──悪魔──。魔物のなかからごくまれに悪魔が誕生する。悪魔は世の中の負の感情が集まったものといわれ、世の中にさまざまな災いをもたらす。悪魔には心がなかった。
荒野にやってきた2人。サンクははじめての悪魔との実戦に少し緊張していた。
はたしてこの荒野に悪魔は現れるのだろうか?悪魔が現れなければ報酬はもらえないが、いたら戦わねばならない。悪魔に会いたいような会いたくないような複雑な気持ちだった。よこのフィリナを見、フィリナはエスパーだといっていたが、力はどのくらいなんだろう?と思った。自分たちは悪魔に勝てるのだろうか?もし負ければかれらの身が危険だった。
サンクはいつでも戦えるように剣を取り出した。フィリナもバッグからなにかを出した。
「なんだ?それ」「杖と鞭よ。わたしの武器なの」杖はバッグから出されるとぐんぐんと150cmくらいに伸びた。杖はフィリナのエスパー技の威力を増幅し、鞭はエスプを込めてたたくことでその人のエスプの能力に応じたダメージを与える力があるそうだ。
そのとき、ポロが「ワウワウ!」とないた。
2人が振り返ると、目のまえにぼんやりと煙のようなものが出ていることに気づいた。するとその煙は見る見る形をはっきりあらわし、巨大な人魂のようなものに変化した。
「あれは!」サンクはギルドから受け取った紙を見た。探している悪魔と同じであった!「とうとう現れたわね!」フィリナは杖をかまえた。サンクも剣をかまえた。
「えいっ!」フィリナは杖の先から白い光を放った。サンクもとりあえず剣で悪魔に切りかかった!
だが、「あれ?」剣はスカッと悪魔のからだを通り越し、当たった感触がまったくなかった。「なんで……?攻撃できないぞ」と不思議がるサンク。フィリナは、「その悪魔はスピリット、つまり実体がないの。物理攻撃はきかないみたいよ」「そんな!」サンクは驚いた。
フィリナは、「ライトアタック!」「ホワイトブラスター!」と次々と光る技を放ち、悪魔は「ギャオゥ!」とさけびをあげシュウゥゥ……と消えてしまった。そのあとに、ポトリと魔石が落ちた。
フィリナは魔石をひろい、「フゥ、思ったより弱くてよかったわ」という、サンクはポカンとし、「すごい、強いんだな」といった。「わたしなんかまだまだよ。さぁ!ギルドに戻って報告しましょ!」とフィリナ。
町まで歩く2人。すでにあたりは夕方になっていた。
「でも、おれは役に立たなかったな」
「今回は分が悪かっただけよ」
そしてギルドにつく。ギルドのマスターに報告した。「うむ!悪魔を討伐してきたようだな!先ほど依頼主から連絡があって娘さんがもとに戻ったといっていた」「ほんとですか!?」よろこぶ2人。「最初だから簡単そうなやつを選んであげたんだが、それにしてもはじめてのクエストをちゃんとこなすとはなかなか筋がいいぞ。どれ、魔石を見せてもらおうか」2人は魔石をマスターに渡した。マスターはモノクルのようなもので魔石を目に近づけたしかめていたが、「たしかに。これはあの悪魔の魔石にちがいない!では報酬を払おう」と2人にお金を渡した。2人はよろこんだ。
魔石は、使用方法がちゃんとあり需要があるそうだ。なにに使うのか2人にはわからなかったが、魔石を受け取ってマスターはうれしそうだ。「フヒヒヒ……」マスターは魔石を握り締めギルドの奥の部屋に入り、ドアをバタンとしめてしまった。
2人はギルドを出て外を見、「もう暗いし、お金も貰ったことだし、宿屋を探さない?」「そうだな」と宿屋を探すことにした。
小さくさびれた感じの宿屋を見つけ入る。
宿屋の受付のおばさんが、「ハイよ、今夜一晩ね。1人部屋2つだと200マール。2人部屋1つだと150マールだけどどうするね?」「それじゃ、2人部屋のほうでいいです」とフィリナ。サンクはフィリナを見た。おばさんは2人についてくるようにいった。2人がついていくとシーツをわたされ、「ここはすべてセルフだから、ベッドも自分でやっておくれ。部屋には特になにもないけど、なにか必要なものがあればフロントで貸し出ししてるから」おばさんは2人に鍵をくれ、いろいろ宿の説明をして戻っていった。
2人はあてがわれた番号の部屋へいきドアを開けた。ベッドの2つあるこじんまりした簡素な部屋だった。フィリナは明かりをつけた。「値段が安いもの。こんなものね」そしてさっそく受け取ったシーツをベッドメイキングする。フィリナはベッドの硬さなどを確かめた。寝るには不自由なさそうだ。
フィリナはベッドに座り、「サンク、あなたがきょういってた悪魔のことだけど、とりあえず出没した場所の近くを探せば見つかる可能性が高いと思うの。だからサンクの住んでた町の近辺を探してみることにしない?」といいフィリナは地図を指差した。サンクの町は一方は海だが左右は森や草原に囲まれておりそこを探そうということらしい。「ああ、いいぜ」「このあたりにも町があるわ。それではあしたさっそくいってみましょう」フィリナはベッドに入る。「そうと決まればあしたは早く起きたほうがいいわ。明かりを消してもいい?」「えっ?あっ、あぁ」サンクもベッドに入り明かりが消された。しばらくすると、フィリナはよほどつかれていたのか寝息が聞こえた。サンクはなかなか寝つけなかった。
……
朝になり、フィリナは目がさめた。「う~ん」と伸びをし、よこのサンクを見た。サンクはまだ寝ていた。
「サンクったらまだ寝てるわ。きょうはほかの町にいきたいのに」フィリナはサンクをゆすり、「サンク、起きて、朝よ」と起こした。サンクは「うう~ん、眠いんだよ~」ともがいた。「もう、仕方ないわね」フィリナは1人で仕度をし、外に出かけた。
少し町を見てまわり、店に入っていろいろと買い物をしたりした。そして帰る途中、フィリナはきのう貰ったギルドのバッジをながめた。
フィリナは宿に戻った。サンクはようやく目がさめたようで、フィリナはサンクにきのういった場所へ出発しようといった。
2人は朝食を済ませ、この町を出た。サンクにとっては、きのうきた道を引き返すこととなる。ちらほらと、街道をいきかう人たちや馬車とすれちがう。
そして、昼すぎ、目的の町についた。そこはサンクの町のそばにある町で、サンクの町と同じようなちっぽけなさびれた町であった。でも一応ギルドはあるようだ。
「悪魔のことはギルドにきくのが一番よ」2人はギルドをたずね、サンクのいっていた悪魔のことをきいてみた。そこのマスターは、そうゆう悪魔の話はこのあたりでは聞いたことがないといった、が、「その悪魔とはちがうが、いまちょうどこの町で倒してもらいたい悪魔がいるんだよ。きみたちたしかギルドメンバーだといったね?」「はい、そうですが」「ちょっとバッジを見せてもらえるかい?」2人はバッジを見せた。
「……なるほど、なるほど。きのう登録したばかりで腕前はこのレベルと……」マスターはプレートに映った画面と照らし合わせていた。
「ちょっと強いかもしれんがきみたちなら勝てんこともあるまい」マスターは2人に依頼の内容を説明し、悪魔のかかれた紙を渡した。
「この悪魔はこの町の南の森を棲家にしているという情報があるぞ。どうする?ひきうけてみるかい?」
「わたしはかまわないけど、サンクは?」
「おれもいいぜ」
「そうかい?ありがとう!助かるよ!この悪魔は牙が鋭いので噛み付かれることにだけは注意して戦うようにな!」
「えっ?」
2人は、少し不安になったが、依頼された南の森までいってみることにした。