「それで、お前はいつの間にか美少女になっていたと。」
「はい、そういうことです」
「……おまえも大変だな」
慧音の「え”……」から数分、なぜか睡蓮と慧音は凄く打ち解けていた。
「そういう慧音さんこそ、いつも人里の面倒事解決お疲れ様です。」
事態はこうだ。
睡蓮が慧音に、幻想郷に来るまでの経緯、紫にされた事を四半刻ほどかけて入念に説明したところ、慧音も今まで里で苦労した話――愚痴――をこれまた四半刻ほどかけて話したところ、互いに苦労しているんだな、と意気投合したのだ。
「まあそれはともかく、今日はこの後はどうするんだ?」
「飯食べさせてください」
「あっ……」
因みに今は朝7時くらいである。
さて、朝ごはんも食べたしどうしようか、と睡蓮が考えていると、その答えが予想もしないところから浮上した。
「睡蓮、お前は昨日こっちに来たばっかりだろう?どうだ、私が里を案内してやろうか?」
そう慧音から提案された。
人里を良く知らない睡蓮にとってはすばらしい提案だ。
だが、当然慧音の手を煩わせることになるので。
「でも、慧音さんは大丈夫なんですか?」
と聞いてみた。
もし付き合ってくれるというならとてもありがたい。
「いや?今日は土曜、寺子屋は無いのでな。
……しかもまだ信用が完全にできたわけではないぞ?」
訂正、どうやら監視要員のようだ。
「さて、まあ案内しながらいろいろ聞きたいのだが……まずは、どうしてあのでっかい家に住んでいるかだな。どうやって手に入れたんだ?」
「あ、あれ紫さんから貰いました」
「……全て解決したな」
いっつぁゆかりんまじっく☆である。
「じ、じゃあ、どうしてお前は女の子に?」
「あ、なんか紫さんが」
「もういい」
……いっつぁゆかりんまじっく☆である。
さて、意気揚々と(質問されながら)人里にでてきた睡蓮だったが、慧音と一緒に歩いているということもあり、里の人の目大変引く。
しかも、初めて見る外来人。
「何あの人?なんで慧音さんと?」
という目で見つめられていた。
「とはいえ、どこから案内しようか……どこか言ってみたい場所はあるか?」
「はい、なら……食べ物を扱っている店を中心にお願いします。」
「さっき朝食食べたばっかりだろうが……はぁ……」
場所は変わって人里の中。
そこには、団子を片手に3個ずつ持つ、爆食系女子睡蓮ちゃんの姿があった。
「うんもぐもぐさっきの饅頭も美味しかったけれどむしゃむしゃこの団子もなかなかもきゅもきゅ」
「喋るか食べるかどっちにしろ!しかも食べすぎだし!!」
「え?」
「え?じゃない!お前が食べる量は異常なんだ!!」
「え?ふだんはこれの二倍くらいは軽く行きますよ?」
「マジか……」
ちなみに、お金は現代のお金を紫に換金してもらっている。
それでも、この量は食べすぎだと慧音は思った。
当たり前である。
「嬢ちゃん、初めて見る顔だが良い食べっぷりだな。よし、あと一本サービスだ!」
「わーい、ありがとうございますー」
そして何気に気に入られていた。
この店主が睡蓮が本当は男だと知ったときは心底がっかりするだろう。
しかも、睡蓮は今は美少女で、このサービスを受ける望みがあって行動している。
あざとい。
「もぐもぐ……ふう。ご馳走様でした!」
「あいよ!また来いよ!」
一人の男が手玉に取られた瞬間であった。
「さて、たくさん食べたし今日はこのあたりで帰りたいんですが」
「食べるだけ食べて……もう気にしないほうがいいか」
慧音は今日半日ほどで睡蓮の扱いを覚えたようだ。