プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

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第28話 海辺のサバイバル(節約)生活Ⅰ

 その後一行はまた旅を続けたわけだが、暑いのでいまではほとんど朝と夕方しか歩かなくなっていた。そしてたどり着いたその町でも依頼を受けた4人。今回は町に悪魔や魔物などの外敵が入らないよう見張りをする仕事だった。しかも夜勤だ。壁で囲まれた町はよかったが、この町はそうでないので見張りが必要なんだそうだ。

 4人は夜中になるとだんだん眠くなってきたが、引き受けたからにはと見張りを続けた。

「なにも異常ないみたいですね」「退屈な仕事だな」とユードーはあくびを噛み殺しつつ。

 同じく見張り仲間のおじさんが、「でもおれたちが見張ってないと町の人間が危険な目にあうかもしれんからな。前に一度魔物が町に入り込んで人を襲ったことがあったときは大変だったんだ」

 それを聞き、サンクは思い出したように、「うちの町にも悪魔が入り込んでおれの両親が襲われたっけ」といった。

「本当か?そりゃ気の毒に…」とおじさん。

「だからってこんな夜中に毎日見張りとは大変だよな」とユードー。

 おじさんは、「そうだな。だがいまはまだ高価で普及してないが、じきにバリアーが完成すれば町に悪魔は入れなくなるそうだ。そしたら見張りは必要なくなる」といった。なんでもバリアーで町全体を覆った町もあり、この町でもその計画が進行中なのだそうだ。

 おじさんの話を聞いて、(うちの町もそんなのがあればおれの親も襲われずにすんだのかな…)とサンクは思った。

 

 朝方、ようやく仕事は終わり、4人は給金を貰い目をしょぼつかせながら宿屋にもどった。朝日が眩しい。そしてその後はぐったりベッドに倒れ込みすぐに眠った。

 

 

 

 夕方には町を出てまた旅を続け、そして一行は次の日の昼頃にようやく港町アレスポッドに到着した。

「うおー!やっと着いたー!」雄たけびをあげるユードー。「見て!船があるわ!」向こうには港があり、そこには海がキラキラと輝き船が浮かんでいる。アレスポッドはこの島の南端に位置し、町の西側には火山をいだく、国有数の港湾都市である。「じゃああそこから船に乗ればエドラント大陸までいけますね」「さっそく見にいってみよう!」サンクたちは弾む足取りで港に向かって歩いていった。

 

 港に近づくと船がより間近で見え、あたりは船旅をしてきたと思わしきいろんな乗客で賑わっていた。その光景に4人は珍しそうに見入っていた。

「そうだ!おれたちの乗る船は…」4人は船のチケット売り場にいき、探してみた。だが──。その切符代を見て4人はあぜんとした。その金額が一番安いものでも想像以上に高かったのである。

 ユードーは震えながら「切符代4人で10万マールもするじゃねえか!おれたちゃそんなに持ってねーぞ!」

 前に占い師のところで大金を払って以来、ただでさえ4人は手持ちが減って金欠気味だったのだ。

「でも考えてみれば大陸にいくんだからそのくらいは仕方ないでしょうね」とラファエロ。

 4人は困り、悩んだ。悪魔はエドラント大陸にいて、これに乗らなければそこにいくことはできないのだ!

「コンパスをお願いします」

 サンクはコンパスを取り出し、みんなでそれを眺めてみた。この前見たときは、コンパスの針は東をさしていたがいまはわずかに北東のほうを示している。4人があのときより南へ移動したからだろうか。どちらにしても、悪魔がいまでもエドラント大陸のほうにいるにはちがいないのだった。

 ユードーはう~んとうなりやがて決意したように、「~~仕方ない!この船に乗れるよう金を貯めるか!」サンクとフィリナも賛同し、「そうよ!そうしなきゃ悪魔は倒せないわ!」「ああ!おれも両親を元にもどしたいし!」といった。

 

 そうと決まればお金を稼がなければいけない。4人はギルドの場所がわからなかったので近くにいたエプロンドレスの町娘にきいてみた。そしてギルドについて依頼を探す。いまは討伐の依頼が少ないようで農家や店の手伝いなどの雑用クエストばかりだったので4人はそれを受けることにした。受付で申し込みをすませ、あしたからさっそく働くこととなった。

「さてと、これでやるべきことは終わったし」「次は…」

 みんなは町の観光へと繰り出した。この町はなかなか魅惑的だった。エメラルドの海の綺麗な浜辺、それに港町ということもあり外国の珍しい品も売っている。お金が必要な4人には買えなかったが、それでも見ているだけで楽しかった。4人は夕食時まで町を見てギルドにもどった。今回のギルドには無料宿泊所があったのでそこに泊まることにしたのだ。

 

 

 

 翌日4人は依頼に出かけ、雑用クエストをこなし、ギルドで報酬を受け取った。が、その金額にガッカリしたようにコインをつまみ眺めた。

「こんなもんか、まぁ時間も短かったししょうがないかな」

「でもここのクエストにはそんなのしかないですしね」

「こんなんじゃ10万マール貯めるのにいつまでかかるんだ!」4人は顔を突き合わせてう~んと悩んでいた。

 フィリナが、「これからは徹底的に切り詰めた生活をしないとだめなんじゃないかしら?」

「…そうだな。そうすりゃ少しは早く金が貯まるだろうし」

「がんばればなんとかなるよ!」

「うん!」

「よぅし!」

 みんなは船代を貯めるため、これからむだな出費を減らす生活をすることを決意した!

 

 まず、4人は図書館にやってきた。そして食べれる野草を調べたり、狩りの仕方などを調べた。

 もう手持ちの食材もだいぶ残り少なくなっていた。出費のなかで大きな割合を占めてるのは食費だ。そこで4人は次の夕食からできるだけ自分で食材を取り始めることにしたのだ。魚を取るために罠を仕掛けたり、みんなで食べられる野草を集めたりした。植物をよく観察し、食べられるものを摘んでいく。朝も昼もろくに食べてないからもうお腹もペコペコだ。

 その途中……

「あ」4人は鳥の魔物が歩いているのを見つけ、じ~っと眺めた。

 ……魔物は動物よりずっと知能が高いので食肉目的での畜産は禁止されていたが、たまに魔物をとって食べる人もいた。でも4人にはさすがに魔物を食べることはできなかった。4人はムクムクと太ったカモみたいな魔物は見なかったことにした。

 時間まで食材集めをし、みんなで夕食の支度を始めた。ちょうど川原にいいところがあったのでそこで火を起こし、料理をする。少ないが魚が罠にかかっていたのでそれでスープを作り、夕食を食べた。

 食べ終わり、「うーん…これから先しばらくはこんな食事か…ちょっと量が物足りなかったが仕方ないな」

 野草は思ったよりおいしかった。あすの朝も食事を用意しなければならないのでまた罠を仕掛けておいた。もう日が暮れてきたが4人は宿屋にはいかずテントの用意をしていた。

「もったいないからな!宿もやめよう!」

 ギルドには1日しか泊まれなかったので、4人はきょうからはテントで寝泊まりすることにしたのだった。

 

 

 

 次の日もクエストにいった4人。だが、きょうのクエストは依頼者の都合で予定よりもだいぶ早く終わってしまった。食材や薪など集める時間を考慮してもかなり時間は余るし、それにこの町にきたときから気になっていた。綺麗な海に我慢できなかった4人はきょうは海水浴にいくことにしたのだった!

 

 砂浜には屋台が出ており水着姿の人もたくさんいる。4人も水着に着替えている。だが、この世界の水着はダサかった。上はドレスの下に着るシュミーズみたいなタンクトップに下はドロワーズをピッタリさせてそれらを厚くさせたようなもの。男用は女用の下だけで少し色やデザインが男性っぽいだけ(でもビキニはあった。主にマントやブーツなどと合わせたりしてファッションで着るためのものであり、特に泳ぐときに着るものではなかった)。フィリナもそんな水着なのである。……にもかかわらず。

 サンクとユードーとラファエロはゴクッと見入っていた。

 普段よりぴったりした服のため、胸の丸みがありありと浮き上がり、普段よりも大きく見える。フィリナの年だとまだ胸のないものもいる。心なしか、サンクが最初出会ったときより少し大きくなったようだ。対してウエストは、普段からベルトをしたときの締まり具合からその細さはなんとなく予想がついていたものの、いまはそのかなり細いくびれのラインがくっきり現れている。胸の膨らみは、その細いウエストとの対比でより際立って見えた。そしてお尻も……普段のローブとちがい、ぴったりしたパンツを着ていることでよりラインがわかり、女性らしいぷりんとした色気のある丸みがいつもよりもわかるのだ!

「ほぅ」ユードーは感心するように見、サンクとラファエロは思わずカアッと顔を赤らめていた。フィリナも、自分のそんな姿に薄々気づいていてうつむき顔を赤らめていた。一応持ってきていた水浴着を着てみたのだが、成長し、去年のものはすでに小さくなってしまったようだ。より生地がパツパツして、フィリナは少し恥ずかしさを感じていた。

「おっ泳いでくるわ!」海に向かうフィリナ。「あっ、おい!」サンクたちも慌ててそのあとについていった。やはり、フィリナの姿は人目を引いていた。男用の水着は下だけであるが、たまに男用でも上半身を隠すものがあり、ラファエロはそのタイプだ。

 みんなはパシャパシャと海に入ってゆき遊んだ。海で泳いだり、キャアキャア水のかけっこしてはしゃいだりと楽しんでいた。ユードーは沖のほうにいって1人でバシバシ泳いでいた。ポロやチビドラも砂浜で楽しそうに遊び、アカザカナは久しぶりの海で楽しそうに泳いでいた。フメイジュは浜辺で日光浴していた。

 

 あっという間に時間は過ぎ去り、そろそろ夕食の支度をする時間となり4人はきのう泊まった川原へともどっていった。

 

 

 

「とにかくクエストだ。クエストを受けなければ金はたまらない」4人は次の日からもギルドでクエストを受け、こなした。加えて節約も続けていた。野草を探したり、魚をとり、貝をとり、薪拾いして自炊する。食料探しも下ごしらえも家事も簡単ではなかったが、みんな涙ぐましい生活を文句1ついわずしていた。すべては船代を稼ぐために!それを見ながらサンクは「自分のために…」と感動して泣いた。

 おかげでこの町での出費はまったくなくて、クエストでもらったお金はすべて貯金に回せたが、10万マールにはまだだいぶ足りなかった。

 お金を数え、「まだ半分にもならないですね。10万まではもう何日かかかりそうです」

「いま受けてる雑用クエストじゃ報酬が安いものね。なにか手っ取り早くお金を稼ぐ方法はないかしら?」フィリナはう~んと考えた。

「ふむ、金を稼ぐ方法か」ユードーがいい、「なにかあるの?」と振り向くフィリナ。

「うむ」ユードーはこそっとフィリナに耳打ちし、「ちょっとそこの店で脱いでくればいい」フィリナは真っ赤になり、ライトアタックでユードーを攻撃した!エスプ防御力の低いユードーは大ダメージだ。

 ピクピクと伸びているユードーは放っておいて、「とりあえずこれからもクエストをこなして出費を抑える生活を続けていこう!」「そうね!」3人は頷きあった。

 

 

 

 今晩の食料も当然自力調達だ。このところ食事は毎日魚貝や野草のスープばかりだ。

「この草は食べられるやつだ!」「うーん、この植物はダメだな。花が咲いてしまって食べられない」図鑑で調べた植物を吟味しながらかごに入れていく。

「この実はおいしそうだ」甘いものが少ないのがつらかったが果物がなってるのを見つけてからは喜び、たまにデザートに食べたりした。

「これだけじゃまだ足りないからもう少し探して!」

 4人はまた貝や植物を集めていくが、その途中、「ん?」サンクは土手に興味を惹かれるものを見つけた。なんと、それは鳥の巣らしきもので、なかにいくつかの卵が入っていたのだ。

「みんなーちょっと!」サンクはみんなを呼んだ。「どうした?」とやってくる。「これ!」みんなは眺めてみてわあと驚いた。

「卵だわ!」「鳥の巣か、これは」

 それを見て、4人はたまには卵も食べたいと思った。卵があれば料理のバリエーションもかなり広がる。

「ちょうどいいな!これを取って食べよう!」サンクは喜び手を伸ばし、取ろうとする。「でもそれ、鳥かなにかがかえそうとしていたんじゃないですか?」とラファエロ、「えっ」サンクは手を止める。「じゃあ割るとどうなるの?」「そりゃあ、育ちかけの雛とかが出てくるだろうよ」「うっ」

 4人はう~んと複雑な顔をした。卵は食べたかったが、もしなかから雛が出てきたら怖い。

「…やっぱりやめよう」結局、卵を取ることはできず、そのままにしておいた。

 苦労してようやく材料も集まり、みなで協力して夕食を作り、食べた。心なしかこのところすべて食事を自炊するようになり料理が上手くなったようだ。

 食後はみんなで後片付けをする。灰や植物から作られた洗剤で食器を洗った。

 その後、4人は歩いていって川にきて入り、洗濯も兼ねつつからだを洗った。この町は火山があるため、ちょっと足を伸ばせば温泉の混じった川があるのだ。でもお湯だけなのでフィリナは風呂くらいちゃんとしたとこで入りたい…と川でからだを洗いながらちょっと不満だった。

 

 

 

 次の日からもまたクエストを続けたが、そんなとき、ユードーはなにか見つけたようだった。それは、闘技大会の知らせで、ちょうどいまこの町で開催されているのだ。ほかの部門はもう終わってしまったが、闘技大会筋力部門はこれから開かれるところだった。ユードーはおおっと喜び自分もその大会にエントリーしたのだった。大会にはこの町の人でなくとも参加できるようなのだ。そして、なんと優勝すれば賞金も貰えるらしい!そうなれば船代のためにいい足しになるし、サンクたち3人もユードーの大会参加にがんばって!と応援した。でもユードーにとってはなによりも自分のカを競えることこそ一番意義があった。

 それから……またクエストを受けにギルドに寄ったとき、フィリナにもいい話が舞い込んできた。それはテレポートのできるエスパーを御用達にしている仕事、運送屋である。この町お抱えのエスパーの1人が病気で寝込んでしまいちょうど困ってたとこらしい。テレポートできるエスパーは貴重なので、結構いい報酬が貰えるようだ。配達先のリストを見たところ、フィリナたちが立ち寄ったことのある町もいくつかあった。フィリナは喜んで仕事を引き受け、あすからさっそく働くことになった。

 

 次の日、サンクとラファエロはいつもの雑用クエストに、ユードーは闘技大会に、フィリナは運送の仕事に出かけた。

 依頼主はフィリナにいろいろ仕事の説明をし、運ぶ荷物を渡した。台車に乗せられたそれらの荷物はすべて袋に入れられだいぶ圧縮されていたが、それでもかなりの数があった。足元の床には不思議な円が描かれている。その円を使った配達先の町の運送屋までの直通だそうだ。

 テレポートは触れて光で包まなければできない。袋にはすごい量が詰め込まれているのでかなりエネルギーがいる。フィリナは荷物の山に触れオーラで包みテレポートした。

 運送屋の受付の前で──フッと現れたのはアレスポッドの運送屋にあるのと同じ円の上だった。運送屋の人たちはフィリナの到着を待ちかねていたようで、喜んでフィリナに声を掛けてきた。フィリナはアレスポッドからの書類を渡したり、サインを貰ったりして無事に仕事はすませられた。

 それからフィリナは、外に出て町を少し散策した。前にも通ったことのある町で、ここへきたのはもう1ヶ月ぶりくらいだろうか。前に通らなかった場所を見たりして、満足してからフィリナはアレスポッドへとテレポートした。

 アレスポッドのギルドの前。「はあっ」グタッとし、フィリナは肩を落とした。2回続けての長距離テレポートはとても疲れる。MPももうほとんど使い切ってしまった。フィリナはギルドに報告し、報酬を貰い、いつもの場所にもどっていった。みんなはまだもどっていなかったのでフィリナは適当に野草採りや薪拾いでもしながら過ごした。

 そのうちにサンクとラファエロ、そして大会を終えたユードーももどってきた。サンクはきょうの大会はどうだったかとユードーにきいていたが、ユードーは無事に勝ったそうだ。

 


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