4人は元気をなくし、とぼとぼと森の中を出口を探して歩いた。もちろん花も見つからない。すると……歩いていて4人は目の前に植物の障壁があるのに気づいた。さっきと同じだ。4人はそれを見て戸惑った。
「これは……つまりおれたちはまたもとの場所にもどってきたってことか?」
4人はガックリし、へたり込んだ。
「ええい!せっかく森を歩き回って出口を探したのに!」ユードーは拳で植物の壁を殴った。すると……拳は空を切り、植物を殴った手応えがなかった。
「!?」
ユードーはびっくりし、3人もそれに驚いて見入った。「これは……」 ユードーはもう一度恐る恐る植物に手を伸ばした。やはり触った感触はない。ほかの3人も植物に手を伸ばして確かめ、驚いていた。
「触れない……」
「これ、本物の木じゃなくて幻だわっ!」フィリナは叫んだ。
「幻!?」
「ええ、だれかが超能力で人に幻覚を見せているの」
「超能力で?」
「気づかなかったわ……」フィリナは木を確かめながらいった。
「つまりぼくたちがこれまで歩いてきた景色が幻に変わっていたわけですか」
「どうりで迷うはずだぜ!」
「いったいだれがそんなことをしてるんだ!?」
フィリナはあたりを見回した。
「わたしたちに幻覚を見せているのはだれ!?姿を見せなさい!!」まるで軍隊の指揮官のようによく通る声でフィリナは叫んだ。
するとしばらくして……
上の木々の間から、漏れていた光がちらりちらりとゆっくり瞬いたことに4人は気づいた。
光はまるで生物みたいにいたずらっぽく動く。
4人はなにかと思った。
すると、その光は集まりだし、やがていくつかの大きな光になったかと思うといきなり4人の前に飛んできた。
「わあっ!」「なんだ!?」
驚いて目を閉じた4人だが、目を開けるとそこには何匹かの白いからだをした2本足の生物がいた。
「……魔物です……」ラファエロはいった。
「あなたたちがこれまでわたしたちに幻を見せていたのね」とフィリナ。
「クルル……」
ユードーは怒って、「おまえらのせいでこれまで散々迷っていたわけか!ふざけたことをしやがって!」いまにも殴りかかりそうなユードーをフィリナは手で制した。
「どうしてこんなことをしたの?」
魔物たちは顔を見合わせしょんぼりした様子でなにかを話し合っていた。そのなかの1匹の魔物がふわりと浮き上がり、指で空中になにかを書きはじめた。
「なんだ?」4人はそれを読んでみた。文字を幻で書いてみせたのだ。するとそこには、魔物たちはいつも森の中に住んでいて、久しぶりにきたお客が嬉しかったので、ついからかってみたくなった、といったことが書いてあった。
「ついからかってしまったっておまえらなぁ……」
ユードーはあきれてせめようとしていたが、フィリナはそれを遮り、「さっき、テレポートが使えなかったのも、あなたたちのせいだったのね」
魔物たちによると、幻を見せるため、エスプが森に満ちていたせいでフィリナの使ったテレポートのパワーは相殺されてしまっていたらしい。そう魔物たちが書いて教えてくれた。
「わたしたちこの森の幻のせいでとても困ってるわ、もう道に迷わないようにこの幻を消してくれないかしら」
フィリナがいうと、魔物は「クルッ!」うなずき、手を振りかざすと、あたりから木とか岩とかが次々と、光が飛び散るように消えていき、気づけばそれまでとはかなりちがった風景となった。
「みんな、幻だったんだな……」
「この魔物たちがいままで惑わせていたんですね……」
いままでのことはみんなこの、いたずらな魔物たちの仕業であったのだ。
「とにかく、これでもうこの森からは出られるようになったわけだ。フィリナ、テレポートでここから出してくれ!」
「待って、もしかしたらこの魔物たちなら依頼された植物がどこにあるか知ってるかもしれないわ」とフィリナはいい出した。
「あっ、そうか!よぅし!」サンクは持っていた切り抜きを取り出し、「みんな!おれたちこうゆう植物を探してるんだけど、どこにあるか知らないかな?」ときいてみた。
「クル?」魔物たちは、その切り抜きを覗き込むと、顔を見合わせ、なにかを喋っていた。「クルル!」魔物の1匹が浮き上がると、ある方向を示し、なにか文字を書き出した。するとそこには、この方向にまっすぐ歩いていき、泉のある場所の近くにその草がいっぱいある、といったことが書いてあった。
「泉の近くにいっぱいあるだって!?」サンクは驚いていた。
「クルル」うなずく魔物。
「本当か、やっと場所が分かったなー」
「それじゃあ、さっそくそこへいきましょう」
「ああ!」サンクはうなずき、「ありがとう!みんな!」と魔物たちにお礼をいうとさっそくそこへ駆け出した。
「よーし!草を取りにいくぜ!」
「あっ、待って!」張り切って走るサンクのあとをみんなは追った。
しばらく走ると木々が固まって茂っているのが見えてきた。
「本当にこっちに泉があるのか?」
「いわれた方向にまっすぐきたんですが……」
サンクたちがさらにまっすぐ進んでみると、そこにはなにか動くものがいることに気づいた。
「なんだ?あれ」
それは、大きな山猫か、メスライオンのようなものだった。
「魔物か?」
「いや、もしかしたらこれも幻かもしれませんね……」
「なんだ!またさっきの魔物どもの仕業か!」ユードーは怒ったようにいった。
「そうかしら……」フィリナは疑わしそうに眺めた。
「シャアァ!」突然、その山猫のようなものが飛びかかってきた!
「うわぁ!」4人は驚き身を引いた。
地面に山猫が飛びかかったせいで、木の葉が舞い上がった。
「あれは悪魔だわ!」と叫ぶフィリナ。
「ええっ!?」
「じゃあ本物なのか!」
サンクたちが驚いていると、「シャアァ!」「うわっ!」悪魔が再びこちらへ向かってきたので4人は慌てて飛びのいた。その時、木々の向こうにキラッと光る青いものが見えた。
「あれは!」
「泉だ!」
先ほど聞いた泉がついに見つかったのだ!だが周りが木に囲まれており、泉への道は悪魔が塞いでいて入れない。
「こいつをやっつけなきゃあそこまでいけないな!よぅし!」サンクは、「ポロ!チビドラ!そいつに体当たりだ!」と叫んだ。
「ワウッ!」「ギャッ!」ポロとチビドラは体当たりする!悪魔は攻撃を受け、地面に飛ばされダメージを受けた。
「グ……」悪魔は起き上がろうとする。
「チビドラ!そいつに火を吐くんだ!」
チビドラが悪魔のところに飛んでいき、ゴォーッと火を吹きかけた!
「いいぞ!次はポロがそいつに向かっていってぶっ飛ばせ!」
「ワウッ!」向かっていくポロ、「いけーっ!」ポロは勢いよく突進し、悪魔はそのせいでぶっ飛ばされ、「グアア!」と叫びをあげるとどこかへ飛んでいって見えなくなってしまった。
「やったぁ!」サンクと魔物たちは喜んだ。
そしてついに泉へたどり着くことができた。
するとそこには……「わあっ……」4人は驚き眺めた。探していた花がそこにはたくさんあったのだ !
「ついに見つけた!」サンクはしゃがみ込み、喜んだ。
「こんなところにあったんですね……」ラファエロも眺める。
見つけるのに苦労した花だったが、見つからなかったのは実はこれまで地面も含めて幻で覆われて見えなくなっていたせいだった。
「さっそくその花を持って帰ろーぜ!」
「ああ!」
サンクは花を根っこから掘り上げ、袋に入れた。
「これでよしっと」
サンクは袋に入れた花を眺めた。
「この花があれば魔物が貰えるんだ……」
「それじゃ、町にもどろーぜ!」ユードーはいい、フィリナは再びテレポートをしようとした。そこへ……
「クルッ」いつの間にか、森で幻を見せていた魔物たちがいた。
「あなたたち……」4人は振り向いた。
「みんなのおかげで植物が見つけられたわ、どうもありがとう」フィリナはお礼をいった。
「クルッ!クルッ!」魔物たちは喜んでいるようだった。
「またこの近くに立ち寄ったときは会いましょう!」
サンクたちのからだは光に包まれ消えていく。魔物たちもサンクたちも、手を振っていた。今度はうまくテレポートできた。
けさ出てきた町に着いた。森の中とは打って変わって明るい日差しが眩しかった。
「やっと森を出られたぜ!」嬉しそうに叫ぶユードー。
「それじゃ、さっそく花を渡しにいこう!」サンクはいった。
依頼主の家がある、町のはずれまで歩いていく。サンクは報酬のことを気にしてワクワクしているのがわかった。
そして、サンクはドアをノックする。
「はーい」しばらくすると、けさ4人に依頼を頼んできたセージが顔を表した。
「やぁ!きみたちはけさの!」
「おれたち、頼まれた花を持ってきました!」サンクは袋に入った花を渡した。
セージは袋から花を出して確かめた。
「これは、確かにアミュー草だ!」そして、「こうやって本物を見るのは初めてだよ!幻影の森にいったんだね!」
「あぁ」
「どうだった?噂通りの不思議な森だったかい?」
4人は顔を見合わせ、「確かに幻影だったよ」と答えた。
セージはちょっと待っててといったん家に入り、またもどってきた。
「はい!これが謝礼の1000マール!それからこれが」セージの手のひらからなにかがぴょんと飛び出し、するとそれはぐんぐん大きくなった。4人はあっけにとられたようにそれを眺めた。3mくらいはある高さの木の魔物が姿を現したのだ。「約束の魔物だ」
「でかい……」サンクは魔物に近づき、眺めてみた。
サンクは魔物を貰ったお礼をいい、向こうからも花を持ってきてくれたお礼をいわれ、貰った魔物についての世話の仕方などを聞いたりしてから別れた。
大きな木の魔物と一緒に歩いていくサンクたち。
「でも本当に大きいよな、びっくりしたぜ」
「この大きさだと町の中ではなにかと不便かもしれんぞ」
「その大きさだとバックにも入れれないしね……」フィリナは考えていたが「そうだ!」と思いついた。
「それならこうすればいいわ!」魔物に向かい、手を広げると、「ミニマム!」といった。すると……大きかった木の魔物は見る見るうちに小さくなり、30cmほどまで縮んだ。3人は驚いた。
「なんだ!?」「小さくなったぞ!」
「これでバッグに入れれるわよ」
サンクは魔物を持ち上げてみた。
「魔物を小さくできるのか?」サンクはあっけにとられたようにきく。
「えぇ」とうなずく。
「もとにもどすことは?」
「それももちろんできるけど……魔物自身でもとにもどりたいと思えばもとにもどれるはずよ」
「ほんとか!?じゃあもとにもどってみて!」サンクがそういうと木の魔物はぐ~んと大きくなりだし、もとの大きさになった!サンクはまたまた驚いていた。
「小さくなっても攻撃力や防御力は変わらないわ」
サンクはまた魔物を小さくしてもらい、バックに入れた。
「エスパーじゃなくても〈ミニマムの小槌〉を使えばだれでも魔物を小さくできるのよ」
「小槌?」
「そう、この町にもあると思うわ」
4人は、店が立ち並ぶ通りに入っていった。
通りを歩き、道具屋の前で立ち止まった。
「これが小槌よ」フィリナは店に並ぶ小槌を手に取った。
サンクもそれを見てみた。この小槌にはエスプを封じ込めてあり、これを使えば小さくしたりもとにもどしたりできるそうだ。魔物を小さくできる……こんな道具があるとは知らなかった。
でも値段が少し高くて、サンクは悩んだ末、買うのはまだやめておいた。
その後、疲れもたまっていたし、結局4人はこの町にもう1日泊まることにした。