ロクでなし魔術講師と死神魔術師   作:またたび猫

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遅くなってすみません(◞‸◟)

【お気に入り】『200人』そして更には
【評価】『4人‼︎』ありがとうございます‼︎


見えもらえてありがたいです‼︎(≧∇≦)

これからも書いて投稿をしていきますので
【ロクでなし魔術講師と死神魔術師】を
よろしくお願いします。m(__)m











平穏の瓦解

「…アイツここ最近ホント人気出てきたわね」

 

 

システィーナがグレンの人気にかなり不機嫌で

不満な顔と愚痴を言ってるとルミアはクスクスと

笑いながらシスティーナに聞いた。

 

 

 

「あれ?

先生が人気者になって寂しいのシスティ?」

 

 

 

「な…何言ってんのルミア‼︎」

 

 

 

「おや? ルミアの言葉でかなり真っ赤になって

動揺しているよ? もしかしてシスティーナ君、

図星? 図星なのかな?」

 

 

 

「ちょっとなんでそんなにも食いついて生き生き

してるのよ‼︎ノワール‼︎」

 

 

 

 

「いやー、だってシスティが力説に言って

語ってたじゃない?

 

『魔術師』 それは……『魔術』と呼ばれる

『奇跡の業』を用い万物の『真理』を追い求める

誇り高い『探究者達』

 

それが、『魔術師』よ? ってカッコつけて

言ってたじゃない?」

 

 

「『貴方が言ってる真理』と私が言っていた

『魔術の真理』じゃあ全然違うわよ‼︎それに

そんなカッコつけてキメ顔やポーズを私は全く

取ってないわよ⁉︎」

 

 

 

「あのさぁ…システィ、さっきから五月蝿いよ?

全く、本当に何を怒ってるの? そんな事だから

学院のみんなから『講師泣かせのシスティ』って

呼ばれるんだよ?」

 

 

 

ノワールがシスティーナにキョトンとした顔を

しながら首を傾げているとシスティーナは小声

でブツブツと何か言っていた。

 

 

 

《大いなる……》

 

 

 

「げっ‼︎ それって……

『ゲイル・ブロウ』じゃあ‼︎」

 

 

 

 

「そうよ……

貴方の大好きな『ゲイル・ブロウ』よ?」

 

 

 

システィーナの瞳には、まさに怒りの炎が

メラメラと激しく燃え上がって迸っていた。

ノワールはそれを察知したのか急に席を

立ち上がりそしてシスティーナとルミアに

 

 

 

『あっ! 僕、今からお手洗いに行ってくるね‼︎

じゃあ、ルミア‼︎ システィ‼︎後はグレン先生に

よろしく‼︎』

 

 

ノワールはそう言って教室の外に慌てて

逃げ出していた。

 

 

 

「全くあのお調子者は一体、何を考えてる

んだか…?」

 

 

 

「まあまあ…システィ落ち着いて……それに

ノワール君も悪気で言ったんじゃ無いみたい

だし…許してあげたら?」

 

 

 

「甘いわルミア。そんなんだからあのお調子者

が付け上がるのよ?」

 

 

 

「でも、ノワール君の言う通りかもね。

だって、最初に先生の相手したのはシスティ

だったもんね?ケンカばっかりだったけど……」

 

 

 

「そ…そんなじゃないわよ‼︎ 私は…‼︎」

 

 

 

システィーナとルミアが会話していると扉が

勢いよく開く音がした。

 

 

 

『バァン‼︎』

 

 

クラスの全員がその音が鳴った方を見ると黒い

ダークコートを着た二人がいきなり教室に

入って来た。

 

 

 

「ちいーっす。邪魔するぜー」

 

 

 

「なんだ……」

 

 

「先生の代理か?」

 

 

「そんなん聞いてねーぞ」

 

 

「それに先生の代理にしては……」

 

 

 

生徒達が動揺しながら話しあっていると

ダークコートを着た二人のうち一人がヘラヘラ

と笑いながらが生徒達にペラペラと説明を始めた。

 

 

「まずは自己紹介した方がイイかな?

お兄サン達はねまぁ そうだ…簡単に言えば

君ら拘束しに来たテロリストってやつかな?」

 

 

男はヘラヘラと子供のように面白そうに

喋っていると

 

 

 

「ふざけないで下さいこの学院では部外者は

立ち入り禁止ですあなたみたいなチンピラが

どうやって浸入できたかは知りませんがすぐ出て

いかないのなら無力化した後警備官に貴方達を

引き渡します」

 

 

「きゃははつかまっちゃうのボク達⁉︎

いやーん、こわーい‼︎」

 

 

チンピラみたいな男がゲラゲラとシスティーナを

馬鹿にするように笑っているとシスティーナには

どうやらカチンときて

 

 

「……警告しましたからね?」

 

 

 

システィーナはチンピラみたいな男に

【ショック・ボルト】唱えていた。

 

 

《雷精のーー》

 

 

 

《ズドン》

 

 

 

『ドゴォーーン』

 

 

チンピラみたいな男が呪文を唱えると

システィーナに頬をかすめ学院の壁に穴を開けた。

 

 

「『ラ…ライトニング・ピアス…⁉︎』」

 

 

「へへっ よく知ってんじゃーんお前ら坊ちゃん

嬢ちゃんは生で見た事ねーだろ?」

 

 

男は口元をニヤリとさせて自慢しながら

答えていく

 

 

「見ためは【ショック・ボルト】によく似てん

だがなこいつの前じゃ鎧も盾も意味を成さねぇ

『正真正銘の人殺しの術だ』」

 

 

チンピラみたいな男が学院の生徒達に満面の笑み

を浮かべていた。

 

 

 

「う……うわあああ」

 

 

 

「きゃああああっ‼︎」

 

 

 

「うるせーなァ おい静かにしろよガキ共」

 

 

チンピラの男は苛立ったのか、かなりの殺気を

出しながら

 

 

『殺すぞ』

 

 

 

男の言葉で学院の生徒は恐怖で支配させていた。

 

 

「そーそー子供は素直が一番だ

そんじゃ全員ちょっと集まりな」

 

 

男はシスティーナ達、学院の生徒達を集めている

と男はヘラヘラと学院の生徒達に質問していた。

 

 

 

「さて、この中にさ……ルミアちゃんって

女の子いる?」

 

 

すると学院の生徒達は何故『ルミア』が

ここで出てきたのか全く分からなかった。

 

 

「ルミア…?」

 

 

 

「何でルミアが?」

 

 

 

「んー……どれがルミアちゃんだ?」

 

 

 

チンピラみたいな男は面白そうに笑いながら

学院の生徒達を眺めていた。

 

 

「君かな?」

 

 

男が声を掛けた生徒は、眼鏡を掛けた少女、

リンだった。

 

 

「ち…違います…」

 

 

「あっそ

じゃどの子がルミアちゃんか知ってる?」

 

 

「…し…知りま…せん」

 

 

「ホント? 俺 ウソつき嫌いだよ?」

 

 

 

男はリンに顔を近づけながら威圧をかけていると

 

 

「貴方達…ルミアって子をどうするつもりなの?」

 

 

 

システィーナは男達に質問していた。

 

 

「おお さっきの何?

お前ルミアちゃんを知ってるの?」

 

 

 

「それとも「私の質問に答えなさい‼︎

貴方達の目的は一体」」

 

 

システィーナは男達の目的を聞き出そうとすると

チンピラみたいな男がそんなシスティーナに

苛立ったのかシスティーナに指差しながら

 

 

 

「ウゼェよ、お前」

 

 

(え…)

 

 

 

《ズドーー》

 

 

 

男が一節詠唱を唱えようとすると

 

 

 

「やめて下さい‼︎」

 

 

 

集められた生徒達の中から大きな声が聞こえた。

 

 

「私がルミアです他の生徒達に手を出すのは

やめて下さい」

 

 

 

「へえ……君がルミアちゃんなんだうん実は

知ってたよ最初から名乗り出るか我が身可愛さで

教える奴が出るまで関係ない奴を一人ずつ殺ってく

ゲームだったんだけどねいやぁークリアが早すぎ

だよつまんないなー」

 

 

ルミアは男の物言いに絶句する。この男は

狂っていた。

 

 

「ああ、安心しな。もうやる気はねーから。だって

ルミアちゃんが名乗り出ちゃた今となっちゃ、もう

ただの一方的な殺しになっちゃうじゃん?保身の

ためにお友達を裏切るか、それともお友達のため

に名乗り出るか……その狭間の顔を見るのが楽しい

んだもんな、コレ! だから、ナイスだったね、

ルミアちゃん。ファインプレー!」

 

 

「外道……ッ!」

 

 

ぱちぱちと拍手する男に、ルミアは

普段見せないような怒りの灯った視線を向ける。

 

 

「遊びはその辺にしておけ ジン」

 

 

これまで黙っていたダークコートの男が突然口を

開いた。

 

 

「私はその娘をあの男の元へ送り届ける。

お前は第二段階へ移れ。この教室の連中の

ことは任せたぞ」

 

 

「あーもう、面倒臭いなぁ。なぁ、レイクの

兄貴ぃ、やっぱこいつら全員に【スペル・シール】

をかけていくの? 別にいいでしょ、こんな雑魚共。

束になって暴れ出した所でオレの敵じゃねえし?

そもそも、もう牙抜かれちまってるじゃん?」

 

 

ジンと呼ばれたチンピラ風の男が教室を睥睨する。

誰もが目を合わせないように視線をそらした。

 

 

「それが当初の計画だ。手筈通りやれ」

 

 

「へーいへい」

 

 

面倒臭そうにチンピラ風の男は頭をかいた。

 

 

 

「ご足労、願えるかな? ルミア嬢」

 

 

 

 

ダークコートの男ーーレイクがルミアを尊大な

態度で見下ろした。

 

 

「拒否権はないんですよね?」

 

 

 

毅然とした態度を崩さず、ルミアが男を真っ直ぐ

にらみ返す。

 

 

「理解が早くて助かる」

 

 

「……少し、彼女と話をさせて下さいませんか?」

 

 

ルミアが床で震えながらへたりこむシスティーナに

眼を向ける。

 

 

「いいだろう。だが、妙な真似はするなよ」

 

 

レイクの一分の油断も隙もない、鋭い視線を全身に

感じながら、ルミアはシスティーナの眼前に膝を

ついてシスティーナに視線を合わせた。

 

 

「……行ってくるね、システィ」

 

 

ジンがルミアに行くように促すとシスティーナは

怯えた声で

 

 

 

「ダ……ダメよ…ルミア……

行ったら殺されるわ…!」

 

 

 

「大丈夫だよシスティ、

グレン先生が助けに来てくれるから…」

 

 

ルミアがシスティーナにそう言うとシスティーナの

頭の上には(?)が何個も浮かんでいた。何でここに

きてグレンの名前が出てくるのが分からなかった。

そんな中、ルミアがシスティーナに触れようとする

とレイクがルミアの首元に剣を突き立ていた。

 

 

 

『貴方が魔術師に触れる事は許さん』

 

 

 

「なぁ、レイクの兄貴。グレン先生って誰?」

 

 

レイクの言葉を受け、ジンが割って入った。

 

 

「このクラスを担当することになった非常勤講師

の名前だろう。それくらい覚えてたおけ」

 

 

「あー、グレンね? あの雑魚キャラのグレンね、

オーケイ、オーケイ思い出した。ケケケ、グレン

先生ツイてないねぇ」

 

 

ルミアがそう言えば、ジンが『先生は取り込んで

いる』と言っていたことを思い出した。

 

 

「あなた達……グレン先生に一体、

何をしたんですか?」

 

 

 

 

あー、そのグレン先生なら、 俺達の仲間が

ブッ殺したよ」

 

 

 

「なーー」

 

 

「⁉︎」【クラス全員】

 

 

 

「錬金改【酸毒刺雨】っつー魔術の使い当初から

手キャレルって男だ毒と酸を合わせた悪趣味な

術なんだがこいつでやられた獲物は本当にひでえ

になるから俺もドン引きでさー今ごろどっかで

身元不明のグロ死体があがってるころだろうぜ

 

 

 

 

 

「せ…先生が…ウソ…そんな…」

 

 

 

システィーナはジンのそんな絶望的な

事実を告げられ絶望していた。

 

 

「無用な期待をせずにすんだな

それでは来てもらおうか」

 

 

レイクはルミアにそう告げるとルミアは絶望

どころか目の光はまだ消えておらず、それどころか

希望を信じて続けてるようだった。

 

 

 

「私は彼女をあの男の所へ連れて行く

お前は生徒達に【スペル・シール】で封じておけ」

 

 

 

「了解」

 

 

ジンとレイクのやりとり終えた後、ルミアとレイク

が教室を出て階段を降って行くとルミアはレイクに

 

 

「あなた達の目的はなんですか?

私のような者に一体、何の用があるんですか?

 

 

 

「それはあなた自身がよくご存知だろう?

ルミア……いや、『エルミアナ王女』」

 

 

 

「ーーっ!」

 

 

エルミアナと呼ばれて息を飲むが、すぐに冷静さ

を取り戻して静かに言う。

 

 

 

 

 

「私の素性をあなた達がどこで知ったかは

知りません。ですが先に言っておきますけど

私にはもう王女としての価値はありませんよ?」

 

 

「それは知っているあなたは本来、生きていては

ならぬないはずの存在だ。だが現在女王の

アリシア七世の温情によって、貴女はここにいる」

 

 

 

レイクはそっけなく応じ、値踏みするような

冷たい目を肩越しにルミアへと向けた。

 

 

「いないはずなのに、いる。

そこに貴女を利用する価値がある」

 

 

「……っ⁉︎」

 

 

 

「貴女のような廃棄された忌むべき存在でも、

然るべき機会で使えば、現在の王家、帝国政府を

揺さぶることも不可能ではない。それに……貴女の

特性には我が組織の幹部達もおおいに興味を持って

おいでだ。安心しろ。貴女は珍しいからそう邪険

には扱われないだろう。最悪でも標本止まりだ。

これは幸運だと言ってもいい」

 

 

「そんなーー」

 

 

こらえ難い悪寒と共にルミアは肩を抱いた。

この人間を乖離した意識の差異に、生理的嫌悪感を

覚える。

 

 

「あなた達の目的が私だということは

わかりました。だったら皆は関係ないはず…

システィを…皆を解放してあげてください!」

 

 

 

 

「やはりたいした女だ、貴女は。こう聞かされて

まだ人を気遣うとは。やはり血筋か」

 

 

感心したようにレイクが応じる。

 

 

 

「だが、残念ながらそれはできない相談だ。」

 

 

「せっかく卵といえど活きの良い若い魔術師達が

大量に手に入ったのだ。彼らを実験材料にしたい

と申し出ている仲間がいる」

 

 

 

「そ……そんな……あなた達はそれでも人間

なんですか⁉︎」

 

 

 

 

「人間? 何を馬鹿な。 魔術師さ」

 

 

 

 

もう話しは終わりだと言わんばかりに、レイクが

これ以降口を開くことはなかった。

 

 

 

 

「先生……グレン先生……」

 

 

 

そう言ってレイクとルミアは

そのまま廊下を歩いて行った。

 

 

 

 

そんな中、曲がり角で二人を覗きながらも、

ルミアを助け出せないか息を潜めながら、

ある少年が伺っていた。

 

 

 

 

「クソッ‼︎ やっぱりあの人でなしの外道魔術師達

が出てきたか…目的はやっぱり…ルミアか……」

 

 

 

ノワールは【固有魔術】の1つの『幻想の羽衣』

を使い悔しそうにルミアとレイクを見ていた。

しかし、ルミア達に近づく事は出来ずにいる

自分自身の今の状況を情けなくなってきていた。

 

 

 

「クソッ!もう少し僕が警戒していれば……

更には召喚魔術の《コール・ファミリア》の

魔術で作った【ボーンゴーレム】まで…

大量にどうするか……」

 

 

 

ノワールが悔しさを噛み締めながらも

今の現状打破する方法を考えて窓の外を

見ていると学院の入り口にはグレンがいた。

 

 

 

「愚者か…… ! そうだ‼︎ あいつに時間稼ぎ

してもらおう…僕はその間にルミアの居場所を

探し当てるには、これしかないか…はぁー…全く…

あまり気が進まないんだがな……悪いが協力して

もらうよ愚者?」

 

 

 

ノワールは外にいる グレンにそう呟くと

いつもの黒のロングコートのパーカーを

身に纏い鎌を顕現させて暗殺者の

スイッチが入っていた。

 

 

 

 

「さてと……ゴミ処理、畜生、

及び外道を刈り取っていく……」

 

 

 

 

禍々し過ぎる殺気が少し漏れながらも影に紛れて

溶け込んでいきながら、少しずつゴーレムの首筋

を正確に狙いながら刈り取りテロリストの戦力を

減らしながらも地道にルミアの居場所を探し続け

ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一方、街の広場では、かなりの人が

ざわついていた。

 

 

 

「う…っ」

 

 

 

「こりゃひでぇ…」

 

 

 

「警備官はまだ来ないのか?」

 

 

 

「こんなの…人間のやる事じゃないわ…」

 

 

 

「ああ…一体だれがこんな事を…」

 

 

 

「ママ、あれ何?」

 

 

 

「こら!、見てはいけません‼︎」

 

 

 

 

 

街の人達は亀甲縛りのキャレルを見ながら

縛られたキャレルに同情する者や軽蔑

している者がいた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラこっちだ早くしろ」

 

 

 

「きゃあっ」

 

 

 

「ククク、せっかくなかなかの上玉を

見つけたんだ暇な時間に食っとかねーと

勿体ねーよな」

 

 

 

「…………っ‼︎」

 

 

 

ジンは舌をペロリと舐めながら システィーナに

近づいていく

 

 

「ふ…ふざけないで私はフィーベル家の娘よ⁉︎

私に手を出すとお父様が黙ってないんだから‼︎」

 

 

 

 

「はァ? フィーベル家ってナニ?

偉いの?ソレ」

 

 

 

ジンはシスティーナにそう言ってシスティーナに

近づきながら倒れていた体を起き上がらせる。

 

 

 

「あっ‼︎」

 

 

 

「ルミアちゃんみてーなタイプはさー嬲っても

面白くねーのよありゃ か弱そうだか辱めや苦痛

じゃ絶対心が折れない人種だその点お前は一見

強がっているが自分の弱さに仮面をつけて隠して

いるだけのお子様さそーいうチョロい女を壊すのが

一番楽しんだ」

 

 

 

「……私を慰み者にしたいなら好きにすれば

いいわけれどフィーベル家の名にかけて貴方

だけはいずれ地の果てまで追いかけて殺して

やるわ覚悟しなさい‼︎ 必ずこの屈辱をーー…」

 

 

システィーナはジンを睨みつけて

言っていると、

 

 

 

「はいはい、じゃー、どこまで保つかなー?」

 

 

『バリリッ‼︎』

 

 

 

ジンはなんの迷いもなくシスティーナの着る制服

の胸元に手をかけ、それを引き裂いた。白い下着に

包まれた胸と肌が露わになる。

 

 

『……え? ……ぁ』

 

 

 

掠れた声がシスティーナの喉奥から絞り出される。

肌がひんやりした外気にさらされ、いよいよ

これから自分がどのような末路を辿るのか、強く

実感する。じわりと。だが、もう誤魔化し様も

なく致命的な恐怖と嫌悪が心の中で醸造される。

 

 

 

「…………ぅ、ぁ」

 

 

 

「ひゅーッ! 胸は謙虚だが綺麗な肌じゃん!

うわ、やっべ勃ってきた……おや?どうしたのー?

なんか急に押し黙っちゃってさー、元気ないよ?」

 

 

 

負けるものか。屈するものか。私は誇り高き

フィーベル家の娘だ。魔術師にとって肉体など

しょせん、ただの消耗品ではないか。唇を震わせ

ながら自分自身に言い聞かせる。だが、そんな

システィーナの理性とは裏腹に、口は勝手に違う

言葉を紡ぐ。

 

 

 

「……あ、あの……」

 

 

 

「ん? 何?」

 

 

 

「……やめて…ください……」

 

 

その一言が出てしまった瞬間、もうどうしようも

なかった。これから我が身を汚されてのだという

悲嘆に、初めては本当に好きになった人に捧げた

かったという密かな夢の思うと理不尽な終焉に、

システィーナは涙をぼろぼろとあふれさせ、

身体を震わせていた。

 

 

 

「あ、あの……お願いします……それだけは

やめて……許して……」

 

 

「ぎゃははははははーーッ!

落ちんの早すぎんだろ、お前!

ひゃははははははッ!」

 

 

 

ひとしきり笑ってから、冷酷な目でジンは

なきじゃくるシスティーナを見下ろした。

 

 

「悪いがそりゃできねえ相談だ……

ここまで来ちゃ引っ込みつかねーよ」

 

 

 

「……やだ……やだぁ……お父様ぁ……

お母様ぁ……助けて……誰か助けて……」

 

 

 

「うけけ、お前、最っ高!

てなわけでいただきまーす!」

 

 

 

「嫌……嫌ぁあああああああーーッ!」

 

 

 

 

ジンの手が必死に身じろぎするシスティーナの

肌に伸びて行った、その時だった。

 

 

 

『がちゃ。』

 

 

 

実験室の扉間抜けな音を立てて開いた。

 

 

 

「は?」

 

 

 

「……え?」

 

 

 

開かれた扉の向こうに男が棒立ちしていた。

グレンだった。

 

 

 

「えーと?」

 

 

 

グレンは身体を重ね合っている二人を見て

気まずそうに頬をかく。

 

 

 

「すまん。邪魔したな。ごゆっくり……」

 

 

 

そい言って、開いた扉をゆっくりと閉めてーー

 

 

 

「行くな閉めるな助けなさいよーーッ⁉︎」

 

 

 

システィーナの叫びに、グレンは渋々といった

表情でため息をつきながら、再び扉を開いて部屋

の中に入ってくる。

 

 

「あー、やっぱりそうなの? そういう胸くそ悪い

展開だったの?てっきり両者合意の上でやってる、

ちくしょうバカップル爆発しろ的展開かとだと

思ったのだが……」

 

 

 

「んなわけあるかーーッ⁉︎」

 

 

 

一方、グレンの出現にあっけに取られていたジン

だったが、すぐに我に返ってシスティーナから

飛び退き、グレンに向かって身構えた。

 

 

 

「何者だテメェはッ⁉︎」

 

 

 

「一応、この学院の講師をやってる者です。

一応、先生として忠告するが、お前、そういうの

一応、犯罪だぞ? いくらモテないからってだな、

一応……」

 

 

グレンは何かズレた事を言っていた。

まるで不良生徒に説得する接し方だ。

 

 

 

(ーーしまった)

 

 

システィーナは思い出した。切羽詰まった

状況だったため、ついグレンに助けを求めて

しまったが、このジンという男は強大な力を持つ

魔術師だ。グレンは講師としての力量は優れて

いるが、魔術師としての力量に優れているとは

言えない。

 

 

 

「うるせぇ! 一体、どっから湧いて

出てきやがったんだテメェッ⁉︎」

 

 

 

「おい、人をゴキブリ扱いするな。

ゴキブリに失礼だろ⁉︎」

 

 

 

「誰もそこまで言ってねーよ⁉︎

っていうかお前、どんだけ自虐思考なの⁉︎」

 

 

 

グレンとジンが魔術で争えば……間違いなく

グレンは殺される。グレンは三節詠唱しか

できない。ジンのあの超高速一節詠唱に対抗

できるはずもない。

 

 

 

「だ、だめ……ッ! 先生、逃げて!」

 

 

 

「お前、助けろっつたり、逃げろっつたり、

一体どっちなんだよ?」

 

 

 

「いいから早く! 先生じゃそいつには敵わない!」

 

 

 

 

「もう遅ぇよッ!」

 

 

 

痺れを切らしたジンがグレンに指を向けた。

それに応じ、グレンも手を動かすーー

が、遅い。

 

 

 

「《ズドン》ッ!」

 

 

瞬時に呪文は完成し、ジンの指先から迸る雷光

がグレンに容赦なくーー

 

 

 

「…………は?」

 

 

黒魔【ライトニング・ピアス】は起動しなかった。

完成と共に指先から飛ぶはずの雷光が一向に

発生しない。

 

 

 

「くっ……《ズドン》ッ!」

 

 

 

 

ジンは再度、呪文を唱える。 結果は同じだ。

 

 

 

 

「ど……どうなってやがる……ん?」

 

 

 

 

その時、ジンはグレンが手に何かを持っている

ことに気づいた。

 

 

 

「愚者の……アルカナ・タロー?」

 

 

 

総数二十二枚からなるアルカナのナンバー0、

愚者のカードだ。

 

 

「てめぇ……なんだ、そりゃ?」

 

 

 

「これは俺特製の魔導器だ」

 

 

グレンがカードの絵柄をジンに見せ付けながら

言った。

 

 

 

「この絵柄に変換した魔術式を読み取ることで、

俺はとある魔術を起動できる。それはーー俺を中心

とした一定領域内における魔術起動の封殺」

 

 

 

「な……」

 

 

 

「残念だった。お前の呪文詠唱速度が

どれだけ速かろうが、もう関係ねーよ」

 

 

 

「魔術起動の……遠隔範囲封印だとぉ?」

 

 

 

確かにシスティーナ達が受けたような、

魔術の起動を封印する術式はある。

黒魔【スペル・シール】と呼ばれる魔術だ。だが

それは付呪が前提であり、しかもこの魔術に限って

は相手の身体に呪文を書き込み、 魔術効果付与する

という特殊な手順を踏まなければならない。実戦で

そんな手間のかかることを許す魔術師はいない。

それに対し、グレンは紙切れ一枚をちらっと見る

だけで広範囲にわたる魔術起動を完璧に封殺できる

と言うのだ。

 

 

 

「それが俺の【固有魔術】 『愚者の世界』」

 

 

 

「ま…魔術の固有魔術⁉︎ まさか‼︎

テメェそんな域に至ってるってのか⁉︎」

 

 

 

「……‼︎」

 

 

 

(そんな術…聞いた事もない…‼︎

どれだけ素早い詠唱もこの術の前じゃ無意識…‼︎

先生が三節詠唱しかできなくてもワンサイドゲーム

なんてもんじゃないわ‼︎そんな反則級の術の使い手

だったなんて…‼︎)

 

 

システィーナがそんな事を考えているとグレンは

ある爆弾発言を二人にした。

 

 

『ま、俺も魔術起動できないけどな』

 

 

「…………」

 

 

 

「は?」 【システィーナ、ジン】

 

 

 

グレンが不意につぶやいた言葉にシスティーナと

ジンも思わず目が点になった。

 

 

たっぷりの数秒間、不思議な沈黙がその場を

支配する。

 

 

 

「いや、だって、俺も効果領域内にいるじゃん?

俺中心に展開する魔術なんだし」

 

 

「な、なーーなんの意味があるのよ、それ⁉︎」

 

 

 

システィーナもたまらず突っ込み入れてしまった。

 

 

 

「ぎゃははははーーッ⁉︎ お前、馬鹿じゃねーーの⁉︎

魔術師が自分の魔術まで封印しちまってテメェ

どうやって戦う気なんだよ⁉︎」

 

 

 

「は? いや……別に魔術なんかなくたって拳が

あるだろ?」

 

 

 

グレンは口元を緩めながら、魔術師らしからぬ、

おかしなことを言った。

 

 

「は? 拳?」

 

 

 

「うん、拳」

 

 

 

 

突如、グレンが爆ぜるように動いた。

 

 

一瞬でグレンとジンの距離が詰まる。剃刀のように

鋭い踏み込みから放たれた左ジャブがジンの顔面を

軽捷に突き、刹那に続く右ストレート一閃。

 

 

「ぐぁあああああっ⁉︎」

 

 

 

電光石火のワンツーによってジンの身体は

吹き飛ばされ、壁に叩きつけられた。

 

 

「え? 嘘……何、今の動き……」

 

 

 

全然、見えなかった。システィーナは呆然と

グレンを見つめる。

 

 

グレンは身体を半身に、やや猫背に、両の手の甲を

相手に向けてわずかに回転させるーー古式拳闘に

似た構えを取っている。軽くステップを踏みながら

油断なくジンを見据えていた。

 

 

「や、野郎ぉーーーッ!」

 

 

 

起き上がったジンは激情に任せてグレンに

殴りかかった。

 

 

 

だが、グレンはジンが放った拳に、上から

被さるようなカウンターを合わせる。

 

 

 

その挙動はバネのようにしなやかで、荒波の

ように力強く、そして、速い。

 

 

 

「がーーッ⁉︎ ふぐ⁉︎」

 

 

 

拳がジンの素顔に再びめり込むと同時に、グレン

は鋭く体重をする。ジンの脇腹に深く膝蹴りを

入れ、ジンの腕と胸元を取り、足払い、背負う

ように投げ飛ばす。

 

 

「ぎゃあああああっ⁉︎」

 

 

再び壁に叩きつけられて、ジンが悲鳴を上げる。

 

 

「うーん、やっぱり鈍ってるなー。

久しぶりだからなー」

 

 

当のグレンは指をぽきぽき鳴らしながら、

だるそうにそんなことをぼやいていた。

 

 

 

「て、てめぇ……」

 

 

鼻血を拭きながら、よろよろとジンが起き上がる。

 

 

「あら?驚きました? 実はボク、昔、近所の道場

で拳闘などを少々……」

 

 

「ふ、ふざけるな!妙なアレンジが加わっちゃ

いるが、今のはれっきとした帝国式軍隊格闘術

じゃねえか⁉︎しかもかなりの使い手……テメェ、

一体、何者なんだ⁉︎」

 

 

『グレン=レーダス。非常勤講師だ』

 

 

その言葉にジンが幽霊に出会ったかのような

表情で目を見開く。

 

 

 

「グレン、だとぉ……テメェがか⁉︎ まさか、

キャレルの奴が敗れたってのか⁉︎冗談だろ……⁉︎

アイツほどの 魔術師が……ッ⁉︎」

 

 

 

だが、それもありえる話はあった。このグレンと

いう男は周囲一帯の魔術を含めて封印するなどと

いう、マトモな魔術師なら考えもつかない馬鹿げた

ことを平気でやる男だ。この格闘術の異常な練度の

高さも恐らく、対魔術戦をその封印魔術を前提に

しているからだろう。

 

 

この男の前では生粋の魔術師ほど、無力な存在と

なってしまうのだ。

 

 

 

「クソッ! ふざけるな、ふざけるなよっ!

魔術師が肉弾戦で雌雄を決するだと⁉︎ てめぇ、

魔術師としてのプライドはねーのか⁉︎」

 

 

「お前、そんなに魔術以外で倒されるの嫌なの?

もう、しょーうがねーな。じゃあ、これからお前に

放つ一撃は【魔法の鉄拳マジカル☆パンチ】って

いう伝説の超魔術な?今、開眼した」

 

 

 

「は?」 【システィーナ、ジン】

 

 

 

唖然とするジンに向かって、グレンが拳を構えて

突進した。

 

 

 

「魔法の鉄拳ーーー」

 

 

 

 

「う、おおお⁉︎」

 

 

 

 

グレンが引き絞った拳に反応して、ジンが両腕を

交差させて顔面をガードする。

 

 

 

「マジカル☆パァアアアアアンチッ!」

 

 

そのままグレンは右足を振り上げて、ジンのガード

の隙間を縫うように、旋風のような上段回し蹴りを

ジンの側頭部へと叩き込む。

 

 

 

「ぎゃぁあああああああああーーっ⁉︎」

 

 

 

猛烈に蹴り倒されたジンは床を派手に

転がっていった。

 

 

 

『説明しよう。【魔法の鉄拳マジカル☆パンチ】

は、なんかよくわからない魔法の力で、パンチ

の二倍と言われるキックに匹敵する威力が出る、

なんかもう凄い魔法のパンチなのだ』

 

 

 

 

「ていうか……『パンチ』じゃなくて実際に、

『キック』だった……だろ……」

 

 

 

「ふっ、そこがなんとなくマジカル」

 

 

 

「くっそ……このオレがぁ……ッ!

こんな……ふざけた奴に……ッ! がは……」

 

 

 

 

その言葉を最後に、ジンの意識は完全に暗闇へと

落ちた。

 

 

 

 

 

システィーナはほんのちょっとだけ、ジンに

同情していた。




これからもバシバシ書いていきます‼︎


【死神の魔術師】の他にも【白い大罪の魔術師】
もよろしくお願いします‼︎


見て楽しんで頂けたら嬉しいです。(≧∇≦)


肩凝り酷い……(>人<;)

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