手に入れられる……使うか使わないかはお任せしますよ」

 ディハウザーはそう言うと立ち去った。朱乃は王の駒とやらを眺める。
 自分の愚痴を、あんなに親身に聞いてくれたディハウザーが嘘を付くとは思えない。しかし、良いのだろうか?そんな簡単に力を手に入れて……怪しく光る王の駒を眺めてから、朱乃は駒をポケットにしまった。