イナズマイレブン〜月の章〜   作:ふわにゃん二世

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アレスの天秤放送決定記念に始めました。
皆さんイナイレですよ!


白金美月、三年生さ

 

イナズマイレブン

 

ー時はフットボールフロンティア準決勝ー

 

『さぁ、木戸川清修中対松陽中の試合、1対1、どちら一歩も引かない! おおっと、ここで木戸川清修がボールを奪ったぁ‼︎』

 

「ファイアトルネード‼︎」

 

業火を纏った強力なシュートが松陽のゴールへと突き刺さった。

 

『決まったぁぁぁぁぁぁ‼︎ 木戸川清修勝ち越し‼︎ そしてここで試合終了‼︎ 木戸川清修中、決勝進出だぁ‼︎』

 

会場は割れんばかりの大歓声に包まれた。勝利した木戸川清修の選手らとは対照的に松陽中の選手らは膝から崩折れ、項垂れるものまでいた。

 

 

「くそっ‼︎ これで俺達も終わりかよ」

「先輩…………」

「来年は絶対に優勝してくれよな、美月」

「はいっ…………はいっ‼︎」

 

先を走る者が後に続く者達に託す、先輩達の想いを来年こそは。

そう誓う白金美月の紅い目からは先ほどまで溜め込んでいた涙が一気に溢れ出ていた。

しかし美月がこの思いを受け継ぐことはできなかった。

 

 

ー雷門中ー

それなりに長い歴史のある学校で、通う生徒も個性溢れていた。桜が散り春の名残を惜しむ空をよそにデジタル音の鐘が校内に響いていた。

 

「はーい。今日の授業は終わりです。部活のない生徒は早く帰るようにしてください」

 

授業終了を告げる鐘が鳴り、それを合図に鞄に教科書を仕舞い帰宅の途につく者、部活動の為に部室へと走る者、ただ教室に残り話に花を咲かせる者、それぞれが思いのままに放課後を過ごしていた。

 

「さて、今日は帰ろうかな」

 

美月は雷門中に転校したのだった。両親の仕事の影響だが、それを聞かされた時には驚きの他に似合う感情が彼の中にはなかった。

転校して来た彼に勿論部活動に所属はしておらず、あの様な形でかつての仲間と離れてしまい、その上もう三年生。今更部活をやるかどうかに迷っていた。

 

(前はサッカー部だったけど、ここってサッカー部あるのかなぁ…………かと言って他の部活をやる気も無いし)

 

大人しく受験勉強でもするかな、と校舎を出て考えながら歩いていた美月。恐らくあまり周りを見ていなかったのだろう。サッカーボールを持って爆走する少年に気付かなかった。

 

「だあぁぁぁぁぁあぶなぁぁぁぁぁぁい‼︎」

 

そして、

 

「へ?あだっ⁉︎」

 

顔を向けた瞬間に、互いに顔面から思いっきり激突してしまった。周囲が唖然とする中、美月は額をさすりながら起き上がる。

 

「す、すまない大丈夫か?」

「い、いやこっちこそすいません」

 

目の前で額を抑えているオレンジのバンダナの少年、円堂守はサッカーボールにユニフォームと明らかにサッカー部といった格好である。

 

「えっと、君って…………」

「円堂君!」

 

「サッカー部?」と聞こうとしたところに遮るように女子の声が聞こえて来た。淡いオレンジ色のジャージを着た女子が走って来た。

 

「ご、ごめんなさい、大丈夫ですか?」

「ああいや、大丈夫だよ。俺もボーッとしてたし気にしないでくれ。ところで君らはサッカー部?」

「はい、でも人数もいないんで試合も出来てないんですけど」

「ふーん、この学校ってサッカー部あったのか…………」

「え?」

 

月夜の言葉に円堂とジャージの少女、木野秋は目を丸くした。雷門中サッカー部は人数も集まらず周りからも馬鹿にされる事の多い今、そういう反応はある意味珍しいとも言えた。木野はサッカー部の事情を美月に説明した。

事情を知った美月は苦笑いを浮かべるほかなかった。

 

「…………ああいやすまん。今日転校したばかりだしグラウンドにもサッカー部の姿も見えなかったしね」

「そうなんですか、どうりで…………」

「それにしても、碌に設備も環境もなく、試合も出来ない状況でもサッカー部に入るなんてね。サッカー好きなのかい?」

「ああ‼︎ 大好きさ‼︎ 」

 

即答だった。円堂の眼はサッカーへの思いが溢れていた。

ー面白いー素直にそう思った。

 

「じゃあそろそろいくよ。俺は三年の白金美月、何かあれば声を掛けてくれ、一応前の学校ではサッカー部だったからね」

 

それじゃあと月夜は駆け足ながら足早に去っていった。

 

「なんか、いい人だったね」

「ああ、それに元サッカー部だって…………サッカー部?」

「「えぇぇぇぇぇぇぇ⁉︎」」

 

「サッカー部に勧誘すればよかった!」と円堂と秋が気付いた時には美月はもう姿を消していた。

 

 

「雷門中ってサッカー部あったのか。てっきり無いもんだと思ってたから驚いたな」

 

そう思いながら美月は、円堂のことを思い出していた。

 

「…………いい眼をしてたな、彼」

 

サッカーを語る時の眼、アレは心の底からサッカーを愛している人間にしか出せない輝きだった。正に真のサッカーバカなのだろう。

一緒にサッカーをやってみたい。我ながら単純な奴だと感じた美月だが、身体が動きたくてうずうずとしていた。

 

「…………ちょっと走ってくるかな」

 

暇つぶしにと買った『高校受験入門』と書かれた参考書を閉じると、ジャージに着替え、家を飛び出した。

 

雷門町のとある山、稲妻をシンボルとした鉄塔が目印の山であった。自宅を飛び出した美月は取り敢えずあそこまで走ろうと飛び出していたのだ。

辺りはすっかりと夕暮れとなっていた。地平線の彼方へと沈んでいく太陽がせめてもの名残をと残していくかの様な紅の空であった。

走る足音と吐息が小気味好いリズムが身体の調子の良さを感じさせた。

だいぶ距離を走った。額から流れ出る汗が鬱陶しさを感じる。

 

「転校してからあんまり走ってなかったけれど、やっぱり体力は落ちてるな」

 

スポーツ選手は1日練習をサボるとその感覚を取り戻すためには三日の練習が必要だと良く言うが、サッカーを一ヶ月近く休んでいた美月は十分に体力が落ちていた。

 

「サッカー部、雷門中にはないって聞いていたから中学では諦めようと思ってたんだけどな」

 

去年の敗北、雪辱を果たすと誓った仲間との約束も果たせず、サッカーへの想いが霞んで来ていた。

 

「円堂…………守か…………」

 

彼を思い出し、ふっと笑みを浮かべ走り出した。

 

 

河川敷にあるサッカーグラウンドここでは小学生のサッカーチーム、稲妻KFCが練習をしていたがそこに円堂も混ざってサッカーをしていた。

 

「よしっ、まこ、そこでシュートだ‼︎」

「いっくよーえい」

 

KFCのキャプテンを務める少女のまこのシュートは一直線にゴールへと向かって行く。正面から右に少し逸れたシュートを円堂は正面に入りガッチリとキャッチする。

 

「いいシュートだ!」

「えー、また円堂ちゃんに止められたよ」

「よし、もういっちょだ!」

 

円堂は彼らにサッカーを教えていた。学校では試合も出来ないサッカー部に貸すグラウンドはないと練習も出来ず、部員達もやる気なし。

それでも円堂はこうしてサッカーを続けていた。

 

「ふふっ、円堂君楽しそう」

 

一緒に付いて来たマネージャーの秋。確かに円堂は楽しそうだが、やはり物足りなさはあるだろうとも理解していた。

 

「よーし今度は俺だ!必殺シュート」

 

と蹴ったボールが不幸にも近くを通りかかった不良の近くを通った。そしてそれを踏んだ不良は盛大にすっ転んだ。

 

「ってーな‼︎誰だ‼︎」

 

イラついた不良は起き上がると怒鳴った。子供達は完全に萎縮してしまった。円堂は恐る恐るその不良に近づいていった。

 

「すいませんボールを、ぐっ⁉︎」

「きゃ⁉︎ 円堂君⁉︎」

 

秋が小さな悲鳴をあげる。不良の膝が円堂の腹に入った。円堂は呻きながら崩折れる。

 

「なんだぁお前雷門中のサッカー部か、部員もいねぇからこんなところでガキどもの球拾いをやってるってか? しょうがねえ、この安井様がお手本を見せてやるよ。 あらよっと」

 

不良の安井の不恰好ながら力任せのシュートはベンチ脇でドリンクを飲んでいたまこに向かっていった。

円堂は避けろ‼︎と叫び、秋は咄嗟に目を塞いでいた。

 

「ッ‼︎」

 

しかしそのボールは土手から走りこんできた髪を逆立てた白みがかった金髪の男が蹴り返し、安井の顔面へと吸い込まれた。

 

「安井さん! てめえ…………」

 

安井の後ろにいた手下は蹴り返した男を睨んだがその男の鋭い眼光に怯み

 

「お、覚えてやがれ〜」

 

と捨て台詞の残し逃げていった。

 

「ありがとうお兄ちゃん」

 

まこが助けられた男にお礼を言うとその男はふっと笑みを浮かべるとその場を去ろうとした。

 

「なあ! 今のすっごいシュートだったよ、君、どこのサッカー部?」

 

そのシュートに感動した円堂はすぐにその男に詰め寄った。

だがその男の表情はサッカーと聞くと冷め。

 

「悪いな、サッカーはもう辞めたんだ」

 

そう言い残し足早に去っていった。

 

 

やがて子供達はそれぞれ家路についた。円堂はボールを見つめるさっきの男の事を考えていた。

 

「サッカーを辞めたっていってたけどあんなシュート…………勿体無いな」

 

一人円堂はポーンとボールを軽く投げ、ボールを蹴ったがが、力が入り過ぎて、しかもバランスを崩したキックは大きくスライスしてしまった。

しかもボールの先にはランニングをしている人がいるではないか。

 

「しまった!危ない‼︎」

 

ランニングをしていた、美月は円堂の声に顔を上げると突如頭上から自分に迫って来ていたボールを、

 

「よっと」

 

軽々とトラップした。

 

「え?」

 

数回、リズミカルにリフティングを行い、足を止める。

 

「凄げぇ、あの人上手いや」

 

円堂は少しのプレーだが咄嗟のトラップからのリフティングまでの美月の動きに目を奪われていた。

 

「いつまでボサッとしてるつもりだい? ホラ、蹴り返すついでにシュートするから止めて見なよ」

「よーし、来い‼︎」

 

美月はボールを上空に蹴り上げた。そして地面を蹴り、跳んだ。

 

「久し振りだからね、本気では蹴らないからさ」

 

空中でのボレーキックは空気を切り裂き、一直線にゴールへと、円堂へと向かっていった。

 

「だあっ‼︎」

 

なんとか反応できた円堂は両手で受け止める。受け止めた手の中で強烈な回転の掛かったボールが手から逃げようと暴れ、力ついたボールが円堂の手の中に収まった。

円堂はボールが手から離すといまだに痺れる掌をじっと見る。

 

「すげえ、まだ手が痺れてる。こんなシュートが打てるなんて…………」

 

うおー‼︎すげー‼︎と脇芽を憚らずに叫ぶ円堂。その姿に美月も笑ってしまう。

 

「ふふ、あはははは」

 

面白い、単純にそう思った。あれ程サッカーに真っ直ぐに、馬鹿になれる人間などそうはいない。

ひとしきり笑うと、柔らかく笑みを浮かべる。

 

「やっぱり、サッカーは辞められないな」

 

どんな事があってもやはり自分はサッカーを捨てられない。捨てたつもりになっていても自分にはサッカーしかないようだ。

 

(これって、いわゆる運命っていうのかな)

 

「スゴイよ! さっきのシュート、俺あんなシュート撃てるんだ」

「はは、そんなに褒められるものじゃないさ。これぐらいは練習すれば撃てるようになる」

 

興奮する円堂とは対照的ににこにことしながらも淡々と話す美月。

あっと円堂は思い出したようにかしこまった。

 

「あの、サッカー「いいよ」部に…………え?」

「だから、サッカー部に入るよ。白金美月、三年生だけどよろしく」

 

スッと手を差し出した。

 

「いやった〜‼︎」

 

円堂は素直に喜んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





主人公紹介(ゲーム風)

イナズマイレブンの方もよろしくお願いします!

名前 白金美月
所属 松陽中→雷門中
ポジションDF
属性林
選手データ
高い身体能力とテクニックを持ち、性格は穏やかで、誰に対しても敬意を持って接する。

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