朝となった。サンクたちはきのうギルドの人から探している悪魔の手がかりを聞き、そこに向かって進むことにした。だが、いまいる町からは結構遠いようだ。
「キラの町っていうのは南のほうにあるんだろ。南といえば、おれたちはちょうどそっちの方面からきたわけだから引き返さなきゃならないわけか」とユードー、「この前いった港町からいくのが一番近いわね。わたしがあの町までテレポートで戻れるようがんばってみるわ」とフィリナ、サンクが、「できるのか?」「ちょっと大変だけどやってみるわ、みんな手をつないで」
みんなが手をつなぎあうと、フィリナは精神を集中してみんなを光のオーラで包んだ。
「テレポート!」
白い光があふれたかと思うと、そこは以前見たことのある場所、あの港町の宿屋の前だ。
「ここは……」「前に泊まった宿屋じゃないか」フィリナは「うまくいったみたいだわ」と満足そうだ。
「これでここまでの距離を歩かないですんだな」「じゃあさっそくきのう聞いた町までいこうぜ!」とサンク。
「うん!」フィリナとユードーはうなずくが、「それなら、乗合馬車に乗っていくのはどうでしょう?きっと目的地まで早くつけると思うのですが」とラファエロはいった。
だが、「それじゃ途中の町を見れないわ」「うん、それに料金もかかるだろうし」とフィリナとサンクがいった。
「えっ」「歩いていこう!」
そして、4人は歩いて次の目的地であるキラの町までいくことになったのである。
その前に、町で準備と腹ごしらえをしていくことにした。町で少し買い物をし、ここの名物である海鮮料理を食べた。
「よし!それじゃ、そろそろいくか!」ユードーはいい、みんなは町を出た。街道沿いを歩いていく。しばらくは草原が続いた。次の町までは少し距離があったのでその夜は野宿することになった。
そして朝となり、また歩き続ける一行。すると、目の前に突然大きなサルの群れが現れたのだ!5、6匹くらいはいるだろうか?
「わあっ!サルだ!」「魔物よ!」「あの魔物は凶暴なんです!」
ユードーが前に出て、「なんだなんだお前たちは!さあ!向こうへいけ!」と拳を振り回し追い払おうとした。だがサルたちは、「シャアァ!」牙をむき、4人に襲い掛かってきた!「わあっ!」3人は驚き、ユードーは構えた!
「たぁ~っ!」「キ~ッ!」ユードーとサルが殴り合っていた!
ほかのサルたちが3人のもとへきた!
サンクはあせり、「ポロ!チビドラ!そいつらに攻撃するんだ!」と叫んだ。
2匹はサルに立ち向かい、突進した!跳ね飛ばされるサルたち!だが残りのサルが別方向から襲ってきた!「わあっ!」サンクが押し倒されて殴られ必死で抵抗し、剣を取り出し反撃した!
ポロとチビドラはあわててサンクを助けにき、サルと戦った!
ラファエロは風のロッドを取り出そうとあせり、フィリナは「ブライトボール!」と攻撃!サルはダメージを受けのけぞったが、倒れずそのまま突進しようとしてきた。フィリナはあせってさらに攻撃し、サルを退かせる!だが、後ろに一匹のサルが近づいてきていた。
ドガァァン!!とたん、目の前に星が浮かぶ。「う~ん」フィリナはバタンと気絶した。
3人は驚き、駆け寄ってきた。
「フィリナさん!しっかりしてください!」とヒールをかけるラファエロ、「おりゃあ!」「ポロ!チビドラ!そいつらをやっつけろ!」ユードーやサンクたちがサルたちを攻撃し、やがてサルたちは「キキィッ!」と逃げ出していった。
「う……」フィリナは頭を抑えて起き上がり立ち上がった。
「だいじょうぶか?」「もう魔物は追い払いましたのでご安心を」
「それはありがとう」とお礼をいうフィリナだが、「まったく、一撃でやられるとは使えんな!」とユードーはいった。それを聞きピクッ、としてフィリナは振り返った。
「なに?」
「ちょっと殴られたくらいで倒れるなどひ弱だといっているんだ!」
とたん、フィリナはカッと
「なにをぉ!?」
いがみ合うフィリナとユードーに、「まぁまぁ、2人とも、抑えて抑えて」ラファエロがあせって2人をなだめる、サンクが、「さっきはほかの敵に気をとられて、おれがフィリナを後ろにできなかったからいけなかったんだ」という、「そうよ!本来なら前衛タイプのあんたたちが後衛を守るべきだわ!」とフィリナ、ユードーが、「フン、しかし、きょうみたいに敵が多かったときは自分が戦うのが精一杯でとてもほかの敵までは手は回らんぞ」といった。フィリナはムウッとする。
フィリナは、知性はこのなかの誰より高く、精神もラファエロに匹敵する高さであったが、HPと攻撃力と防御力がこのなかで最下位だった。普段鍛えていないので、旅をするのに必要な体力しか持っていないのだ(それでも旅をしている関係上、平均以上にはあったが)。
フィリナは少し怒ったように先を歩いていった。サンクとラファエロは声をかけられなかった。
そして次の町に到着した4人。またギルドにいって依頼を受けるが、今度はとある農家が畑の開墾をしたいのだが、その場所によく魔物が出るので護衛を頼みたいというものだった。4人はその依頼を引き受け、次の日にいくことに決まった。
その日は宿屋で休んだ。
そして次の日になり、依頼の場所へ出かける4人。そこは町から少し離れた農家であった。フィリナは朝や、依頼の場所にいくまでの合間、1人で手を突き出したりぶつぶつなにかをつぶやきながら、真剣な顔でなにかをやっていた。そして依頼の場所に到着し、護衛の依頼をこなした。だが、この近辺にはたしかに魔物はいることはいたが、どれも弱い魔物で人間に襲い掛かってくることもなく、実際4人がやったことといえばほとんど畑の開墾の手伝いであった。もともと鍛えているユードーは平気だったが、サンクたちは慣れないクワやスキを使い、翌日は筋肉痛になってしまった。
次の日はキラの町へ向けて出発した。道中の休憩時間、やはりフィリナはおとといのようになにかをやっていた。そして、その日の夕方キラの町へと到着した。4人はさっそくギルドへ探している悪魔のことを聞きにいった。ギルドの職員にたずねてみると……たしかにサンクのいうのと同じような悪魔が数週間前、この町にいろいろな被害をもたらしたとのことだった。4人は驚き、「その悪魔はいまどこに……!?」ときく、「もう2週間以上前にこの町からはいなくなったみたいで、目撃情報も被害も寄せられてないな」と職員。
「2週間も前……?」
サンクたちが情報を聞いたときにはすでに手遅れだったのだ。
「では、その悪魔はまだ倒されてないのですか?」
「うん、この町の人が何人かケガさせられたりしたが、もう町を出ていったようだし、ギルドのメンバーたちももう討伐するのをやめてしまったんだ」
「でも、この町の人が誰か石にされたって聞いたけど」
「石にされたのは人間ではなくて野生の魔物だよ」
「魔物だって?」
4人は期待はずれの結果に、ガックリしてギルドをあとにした。
「また振り出しに戻る、か」
朝となり、またあの悪魔の居所を探さなければいけなくなったサンクたちは、結局これまでのようにギルドで生活費を稼ぐ必要があるということで、ギルドに依頼を受けにきた。今度は、とある武器職人のところに武器を受け取りにいって欲しいというものだった。なんでも明日、ほかのギルドメンバーがその武器を使う用事があるそうだ。
4人は武器職人の家を聞き、そこへ向かった。武器職人の家は、町外れの山のふもとにあるということだった。家までは林の続く道があり、それは緩やかな上り坂となっていた。
そして道の一番奥に、家が1軒建っていた。風化しているのだろうか、少し端っこがくずれている。
ドアをノックする。
「すいませーん!ギルドから武器を受け取るよう頼まれたんですが」
しばらくすると、用心深くドアがあき、牛のような角のヘルメットをかぶった小柄なひげのおじさんが顔を見せた。
「ギルドからじゃと?」
「ハイ、これが依頼書です」と紙を見せたサンク。
おじさんは紙を眺め、「……わかった。すでに武器はできておる。こっちへ来い」
おじさんについていき工房のなかへ入った。そして、「これがその武器じゃ」と1本の剣を渡された。
「わあっ」
見事なつくりでサンクが普段使っているへっぽことは大違いであった。サンクたちは驚き眺めた。
「一度壊されたがなんとか納期までにギリギリ間に合った」とおじさん。
「……壊された……?」サンクたちはきょとんとして振り向いた。
「あぁ、2週間くらい前な、この家が悪魔に襲われてそのときに作りかけの武器や道具が壊されてしまったんじゃ」
「なんだって!?」
そういえば、あたりを見渡してみれば壁が木で補修されていたり、物が壊れていたりとみすぼらしかった。
「おじさん!その悪魔って大きな赤いヤギみたいな姿の?」
おじさんはうなずき、「ああ、その悪魔がこの前飛び込んできてわしの工房の壁を壊しおってな、そのすぐあとにギルドの人間が悪魔を追ってきて戦っていたが、すぐ飛んで逃げていったわ」といった。
「おれの両親を石に変えた悪魔だ……」サンクはぎゅっと手を握り締めた。
「あぁ、そういやあの悪魔は生き物を石にする力を、持っているそうだな、わしの家の近くにちょうど石にされてしまった魔物の像がある」
「えっ!?」4人は驚いた。
「おじさん!その石にされた魔物、見せてもらえますか!?」とサンクは叫んだ。
「えっ?あっあぁ……」
4人はおじさんといっしょに石化した魔物のある場所へとやってきた。おじさんの家からはたしかに歩いて数分で近かった。
「これがその魔物じゃ」
そこにはあるひとつの石像が……元は魔物だった魔物の石像だ。
「この前の戦いで巻き込まれて石にされてしまったんじゃ」とおじさん。
「これが……」
たしかに、自分の両親とよく似た石像だった。あの悪魔はたしかにここにいたのだ……サンクはそれを思い顔をこわばらせた。
フィリナは、「でも、結局その悪魔は倒されなかったのね」といった。
「あぁ、この町のギルドでは、死亡者も出なかったし、悪魔が町を離れたことでもう追うのをやめてしまった。それに、悪魔が手ごわかったのでギルドの人間も戦うのを嫌がったんじゃろうな」
おじさんは厳しい顔で前を見つめ、「だが、ケガ人は何人も出ておるし、わしの家も壊されてしまった。今回は死亡者が出なかったけれど、このまま放っておけばきっとあの悪魔はほかの町でも悪さをするはずじゃ」
4人もそれを考え、心にどこか苦しさのようなものを覚えた。
「それにあの魔物も……」おじさんは魔物の像を見やり、「今回はたまたま人間には当たらなかったが、そのうち今度は人間が石化されることがあるかもしれん」
サンクはそれを聞き、石にされた自分の両親を思い出した。
「あいつを放っておいたら、ほかの人もあんな目に……」とサンク、「やっぱりあいつをあのまま放っておいたらいけないんだ!」
「そうだな、そんな悪魔を放っておいたらこの先もっとひどい被害が出て、人も死んでしまうかもしれん」
「これからもあとを追い続けて倒しにいきましょう」とみなは一様に意見をともにした。
「お前たち、あの悪魔を倒しにいくつもりなのか?」とおじさんはきいた。
「はい。おれたちあの悪魔を追ってここまできたんです。じつはおれの両親もあの悪魔のせいで石にされてしまって……」サンクはそのために悪魔を倒そうとしている話をした。
おじさんはその話を聞き、しばらく考え、「それでは、せっかくこの町の話を聞いてきてみたのに悪魔がいなくてガッカリしただろうな」といった。
「ハイ、まぁ……」「また居所を見失ったからな」
すると、おじさんはこんな話をしてくれた。
「きみたち、行き先のわからないものに道を示してくれる占い師の話を知ってるかね?」
サンクたちは、「……占い師?」と振り向く。
「あぁ、この町を西へずっといくと有名な占い師がいるという話だ。その人物に会えばもしかしたらきみたちの探す悪魔の居所も教えてくれるかもしれない」おじさんはいった。
4人は顔を見合わせ相談しあった。
「う~ん、仕方ないな」「それじゃあ」「うん、ほかに手がかりもないし」「今度はそこにいってみるか!」
4人はうなずきあい、今度はその占い師を尋ねてみようと決まった。