さて、とりあえず永遠亭に行こうと思い立ったわけだが……
「どっからどう行けばいいのかわからねえ!!!」
そう、今から行こうとしているのは迷いの竹林の奥。通常、入ると二度と出て来れないとまで言われるほど危ない竹林に策無しには入れないし、入る気も起きない。
しかし、俺には便利な能力がある。『元気があれば何でもできる程度の能力』。ぶっちゃけなんでもありだが、あまり使いたくない。
なぜかというと、まあ、女体化するからに決まっている。いや、死ぬほど嫌なわけではないが、正直なにかクセになりそうで怖い。
ともあれ、この際は仕方ないだろうし、この前女体化したときに元に戻る方法――唾抜きをする――を見つけたから大丈夫だろう。
そう思い、俺は紫に魔改造されたティンホイッスルを取った。
さて、永遠亭の前に着いた。
移動方法はなんてことはない。何でもできるのだから永遠亭の前まで行きたいと考えるだけどうにかなるだろう。そう思い試したところ、案の定体が勝手に動き出した。途中なんか夜雀を蹴散らした気がするけど多分大丈夫だろう。たぶん。めいびぃ。
さて、どうやっててるよ氏もとい、輝夜をおどろかせようか、そもそも本当にTeruyoさん=輝夜なのか、悶々と悩んでいたが、ふと気付く。
「……あれ、どうやって入るの?」
いや、ふつうもこたんとかにここまで案内してもらって、そのまま入っていくパターンが外の世界の二次創作小説で多かったけど、ひとりで来たから連れて来てなんか無いし、他の妖怪は気にせず入っていくっぽいけど、元日本人の俺にそんな度胸ないし……
――ガチャ
あーれぇ。なんか扉開いたんですけど。でてきたウサ耳ブレザーも硬直しているしぃ。
「いや、あの……こんにちは?」
「あ、え、はい、こんにちわ……とりあえず、中にどうぞ……」
挨拶って大事だね。
「それで、うちに一人で訪ねてきた貴女は?ここに一人で来るのは妖怪でも大変なのよ?」
「ええと、紫さんに言われて挨拶回りを。このたび外の世界から越してきた水菊睡蓮と申します。」
「へぇ……あなたがね……」
奥に通してもらってとりあえずえーりん先生とはコンタクトをとれた。でも何故か俺のこと知ってるっぽい。
「あなたが、とは?」
「紫が『面白いのがくるわ』って。でもあなたがねぇ……」
えーりん先生には俺のことが面白いやつには見えないらしい。なにか複雑だが、まあみてくれは普通の一般人だしな。
「紫さん……俺が面白いって……」
「……俺?」
しまった。元に戻るの忘れてた。なんかえーりん先生も「俺っ娘なのね……」とか言ってるし拙いかもしれない。てか、中性的な俺の名前も十分悪いと思うんだが。
「……あー、すいません、今元に戻ります」
「元に戻る?」
そう言ってから唾抜きをすると、ポンッというマヌケな音を立てて男の体に戻る。
「ふぅ。やっぱりこっちのがしっくり来るな。あ、説明遅れましたが能力持ちです」
「…………確かにある意味面白いわ」
「それはどうも。で、挨拶回りって事で、屋敷の人に挨拶をしt……
――スパァン。
ここまで話したところで、障子がすごい勢いで開いた。
「えーりん、紫が言ってた面白いのが来たって本当!?」
「姫様、とりあえずノックぐらいはしてください」
うん、本命登場。