プチファンタジー・ストーリー   作:クリステリアン

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第20話 占い師

 朝となり……ふもとの停留所に乗合馬車も到着し、みんなはもとの町のギルドへ戻ることができた。ギルドマスターに報告して報酬を受け取った。きのう、山に出ると噂の巨大な悪魔を倒したといったらギルドマスターは驚いていた。

「きみたち、結構高いレベルの敵を倒せるんだねぇ」

 どうやら、ギルドでの4人のランクが上がったようだ。きのう、サンクたちと一緒に山へ向かった人たちは、もともとかなりレベルの高いメンバーだったらしい。ギルドの職員が、マスターのもとへより、こそっと耳打ちすると、マスターは声を潜めてなにか興奮していた。

 

 4人はギルドを出、次の目的地に向け出発した。町を出ると、また草原が広がっている。4人は教えてもらった占い師のもとへと歩いていく。街道からは離れた道なき道だった。

 

 昼食をとり、再び歩き出すと、向こうからある集団がやってきた。それは、5人ほどの中年の男たちであった。男たちはサンクたちの姿を見ると、声をかけてきた。

「旅のおかた、なにか買っていきませんか?われわれは旅の商人です」

「商人?」

 彼らは町から町へと商品を売り歩く商隊であり、旅をするにあたりもしなにかに襲われてもいいように戦う力も持っているのだ。

「どんなのがあるんだ?」ユードーがきき、4人は商品を見せてもらった。

「さぁ、ご覧ください、こちらは北のほうの特産の金属を使った武器ですよ。それからこれは、防御効果に優れた布地、これは魔よけの香水、旅のかたにはあると便利でしょう」「わぁ……」4人は興味深そうにそれらの商品を眺めていた。

「でも少し高いなぁ」4人は貼られた値札を見て首をひねった。「この香水はまぁまぁ安いが、おれたちたいてい魔物が出ても勝てるからな」すると、その香水よりさらに安い小瓶が目に入った。

「おじさん、これは?」とサンクはきいた。おじさんは、「あぁ、それはケガやからだの疲れを治すポーションですよ」といった。なんでも、薬草と清めた水を混ぜることでポーションができるそうだ。ポーションはスライムの体液からも抽出できるらしい。

「それがあれば回復術を使えなくても回復できるのです」

 ユードーが、「へぇ……それはいいな」と興味を示した。「安いし、いくつか買おうよ!」とサンクもいい、「そうだな」とユードーもいった。「回復ならわたしやラファエロがいるわ」とフィリナはいうが、「でも、おまえらいつMPが切れるかわからないからなぁ」「そうそう」あははと2人に笑われ、フィリナはぐっと言葉につまった。当たっていることだけに、いい返せなかった。

 サンクたちは、ポーションのほかに、毒消し草や万能薬も買った。商人たちは立ち去り、サンクたちも再び歩きはじめた。

 

「あともう少しで占い師の館らしい、夕方には着けるかもな」

 だが、きのう山を歩き足の疲れがまだ残っていたので、4人はあまり歩けず、野っ原で野宿することになり、結局その日は占い師の館には着けなかった。

 

 彼らが占い師の館に着いたのは次の日のこと──

 わずかに家の集まった集落のさらにはずれの岩山の近くに、薄い紫色の小さなガラスの家が建っていた。あたりは木々が生い茂り、後ろには滝が流れている。

「ここが占い師の館らしいぞ」

 ドアに占い師の看板が出ていた。小さい建物だったが館と呼ぶらしい。呼び鈴を鳴らすとドアが開き、ばあさんが出てきた。

「あっ」サンクは、「おれたち、占って欲しいことがあるんですけど」といった。

 ばあさんは「お客さんだね。いいよ、なかに入りなさい」と4人を部屋に招きいれた。部屋のなかにはふくろうのような魔物が1匹いた。

 

「で、なにを占って欲しいんだい?」

 サンクは、「ある悪魔の居所を知りたいんです」という。

「悪魔?なにか被害を受けたのかい?」

「ハイ、倒さないとおれの両親が元に戻らないから。石化攻撃が使えて、赤いヤギみたいな姿の悪魔なんですけど」

「ん?おまえさんその悪魔の姿を見たのか?」

「ハイ、両親が襲われたときに……」

 占い師は「ふぅむ……」と考え、そしていった。「それなら結構簡単に居場所は突き止められる。そうさね、料金は5万マール!といったところだな」4人はうっとたじろぎ、「いくらある?」と相談した。全員お金を出し合うと、なんとかギリギリ5万マールに足りた。いつも同じ部屋に泊まって宿代を節約してきたかいがあった。

 占い師は料金を受け取ると、「ハイ、確かに。それじゃあ占いをはじめるから、ちょっとこっちにきなさい」とサンクは呼ばれ、水晶玉とか、壁に大きなプレートのようなものがかかっている場所にやってきた。

「なぁに、こうゆう依頼には慣れておる。ギルドの連中もたまにわしのところに力を借りにくるんじゃぞ。ではまずその水晶玉に手を当てるんじゃ。これはエスプが込められた道具で、その人の記憶を呼び出し、そのイメージを写すことができるんじゃ」

「おれ、エスパーじゃないけど」

「超能力は必要ない。さぁ、水晶玉に手を触れ、悪魔の姿を思い浮かべるのだ!」

 サンクはいわれたとおり水晶玉に手を触れ、悪魔の姿を思い浮かべた。しばらくすると……壁のプレートにぼんやりとなにか赤いものが浮かんできた。そして、それは赤いヤギのような悪魔の姿となった!サンクは驚き、後ろでそれを見てた3人もあっと驚いた。

「こいつだ!父さんと母さんを石にしたのは!」と叫ぶサンク。サンク以外の3人もこれで悪魔の姿をはじめて知ることとなった。

「それじゃ次はこの悪魔の居所を探るとしよう」占い師はサンクに、悪魔の居所を知りたいと強く願うよういい、プレートのそばにあった矢印に手を当てた。矢印がポウッと光る。

「いまこのスクリーンに映っている悪魔の悪のエネルギーから居所を感知しているところだ、あっ!動き出したぞ!」矢印がギギ……と動き、ある方向を向き止まった。

 占い師は、「ううむ……どうもこの悪魔は東のほうにいるようだな」「東……」サンクたちは悪魔の居所をつかむことができた。「じゃあこれからは東を目指せばいいんだな!」とユードー、「うむ、それではいまからコンパスを作るからちょっと待っておれ」占い師はそういい、奥のほうでなにかを作り出した。コンパス……?4人は顔を見合わせた。

 

 

 

 30分ほどして……占い師は、「できたぞい。ホレ、これがコンパスだ」コンパスを渡してくれた。コンパスは丸いケースのなかに針が入っていて、ほとんど普通のコンパスのように見えた。

「それを使えば先ほどの悪魔がいまいる方角がわかる悪魔探知のコンパスだ!」

「なんだって!?」

 4人は驚いてコンパスを眺めた。

「その針の示す方角を目指せばやがて悪魔にたどり着けるだろう」

「すごいな……それは」

 

 ほかにも悪魔の姿を写し取った紙も貰えた。4人は占い師にお礼をいい外に出た。占い師は、がんばるのだぞと4人を見送ってくれた。サンクたちはコンパスの指し示す東に向けて歩いていった。

「これがあれば悪魔の居所もようやくつかむことができそうだな」

 占いでは、高いだけあっていいものが手に入り、これで手探り状態だった4人の旅にも灯台の光がさしたようだった。

 

 

 

 やがて午後になり、4人は新しい町に着いた。だが、先ほど占い師に頼んだせいで(ギルドに頼むよりは安くなったが)、持っていたお金をほとんど使ってしまった。

 ユードーは腕を組み、「う~ん、さっきのことでもう金がほとんどなくなってしまった。このままだとこれから暮らしていけない、すぐになにか仕事をして金を稼がなきゃいけないな」

 そこで4人は、ギルドにいき、早速仕事を探しはじめた。壁に張ってあったさまざまな依頼書を眺め、「おぉ、いろいろあるじゃないか。うん、コレなんかよさそーだ!」ビリッと依頼書をはがし、申し込みにいこうとするが、そのとき、ふと、1枚の依頼書が目に入った。それは悪魔討伐の依頼だった。だが、報酬がいま持っているものとは段違いだった!

 ユードーは目を見開き、「おぉ!こっちのほうがこれより3倍は報酬がいい!こっちにしようぜ!」とそちらの依頼書をとる。「でも、それぼくたちでだいじょうぶなクエストでしょうか?」「なぁに!見たとこそれほど難しくなさそうだし、おれたちなら多分だいじょうぶだろう!」と、その依頼を窓口にもっていき、4人は申し込むことにした。討伐にはあす向かうことにした。

 

 もう夕方だ。だが4人は、「今夜はもう宿屋に泊まる金がない。だから野宿しなけりゃならんようだ」

 さすがに街中でテントを張るのは恥ずかしいので、4人は町外れの木々の茂るエリアにいきそこにテントを張ることにした。夕食も、もう食料がほとんど残ってなかったので、少しの野菜や豆を使ってスープを作り、一切れのパンで済ませた。そんなのでは全然足りなかった。

「あすのクエストのためにも今夜は早めに寝よう」と4人はもう寝ることにした。


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