そして朝──。目を覚ました4人はお腹がペコペコだった。
「う~ん、夕べほとんど食べずに寝たせいで腹が減ったな……」
のそのそと朝の支度をして、出かけた。
「なんか食べるものは残ってないのか?」
「今朝はもう食べれるものはないですよ」
町中では、朝市の屋台が立ち並び、町の人たちがそこでなにか買って食べていた。4人はそれをうらやましそうな目で眺めた。ガマンできずにユードーは、「いくらあった?」みんなの手持ちのお金を確かめてみた。すると、「おぉ!この金があれば安いものならなんとか買えるな!」
そこで4人はカップ入りのオートミールを4つ買った。甘い味付けがされたもので、作るのに手間がかからず、材料も安いのでこの屋台中で一番安いのだ。やっぱりパンのほうがいいと4人は思った。でも、4人はその貴重な糧をじっくりと大事に食べ、空腹は少しまぎれた。
「いこう」4人はまた歩き出した。
「きょうはクエストにいかねばならない。気を引き締めていこう」
町を通り過ぎ、悪魔がいるという場所に向かっていった。歩いていくと、だんだん荒野が広がっていった。
「帰るまでは食事にありつけない、きょうのクエストはなんとしても成功させねば!」ユードーは一段と目つきを厳しくした。
ラファエロは討伐書を広げ、「これが依頼の悪魔らしいですが、ううん……これは……見たとこ……」なにかを考えているようだ。
あたりは薄茶けた土に、ちょこちょこ草が生えた荒野だ。4人はしばらく悪魔を探し歩いた。
土と同じ色の大きな岩があちこち転がっており……と、そのなかの1つの岩がわずかに動いた。4人は驚き、見間違いかと思って一度目をぎゅっとつぶってもう一度しっかり見てみた。やはり岩は動いていて、そしてそれはからだを伸ばし、立ち上がったようだった。岩は人型の悪魔が縮こまったものだったのだ!
「ウォ~ン」悪魔はこちらに手を振り上げた。
「うわぁ!」「岩が動いた!」4人が逃げた後に、悪魔の手が振り下ろされ砂煙がたった。
サンクは「討伐書の悪魔と同じだ……!」と紙と見比べいった。
「……やっぱり」
「え?」
「あれはゴーレムです!おそらく魔物のゴーレムから派生したものでしょう!」ラファエロはいった。
「ゴーレムだって……!?」
ユードーはいつものように、「なんだか知らんがこんなやつ、このおれの技でやっつけてやるぜ!ハァァ……」ユードーは向かっていくと「タアッ!」ゴーレムに飛び蹴りをかましたが、「うっ……」ユードーは顔をゆがめるとそのまましゃがみこんだ。
「く~……」「ユードー!?」サンクたちが駆け寄った。
「すごく硬いからだだ、まるで石を蹴ったみたいだ……」
「ええっ!?」
「うご」ゴーレムは腕を振り上げると、そのまま振り下ろしてきた。「わあっ!!」「とりあえずこっちへ!」サンクとラファエロが急いでユードーを立たせ、場所を移動した。
ゴーレムの腕が振り下ろされ、地面が大きな音を立て揺れる。
4人は息を飲み、見つめた。「……動きは鈍いようだが、パワーはすごそうだな……」
ラファエロはヒールをかけて、ユードーを動けるようにした。
「ホワイトブラスター!」「チビドラ!ゴーレムに火を吹くんだ!」フィリナとサンクが攻撃をはじめる!ゴーレムは動き回るチビドラをつぶそうと腕を動かした。「うご」ゴーレムは口を開いたと思うと大きく息を吐いた。そのとたん、グォォォッと砂あらしが巻き起こる!
「わああっ!」
あたりは砂でかすんで見えないし、砂が当たってみんなからだが痛かった。飛んでいたチビドラも吹き飛ばされた。
「とりあえずみんな離れるんだ!」4人は走ってゴーレムから離れた岩陰に隠れた。
「まいったぞ。こりゃ近づけないな……」
「ゴーレムがあの砂あらし攻撃をやめたらまた攻撃しよう!」とサンク。
ユードーは少したじろいだように、「う……それが、今回の敵は固くておれの攻撃が効きにくいようなんだ」といった。
「ええっ!?」「それじゃあユードーは……」
「それに……今朝から腹が減って力が出ない……」ユードーはガクリと力なくしゃがみこんだ。
「……」
3人はあぜんとそんなユードーを見つめた。……そういえばユードーはいつも人の2倍以上食べていたっけ……。どうやら今回はユードー抜きで戦わねばいけないようだ。
砂あらしが収まったようだ。3人はゴーレムのほうに向き直った。
「チビドラ!もう一度飛んでいって火を吐く攻撃だ!」チビドラは飛んでいく!「ブライトボール!」フィリナもゴーレム狙って技を放った!
チビドラとフィリナの攻撃を受けたゴーレム!だが、わずかに叫びを上げただけでまだまだ平気そうだ。
「ウォォ……」今度はゴーレムが攻撃してきた!こちらに歩み寄ってきて、足をドスーン!と下ろす!3人はあわてて逃げた!
フィリナはゴーレムを見上げ、「とても頑丈な悪魔ね!たぶん物理攻撃だけじゃなくあらゆる攻撃に対して防御力が高いわ!」
「ええっ!?それじゃ、簡単には倒せないのか!?」
「えぇ!今回はかなり時間がかかりそうよ」と、フィリナは苦々しそうにいう。「それまで持つかしら……」
ラファエロはぼうっとその会話を聞き、ゴーレムの姿を見つめていたが、突然ハッとしたような表情になった。ゴーレムは大きく息を吸い込み、砂あらしを起こそうとしだした!
ラファエロは叫んだ!
「フィリナさん!火のロッドと氷のロッドを一緒に使うんです!」
「えっ?」ふたたび砂あらしが吹き荒れ、サンクたちは驚き、急いで岩陰に隠れた。チビドラはまた遠くに吹き飛ばされた。
「火のロッドと氷のロッド!?」
「そうです!それを同時にゴーレムに向けて撃つんです!」
フィリナは砂あらしが吹き荒れるなか、バッグから火のロッドと氷のロッドを取り出した。「こうかしら?」フィリナが両手に持った2つのロッドの片方からは氷が、もう片方からは炎が飛び出した!火と氷は途中で交じり合い、シュワァァ……と音を立て溶け出すと、勢いよくゴーレムのところまで進んでいく!火と氷は水となって発射されたのだ。
その水がゴーレムに当たりはじけると、とたん、ゴーレムは、「グァァ!!」と叫びを上げた!砂あらしも収まっていく。フィリナとサンクは驚いた。
「……やっぱり。思ったとおりです!あのゴーレムは土でからだができているんです!だから水に当たるとからだが溶けるんです!」ラファエロは叫んだ。「なんだって!?」2人は驚き叫んだ。「そのまま水を当て続ければわりと早く倒せるはずです!」「そう」
フィリナはふたたびロッドを突き出すと、「メールストリーム!」集中してロッドから水を出した。
と、そのとき、「ピル……ピルッ……」どこからか声のようなものが聞こえた。サンクがあたりを見回すと、それは、サンクのバッグから顔を出したアカザカナの鳴き声であった。
「アカザカナ!どうしたんだ!?」
「ピルッ!ピルッ!」アカザカナはゴーレムを指し示し、なんだか張り切っているようだ。サンクは考えていたがなにかを思い出した。「そういえば……」最初、海でこの魔物が水を吐いて攻撃していた様子だ。と、いうことはアカザカナも……。
「よぅし!」サンクはアカザカナをバッグから取り出すと叫んだ。
「アカザカナ!ゴーレムに水を吐いて攻撃するんだ!」
「ピルーッ!」
すると、アカザカナは口から勢いよく水鉄砲を発射して攻撃しだした!水はゴーレムに当たり、ゴーレムは頭を抱え叫びを上げる!
フィリナのロッドとアカザカナの技が合わさり、大量の水が放たれていた!アカザカナは水圧縮の機能を持ち、からだの中に大量の水を溜め込んでおけるのだ!
「ウォォ……」ゴーレムのからだはじょじょに溶け出していた。
「やった!効いてるぞ!」
サンクはさらに「もっともっと水鉄砲だ!」と水を出させ続ける!
ゴーレムのからだがさらに崩れる。
そして3分後。
ゴーレムはドロドロに溶けてしまい、シュウッと消えていったかと思うと、ポンッと魔石に姿を変えた。
「やった!!」サンクたちは喜んでそこへ駆け寄り、魔石を拾った。
「また悪魔を倒したぜ!」「これで報酬がもらえるわね!」と喜んだ。
「水の技ができたおかげで思ったより早く終わりましたね。助かりました」とラファエロ。
サンクも、「そうだな!アカザカナ!よくやったな!ありがとう!」アカザカナのところまで戻り、なでた。「ピルッ!ピル~ッ!」アカザカナも嬉しそうにはねていた。
サンクはアカザカナをバッグに戻し、ユードーのところにいくと、ユードーは先ほどと同じように力なく座り込んでいた。
「ユードー!ほら!やっつけたぜ!」得意げに魔石を見せるサンク。
ユードーはこちらを見、「おぅ、ほんとだ。あの悪魔に勝てたのか」ユードーは立ち上がり、「じゃあ報酬が手に入るな。ようやくメシにありつけるわけだ!」
もう昼すぎだが、みんな昼食を食べていなかった。また町まで戻るため、みんなは歩きはじめたが、町まではかなり距離があることを思い出した。
ユードーは、「フィリナ、町まで歩くのは大変だから、テレポートで戻ってくれないか」といった。
「それはできないわ」とフィリナ。
「なんだって!?」
「だって、きのうはテントだったでしょ?」
「なんだそりゃ!」ユードーは意味がわからなかったが、とにかくテレポートで戻ることは無理であるとわかった。お腹が減ってもう歩く元気もほとんど残ってなかったが、みんなはヘロヘロになりながら町までの距離を歩いていった。
町に着き、ギルドで魔石を渡すと報酬がもらえた。4人は目を輝かせた。これでようやく食事ができる!
夕食時にはまだ少し早かったがギルドの中にある酒場はすでに開いていたので、4人はそこで食事をとることにした。ギルドにはたいてい酒場が併設されていたが、利用するのははじめてだ。
4人はまず、ボリュームのある料理を頼み、ひたすら食べまくった。魔物たちも一緒になって食べまくった。きのうから食べていなかった分まで食べまくった。
そして、だいぶ空腹も和らいだ。「ふぅ、ようやく元気が出たぞ」「もう少しなんか食べたいな」メニューを眺め、4人は店員のお姉さんを呼び新たに料理を追加した。ユードーはお酒を頼んでいた。
「せっかく酒場なんだから酒を飲まないとな!」
「……わたしたち、まだお酒は飲めないの」
この国の飲酒は18歳からだったので、お酒が飲めるのはユードーだけだった。ほかの3人はジュースを頼んだ。そして料理をつまみながら飲む。最初きたときは数人しかいなかった客もだんだん増えはじめた。たいていはギルドのクエストを終えたギルドメンバーで、みんな楽しそうに飲んでいた。やがて、ユードーはそれらの人たちと、酔っ払い同士しゃべりだした。サンクたち3人もギルドメンバーから話しかけられ、話をしてみた。そんなふうに酒場での交流をし、いつのまにか日は暮れ夜になりかけていた。でも、ユードーはまだ酒場に残るらしく、3人はユードーを残して宿屋に向かった。