朝になり、旅立つ4人。サンクたちは新しく仲間になったラファエロといろいろ話した。サンクの両親が石にされ、それを元に戻すため悪魔を探し倒そうとしていることをいった。
「そうだったんですか。それは大変ですね」
「もし、その悪魔を見つけて戦うことになったら力を貸してくれるか?」とサンクはきいた。
「ハイ、ぼくでお役に立てるのであれば力を貸しましょう」
彼は回復専門であるだけあって、まるで聖職者のように慈愛に満ちた性格であった。
「ラファエロは回復専門だといってたけど、攻撃はできないの?」とフィリナ。
ラファエロは、「そうですね、風のロッドを持っています。これを使うと風で攻撃ができます」とロッドを取り出した。そしてラファエロはロッドを大事そうに「おじいさんの形見なんです」といった。
「わたしの持ってる火や氷のロッドと似たようなものね」
フィリナの持つロッドは知性依存なのに対して、風のロッドは精神依存なのだそうだ。
「それじゃ、そのロッドをつかってこれからバンバン敵をやっつけまくろーなっ!」「ええ!」ユードーに肩を抱かれ、フィリナにも同調され、ラファエロは「えっ?あの……」とたじろいだ。
サンク一行は街道を歩いていき次の町の入り口が見え出した。すると……
「なんだ?」4人はなにかに気づいた。
「お願い!一緒に森にいって!」「やだよ。魔物がいっぱいいるのに」
小さな女の子が通りすがりの町の人間に声をかけていた。女の子は続いて他の人間にも「お願い!早くいかないとママが……」また同じことを頼んでいたようだが、冷たくあしらわれていた。
女の子は続いて4人の姿を目にするとかけてきて、「お願い!一緒に森へいって!」と叫んだ。「一体どうしたんだい?」とラファエロ、「森のなかにママがいるの!」「森ってそこにある森のことかい?」この町はすぐ横に森があった。「なんでまた?」女の子は急いで説明した。それによると、女の子は母親と一緒に森に入ったが、途中で悪魔に出会ってしまい襲われて、逃げる途中母親とはぐれてしまったようだ。
「ママはまだ森から出てきてないからきっとまだ森にいるんだわ!」泣きそうな女の子。
「なるほど。それで森に一緒にいくよう頼んでたんだな」とうなずくユードー、「そうゆうことを誰にでも頼むものじゃないわ」とフィリナ、サンクは、「それならおれたちが一緒にいくしかないな!」といった。
「ほんと!?」女の子は驚く。「ああ!みんなでこの子のママを探してあげようぜ!」とサンク、「金にはならんが、まぁいいだろう、力を貸すとしよう!」「あっありがとう!」「みなさん、それでは早速森に向かうとしましょう」こうして、サンクたちは今回この女の子を助けてあげることにした。
女の子は「こっち!」と4人を引っ張り、急いで森に連れ出した。森のなかを走る!
「どこらへんではぐれたかわかる?」ときくラファエロ、「うん!ちゃんと覚えてるもん!」と女の子。
さらに森を奥へ進み、やがて岩の間に小さな川が流れる場所まできたとき、「たしかこのあたりでママとはぐれたの」と女の子はいった。「じゃあ、この近くを探してみよう!」「うん!ママ~!」女の子は叫びだした。「おれたちも探そう!」「うん!」と4人はうなずきあい、「え~と、きみ、名前は?」とラファエロはきいた。「ミレア」と女の子。
「ミレアちゃんのお母さ~ん!」
そうやってしばらく呼びかけているうちに……とある岩陰で、ある女性がハッとその声に気づいた。「ミッミレア!?」しゃがみこんでいた女性は立ち上がろうとして顔をしかめた。岩陰からのぞくと、遠くにミレアの姿が見えた。そばに誰かいるようだが、女性は、「ミレア~!」と声をかけた。ミレアはそれに気づくと、「ママ!」とかけだした。
「ママ!」「ミレア!」抱き合う2人!サンクたち4人もやってきて、よかったとほほえんだのだった。だが……ミレアの母親は足にひどいケガをしていた。4人は驚き、「そのケガは一体……?」ときいた。ミレアもそれを見て、「ママ!どうしたの!?これ!」と叫んだ。
母親は、「じつは、さっき悪魔に襲われて逃げていたとき、攻撃を受けてケガをしてしまったんですよ。ミレアとはぐれてしまったあとでした。この岩陰を見つけて必死で隠れて、なんとか見つからずにすんだけれど、動けなくて困っていたんです」といった。
「すぐ町に戻って手当てしないと!」
「それなら、ぼくの技で治せるかもしれません」
ラファエロは杖を向け、「エクスヒーリング」といった。やわらかい白い光がミレアの母を包み、ミレアの母は驚いていた。
「これは……一体?」「回復術です。超能力の一種です」とラファエロ、「かなり傷がひどいので、少し時間がかかりますね」ミレアの母の足は傷口が深く、骨が見えていた。どうやら骨折もしているようだ。足以外にもあちこち傷があったが、それらの傷はすでに再生され消えかけていた。
「なんだか、痛みが治まったみたいだわ……」母親はミレアを見、「でもよかったわ、ミレアが無事で、とっても心配してたのよ」「ママ……」
ユードーが、「だが、2人だけで森に入るなんて危ないな」
母親は、「この森にはめずらしい薬草がいっぱいあると聞いたもので……魔物や悪魔を探知する道具を持っていたので平気だと思ったのですが」と円盤のようなものを取り出した。
「まさかあんな急に襲われてしまうなんて」すると、ミレアの母は、あっと叫びをあげた。
「ん?」「どうかしたんですか?」母親は青ざめて、「なにかがこちらへ近づいてきてますわ」
すると、かすかにギイイッと上空から鳴き声のようなものが聞こえた。みんなは上を見上げた。すると、空になにかが飛んでいる……と思えば、それは巨大な鳥で、鳥はあっという間にこちらに近づいてきた!
鳥はこちらを攻撃してくる!
「うわああっ!」「キャアッ!なによこれ!」必死で鳥を追い払おうとする。ミレアが、「さっきわたしとママを襲ってきた悪魔だっ!」と叫んだ。「なんだって!?」
鳥はすごいスピードでサンクたちめがけて飛んできた!「危ないっ!」ユードーは他の仲間をかばうように立ちふさがった。攻撃してきた鳥を拳を振り回して追い払ったが、ユードーは敵の鋭い爪やくちばしの攻撃を受けてしまった。「くっ、こいつはかなりの攻撃力だぞ」ユードーの腕は傷だらけになり、血が出ていた。ラファエロが、「ちょっとすみません」とミレアの母の治療を中断して立ち上がり、「ヒール」ユードーに回復術をかけた。
「あの悪魔があなたたちを襲ったのですか!?」「ええ、わたしがこんなケガをしたのはその悪魔のせいですわ」
ふたたびサンクたちのもとへ攻撃しにくる鳥!ユードーはその鳥に「うおりゃあ!」と殴ろうとするが、鳥はさっと方向を変え、よけられてしまった。鳥はそのまま上のほうに飛んでいき、空からこちらの様子をうかがっていた。また、攻撃しようと目を光らせ、チャンスを狙っているのだ。
鳥に上のほうに逃げられ、ユードーは手をこまねいた。
「くそう!あんな場所に逃げられたのでは手も足も出せん!降りてこーい!」ユードーはそばにあった石を拾っていくつか鳥に投げつけた。鳥はそれをサッサッとよけ、さらに上空へと飛び上がった。「おのれ!あの高さでは届かん!」悔しがるユードー。「わたしが攻撃してみるわ!」
フィリナは「ブライトボール!」と技を出す!技は見事鳥のところまで届いたが、すれすれのところでよけられてしまった。「ああっ!もう少しだったのに!」
「それではこれは!?トルネードロール!」ラファエロが風のロッドを手に持ち、風で攻撃した。竜巻が巻き起こり、鳥は逃げることができずそれに巻き込まれ、「ギャアァ!」と苦しそうな鳴き声をあげていた。
「やった!あの鳥自由に動けないみたいだぞ!」「フィリナさん!今のうちにあの鳥に攻撃してください!翼のところを狙うといいですよ!」「わかったわ!」
フィリナはまたブライトボールで攻撃!すると、「ギャッ!」鳥の翼に命中し、鳥はひゅるひゅると落下し始めた。「しめた!鳥が落ちてきたぞ!」「チビドラ!その鳥のとこへいって火を吐くんだ!」「ギャッ!」チビドラは鳥のところまで飛んでいき、火を吐いた。「おれたちもいこう!」
鳥は翼を攻撃され、うまく飛べなくなったとはいえ、高い攻撃力は健在であった。「ギャアァ!」鳥がくちばしでチビドラをつつき、チビドラはあわてて逃げる。「うおお……」ユードーが鳥に殴りかかる!鳥は地面にたたきつけられたが起き上がり、ユードーを翼で打つ!「うわっ!」倒されるユードー!チビドラやポロが鳥に立ち向かい、お互い攻撃しあって戦っていた。だが、「ギャア!」「キャウッ!」鳥の高い攻撃力により、ポロとチビドラは倒れてしまった!
鳥は今度は方向を変えて飛びかかってきた!そちらにはフィリナやミレアやミレアの母がいた。「下がって!」フィリナは2人をかばうように後ろに身を引いた。サンクが急いで剣を手にしてその前に立ちふさがる!起き上がったユードーも鳥の前へと走り、前に立った!「うおぉりゃあ!」ユードーのパンチ!「たあーっ!」サンクも剣でたたく!「ヒール!」ラファエロの回復技でふたたび起き上がったポロとチビドラも鳥に攻撃した!「ホワイトブラスター!」後方からフィリナも攻撃し、ミレアも、「よくもママを!」鳥に石を投げた!
みんなからの怒涛の攻撃を受け、ついに鳥は、「グエッ」シュウゥ……と消えてしまった。
「やったぜ!」サンクたちは喜んだ!
「これで、危険な悪魔をまた1つ消すことができたな」
ミレアの母は、「まぁ……あなたがたは強いんですね。とても驚きましたわ」と驚いて見ていた。
ラファエロは、「それではまた治療を続けましょう」とミレアの母のもとにしゃがみ、回復術をかけ出した。やがて、ケガは治っていき、立つことができるまでに回復した。
「立てるようになりましたわ!」
「よかった、ちょっと歩いてみてください」
母親は、ゆっくり歩いてみて、歩けるようになったことを確かめた。母親もミレアも喜んでいた。
「まだ完全に治ったかはわからないので、これから数日はあまり激しく動かないように気をつけてください」
「治癒師並の力ですわ……」母親はラファエロにありがとうございますとお礼をいった。いいんですと手を振るラファエロ。
「それでは、町まで戻りましょうか」といい、みんなは森を出て町に戻ることにした。町までは母親の足の様子を確かめるようにゆっくりと戻った。どうやら歩き方に不自然なところもないようだ。
やがて町に着くと、「きょうは本当にありがとうございました」と母親は頭を下げ、4人はミレア親子とは別れた。「お兄ちゃんたち、ありがと!バイバーイ!」とミレアは手を振っていた。
時刻はすでに夕方になっていた。
「この町にもギルドはあるだろう。でも、きょうはとりあえず宿屋にいってすぐに休もう」ユードーはいい、宿屋に向かった。
宿屋の主人に何人部屋にするかをきかれ、4人部屋を希望する。ラファエロは、ん?と思った。
4人は与えられた番号の部屋へ向かいなかに入る。ベッドの4つある部屋だった。
「んーっ!やっと休めるな!」「この部屋にはシャワーが付いてるわ」「ほんとだ!前のとこはなかったからなー」
ラファエロはその様子を見てワナワナ震えていた。そして、「ふっふしだらです!」赤い顔で叫んだ。「あ?」「ん?」3人はラファエロのほうを見た。「未婚の男女がこんな、一部屋でっ……」きのうは同じ宿屋でも3人とは別の部屋に泊まったので気づかなかった。
「だってこの方が安いでしょう?」「そーゆう問題では……っ」「まぁまぁ、おれも最初は驚いたもんだが、一緒に過ごすうちに、こうゆうのにももう慣れてきたもんだ」ユードーがラファエロの肩を抱いていった。ラファエロはまだ赤い顔で口をパクパクさせているが3人は思い思いに部屋のなかで過ごし始めた。
そしてその夜、ラファエロはフィリナのシャワー後のふわふわしたパジャマ姿を見て真っ赤になってあわてることになる。