プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

6 / 43
第6話 かけだし冒険者

 サンクの家に着いたころにはもうすっかり夜になっていた。家のなかに入ると、ある部屋に石像が2体あった。サンクの両親だ。フィリナはそれを見て足を止めた。

 

「おれの父さんと母さんなんだ」

「石にされているわね」

 

 2人は石造に近づきながめた。石となった両親は、どこか物悲しく悲惨さがただよっていた。2人は、このようなことをした悪魔がはやく倒され、両親にもとの姿に戻ってほしいと思ったのだった。

 

 

 

 そしてその夜はタダ宿することができ、やがて朝となった。きのうはたくさん歩いたせいかよく眠れた。サンクはいきなり旅することになってしまい、いろいろ準備を整えたくて家に立ち寄ったそうだ。そして家のなかで探しものをしたりいろいろやっていた。フィリナは次いく町などを地図で見たりした。サンクの準備はけっこう手間取り、その日もサンクの家に泊まることになってしまった。

 

 

 

 次の日の朝、起きて準備をしたフィリナが、「そろそろいきましょう。修行があるし悪魔を探さないといけないでしょう」「あっ、ああ!そうだな!」またしばし留守にすることとなるのでサンクはいろいろ家のことを片付けて2人は出発した。

 

 

 

 サンクの町の近辺で、まだ見ていない方面にいった。そこにも小さいが町があり、2人は悪魔のことをきいてみた。だがやはり悪魔のことはなにもわからなかった。

 

「このあたりの人は誰も知らないらしいわ。ひょっとして悪魔はもうこの辺りにはいないのかしら」

「どこかよそへいっちゃったのか?」

「そうねぇ……ここにいても無駄みたいだしほかへいきましょう」

 

 

 

 そして2人はまた別の町を目指すこととなった。いまいる町から北西に、少し遠いがアルカの町というわりと大きい町があった。2人は今度はそこを目指し歩くことにした。民家や店がちらほらあるだけのほとんど荒野の道のりを歩き、途中にあった宿屋に泊まりながらさらに歩き、ようやくアルカの町が見えてきたのは夕方に近い頃だった。

 アルカの町はこれまでの町より大きく、いろいろな店があった。2人はさっそく宿を探し、泊まることにした。今度の宿はこれまでとは違い、割と大きかったので風呂場もあった。風呂のお湯はある程度までは無料でそれ以上は追加料金だったが、2人で使うのに十分な量はあった。風呂からあがったフィリナは、まさか風呂上りにタイツをはくわけにもいかないのでパジャマであった。しかもパフスリーブに膝丈パンツのやけにかわいいパジャマで、サンクは思わずひきつけられてしまった。

 

 2人は明日の相談をし、店を見にいこうとか食べにいこうとかいろいろ相談していた。この町ならギルドもあるだろうからもちろんそこにもいくこととなった。

 

 

 

 そして次の日の朝は2人は町で買い物してあちこち見てまわった後にギルドに立ち寄ったのだった。

 

 ギルドのドアを開けるとすでに何人かがいた。かれらは2人と違って大人で、強そうだった。どうやらパーティを組んでいるらしい。

 「おやおや、子供の冒険者かい?それともなにか依頼にきたのかな?」と若い男。「そりゃそうよ。この2人にこなせそうなクエストなんてこのギルドにゃないだろう」と大柄で屈強そうなおっさんがいい、みんなで笑った。

 2人はムッとして、「おれたち、このギルドに依頼を受けにきたんだ!」とサンクは叫んだ。「そうよ!もういくつかの依頼をこなしてるんだから!」とフィリナもいう。ギルドのマスターが、「じゃあきみたちギルドのメンバーなのかい?」ときき、「はい、これを見てください」と服のバッジを見せた。マスターは納得し、「それでは、きみたちにもあの依頼を頼もうかな」とマスターはいった。2人は?と思う。

 若い男が、「おいおい、マスター、この2人にあれは無理なんじゃないのかい?」という。「でも、1人でも多くに頼んだほうが早く解決するだろう?」というマスター、「そりゃそうだけど……」「まぁ、確かにちょっと心配ではあるが……」とマスターはいうが、「どんな依頼なんですか?」とフィリナはきいた。

 

 マスターは、依頼の内容を話した。なんでもこの町の西に住む悪魔が出会った人を何人も殺していて、その敵討ちをしてほしいという。悪魔はとても凶悪だという。2人はそんな悪魔が相手と聞いて少したじろいだ。

 「もちろん、危険なクエストだが、その分報酬もでかい。どうする?やるかい?」2人は顔を見合わせた。波打った髪の女が、「ほらごらん、あんたらには無理だったろう?」という。「それはやってみないとわからないわ!」とフィリナは怒り、「そうだよ!おじさん!おれたちその依頼受けます!」とサンクもいった。マスターは「あ、ああ、それじゃ、これがその悪魔の討伐書だ」と紙をくれた。「おいおい、大丈夫かぁ?」「悪いこといわないからやめといたほうがいいぜ」と笑われ、2人は怒ってそのギルドを出た。

 

 

 

「もうっ!なによ!あの人たち!見てらっしゃい!きっとこのクエストもこなしてあの人たちをびっくりさせてみせるんだから!」

「そうだな!フィリナ、これからこの悪魔のいるところまで討伐にいこうぜ!」

「ええ!」

 

 

 

 そして2人は討伐に向かった。町を出て、地図を見ながら、「たしかここを西に進めばいいんだったな」としばらく荒野を歩いていく。そして話に聞いたあたりまでやってきたが悪魔らしき姿はどこにも見えない。2人はとりあえずそのあたりを歩いてみたり、座り込んで待ってみたりした。

 

 

 

「なかなか見つからないな、その悪魔」

「そうすぐには見つからないわ、このあたりにいれば出てくるかもしれないから待ってみましょ」

 

 悪魔が出たらまた戦いが始まるのだ。きょうの敵もこれまでのようにうまく倒せるといいが。たしかギルドマスターは何人も人を殺した凶悪な悪魔だといっていたことを思い出した。サンクは少し不安になった。

 「……なぁ、フィリナ、おれたちさっきは安受けあいしちゃったけど、その悪魔が出たらほんとに勝てるのかな?」とサンク。フィリナは、「う~ん、そうね。たしかにちょっと心配だわ。でも、どんな敵が出たとしても油断しないように全力で戦いましょう!」「そうだな!」サンクも気を引き締めた。「クウッ!」ポロも気合を入れた。「ポロ、お前も手伝ってくれるのか!」とサンク。「クウッ!」「そうか!ありがとう!」とサンクは笑う、そのときであった。2人の座る場所に大きな影が覆いかぶさった。2人が振り返るとそこには大きな悪魔がいた!2人は驚き、その悪魔が紙にかかれたものと同じであることを確かめた。

 「出たな!」サンクは剣を構え、フィリナは杖を持ち、ポロも戦闘体制に入った。

 悪魔は手を前に出し、なにか光をため始めた。フィリナはハッとし、「サンク!ポロ!危険よ!逃げて!」と叫んだ。サンクとポロは「えっ!?」と驚き、あわてて逃げた!その瞬間、2人のからだギリギリのところで悪魔から放たれた光が爆発を起こしていた!サンクとポロはびっくりして頭が真っ白になっていた。フィリナが、「よくもやったわね!」と杖を出し、光を放った。光は悪魔にあたったが、あまりダメージを与えていないようだ。「あまりきいていない……」フィリナは唇を噛みしめた。

 そして、悪魔の放った技は今度はフィリナに放たれた!「キャア!」フィリナはあわててよけたが、立て続けに攻撃を受け、吹き飛ばされてしまった。「フィリナ!」サンクは叫ぶ。フィリナはダメージを受けながらもよろよろと起き上がった。「こいつ!」サンクは剣を持ち悪魔に斬りかかり、ポロも悪魔に噛みついた。だが、悪魔にはあまりきいておらず片手で彼らの攻撃をはねのけた。「うわあっ!」サンクとポロは遠くまで跳ね飛ばされた。

 フィリナは再び立ち向かい、「これでどう!?ダークインパクト!」と今度は杖から黒いボールを放ち、悪魔にぶつけた。悪魔は技を受け、ダメージを受けたようだ。「やった……」フィリナはほっとしたが、悪魔は自らのからだを白い光で包み、回復していった。フィリナはそれを見て驚く!「エスパーと同じ技が、使えるのね……?」フィリナは困ったようにいった。

 サンクとポロは「いててて……」と立ち上がると、再び悪魔に向かっていった。「サンク!ダメよ!その悪魔のレベルは相当高いわ!」フィリナは精神統一すると、「念力で投げ飛ばしてやるわ!」といい杖を突き出した。悪魔のからだが光に包まれ、からだが浮き上がった。悪魔はその力を振りほどこうと力んだ。フィリナは念力をかけ続けながら、「すごい負荷だわ……」と苦しそうだ。

 やがて悪魔は両手を広げ、フィリナの念力を振りほどいた!「キャアッ!」フィリナはその反動で跳ね飛ばされた!

 サンクとポロはまた立ち向かい、「その悪魔に噛みつくんだ!」と攻撃!だが、再び跳ね飛ばされた。

 フィリナはよろめきながら立ち上がり、サンクの元へテレポートした。「この敵は危険だわ!」悪魔は再び手に光をため技を放とうとしている。フィリナはサンクの手をとり、ポロの元へテレポートし、ポロを抱き上げた。「いったん逃げるのよ!テレポート!」と叫び、彼らのからだが消えたのと、悪魔の技が放たれたのは同時だった。

 

 

 

 そして気づくとアルカの町の宿の前にいた。サンクは驚いていた。「テレポートもできるのか……」

 フィリナは残念そうに、「今回の依頼は強すぎるわ。わたしたちにはまだ難しすぎたみたい」といった。「じゃあ、あきらめるのか?」「戦うとしたら次はもっと強くなってからいくべきね」「悔しいな!よぉし!きっともっと強くなって次はあいつを倒してやる!」「とにかく、今日はもう休みましょう」とフィリナは宿屋に入っていった。

 サンクは、これまで自分にいろんな強い技で敵をやっつけるところを見せてきたフィリナがまさか勝てない敵がいるとは思わなかった。エスパーは決して無敵なわけではなく、そしてやっぱりフィリナもまだまだ1人前ではないのだな、とサンクは思った。

 

 

 

 宿屋で2人は話をした。「あの悪魔は回復技を使えるからわたしたちでは勝つのは難しいわ」「じゃああいつも超能力がつかえるってことか?」「本当の超能力とは違うわ。悪魔は心がないからエスパー技が使えないはずよ。回復も精神依存じゃないし。でも、あの光は知性依存じゃないとはいえ本物のエスパー技と同じ属性を持つわ」いっていることはサンクにはよくわからなかったが、なんだかとても強い敵なんだと思った。

 

 2人は宿屋で眠り、体力を回復させた。

 

 次の日、2人はきのう悪魔に勝てずに逃げ帰ってしまったので、きょうはどうするか相談していた。「装備を整えていってみるとか、作戦を立てていってみるとか……」「でもいい装備はそれなりに値段もするわ」「ん~っ、どうにかして勝てないかなー?」サンクは悪魔の討伐書を広げた。すると、紙に“討伐済”の文字がついていた。2人は驚き、「どういうことなんだ!?これ!」とギルドにききにいってみた。

 

 

 

 ギルドマスターは、「実はきのう他のパーティがその悪魔を討伐してしまったんだよ。ほら、きのうきみたちがここにきたときにいたあのパーティだよ」という、2人はそれを聞き、「あっ!あいつら!」と思い出した。なんでも2人が町に戻った後にあのパーティが悪魔を討伐してしまったらしい。2人は悔しがるが、同時に1人前の冒険者との力の差を思い知らされた。


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。